【アルバムレビュー】3776 – 『歳時記』(2019)~攻略と考察~

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アイドル
画像出典:OTOTOY 『歳時記・第四巻』

今回取り上げるのは、富士山のご当地アイドル3776の問題作にして大傑作『歳時記』である。

以前、当ブログの記事でもさらっと取り上げたが、改めてしっかり取り上げようと思い至った次第である。

『歳時記』はアルバム1枚を通じて1年を表現してしまう大胆な実験を行っており、一度聴いただけではその世界観を味わい尽くすことが難しい。

そこでこの記事では、『歳時記』の仕掛けを攻略するとともに、この作品に込められたテーマを好き勝手に考察してみようと思う。

アルバムの”攻略と考察”という、かなり珍しい記事となっている点もお楽しみいただきたい。

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3776について

最初に、3776というグループについて少し紹介しておこう。

3776は富士山のご当地アイドルであり、現在のメンバーは井出ちよの、1名のみである。

グループの歴史とともに、『歳時記』の前作にあたる『3776を聴かない理由があるとすれば』について触れている。

3776の歴史

もともとプロデューサーの石田彰氏が全国の市役所にご当地アイドルのプロデューサーとしての売り込みを行ったところ、富士宮市が「市制70周年事業/わが街のAKB」を構想しており、プロデューサーとなったところから始まった。

2012年にできたのがTEAM MIIと言う24名からなるグループだが、1年間限定であった。活動を引き継ぐ形で7名で3776となり、2013年に正式にデビューした(これを3776Season#1と呼ぶ)

その後もメンバーの加入・脱退があり、研修生チーム3770の井出ちよのが加入し、3776Season#2として活動を行う。

2014年8月には井出ちよののソロユニットとして3776Season#3となる。同時に石田彰氏がギター、井出ちよの氏がループマシンを使って即興演奏を行う3776Extendedの活動も開始。

2015年にはアルバム『3776を聴かない理由があるとすれば』がリリースされる。

2017年には新メンバーの加入による3776 Season#4が開始され、広瀬愛菜が山梨担当として活動。同タイトルで曲調の異なる楽曲を歌うリンクアイドルとして活動を行っていた。

広瀬愛菜が山梨担当を退任したことで、3776 Season#4は休止している。

一回読んだだけでは、なかなか活動の全貌がつかめないかもしれない。

確実に言えることは、いくつかの形態を同時並行し、それぞれ異なった楽曲・パフォーマンスのスタイルを持つアイドル・ユニットと言うことだ。

その中で、井出ちよののソロユニットとしての、3776Season#3の活動が現在は中心である。

前作『3776を聴かない理由があるとすれば』について

今回取り上げる『歳時記』は、3776 Season#3、つまり井出ちよののソロユニットとしての活動によるアルバムである。

なお3776 Season#3としては『3776を聴かない理由があるとすれば』が1作目のアルバムである。『歳時記』に進む前に、1作目の特徴に触れておこう。

全てオリジナル楽曲(一部TEAM MIIのセルフカバー)で、間にIntervalが入り、井出ちよのの語りが入っている。『3776を聴かない理由があるとすれば』は、井出ちよのがナビゲーターとなって、富士山を登っていく設定となっている。1秒で1メートル登る計算で、収録時間が3776秒となっている。

楽曲はニューウェイブオルタナティブロックを感じさせるものが多く、これまでのアイドルにはない、かなり異色の作品となった。

アイドルの音楽は、いわゆる様式美的なジャンルとの相性が良く、ロックの中ではメタルの方が融合しやすいが、あえてその対角にあるジャンルを融合させたことはかなり革新的であった。

評論家やミュージシャンから高い評価を得ており、Base Ball Bear小出祐介氏やRHYMESTER宇多丸氏などがその年のベストアルバムと語っている。

そんな話題性のある前作だけに、『歳時記』は大きな期待の中、見事に期待以上のとんでもない作品として発表されたのである。

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アルバム『歳時記』の攻略

それでは、ここから3776の名盤『歳時記』のコンセプトやルールを説明していこう。

ただし、このアルバムを聴いたことがない人は、まず一度聴いてみてほしい。この作品は事前知識なくても、楽しむことができる作品だ。

ゲームは何も見ないでプレイした後で攻略本を見るのが楽しいのと同じである。ここでは、『歳時記』のコンセプトとルール・仕組みを掘り下げていこうと思う。

アルバムの基本情報

アルバムの基本情報は以下の通りである。

3776 – 『歳時記』

no.タイトル時間
1.睦月一拍子へ調6:12
2.如月二拍子嬰へ調5:48
3.弥生三拍子ト調6:12
4.卯月四拍子嬰ト調6:00
5.皐月五拍子イ調6:12
6.水無月六拍子嬰イ調6:00
7.文月七拍子ロ調6:12
8.葉月八拍子ハ調6:12
9.長月九拍子嬰ハ調6:00
10.神無月十拍子二調6:12
11.霜月十一拍子嬰二調6:00
12.師走十二拍子ホ調6:12
 合計時間73:12
  • 発売日:2019年8月28日
  • 作詞・作曲:石田彰、わらべうた
  • 4巻にわたってシングル(CD-R)および配信で発表してきた歳時記シリーズの集大成。オリジナル楽曲に加えて、わらべうたがアレンジされて収録されている。
  • アルバム全体は途切れることなく、DJミックスのような作品である。

アルバムのコンセプト

『歳時記』は富士山を取り巻く四季や年中行事について、順に1年間を追いかけて紹介するアルバムである。

「歳時記」という言葉は、四季の事物や年中行事などをまとめた書物を指す。このアルバムは、富士山を中心にして1年間の四季や行事を順に紹介していくものである。

そして、この作品は富士山視点の時間感覚でアルバムが進んでいく。

この時点では何のことかわからないかもしれない。前作『3776を聴かない理由があるとすれば』が富士山の”高さ”を表現したとすれば、今作は”時間”を表現している。

それでは富士山視点の”時間”とは何か?それを表現するための仕掛けやルールを次の項で解説する。

アルバムのルール・仕組み

”時間”を表現する本作『歳時記』には驚くべき仕掛けとルールが設定されている。1枚のアルバムでここまでルールで縛って作れるのか?と思わせるような内容である。

発売前後に公式に発表された内容をもとに、解説を加えてみた。

1秒で2時間進む設定、1年間366日を73分12秒

アルバムを聴いてすぐにわかることだが、「子、丑…」と1秒ごとにカウントする声が入っている。これが意味するところは、アルバムのブックレット1ページ目の時計のような絵がヒントとなっている。

これは近代以前に使われた、十二時辰と呼ばれる時間の数え方である。これは1日を12で分けて2時間ずつで数える方法である。

日本では「子の刻」などと言われるが、2時間ずつで12の干支をめぐると24時間経過する計算になる。

『歳時記』では、1秒ごとに「子、丑…」とカウントすることで、12秒で1日が経過する設定になっている。1か月30日の月であれば、12秒×30=360秒で1か月が過ぎることになる。

そのため、1か月が30日の月の曲、たとえば「卯月四拍子嬰ト調」は360秒となっている。31日の月「睦月一拍子へ調」は12秒×31=372秒で、2月はうるう年として12秒×29=348秒である。

そしてすべての秒数を足すと、
360×4+372×7+348×1=4392秒=73分12秒となる

この仕組みは、アルバムの帯にそれとなく書かれている。

「2時間が1秒? 富士山にとっては、そのくらいの感覚なんです。」

「富士山を構成する様々なもの。そんな様々なものの気持ちになって、富士山ご当地アイドルが1年366日を73分12秒でお届けします」

なおCDでは、12か月に分けた、12曲収録のアルバムとなっている。そして、1曲の中に複数の楽曲が含まれるような形になっている。

そのため、アルバムの12曲の曲目(「睦月一拍子へ調」など)と、その中に含まれる各楽曲のタイトル(「正月はええもんだ」など)が別に存在することになる。

各楽曲のタイトルは、歌詞ブックレットを見なければ確認することができない。

さらに細かいところでは、日付をカウントする中で二十四節気の日に効果音が入っている。この効果音が何であるのかを当てるキャンペーンがオフィシャルに行われた。

また時間のカウントは1度録音したものを繰り返しているが、日付については楽曲の拍によって言い回しが異なるため、366日全て1日ずつ収録したらしい。

各月の数字の拍数を必ず含める

『歳時記』の大きなルールとして、次に拍数がある。

各曲のタイトルには「◯拍子」と書かれており、これは月の数字と一致している。そして各曲の中に、必ずその拍数の楽曲を含めることをルールとして課している。

たとえば、「皐月五拍子イ調」であれば、5拍子のパートが必ず入っていなければならない。一般的な楽曲には偶数の拍数が用いられ、奇数拍は難解な印象を与えてしまう。

当然ずっと5拍子が続く訳ではなく、さりげなく忍び込んでいる点が面白い。

いかにその拍数を入れ込んでいるのか、後の各楽曲紹介の項で紹介したい。

月ごとに必ず転調する

『歳時記』には、もう1つのルールがある。それは、月がかわるごとに、必ず転調することである。

タイトルには「嬰へ調」など、その楽曲の調が指定されている。これも楽曲の中に、必ずこのキーを含めると言うものである。

このルールも、拍数と同様に、楽曲の間中ずっとその調である訳ではなく、曲の中でも調は変化している。あくまで指定された調の部分が入っている、ということである。

なおシングルバージョンではキーを意識せずに作っていたため、本作ではキーを調整せざるを得なかったそうである。

各楽曲の紹介

ここまでのルールを押さえつつ、各楽曲がどのように進んでいくのか解説していこう。

主な解説ポイントは以下の通りである。

  • 12曲ごとの中に、どんな曲が含まれているのかを全て書いている。
  • 指定された拍数・調が使われている部分を指摘している。
  • その他、特徴的な部分・聴きどころ等を補足している。

睦月一拍子へ調(以下、ギターコードを記載:F)

・正月はええもんだ

シングル『歳時記・第一巻』に収録で、キーも同じで、冒頭部分はFmである。冒頭部分は1拍子である。

井出氏1人による重厚なコーラスワークは、わらべうたながらクラシックのようであり、QUEENのようでもある。アカペラからギターのカッティングが入るなど、展開も非常に凝っている。

・雪やコンコン

非常にプログレッシブなリズム音とともに、次の曲に移る。

如月二拍子嬰へ調(F#)

・雪やコンコン(~前から続き)

前曲から続いているが、転調して冒頭はF#メジャーになっている。

・鬼は外

「雪やコンコン」と同じトラックで、挟まれるような形になっている。「さくさく、しんしん」などの擬音語が入っている。

・2037年のバレンタイン(オリジナル)

シングル『歳時記・第三巻』に収録の楽曲。シングルバージョンより半音下げている。独特なコード進行のAメロ、Bメロから王道のサビの流れが心地よい。

Aメロ部分を2拍子と捉えれば良いのだろうか。「20◯◯年も」の歌のまま次の曲へと引き継がれる。

弥生三拍子ト調(G)

全編を通じて3拍子のリズムである。

・つくし何の子

「2037年のバレンタイン」のトラックが続く中で、3拍子のリズムで歌われる。

・しゅんみん(オリジナル)(キーはGメジャー)

アコースティックギターをメインとした、ゆったりした曲で「弥生三拍子ト調」の大部分を占める。後にシングル『歳時記・第五巻』に収録された。

・さくらさくら

ベース音とともに、「さくらさくら」に切り替わる。もともと和音階の楽曲だが、長調のメロディに変更されている。

シングル『歳時記・第三巻』に収録されているバージョンとはリズムトラックが異なる。

卯月四拍子嬰ト調(G#)

・さくらさくら(~前から続き)

3拍子から4拍子へ、そして短調のメロディでの「さくらさくら」に変わる。

・八十八夜(オリジナル)

Aメロのキーは「さくらさくら」を引き継ぎながら、サビでルール通りにG#のキーを用いている。シングル『歳時記・第二巻』に収録されており、キーは半音下げられている。

皐月五拍子イ調(A)

・つんばな

前曲の終わりのベースリフが導入となって、5拍子のリフでスタートする。

・蛙の目玉

アコースティックギター・笛の音色が加わり、華やかになる。「いざやいざや」の掛け声が導入的に入っている。

・さつきうた(オリジナル)

アコースティックギターによる非常に短い曲。ここから明確にキーはAとなっている。

全体的にテンションの高い「皐月五拍子イ調」の中で、緩急がつけられている。

・田植え舞唄(抜粋)

歌の部分の音声はメインではなく、米を使った料理の名前を叫ぶ部分がフューチャーされている。導入部のベースリフは「神無月十拍子二調」「霜月十一拍子嬰二調」にも登場する。

・北駿の田植え唄

同じトラックをベースにしながら、「田植え舞唄(抜粋)」に挟まれる形で歌われる。

・ほたる来い

「北駿の田植え唄」が流れる中で、プログレッシブな演奏で始まる。時間のカウント「申、酉、戌、亥」と歌がシンクロする部分がある。

シングル『歳時記・第二巻』に収録されており、キー変更はなし。

水無月六拍子嬰イ調(A#)

・ほたる来い(~前から続き)

全編6拍子である。井出氏1人によるコーラスが重ねられている。

・まいまい

ここでキーがA#となる。Maj7を使った奥行きのあるコード進行だが、ややサイケデリックに聞こえる部分もある。

・雨々やんどくれ

「まいまい」と同じトラックのままである。「しとしと ざざ…」などの擬声語が聴きとれる。

文月七拍子ロ調(B)

・雨々やんどくれ(~前から続き)

ここでキーはBに転調し、リズムは7拍子になる。リズミカルでありつつ7拍子であるため、日付のカウントや歌が裏拍となったりかなり難しい。

「ゴロゴロ ザバーン」など擬声語では雨がさらに強くなっている様子。

・リピーター(オリジナル)

キーはBのままである。シングル『歳時記・第四巻』に収録され、キーはシングルバージョンから半音上げられている。

葉月八拍子ハ調(C)

・盆唄音頭

シングル『歳時記・第一巻』に収録されており、キーはDからルール通りのCに下げられている。随所に入っている合いの手はシングルバージョンと同じ。

・宿題(オリジナル)

非常に短い楽曲。8拍子となり、一気にスピーディーな展開になっていく。

・お月さんいくつ

手数の多いリズムトラックと、次の「長月九拍子嬰ハ調」の導入としてピアノの音が入っている。ピアノのキーが次の九月のキーと推移するところが見どころ。

長月九拍子嬰ハ調(C#)

・うさぎうさぎ

「うさぎうさぎ」が9拍子と言う斬新な展開である。あえて1拍開けるアレンジがかっこいい。

キーはC#のマイナーである。

・月の光(オリジナル)

「うさぎうさぎ」と同じトラックを使いながら、キーはC#のメジャーになる。「うさぎうさぎ」が間に入れ込まれている。

シングル『歳時記・第五巻』に収録された。

神無月十拍子二調(D)

・まなこ雲(オリジナル)

冒頭部分で10拍子のベースリフから始まる。メロディはポップな曲である。

キーはルール通りのDメジャーとなっている。シングル『歳時記・第五巻』に収録され、その際のキーはD#となった。

・かりかり渡れ(10拍子)

「まなこ雲」の間に挿入されている。ここは10拍子になっている。

・とんびとんび(10拍子)

「まなこ雲」の直後に挿入されており、ここでも10拍子となっている。次の「霜月十一拍子嬰二調」のベースとなるトラックが入れられている。

霜月十一拍子嬰二調(D#)

・秋祭り(オリジナル)

「神無月十拍子二調」の終わりからそのまま続く形で始まる。シングル『歳時記・第四巻』に《No Rice, No Life Mix》の形で収録されている。

・十日夜のわら鉄砲

「秋祭り」の間に挿入されている。

・亥の子亥の子

「秋祭り」の間に挿入されている。

・しろっこ

11拍子のベースリフから始まっている。キーはD#が用いられている。

「ぴゅーぴゅー」の擬声語が入っている。

・大さぶ小さぶ

「しろっこ」と同じトラックが用いられている。

師走十二拍子ホ調(E)

・大さぶ小さぶ(~前から続き)

12拍子、キーはEにルール通りに移行している。「ひゅーひゅー」などの擬声語が入り混じる。

・メリークリスマス&ハッピーニューイヤー(オリジナル)

シングル『歳時記・第一巻』に収録。キーの変更は行われていない。

最後にエンディング部分が挿入されており、ここも12拍子となっている。カウントが終わると同時にアルバムも終了するようになっている。

アルバム『歳時記』の考察

ここまでは『歳時記』の攻略として、全体を通じての解説を行ってきた。ここからは、筆者がアルバムを通じて感じたことを考察して述べている。

1年を集約させた圧倒的な情報量と聴き方の自由度

1年と言う時間を、アルバム1枚の中に集約すべく、多くのルールを課して物凄い情報量を詰め込んだ作品である。

リズムや調といった音楽上の変化を月の変化として使い、刻一刻と進む秒数を換算することで1年が疑似的に進むと言う仕組みだった。

この仕組みの中で、目まぐるしく楽曲が移り変わり、演奏と歌、効果音と時間・日数のカウントが入り乱れて聞こえてくる。

じっくり耳を傾けると混乱しそうなほどだが、意識せずに聴けば、BGMとして心地よく流れていくアルバムでもあるのだ。

日常に目を向ければ、私たちが経験する1年と言う時間は、まさにこのアルバムのようなものではないか。

私たちの日常は次々やって来る問題を解決させることに忙しいが、1年を振り返ってみると取り立てて大きな出来事もなかった、ということが往々にしてある。

1時間、1日と短いスパンでみれば慌ただしい時間も、1年と言う大きなスパンで見ればゆったりと進んでいるようにも思えてくる。

『歳時記』は、そんな時間の感覚を見事に表現しているアルバムではないかと思う。結果的には、いろいろな楽しみ方の出来るアルバムとなっているとも言える。

1曲ずつ細かいルールや変化を確かめるのも良し、何も考えずに聞き流すのも良し。時間の使い方は人それぞれであり、アルバム自体の聴き方に自由度を持たせることでそれを体現しているとも言える。

時の流れを感じさせ、忘れさせる工夫

前項と関連する内容であるが、この作品は時の流れを感じさせる工夫がなされている。

それは、時間と日付のカウントである。加えて言えば、楽曲ごとに曲が区切れずにノンストップであることも、ずっと同じ時間が流れていることを感じさせる。

しかしカウントは聞こえる部分と、あえて消している部分がある。歌のメロディが入っている箇所などは、カウントの声はほとんど聞こえなくなっている。

これも私たちが日常的に経験することである。時計を見ていれば今の時刻を意識するが、何かに没頭している時は時刻を感じることはない。

この作品でも、そんな”時間を忘れる瞬間”がうまく表現されているように感じた。

アルバムを聴いている最中に、思わず「もう九月か」などと感じる瞬間がある。時間はあっという間に過ぎ、聞き逃してしまった部分があると、また始めから聴き直そうと1年が繰り返されるのである。

ハレ(祭り)よりケ(日常)こそ奥深い

この作品をハレ(祭り)と、(日常)の文脈から考えても面白いかもしれない。

ハレとケの考え方は民俗学文化人類学で用いられる。ハレは非日常の行事であり、ケは日常の生活のことを指している。

『歳時記』の中でも楽曲的にハレとケがあるように感じる。ハレはオリジナル曲を中心に歌メロのはっきりとした楽曲で、ケは短いわらべ歌などの部分と考えてはどうか。

ハレにあたる楽曲は華やかで耳にも残りやすいお祭りのようであり、各楽曲の中でも中心的なものだ。一方でわらべ歌は意識的に聴かなければ聞き流してしまう部分でもあり、まるで日常のケのようだ。

しかし面白いことに、わらべ歌の部分の方が音楽的に複雑なことを行っている箇所が多い。ルールに従った拍子や調を用いているのはわらべ歌の部分に多い。

深読みすれば、日常にこそ奥深く面白いことが潜んでいることを示唆しているようにも思う。目を向けなければ過ぎてしまう日常にこそ、大切な気づきが隠れているかもしれない。

『歳時記』でも花形のオリジナル曲以外の部分にこそ、コンセプトを表す大事な部分がたくさん隠れている。逆にハレの部分は人目を引く役割はあるものの、実はシンプルでわかりやすい。

前作『3776を聴かない理由があるとすれば』はメインの楽曲がクセの強い作品だった。しかし『歳時記』のオリジナル曲は前作よりもわかりやすく作られている。

これは他のわらべ歌の部分が複雑になることを見越して、対比的に歌モノの楽曲はあえてシンプルに作られたのではないかと思った。

意図したのものかわからないが、1年を表現する上でハレとケがバランス良く配置された作品であると言えるだろう。

作った意図を議論させる余白

勝手に『歳時記』で表現された音楽をあれこれ考察してきた。しかしこの考察も全く的外れなものである可能性は大いにある

そもそも、解釈を1つに限定しない寛容さこそ、芸術作品の重要な点である。その寛容さは、作られた意図がわからないが、ひたすらに作り込まれた作品であるからこそ生まれてくる。

聴き手からすれば、なぜここまで多くのルールを課して『歳時記』が作られたのか、その本当の答えを知ることは永遠にないし、知る必要もないだろう。

多くのルールの下でコンセプトを表現しきった傑作『歳時記』というアルバムが世に放たれ、その作品を聴き手は受け取った。

その瞬間から、聴き手は自由にこの作品を解釈し、楽しむことができる。ただ作られた意図や作品に込められた大量の情報も、すべてを理解することはできない。

そのわからなさこそ、私たちが自由に解釈できる余白であり、作り込まれた作品だけにその余白も広大なものである。

芸術作品は、そこに意味があろうとなかろうと、それが表現される営みこそが重要であり、『歳時記』はまさにそんな凄まじいコンセプトの表現に成功した作品として存在するのである。

まとめ

3776のアルバム『歳時記』について、攻略と考察を述べてきた。改めて本作を聴き直すと、そのたびに新たな発見があり、恐るべき名盤が生まれたことに喜びを感じている。

『歳時記』を聴いて、時間と音楽について考えを巡らせた。

人は時間の流れの中で生きている。その流れを人の手で止めることはできない。

だからこそ限られた時間を効率良く使いたい、豊かな時間の使い方とは何か、等々時間に関する議論はずっと続いている。

音楽を聴くこともまた、人生の時間の一部を使う行為に他ならない。そして音楽は限られた時間の中で、一瞬の短い時間永遠のような長い時間をも自在に描き出すことができる。

音楽を聴くことは、自分の今の人生の時間とは異なる時間を感じられる営みとも言える。

『歳時記』は聴き手の人生の時間と、アルバムの中の世界の時間クロスする大変面白い試みだった。

音楽の可能性を感じずにはいられない名作であり、まだ聴いていない人の耳に届くことを願っている。

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コメント

  1. aki より:

    憲法改正を急ぐ理由を知って下さい
    管理人様、お邪魔致します。
    改憲の議論が進まぬ中、中国が連日 日本の領海侵犯を強化し、尖閣奪取を狙っている現状を、中国に侵略されたチベットや、今の香港等の姿と重ねて多くの皆様に今どうか知って頂きたく思い、恐れながら書き込ませて頂きました。

    戦後日本を弱体化させる為、アメリカが作成した日本国憲法施行後、韓国が竹島を不法占拠し、その際日本の漁船を機関銃で襲撃し、多くの船員が死傷しました。

    北朝鮮は国民を拉致し、日本全土を射程に入れるミサイルを数百発配備しており、尖閣には連日中国艦艇が侵犯する現状でも、憲法の縛りで日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ません。

    現在まで自衛隊と米軍の前に、中国や北朝鮮の侵攻は抑えられて来ましたが、米軍がいつまでも守ってくれる保証は無く、
    時の政権により米軍が撤退してしまえば、攻撃されても憲法により敵基地攻撃能力が無い自衛隊のみでは、
    日本はチベットと同じ道を辿りかねません。

    9条の様に非武装中立を宣言しても、平和的で軍事力の低かったチベットウイグルを武力で侵略虐殺し、現在進行形で覇権拡大を行い「日本の領海を力で取る」と明言している中国や

    核ミサイルで日本を狙う北朝鮮、内部工作を行う韓国が沖縄尖閣等から侵略の触手を進めているからこそ、GHQの画策により戦う手足をもがれた現憲法を改正し、
    自立した戦力と抑止力を持たなければ国民の命と領土は守れないという事を
    中韓側に立ち国民を煽動する野党やメディアの姿と共に 一人でも多くの方に知って頂きたいと切に思い貼らせて頂きます。
    https://pachitou.com
    長文、大変申し訳ありません。

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