繰り返し”リフ”のある音楽の魅力 – ブルース、ハードロックからダンス、アンビエントまで

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いつもは特定のジャンル、ミュージシャンにフォーカスした記事を書くことがほとんどだ。その方がきっと読んでくれる方にとっても読みやすいはずだ。

しかしたまにはジャンル横断的な記事を書いてみようと思う。今回は音楽における繰り返し、”リフ”のある音楽の心地よさについて書いてみたい。

まずはそもそも”リフ”とは何か、と言うところから始まり、リフのある音楽の魅力を紹介する。そして筆者おすすめのリフの心地よい楽曲をジャンル横断的に紹介したい。

”リフ”の持つ心地よさはジャンルによっても異なるため、今回の記事が音楽の興味を広げることに繋がれば幸いだ。

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繰り返し”リフ”とは何か?

まずは”リフ”とは何ぞや、というところからだ。英語では”riff”とつづられ、“リズム音型(RHYthmic Figure)”や“リフレイン(REFrain)”の省略だという説があるそうだ。

楽曲において繰り返される音型や旋律のことで、ロックやジャズ、ファンクなどでよく用いられる。

”リフ”と聴いて思いつくのは、まずハードロックにおけるギターのフレーズであろう。たとえばDeep Purpleの「Smoke On The Water」の冒頭である。

収録アルバム:Machine Head (1972)

ハードロックが何かを知らない人でも、一度は耳にしたことがあるフレーズではないだろうか。この場合は、和音だが短いフレーズが繰り返されて、歌に入っていく。

この繰り返しを”リフ”と呼び、リフのかっこ良さがハードロックにとっては非常に重要なものとなる。

一般的にはハードロックでのギターによるリフを思い浮かべる人も多いだろう。しかしソウルやファンクなどでも、リフの考え方は用いられる。

リフの概念を狭くとればハードロックでのギターリフだ。この記事では、より概念を幅広くとり、短いフレーズが繰り返されるものを広くリフとして考えたい。

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繰り返し”リフ”の魅力

リフのある音楽の魅力について述べておこう。

リフの良さは、短いフレーズが繰り返されることで、曲に親しみやすくなる、と言うことが挙げられる。曲の全貌がわからずとも、リフがわかれば、曲の雰囲気もわかる。

リフのある音楽と言っても、様々なパターンがある。大きく分ければ、イントロにリフが登場するものと、曲中もずっとリフが繰り返されるものだ。

前者は、あらゆるジャンルが含まれるとも言えるだろう。イントロに効果的に繰り返されるフレーズがある曲は数多くある。

一方でリフがずっと繰り返されるジャンルとなると、少し範囲が狭まる。今回注目したいのは、こちらの音楽である。

リフが繰り返される音楽の魅力のキーワードは、”永続性”ではないか。

例えば、ポップスなどリフ主体ではない音楽は、メロディの移り変わりや刺激的な展開が醍醐味だ。比較的短時間の楽曲の中に、緩急をつけて、その一瞬を楽しむものだろう。

一方でリフ主体の音楽は、同じフレーズが最初からずっと繰り返され、1曲の中での変化は少ない。

むしろ変化しないところにカタルシスを感じるものである。そして同じフレーズでも、少しずつ盛り上がったり、落ち着いたりを繰り返すところに、心地好さを感じる。

作品として音源に残すために、ある時間で曲を終わらせるが、続けようと思えばどこまでも続けられるのだ。リフ主体の音楽は、どこまでも続く”永続性”こそがキーワードなのだ。

今回はそんなリフがどこまでも続くような楽曲を、あらゆるジャンルから集めてみようと思う。

ジャンル別の繰り返し”リフ”が心地よい楽曲

今回はいくつかのジャンルごとに、2~4曲ほど筆者おすすめのリフが心地よい楽曲を紹介したい。

ジャンルは、「ハードロック、ヘビーメタル」「ブルース、ブギー」「ダンスミュージック」「パンク、オルタナティブロック」「環境音楽、アンビエント」の5つとした。

紹介するミュージシャン、楽曲は、このブログの中でも既に取り上げたものもある。詳しくは、そちらの記事も併せてぜひお読みいただければと思う。

ハードロック、ヘビーメタル

リフと言えば、まず思いつくのがこのジャンルであろう。ある意味、どの曲を取り上げてもリフの良さを語ることができる。

そこで今回は、1つのリフで突き進んでいくような楽曲、またハードロックの中でも特に繰り返しが多い楽曲を中心に3曲選んだ。

ハードロック、ヘビーメタルの特徴として、展開の多さもある。しかし永続性をテーマに、展開よりもずっと同じフレーズが続いていくような曲を選んだ次第だ。

Budgie – Guts

収録アルバム:Budgie (1971)

1曲目は、B級ハードロックの定番とも言われるカーディフ出身のバンドBudgieの「Guts」である。

1968年に結成され、3ピースバンドとして活動。ブルース色が薄く、ベース・ボーカルのバーク・シェリーの中性的なボーカルなど独特な雰囲気を持つ。

名盤3rd『Never Turn Your Back On a Friend』に収録された「Breadfan」は後にMetallicaにカバーされ、人間椅子はオリジナル詞をつけて「針の山」としてカバーされた。

1stアルバムに収録された「Guts」はヘビーなメインリフでひたすら押していく。少しの展開はあるものの、曲の最後までメインリフの持つ雰囲気のまま進む。

刺激的な要素はなく、むしろ淡々と進んでいく曲調はハードロックの中では異色だったかもしれない。しかしこの地を這うようなヘビーさは、後のバンドに大きな影響を与えた。

Slayer – Black Magic

収録アルバム:Show No Mercy (1983)

2曲目は80年代に起こったスラッシュメタルから、Slayerの初期の楽曲である。

ハードロックとヘビーメタルの違いを説明するのはとても難しい。ただハードロックの持つ装飾性を剥いでソリッドにしたものが、ヘビーメタルと言えるかもしれない。

中でもスラッシュメタルは、ハードロックのリフのかっこ良さに、パンクのスピード感を持ち込んだとも言われる。イギリスで起きたNWOBHMから影響を受けたともされる。

Slayerはアメリカで1981年に結成され、2019年まで活動を続けた。アグレッシブさが特徴であるが、今回紹介する「Black Magic」はスラッシュメタル草創期の楽曲だ。

冒頭の単音リフから、一気にハイテンションで突き進んでいく。ゆったりした心地よさとは無縁だが、このひたすら繰り返されるリフにも、筆者は一種の”心地よさ”を感じすにはいられない。

スラッシュメタルの初期の作品を紹介した記事

人間椅子 – 芋虫

収録アルバム:怪人二十面相 (2001)

1987年に結成された日本のハードロックバンド人間椅子の楽曲もぜひ取り上げたい。先ほどのBudgie始め、ブリティッシュハードロックに影響を受け、その日本的な解釈を行ったバンドだ。

プログレの影響も受けているため、展開の多い楽曲もある。その一方で、淡々としたハードロックが好きなベース・ボーカル鈴木研一氏が作る曲には、繰り返しを活かした楽曲もある。

今回取り上げた「芋虫」は、後半まで静かなパートが続く。そして少しずつ展開はしていくものの、同じリフをコードに合わせて変形した形で進んでいく。

ギターソロパートもひたすら同じベースリフが続いていく。延々と続くリフは、絶望感のようでもあり、かえってそれが不思議なカタルシスともなる

最後の激しい展開が、そのパワーを一気に開放するようでカッコいい。ファンの間でも非常に人気の高い楽曲である。

筆者がTwitterで行った人間椅子の楽曲ランキングでは「芋虫」が1位を獲得

ブルース、ブギー

繰り返しと言えば、やはりブルースを外すわけにはいかないだろう。そもそも決まったコード進行を繰り返すのがブルースのお作法である。

ただそれ自体をリフと呼ぶことはないため、ブルースの中でもロックのリフ的な考えを持ち込んだ楽曲を選んでみた。

Status Quo – Whatever You Want

収録アルバム:Whatever You Want (1979)

最初にイングランドの国民的ブギーのバンドStatus Quoの代表曲の1つ「Whatever You Want」を紹介したい。

1962年にバンド結成、1967年より現在の名前で活動している。初期はサイケロックだったが、70年代からハードブギーバンドとして現在に至るまで活動を続けている。

ブギーと言えば、この「ズグジャガ」というコードのリズムがリフと言っても良いだろう。ブギーにもいくつかリズムのパターンがあるが、この曲はミドルテンポでシャッフルする心地よさがある。

思わず体が動き出してしまうような快感がブギーのリズムにはある。この曲はカッティングギターとあいまって、ハードさよりも牧歌的な雰囲気を感じる。

ZZ TOP – Blue Jean Blues

収録アルバム:Fandango! (1975)

2曲目に紹介するのはアメリカのブルースバンド、ZZ TOPの楽曲である。

1969年に結成され、初期は王道のブルースバンドだったが、80年代にシーケンサーサウンドを導入し、さらなるブレイクを果たした。

結成当初からメンバーが変わらない3ピースバンドだったが、2021年にベースのダスティ・ヒルが亡くなっている。

取り上げた曲は、70年代のスローブルースの楽曲である。マイナーブルースの進行がベースにあるが、冒頭からのリフが主体になっている。

このリフだけでずっとギターソロが続く快感がある。ビリー・ギボンズの弾き過ぎない抑えたギターソロが非常にカッコいい。

この進行でセッションをすれば、延々と続けることができるのではなかろうか。

ダンスミュージック

非常に広く”ダンスミュージック”と呼ぶことにしたが、ソウルやファンク、エレクトロニカなどを幅広くここに入れている。

ダンスミュージックにおいても、繰り返しの持つパワーが重要になってくる。ここではギターによるリフよりも、ベースラインのリフ、ギターカッティング、打ち込みによるフレーズなどが多くなる。

Chic – La Freak

収録アルバム:C’est Chic (1978)

1977年にデビューした、アメリカのディスコ・ファンクバンドChicの代表曲である。「La Freak」は1978年にシングルリリースされ、Billboard Hot 100で1位を獲得している。

ディスコブームをけん引したバンドとしても知られる。ディスコと言うダンスを前提にしたジャンルは、まさに繰り返しの音楽と言えるだろう。

この曲で印象的なのは、やはりナイル・ロジャースのギター・カッティングだ。これがリフの形で楽曲を引っ張っていきながら、ボーカルと絶妙に絡み合う。

そして一切ギターソロなどがなく、淡々とギターカッティングをしているところが良い。ヒップホップなど、後のダンスミュージックに多大な影響を与えたことだろう。

Incognito – Colibri

収録アルバム:Tribes Vibes & Scribes (1992)

続いて紹介するのは、90年代を中心としてアシッドジャズのバンドとして活躍したIncognitoである。

アシッドジャズとは、1980年代にイギリスのクラブシーンから生まれたジャンルであり、大雑把に言えばジャズとファンクが融合したものだ。

フュージョンのようなパキッとしたビート感ではなく、緩やかな演奏とともに、ファンクの16ビートの心地よさがある。

Incognitoは1979年に結成したが、80年代は不遇の時代を経験した。今回取り上げた1992年の『Tribes Vibes & Scribes』は名盤の1つである。

1曲目の「Colibri」は小気味良いギターカッティングから始まり、印象的なベースリフが入ってくる。先程のChicの楽曲などとパターンは似ている。

アレンジ的にはジャズらしくサックスが入ったり、キメのリズムがあったりと上手く変化をつけている。しかしベースには決まったリフをひたすら続けるという心地良さがある。

この曲のリフの心地良さは、いわゆるイージーリスニング的な心地よさにも結びつくのである。実にリフは奥深いと思わされる。

Manuel Göttsching – E2-E4

収録アルバム:E2-E4 (1984)

最後に紹介するのは、ダンスミュージックに入れるべきかアンビエントに入れるべきか悩む楽曲である。

ドイツ出身のミュージシャン、Manuel Göttschingクラウトロックと呼ばれるドイツにおける前衛的音楽において重要な存在だ。クラウトミュージックでは、反復を重視するそうだ。

ソロ作品である『E2-E4』は、1981年に録音されたがあまりに早過ぎたテクノのアルバムと言われる。アルバムとしては9曲入りの形となっているが、ノンストップで同じリフが繰り返される

非常にミニマルなサウンドながら、少しずつ鳴っている音の変化、そしてManuel Göttschingのギターソロが挿入されていく。

発売当時は酷評されたようだが、後にクラブDJから注目を集め、アンビエントやテクノのジャンルに大いに影響を与えたと言う。

ダンスミュージックであり、アンビエントでもある本作は、リズミカルだが単調であり、ひたすら繰り返すトリップ感がたまらない。とにかく”繰り返し”が好きな人にはぜったいおすすめである。

パンク、オルタナティブロック

ここではパンクから派生したジャンルを幅広く、オルタナティブロックとして紹介していきたい。

パンク自体にも繰り返しの要素を見ることができるが、時代的にはもう少し後の楽曲をメインにした。取り上げたのは、ポストパンクエモなどである。

パンクの攻撃性から、より内省的な楽曲や耽美的な要素のある楽曲が増えていった。その中で、繰り返しが特に重視された楽曲が登場している印象である。

Gang of Four – Damaged Goods

収録アルバム:Entertainment! (1979)

1977年より活動を開始したイングランドのバンド、Gang of Fourの楽曲を紹介したい。彼らはポストパンクと言うジャンルで括られることが多い。

ポストパンクを説明するのは難しいが、パンクの後を継ぎ、実験音楽やダンスミュージックなどの要素を融合させたバンドが多く存在する。

Gang of Fourの特徴は、ダンサブルなビートがあり、そこにアンディ・ギルの硬質なギターカッティングが乗っかるところにある。

「Damaged Goods」は、パンクのドライな質感で、ダンスミュージックの反復を取り入れた楽曲と言っても良い。

そしてアンディ・ギルのカッターのようなギター、そしてラフな演奏が繰り返しに、変化をつけている。ほぼ1つのリフだけで押し進む潔さが良い。

The Cure – Sinking

収録アルバム:The Head on the Door (1985)

1978年にイングランドで結成されたThe Cureについても紹介したい。このバンドは、初期はポストパンクであり、その後はゴシックロックやオルタナティブロックに括られる。

The Cureは音楽的な変化が大きく、特徴を語るのは難しい。しかしボーカルのロバート・スミスの特徴的なボーカルと、陰鬱として淡々とした演奏の対比が耳に残る。

筆者のブログでは、あまりに歌に入るまでが長い曲が多いため、そんな楽曲ばかりを集めた記事を作成した。

やや地味な曲ではあるが、「Sinking」は”暗黒”とも表現される、沈鬱とした暗いトーンの中で同じリフが延々と繰り返される楽曲である。

わずかな展開はあるが、同じベースリフがずっと反復される。そこにキーボードが乗っかることで奥行きと、耽美的な世界観が広がる

これぞThe Cureと思わせる名曲だと思う。

American Football – Never Meant

収録アルバム:American Football (1999)

エモと言うジャンルにおいては、伝説的なバンドとして知られるAmerican Footballも繰り返しのリフを多用するバンドである。

1997年にアメリカで結成されたバンドである。エモというと激しい音楽を想像するかもしれないが、繊細なギターアルペジオが絡み合う、美しいサウンドが特徴である。

しかしよく聴き込めば、変拍子が多用されており、前衛的な要素をさりげなく持ち込んだマスロック的な側面もある。

わずか1枚のアルバムをリリースして活動休止していたが、現在は活動を再開し、2枚のアルバムをリリースしている。

American Footballの3枚のアルバムについてレビューした記事

Never Meant」と言えば、1stアルバムの1曲目であり、アメフトの名刺のような楽曲である。この曲もベースにあるのは、ギターアルペジオのリフである。

やや複雑なリフの上に、さらにギターが重なる。いわゆるイージーリスニング的な美しさとは異なる、無機質な繰り返しだからこその癒しがあると言っても良い。

Pinback – Non Photo-Blue

収録アルバム:Summer In Abaddon (2004)

1998年より活動を続ける主に2人組で活動をするバンドPinbackも実に素晴らしい。筆者はどの作品も好きなのだが、初期のゆったりしたテンポより、本作『Summer In Abaddon』の楽曲が好きだ。

Pinbackはエモやインディーロックで括られるが、クリーンなギターがメカニカルに構築され、単調なビートに乗っかるのが特徴である。

アルバム1曲目の「Non Photo-Blue」は、特に完成度の高い楽曲である。一切無駄のないギターとリズムのパターンであり、その中でボーカルやコーラスがサウンドに奥行きを与えている。

曲の中心を支えているのは、ここでも”リフ”である。やはり繰り返しを聴けば聴くほど、スルメのように味わい深くなってくるのが、リフの醍醐味であろう。

環境音楽、アンビエント

最後に取り上げたいのは、これもかなり広くとらえた環境音楽やアンビエントである。ポップスのような、いわゆる”Aメロ”や”サビ”などの様式がない音楽とも言える。

実験的な音楽や、周囲の環境に溶け込むような音楽にも、繰り返しの要素は多く使われている。むしろ環境音楽こそ、繰り返しが効果的に用いられているとも言えるだろう。

The Art Of Noise – Moments In Love

収録アルバム:Who’s Afraid of the Art of Noise? (1984)

最初に取り上げる楽曲は、今や古典とも言えるような楽曲である。1983年頃より活動を開始した、イギリスのエレクトロミュージック、前衛音楽のユニットArt of Noiseの楽曲だ。

Art of NoiseはYesのアルバム『90125』は、メンバーのトレヴァー・ホーンがプロデュースを手掛けていることで有名である。

この「Moments In Love」は、後にチルアウトと呼ばれるジャンルの原型になったと言われる。チルアウトは、ダンスミュージックの中でもダウンテンポのゆったりした楽曲群を指す。

淡々としたビートの中で、1つのフレーズが繰り返されていく。深いリバーブとともに、荘厳さも感じさせるサウンドは、不思議な快感に包まれるものだ。

Art of Noiseの楽曲すべてがこのタイプの楽曲ではないが、サンプリングと言う手法を用いることは、繰り返しの音楽であることを意味する。

混沌とした楽曲もあれば、「Moments In Love」のようにそぎ落とされたミニマルなサウンドもあり得る。

※Art of Noiseのアルバムを取り上げた記事はこちら

3776 – 長月九拍子嬰ハ調

収録アルバム:歳時記 (2019)

富士山のローカルアイドルグループである3776の名盤『歳時記』からの楽曲にも触れておきたい。

3776は現在のメンバーは井出ちよののみ、プロデューサーの石田彰とともに活動を続けている。ジャンルとしてはオルタナティブロックや実験的な音楽を行っている。

2019年にリリースされたアルバム『歳時記』は、アルバム1枚で1年間という時間を表現したアルバム

秒数が実際の1年間の日数と対応していたり、各月の数字に対応する拍子を入れていたりと、恐ろしいほどのこだわりを感じる作品だ。

※筆者が書いた詳しいアルバムの解説はこちら

アルバムは、ダンスミュージックのような、ノンストップで楽曲が続くスタイルである。楽曲のタイプは様々だが、アンビエントを感じさせるのが「長月九拍子嬰ハ調」である。

楽曲の中では、童謡の「うさぎうさぎ」とオリジナル曲「月の光」がつなげられている。この曲を取り上げたのは、「うさぎうさぎ」を9拍子でやっている斬新さにある。

必ずしもリフと呼べる繰り返しがある訳ではないが、6拍までドラムが鳴って、リズムが消えるアレンジは素晴らしい。このリズムの繰り返しを、どうしても取り上げたかったのである。

アルバム全体を通じて、印象的なリフ、そして繰り返しに満ちた作品である。

Helios – Domain

収録アルバム:Domicile (2020)

心地好いアンビエント作品を作る、Keith KenniffHeliosと言う名義でリリースした作品である。

本作『Domicile』は本格的なアンビエントの作品であり、リズムはなく緩やかに音が繋がって聞こえるアンビエントらしい作品となっている。

アンビエントとなると、リフの考え方とは異なるのかもしれない。しかしこの「Domain」は同じフレーズが繰り返されていく構成となっている。

どこか宇宙的なサウンドであるが、フレーズの間のブレイクは不連続な形になっている。繰り返しと、微妙な揺れを感じさせる楽曲となっている。

単に繰り返しと言っても、どこかにこうした不連続性や揺れ、偶然性のようなものが加わることで、聴く人の適度な緊張感と心地よさが喚起されるのではないだろうか。

※本作『Domicile』を取り上げた記事はこちら

Chillhop Radio – jazzy & lofi hip hop beats

最後に取り上げるのは、特定の楽曲ではない。Chillhop Musicというレーベルが持つYouTubeチャンネルのライブ配信である。

ここで配信されているのは、ローファイヒップホップと呼ばれるジャンルの楽曲である。ローファイヒップホップは、打ち込みの無機質なリズムにジャズ的なトラックが乗っかるのが特徴だ。

ここではジャズにおけるリフ、そしてヒップホップと言う繰り返しの要素が重なり、まさに繰り返しの快感を堪能するためのジャンルと言っても良いだろう。

だからこそ、ライブ配信で24時間流すことが成立するし、ずっと聴いていても全く飽きることがない。

筆者は、このレーベルの中では、L’Indécisというミュージシャンの『Second Wind』でローファイヒップホップを知ることとなった。

ジャズの要素が強い作品であり、非常にゆったりと聴くことができる名盤である。

※L’Indécisの『Second Wind』について触れた記事はこちら

まとめ – 繰り返し”リフ”になぜ惹かれるのか?

ここまで、ジャンル横断的に”リフ”とそれに近い繰り返しの多い音楽に注目して紹介してきた。

実に多様なジャンルで繰り返しの多い楽曲があることがわかった。それだけ繰り返しの魅力が奥深いものであることを表しているのではないだろうか。

筆者自身、10代の頃を振り返ると、今回取り上げた楽曲の中には、当時は全く興味の湧かないものもあった。単調な繰り返しに、全然魅力を感じられなかったのである。

ではなぜ今は繰り返しのある音楽に惹かれるのか。好きな音楽の幅が広がったことが大きいが、展開の多い刺激的な音楽ばかりでは疲れるようになってきた。

こってりした食べ物を食べ続けているような感覚だろうか。それが次第に、あっさりした食べ物も欲しくなってくるようなものかもしれない。

もう一つ、繰り返しの音楽は、永続性を求めるものではないか、と最初に書いた。話は大きくなるが、それは仏教における”悟り”のような状態に近いものだからではないか。

人間は古来より、永遠に穏やかな世界を求め、仏教ではそれを”涅槃”と言ったりした。芸術もまた、そんな平穏な心の在りようを現実の中で表現しようとしたものだった。

繰り返しの多い音楽は、無意識にそんな永遠や涅槃を求める精神性と結びついたものなのかもしれない。どこか無心になって聴けるところに、刺激的な音楽とは異なる魅力がありそうだ。

これからも当ブログでは、繰り返し”リフ”のある音楽を多く紹介していきたいと思う。ぜひ興味のある方はこれからも覗いていただけると嬉しい。

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