当ブログでは、人間椅子・エレファントカシマシの記事が多くなっている。記事が多い理由は、筆者が好きなミュージシャンであるからに他ならない。
筆者が好きなミュージシャンで、実はもう1人外せない人がいる。それが浜田省吾氏である。
今回は浜田省吾氏の音楽活動について紹介したい。
浜田氏と言えば「悲しみは雪のように」等、世間一般的には”少し前に流行った歌手”というイメージがあるかもしれない。
近年の浜田氏の活動は、表立ってはいないものの、実はとてもアツいことになっている。浜田氏自身の過去の作品を振り返り、改めて楽しもうと言う企画が進行中である。
今回の記事では、デビューからの活動を振り返るとともに、2015年以降の動向を詳しく紹介する。かつて浜省ファンだった人、最近の活動を追っていない人には必見の内容だ。
2010年代前半までの浜田省吾の活動を振り返る
最初に2010年代前半ごろまでの浜田氏の活動をざっくり振り返りたい。
浜田省吾氏は1952年広島県生まれのシンガーソングライターである。吉田拓郎氏のバックバンドをしていた愛奴のドラマーとしてデビューしている。
メンバー間の音楽性の違いなどから愛奴から脱退し、1976年1stアルバム『生まれたところを遠く離れて』とシングル「路地裏の少年」でソロデビューした。
1stアルバムこそロックを志向していたが、レコード会社からはポップなソングライターとして期待される。
2nd『LOVE TRAIN』~4th『MIND SCREEN』をリリースするも、セールスにも恵まれなかった。
1979年に日清カップヌードルのCMソングとして書いたシングル「風を感じて」が初のヒットとなる。コンサートホールでのライブも満員を記録することもあった。
1980年の6th『Home Bound』はロック志向の作品となり、初の海外レコーディングとなった。
TOTOのスティーブ・ルカサーがギターで参加するなど、浜田氏やギターの町支寛二氏にとって大きな刺激となった。
1982年には初の日本武道館公演を行い、これ以降のコンサートツアーが「ON THE ROAD」の名称となった。1983年には音楽事務所「ロード&スカイ」を設立し、独立している。
1984年の『DOWN BY THE MAINSTREET』、1986年の『J.BOY』はそれぞれオリコンチャート2位、1位とヒットとなる。
1992年にテレビドラマ「愛という名のもとに」の主題歌として発売されたシングル「悲しみは雪のように」(1981年リリース曲のリメイク)が、初のオリコン・シングルチャート第1位を獲得。
名実ともにトップアーティストとなるも、90年代は自身の活動に葛藤を抱え、内省的な作品が多くなっている。
1995年発売のシングル「我が心のマリア」のカップリング曲「恋は魔法さ」は神戸を舞台とした楽曲で、阪神・淡路大震災への復興のため印税収入を全額寄付した。
1998年から2001年にかけて4年がかりとなる「ON THE ROAD 2001」を敢行。また2000年にはデビュー25周年を記念し、初のベスト盤『The History of Shogo Hamada “Since1975”』をリリースしている。
2005年には4年半ぶりのアルバム『My First Love』をリリースした。2006年にはソロデビュー30周年を記念し、リメイク音源を含むベスト盤『The Best of Shogo Hamada vol.1』『vol.2』を同時リリース。
2011年にはベスト盤シリーズの完結編『The Best of Shogo Hamada vol.3 The Last Weekend』をリリースし、約5年半ぶりのツアー「ON THE ROAD 2011 “The Last Weekend”」を開催。
アルバム『Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター』の発売
ファンクラブ限定ライブも2009年・2013年と開催されている。
2015年に約10年ぶりとなるアルバム『Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター』がリリースされている。
前作『My First Love』が浜田氏らしいロックンロールのアルバムとすれば、本作はメロディメーカーとしての浜田氏の幅広さを感じられる。本作は過去最大曲数の17曲で、収録時間も75分を超える。
”旅するソングライター”というタイトルの通り、実に多様な音楽性を見せる名盤である。
レゲエ調の「旅するソングライター」、ダンスミュージックの「夜はこれから」など、これまでにない曲調も取り入れている。
ポップスのアプローチのみでなく、後半の「アジアの風 青空 祈り」3部作は、平和に向けた重厚なメッセージを込めた展開にも驚く。
本作は浜田氏がこれまで取り組んできた音楽性を、1枚の中で楽しめる作品である。
職業作曲家的に良質なポップスを作っていた70年代、シンプルなロックンロールを歌うようになった80年代。内省的な楽曲が増えた90年代以降のあらゆる年代の浜田氏を感じることができる。
さらに、多様な音楽性を取り込んで、新しい側面も見せる作品となった。1つの集大成とも言える作品であり、初めて浜田氏の作品を聴く人にもおすすめできるアルバムだ。
FC限定ライブにおける過去の作品を振り返るライブ企画(100% FAN FUN FAN)
冒頭に述べたアツい企画がこれである。
2016年の「ON THE ROAD 2016 ”Journey of a Songwriter”since 1976」以降は、ファンクラブ限定でツアーを行っている。
同年にはファンクラブ限定ツアー「100% FAN FUN FAN 2017 “The Moonlight Cats Radio Show” Welcome back to The 60’s」を行い、ミニアルバム収録のカバー楽曲と浜田氏のオリジナルの2部構成のライブを行った。
きっかけとしては、2016年のツアーに参加しているメンバーで、何か音源を作れないかと言うことだったらしい。
共通して60年代の洋楽が好きであることから、2017年にカバーミニアルバム『The Moonlight Cats Radio Show Vol.1』『Vol.2』がリリースされた。
ここからファンクラブ限定ツアーが定例化していった。
100% FAN FUN FAN 2018 “Journey of a Songwriter” since 1975 Welcome back to The 70’s “君が人生の時 ~ Time of Your Life”

翌年2018年から、浜田氏の過去の作品を振り返り、アルバムの時期で区切った楽曲のみから選曲されたライブを行っている。
2018年は「100% FAN FUN FAN 2018 “Journey of a Songwriter” since 1975 Welcome back to The 70’s “君が人生の時 ~ Time of Your Life”」と題し、70年代に発表された楽曲限定でライブを行った。
アルバムとしては、1st『生まれたところを遠く離れて』(1976年)、2nd『LOVE TRAIN』(1977年)、3rd『Illumination』(1978年)、4th『MIND SCREEN』(1979年)、5th『君が人生の時…』(1979年)の5枚である。
なお、アルバム収録は『J.BOY』(1986年)だが、70年代に作られた「19のままさ」「遠くへ」なども演奏されている。
このライブは2部編成で、第1部は浜田氏1人による弾き語り、町支氏のギターと2人で演奏するなど、デビュー当時のライブスタイルを模したものだった。
さらにファンと一緒に歌うコーナーもあり、「19のままさ」「路地裏の少年」が、歌詞の字幕も表示され、ファンクラブ限定ライブならではの特別な空間となった。
第2部ではバンド編成のライブであり、普段のライブではあまり演奏されない「LOVE TRAIN」「子午線」なども演奏されている。
なおツアーに合わせてリメイクシングル「Good Night Angel/Love Train」も発売された。
・セットリスト
no. | タイトル | 収録作品 |
---|---|---|
第1部 | ||
1. | 生まれたところを遠く離れて | 1stアルバム |
2. | あの頃の僕 | 5thシングル |
3. | いつかもうすぐ | 5thアルバム |
4. | 19のままさ | ※12thアルバム |
5. | 遠くへ | ※12thアルバム |
6. | 朝からごきげん | 1stアルバム |
7. | ※※君に会うまでは/散歩道 | 2ndアルバム/3rdアルバム |
8. | 君の微笑 | 2ndアルバム |
9. | 路地裏の少年 | 1stアルバム |
第2部 | ||
10. | 雨の日のささやき | 2ndアルバム |
11. | 恋に気づいて | 2ndアルバム |
12. | 悲しみ深すぎて | 2ndアルバム |
13. | LOVE TRAIN | 2ndアルバム |
14. | 子午線 | 4thアルバム |
15. | 4年目の秋 | 5thアルバム |
16. | ミス・ロンリー・ハート | 5thアルバム |
17. | いつわりの日々 | 4thアルバム |
18. | 風を感じて | 5thアルバム |
19. | 涙あふれて | 3rdアルバム |
20. | 今夜はごきげん | 5thアルバム |
21. | 青春のヴィジョン | 5thアルバム |
22. | 君が人生の時… | 5thアルバム |
En.1 | ||
23. | Good Night Angel | 4thアルバム |
En.2 | ||
24. | 行かないで | 2ndアルバム |
25. | ラスト・ダンス | 2ndアルバム |
※12th『J.BOY』に収録されているが、作られたのは70年代
※※「散歩道」は、一部会場でのみ演奏
100% FAN FUN FAN 2019 ”Journey of a Songwriter” since 1975 Welcome back to The 80’s Part-1 終りなき疾走 ~ ALL FOR RUN

続く2019年には、80年代の前半のアルバムから選曲されたツアー「100% FAN FUN FAN 2019 ”Journey of a Songwriter” since 1975 Welcome back to The 80’s Part-1 終りなき疾走 ~ ALL FOR RUN」が開催された。
アルバムとしては、6th『Home Bound』(1980年)、7th『愛の世代の前に』(1981年)、8th『ON THE ROAD』(1982年)、9th『PROMISED LAND ~約束の地』(1982年)の4枚から選曲された。
今回もツアーに先行して、リメイクシングル『凱旋門』がリリースされた。
2018年と同様に2部構成ではあるが、今回はほぼ全編バンド演奏でのシンプルなスタイルだった。先にも述べたように、浜田氏がロック志向のアルバムに方向転換した時期の作品だ。
楽曲も若々しく、大いに盛り上がるライブとなった。
1曲目は代表曲「終わりなき疾走」からスタート。序盤はロックンロールナンバーを立て続けに演奏した。
9th収録のレア曲「さよならスウィート・ホーム」も飛び出し、「愛しい人へ」で休憩へ。
第2部は80年代前半の名曲群からスタート。最初は弾き語りでスタートし、「悲しみは雪のように」ではファンと一緒に歌うコーナーに。
今回のシングルで生まれ変わった「防波堤の上」や2010年の『The Best of Shogo Hamada vol.3 The Last Weekend』でリアレンジされた「マイホームタウン」など、過去の曲も新たな楽曲として楽しめた。
そして終盤「明日なき世代」で「Wow oh oh~」の大合唱となり、「凱旋門」で本編を締めくくった。
アンコールでは「今夜こそ」でメンバー紹介があり、そのまま「土曜の夜と日曜の朝」、そして「ラストショー」で終わった。
ダブルアンコールでは、再び弾き語りスタイルで「家路」をファンとともに歌った。思い入れの深いファンも多い「家路」を会場全体で歌う空間は、贅沢なひと時であり、とても温かい空気に包まれた。
・セットリスト
no. | タイトル | 収録作品 |
---|---|---|
第1部 | ||
1. | 終りなき疾走 | 6thアルバム |
2. | 独立記念日 | 7thアルバム |
3. | 反抗期 | 6thアルバム |
4. | あばずれセブンティーン | 6thアルバム |
5. | 恋に落ちたら | 9thアルバム |
6. | 愛という名のもとに | 7thアルバム |
7. | DJお願い! | 9thアルバム |
8. | バックシート・ラブ | 9thアルバム |
9. | さよならスウィート・ホーム | 9thアルバム |
10. | 愛しい人へ | 9thアルバム |
第2部 | ||
11. | 丘の上の愛 | 6thアルバム |
12. | 悲しみは雪のように | 7thアルバム |
13. | 防波堤の上 | 7thアルバム |
14. | 陽のあたる場所 | 7thアルバム |
15. | OCEAN BEAUTY | 9thアルバム |
16. | マイホームタウン | 9thアルバム |
17. | 東京 | 6thアルバム |
18. | 明日なき世代 | 6thアルバム |
19. | ON THE ROAD | 8thアルバム |
20. | 凱旋門 | 9thアルバム |
En.1 | ||
21. | 今夜こそ | 6thアルバム |
22. | 土曜の夜と日曜の朝 | 7thアルバム |
23. | ラストショー | 7thアルバム |
En.2 | ||
24. | 家路 | 6thアルバム |
そして、2020年には「100% FAN FUN FAN 2020 “Journey of a Songwriter” since 1975 Welcome back to The 80’s Part-2 “DOWN BY THE MAINSTREET”」の開催が予定されていた。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、残念ながら中止となってしまった。なおツアーを記念したシングル『MIRROR / DANCE』はリリースされている。
1984年のアルバム『DOWN BY THE MAINSTREET』からのリメイク作品だ。
40th Anniversary ON THE ROAD 2022 LIVE at 武道館

浜田氏は、2021年にソロデビュー45周年を記念した全国ツアー「ON THE ROAD 2021」を行う予定だった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で、開催が中止となった。
代わりにファンクラブ限定で全国ツアー「Fan Club Concert Tour 2021 Welcome Back to The Rock Show “EVE”」を行うこととしたが、それも状況が改善せずに中止となってしまった。
チャリティーコンサートのために計画されていた日本武道館公演2日間が、別の曲目で行うこととされた。それが「40th Anniversary ON THE ROAD 2022 LIVE at 武道館」である。
その曲目とは、40年前の1982年1月12日に行われた日本武道館公演と同じ曲順で行うと言うものだった。浜田氏にとって意義深い40年前の武道館公演の再現は、大変面白い企画である。
※【浜田省吾】”40th Anniversary ON THE ROAD 2022 LIVE at 武道館”を予習しよう!40年前の武道館公演のセットリストや収録アルバムも全紹介
セットリストは当時のままで、2005年の「初恋」だけ弾き語りで一節歌われる場面もあった。
曲によっては、リメイクされたアレンジや、またこれまで行われた70年代・80年代を振り返るファンクラブコンサートのアレンジを用いており、浜田氏の歴史も辿れるコンサートだった。
そして制約のあるコンサートだったが、”過去を旅する”ような不思議な感覚に包まれた。前に進むのではなく、少し立ち止まるような”ON THE ROAD”となった。
※【ライブレポート】2022年1月7日 浜田省吾”40th Anniversary ON THE ROAD 2022 LIVE at 武道館” – なぜ今、武道館再現セットリストでライブを行ったのか?
・セットリスト
no. | タイトル | 収録作品 |
---|---|---|
SE.1 | IN MY LIFE | The Beatles Cover |
SE.2 | G線上のアリア | メンバー登場 |
1. | 壁にむかって | 41stシングル
リンク
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2. | 明日なき世代 | 39thシングル
リンク
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MC | ||
3. | 青春のヴィジョン | 5thアルバム
リンク
|
4. | 土曜の夜と日曜の朝 | ベストアルバム
リンク
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MC | ||
5. | 愛という名のもとに | ベストアルバム
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|
6. | モダンガール | ベストアルバム
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MC | ||
7. | 君の微笑 | セルフカバーアルバム
リンク
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8. | 悲しみは雪のように | ベストアルバム
リンク
|
MC | ||
9. | いつわりの日々 | セルフカバーアルバム
リンク
|
休憩(君に会うまでは、散歩道、朝のシルエット、丘の上の愛) |
リンク
| |
10. | 路地裏の少年 | 10thアルバム
リンク
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11. | ラストショー | セルフカバーアルバム
リンク
|
MC | ||
12. | 片想い | ベストアルバム
リンク
|
13. | 陽のあたる場所 | ベストアルバム
リンク
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MC | ||
14. | 初恋(1コーラス、弾き語り) |
リンク
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15. | 終りなき疾走 | ベストアルバム
リンク
|
16. | 独立記念日 | 7thアルバム
リンク
|
17. | 反抗期 | 6thアルバム
リンク
|
18. | 東京 | ベストアルバム
リンク
|
MC | ||
19. | 愛の世代の前に | ベストアルバム
リンク
|
En.1 | ||
20. | あばずれセブンティーン | 6thアルバム
リンク
|
21. | HIGH SCHOOL ROCK & ROLL | 1stアルバム
リンク
|
22. | Midnight Blue Train | 35thシングル
リンク
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En.2 | ||
23. | ラストダンス | セルフカバーアルバム
リンク
|
まとめ
2015年以降の浜田省吾氏の活動について、アルバムとファンクラブ限定ツアーの2点からまとめた。
今回のまとめから見えてくることは、浜田氏がこれまでの自身の音楽活動を振り返りながら、新たな音楽を探す旅を続けている、ということだ。
2015年に10年ぶりの新作としてリリースされた『Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター』は、これまでのキャリアと新しい一面が融合した力作となった。
それでいて、決して重厚さはあまり感じられない、ポップで馴染みやすい作品となっている。
また、アルバムで区切った選曲でツアーを行うという試みも、非常に興味深いものとなっている。
浜田氏はツアーの回数自体が減り、ライブそのものが貴重になっている。そして、いざツアーとなると、どうしても代表曲を入れていくとレアな曲を入れるところがなくなってしまう。
今回のように4~5枚のアルバムから選曲することで、ライブではなかなか聴けないものの、思い入れの強い楽曲を聴くことができて嬉しかったファンも多いはずだ。
それぞれの時代ごとの作品のカラーも異なるため、音楽的な変化をたどる意味でも興味深い。
残念ながら2020年のファンクラブ限定ツアーは中止となってしまった。
「The 80’s Part-2」は、80年代後半に大ヒットを飛ばしたアルバム『DOWN BY THE MAINSTREET』や『J.BOY』などを中心に演奏される予定だった。
”浜田省吾”と言えば思いつく代表曲が数多く作られている時期である。もし時期を延期して開催されるのであれば、ぜひファンクラブに入会して見るべき貴重なライブとなるだろう。

※2021年6月23日に発売されたシングル『この新しい朝に』についてまとめた記事
※ソングライター浜田省吾が世代を超えて愛される理由とは? – ”歌の主人公”をめぐる物語の魅力
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