人間椅子はどれくらいBlack Sabbathに影響を受けているのか? – リフや展開の類似点から探る

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バンド生活三十五周年を迎えた日本のハードロックバンド人間椅子、その音楽性はイギリスのBlack Sabbathに大きく影響を受けていると言われている。

Black Sabbathと言えば、ヘヴィメタルの元祖と言われるほど、後のバンドにあらゆる方面で影響を与えたレジェンドバンドである。

2025年7月にはバンド結成の地であるバーミンガムにて、オリジナルラインナップで最後のコンサートをすることが話題にもなっている。

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人間椅子もBlack Sabbathからの影響を公言しているが、果たしてどれくらい影響を受けているのか。今回は改めてその影響の受け方について考察してみようと言う記事である。

前半ではBlack Sabbathと人間椅子の関わりをまとめ、後半では実際の楽曲の中でBlack Sabbathが人間椅子に影響を与えた部分などを考察している。

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Black Sabbathと人間椅子の関わりとは?

まずはBlack Sabbathと人間椅子の関わりについてまとめておきたい。人間椅子メンバーとBlack Sabbathとの出会いや、受けていた影響などをまとめる。

またプロとして音楽活動をする中で、実際にBlack Sabbathやそのメンバーとの直接的な関わりについても触れている。

人間椅子がBlack Sabbathに影響を受けるまで

人間椅子は音楽性においてBlack Sabbathからの影響を強く感じさせるが、メンバーとBlack Sabbathとの出会いはどのようなものだったのか。

以下のインタビュー記事に書かれている通り、まずBlack Sabbathの魅力に惹かれたのは、ベース・ボーカルの鈴木研一氏であるようだ。

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鈴木氏がレンタルレコード店で借りたベスト盤が出会いのようである。

人間椅子メンバーが高校生頃と言えば、既にオリジナルラインナップのBlack Sabbathではなく、オジーオズボーンのソロが話題になっていた時代だった。つまりもう古いロックの部類であったのだ。

ギター・ボーカルの和嶋慎治氏はLed ZeppelinやDeep Purpleなどは愛聴していたようだが、Black Sabbathは何となくB級のバンドと言う印象で、それほど聴いていなかったという。

それが和嶋・鈴木両氏が浪人時代に文通をしており、鈴木氏が送ったBlack Sabbathのベストテープで好きになったようである。浪人当時の暗い気持ちに見事にハマったようだ。

二人とも一浪でそれぞれ東京の大学に進学し、同じバンドでBlack Sabbathのコピーも数多くやっていたそうだ。

実際に大学時代にコピーしていた楽曲は、以下の記事に書かれている。

BARKS:【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.5「ブラック・サバスは教科書」

【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.5「ブラック・サバスは教科書」 | BARKS
人間椅子の大学時代の活動について書きます。自分と和嶋くんは二人とも一浪して東京の大学に進学し、アパートの部屋で楽器を弾い...

なお2004年に人間椅子に加入したドラム・ボーカルのナカジマノブ氏は、高校生当時はオジー・オズボーンのソロを聴いていたようで、来日公演も観に行っていたという。

Black Sabbathを本格的に聴いたのは、人間椅子に加入して後のことだったそうだ。

そして人間椅子はBlack Sabbathのようなおどろおどろしいブリティッシュハードロックに日本語詞を乗せたバンドとして活動を今日に至るまで続けている。

パワーコードを用いたヘヴィなリフ、唐突な展開の多さなど、Black Sabbathの特徴に影響を受けた人間椅子だが、詳しくは後半で述べるとしよう。

また人間椅子の楽曲全般に関わる影響として、人間椅子の楽曲には、ギター・ベースのレギュラーチューニングとダウンチューニングの楽曲がある。

ダウンチューニングはドロップC#であり、これがBlack Sabbathからの影響である。

3rdアルバム『Master of Reality』以降のBlack Sabbathではこのダウンチューニングが用いられており、人間椅子も同じチューニングでアルバムの中に何曲かダウンチューニング曲を入れている。

人間椅子は2ndアルバム『桜の森の満開の下』からダウンチューニングを導入している。

Black Sabbathと人間椅子の接点

人間椅子はBlack Sabbathに影響を受けていたことを公言しており、デビュー後はいくつか実際に接点も生まれていた。

まずは1993年のアルバム『羅生門』の制作にあたり、ギターのトニー・アイオミにプロデュースを依頼するという話が持ち上がった。

実際に楽曲も先方に送ってオファーを出していたが、Black Sabbathのオリジナルラインナップでの再結成などが重なり、スケジュールが合わずに頓挫してしまった。

その後、1994年のヤングギター7月号にて和嶋氏とアイオミ氏との対談が雑誌で実現した。和嶋氏からアイオミ氏へのインタビュー形式で、音楽的ルーツやBlack Sabbathの音楽性を掘り下げている。

和嶋氏がかつてライブで使用していたSGには、おそらくこの時にアイオミ氏からもらったサインが書かれていた。

なお2013年発売のヤングギターのレジェンダリー・ギタリスト特集、トニー・アイオミにてこちらのインタビュー記事が復刻していた。

その後、Black Sabbathと人間椅子関わりと言えば、2013年のOzzfest Japan 2013でビル・ワードを除くオリジナルメンバーによるBlack Sabbath来日公演で、同じステージに出演することとなる。

当時の人間椅子はまだ知名度的に、他の出演するバンドと比べて劣っていたのだが、Black Sabbathの影響を公言していたバンドだけに、出演者の候補に挙がっていたようである。

Black Sabbathを目当てに来ていた観客は、おそらく名前だけ知っていた人間椅子の演奏を聴いて、この日おそらく最もサバスリスペクトなバンドは人間椅子だとすぐに分かったことだろう。

これを機に、人間椅子は”第2のデビュー”と言われるほど、知名度を上げることとなった。

なお、当日の楽屋はBlack Sabbathとスペースが分けられており、挨拶するなどは叶わなかったとのことである。

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人間椅子が影響を受けたと思われるBlack Sabbathの楽曲

後半は実際に人間椅子がBlack Sabbathから影響を受けたと思われる楽曲を選んで紹介したいと思う。

前半でも述べた通り、Black Sabbathの音楽的特徴である悪魔的なおどろおどろしいリフ、またパワーコードを使った奏法、また唐突な展開などが、人間椅子に影響を与えている。

ただ人間椅子の楽曲は、他にもBudgieやLed Zeppelin、Deep Purple、Uriah Heep、KISSなど70年代のハードロックバンドの様々な要素から影響を受けている。

そのため実はBlack Sabbathの影響だけ、具体的に楽曲から取り出すと言うのは難しい作業である。

今回はその中でも、人間椅子の楽曲の展開や曲調に大きく影響を及ぼした楽曲、そしてリフがどことなく似てしまっている楽曲に分けて紹介することとした。

展開や曲調など全体に影響を受けている曲

まず紹介するのは、Black Sabbathの楽曲の展開や曲調など、全体の雰囲気に強く影響を受けていると思われるものを選んでみた。

とりわけ今回選んだ5曲は、人間椅子の複数の楽曲において影響が見られるものであり、重要な楽曲であると考えた。

Sweet Leaf

  • 収録アルバム:『Master of Reality』(1971)

Black Sabbathのヘヴィな路線を極めたのが『Master of Reality』とも言えるが、その1曲目に収録されているのが「Sweet Leaf」である。

咳をサンプリングしたイントロや、ドラッグを思わせる歌詞などが話題になりがちの曲である。しかし人間椅子の場合は、この曲の展開や雰囲気に大きく影響を受けていると思われる。

基本的には1つのリフで押して、一瞬だけ異なる展開を入れてまた戻って来る、と言う展開である。まずは曲を通じて、1つのリフを執拗なまでに繰り返すところに注目したい。

ハードロックの定番と言えばそうだが、どこか気だるい雰囲気のリフが繰り返されるところに独特のトリップ感がある。

ロックンロールな雰囲気のLed Zeppelinや、ヘヴィメタル的様式美のDeep Purpleとも違う、独特の気だるさと中毒性のあるリフの繰り返しこそBlack Sabbathの魅力である。

こうした雰囲気に人間椅子は大きく影響を受けており、とりわけ鈴木氏の楽曲にそうした影響が見られる。

たとえば初期の楽曲では「マンドラゴラの花」(1992年『黄金の夜明け』収録)などは、この曲の影響を感じさせるものである。

また中間部に唐突にアップテンポになる展開が挿入されるのもBlack Sabbathらしい。ずっと一定に続くかに思わせて、一種の緊張感をもたらす効果がある。

中毒性のあるリフ+中間の展開、というパターンの曲は挙げればキリがないが、代表的なところで「陰獣」や「死神の饗宴」(2001年『見知らぬ世界』収録)などが典型的だ。

こうした中毒性のある繰り返しに関しては、Budgieの影響も強く感じられるところである。

ちなみに人間椅子でドラッグを題材にした楽曲と言えば、「阿片窟の男」(1998年『頽廃芸術展』収録)がある。

Sabbath Bloody Sabbath

  • 収録アルバム:『Sabbath Bloody Sabbath』(1973)

『血まみれの安息日』と言う邦題のつくアルバムで、タイトルは禍々しいが、ヘヴィさだけでなくプログレ要素や構築された展開を目指して、シンセサイザーやオーケストラの入った作品だ。

実はハード・ヘヴィだけで押したのではないBlack Sabbathの音楽性に、人間椅子も多大な影響を受けている。

中でも表題曲である「Sabbath Bloody Sabbath」は本作を代表している、ヘヴィさと構築された展開などが、1つに詰まった超傑作だ。

まずは冒頭のハードなリフが印象的でたちまち曲に引き込まれる。ただハード一辺倒ではなく、Bメロで突如美しいメロディとメジャーセブンスコードが登場し、また驚かされる。

とどめはラストのヘヴィな展開であり、最後に重々しいパワーコードを用いたリフで見事に締めくくられる。こうした展開の妙、そしてあえて挿入される美しい展開も、ヘヴィさを際立たせる効果がある。

こうしたプログレ風味を交えた展開の妙が聴ける曲は人間椅子にはあまりに多い。

美しいメロディが挿入される展開と言う意味では、たとえば「賽の河原」(1990年『人間失格』収録)や「羅生門」(1993年『羅生門』収録)などが挙げられる。

また後半にダークな展開があり、全体的な流れが似てしまっているのは「魅惑のお嬢様」(2001年『見知らぬ世界』収録)である。

Into the Void

  • 収録アルバム:『Master of Reality』(1971)

ダウンチューニングを導入し、全体的にヘヴィな楽曲の多い『Master of Reality』の中でも、ラストに配置された「Into the Void」はとりわけヘヴィな楽曲だ。

地を這うようなヘヴィなリフから曲が始まり、そのまま進むのではなく、パワーコードを用いたリフでグルーヴ感たっぷりに進んでいく。

また中間部には一瞬だけアップテンポになる展開があり、また冒頭に戻り、最後にはギターソロで展開していく。

ギターソロ部分はリフとソロが交互に展開しながら、アドリブっぽいソロが展開する自由度のある流れになって、唐突に曲が終わる。

こうした曲展開やギターソロの進め方など、この曲から人間椅子が受けた影響は絶大と言っても良いだろう。

この曲の影響を受けているのが、たとえば「黒猫」(1996年『無限の住人』収録)である。とりわけアウトロ部分のソロとリフの繰り返しの部分は、この曲の影響が大きい。

そして筆者の持論であるが、「黒猫」をさらに膨らましてアップデートしたのが、「無情のスキャット」(2019年『新青年』)であり、アウトロの展開もどことなく似ている。

全体の展開はあまり似ていないが、リフのザクザクと進む感じは、「見知らぬ世界」(2001年『見知らぬ世界』収録)も影響されていると言えなくもないだろう。

Black Sabbath

  • 収録アルバム:『Black Sabbath』(1970)

Black Sabbathのデビューアルバム『Black Sabbath』は1970年にリリースされた。2月13日(金)という”13日の金曜日”にリリースされるなど、悪魔的な要素が前面に出されている。

表題曲である「Black Sabbath」は、Black Sabbathの中でも最も不気味な楽曲の1つと言って良いだろう。冒頭のリフは三全音と呼ばれる、最も不快な和音とも言われている。

そして不気味さを際立たせるのは、あえてハードなリフで押すのではなく、静かなパートが続き、忍び寄るようにまた大音量でリフがかき鳴らされる、と言う展開にもある。

やはり不気味なフレーズ一辺倒で押すのではなく、終盤ではメロディアスな展開も用意されており、Black Sabbathの原型がここにあると言って良いだろう。

この曲にそのまま影響を受けて作られたと思われるのが、「春の海」(1999年『二十世紀葬送曲』収録)であり、リフも展開も含めて、この曲のままである。

他にも鈴木氏が作った曲にはこのパターンが多く、「踊る一寸法師」(1995年『踊る一寸法師』収録)や、「屋根裏のねぷた祭り」(2000年『怪人二十面相』収録)などがある。

インパクトの強いタイプの曲であり、あまり量産すると飽きてしまうものであるため、人間椅子も近年はあまりこのパターンでは作られていないようだ。

N.I.B

  • 収録アルバム:『Black Sabbath』(1970)

表題曲である「Black Sabbath」の悪魔的な雰囲気のインパクトが強い作品ながら、中毒性の高いリフの繰り返しとメロディアスな展開は既に見られている。

それが「N.I.B」に顕著である。ワウの効いたベースソロからリフが始まる展開が非常にカッコいい。

そしてリフと同じメロディを歌うのもサバスらしいが、リフで押すだけではなく、ギターリフはそのままにベースでコードを展開していくアンサンブルもしっかりと見せてくれる。

少ない楽器の編成において、いかにバッキングにメロディアスな要素を出すのか、という点で、ベースだけコードを動かすと言うやり方は、人間椅子も大きく影響を受けている。

また中間に挿入されるギターソロも、非常に”泣き”のソロであるとともに、ソロをダビングして微妙に異なるソロを重ねるのも、人間椅子は影響を受けていた。

「N.I.B」の路線をさらに洗練させたのが「Sabbath Bloody Sabbath」という感じがするが、「N.I.B」はプリミティブな雰囲気を残しつつも品を感じさせる楽曲である。

影響を受けた曲と言うとキリがないが、たとえば初期では「太陽黒点」(1991年『桜の森の満開の下』収録)や「黄金の夜明け」(1992年『黄金の夜明け』収録)は近い感じを思わせる。

人間椅子の場合は、より展開を凝ったものにしているが、その原点にあるのは「N.I.B」のような楽曲に思える。

リフが似ている曲

ここまではBlack Sabbathの楽曲の展開や曲調など、影響力の大きい楽曲に絞って紹介した。

ここからは、リフやフレーズ、アレンジなどが似ている曲を取り上げている。意図せず似てしまったものから、影響を受けて消化しているものまで様々である。

曲数もそれなりに多いので、似ている箇所の紹介を中心にコンパクトに紹介する。

War Pigs

  • 収録アルバム:『Paranoid』(1970)
  • 似ている人間椅子の曲:桜の森の満開の下(1990年『人間失格』収録)

もともと2ndアルバムのタイトル曲となる予定だった楽曲。ヘヴィなリフを主体に曲が進み、ラストの展開ではメロディアスなギターリフが印象的である。

このメロディアスなリフが、「桜の森の満開の下」の同じくラストのリフとよく似ている。またギターソロを重ねてずらす、というのも「War Pigs」と似ている。

ただし人間椅子の場合は、ディスコビートに変えてノリの良い展開にしている。

Paranoid

  • 収録アルバム:『Paranoid』(1970)
  • 似ている人間椅子の曲:晒し首(1996年『無限の住人』収録)、桜爛漫(2013年『萬燈籠』収録)

言わずと知れたBlack Sabbathの代表曲。非常に短時間で書き上げたという曲で、シンプル過ぎるほどの構成だが、そういう曲こそ名曲になりうるものである。

Em、C、Dという王道コードをパワーコードで刻むというのはよくあるパターンだが、どことなく雰囲気が似ている曲が人間椅子にある。

1つは「晒し首」で、ビートは異なるものの、イントロのリフからパワーコードを主体としたAメロのリフの展開は、「Paranoid」を思わせる。

また「桜爛漫」はコード進行とパワーコードを用いたリフの雰囲気が似ていると感じた。

Electric Funeral

  • 収録アルバム:『Paranoid』(1970)
  • 似ている人間椅子の曲:桜の森の満開の下(1990年『人間失格』収録)

ワウを用いた不気味なリフが全体を引っ張っていく楽曲。Black Sabbathではワウを用いたリフはそれほど多くないので、珍しいとも言える。

この雰囲気に似ているのは「桜の森の満開の下」のメインリフである。人間椅子と言えば「陰獣」がワウを用いたリフの印象だが、あちらはBudgieの「Guts」の影響の方が強いように思える。

「桜の森の満開の下」は「War Pigs」との類似も指摘した通り、Black Sabbath愛が詰まった楽曲と言っても良いだろう。

Under the Sun

  • 収録アルバム:『Black Sabbath Vol.4』(1972)
  • 似ている人間椅子の曲:あゝ東海よ今いずこ(2011年『此岸礼讃』収録)、がらんどうの地球(2014年『無頼豊饒』収録)

『Black Sabbath Vol.4』のラストに配置されたこの曲は、ダークなリフからシャッフルのリズムで進む楽曲。アップテンポな展開から元に戻り、ラストはメロディアスに締めくくる。

こうした展開を取り上げれば、実は物凄く人間椅子が影響を受けた楽曲の1つと言える。リフを取り出すと、さらによく似ている楽曲がある。

1つが「あゝ東海よ今いずこ」であり、ゆったりしたイントロからシャッフルのリフへ、という流れがそっくりである。

もう1つ「がらんどうの地球」はメインリフがリズムと併せてかなり似ている楽曲である。

Fairies Wear Boots

  • 収録アルバム:『Paranoid』(1970)
  • 似ている人間椅子の曲:瀆神(2019年『新青年』収録)、神々の行進(2021年『苦楽』収録)

『Paranoid』のラストに配置された楽曲で、展開が多いのが特徴である。こうしためまぐるしい展開をとっても、人間椅子に影響を与えた楽曲である。

リフも様々に登場するが、1:15辺りから始まる重たいシャッフル調のリフは人間椅子に似たものがいくつかある。1つは「瀆神」の中間部のリフで、仮タイトルでも「フェアリー」と呼ばれていたようだ。

また「瀆神」中間部のリフによく似た「神々の行進」も、「Fairies Wear Boots」の影響下であると言えるだろう。

Symptom of the Universe

  • 収録アルバム:『Sabotage』(1975)
  • 似ている人間椅子の曲:芳一受難(2016年『怪談 そして死とエロス』収録)

オジー・オズボーン在籍後期のアルバム『Sabotage』のリードトラックである。不気味なリフで疾走する、やや珍しいタイプの楽曲である。

メインリフが与えた影響も大きそうではあるが、似ているリフと言う意味では、中間部の導入となるクラシカルなフレーズである。

このリフは「芳一受難」の、「こっちへ来い」の部分のリフと似ている。全体的なスピード感も、「Symptom of the Universe」を意識したものだったのかもしれない。

Planet Caravan

  • 収録アルバム:『Paranoid』(1970)
  • 似ている人間椅子の曲:月のアペニン山(2019年『新青年』収録)

『Paranoid』に収録された静かな楽曲で、宇宙を旅する様子を歌ったもの。しかしどこか不気味さも漂い、沼地にいるような独特の湿り気を感じさせる。

人間椅子の「月のアペニン山」は、12弦ギターの美しい響きが印象的な曲で、コード進行が「Planet Caravan」に似ていたからか、アレンジをあえて寄せているのが分かる。

ベースラインとパーカッションを使ったリズムは、一聴して「Planet Caravan」と分かるほど、”あえて”やっているのが分かる。

Supernaut

  • 収録アルバム:『Black Sabbath Vol.4』(1972)
  • 似ている人間椅子の曲:無情のスキャット(2019年『新青年』収録)

ハードなリフで押していくシンプルな楽曲で、テンションの高さを感じる曲である。メインのリフの間に、うねるようにベースが動く部分があるのが分かる。

ここはフレットを無視して、スライドさせて弾くことで、独特のうねりが出来上がる。この部分に着目してリフに取り入れたのが「無情のスキャット」のメインリフである。

和音を刻んでいるだけに見えて、このスライドが入ることで、土着的なグルーヴが生み出される。和嶋氏は「Supernaut」のリフから「無情のスキャット」を思いついたことを公言している。

Who Are You?

  • 収録アルバム:『Sabbath Bloody Sabbath』(1973)
  • 似ている人間椅子の曲:地獄変(2013年『萬燈籠』収録)

『Sabbath Bloody Sabbath』に収録されている楽曲で、シンセサイザーの不思議な音色でリフを奏でる不気味な楽曲である。

中間部にはメロディアスなシンセとピアノが絡む部分があり、美しさも感じさせる楽曲に仕上がっている。

非常にマニアックであるが、この中間部の終わりのフレーズと「地獄変」のメインリフがよく似ている。意識したものではないと思われるが、偶然似てしまったのだろう。

Iron Man

  • 収録アルバム:『Paranoid』(1970)
  • 似ている人間椅子の曲:サバス・スラッシュ・サバス(1999年『二十世紀葬送曲』収録)

「Paranoid」と並んでBlack Sabbathの代表曲の1つである。リフと同じメロディを歌う、という部分が強調されがちだが、後半の展開がカッコいい曲だったりする。

冒頭にはアームを使ったようなフレーズがあるが、これはアームではなくナットとペグの辺りを押すことで音程を上下させるやり方で弾いている。

この部分を「サバス・スラッシュ・サバス」のアウトロでそのまま用いている。かつて”ナンセンスソング”と言っていたおふざけ曲なので、これは影響と言うよりもパロディである。

Heaven And Hell

  • 収録アルバム:『Heaven and Hell』(1980)
  • 似ている人間椅子の曲:三途の川(2016年『怪談 そして死とエロス』収録)

オジー・オズボーン脱退後にロニー・ジェイムス・ディオが加入して制作された傑作『Heaven and Hell』のタイトル曲。

パワーコードを用いたリフは健在ながら、より勇壮で様式美メタルの雰囲気が漂う楽曲である。基本的にはオジー期のBlack Sabbathに影響を受けた人間椅子だが、鈴木氏はこの時代も聴いているようだ。

「三途の川」のイントロのリフはかなり「Heaven And Hell」に似たものとなっており、実際のところ、この曲に影響を受けて作ったと語られている。

まとめ

今回の記事では、Black Sabbathから人間椅子がどれだけ影響を受けているのか、実際の楽曲を取り上げつつ考察を試みた。

人間椅子の母体となったのは、和嶋慎治・鈴木研一という2人の同級生であり、浪人時代に鈴木氏が送ったBlack sabbathのベストテープから始まったと言っても過言ではない。

2人の音楽的趣味は異なっていたが、Black Sabbathにおいて共通項が見つかったことで、人間椅子と言うバンドの方向性が固まったのである。

今回はBlack Sabbathの音楽的特徴から影響を見出そうとしたが、実際のところ、もっと音楽的な好みの奥の方にある何か、ということなのかもしれない。

Black Sabbathと言う土台があり、そこに様々なエッセンスを取り込み、オリジナルな要素も当然加えながら、人間椅子の音楽は生み出されている。

おそらく今回取り上げた以外にも、この曲のこの部分が~とか、この曲と似ている、など様々に共通点を感じる人がいることだろう。

Black Sabbathの、そして人間椅子の音楽のどこに感動しているか、によっても、共通項の見え方は異なって来るのではないか。

ぜひマニアックに両バンドの良さを掘り下げてみるのをおすすめしたい。

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