伝説的エモ・バンドAmerican Footballの描くものとその変化 – オリジナルアルバム3作レビュー

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音楽
画像出典:Amazon

今回取り上げるバンドは、”エモ”と呼ばれるジャンルにおいて伝説的なバンドである、American Footballだ。しかしAmerican Footballはその中にあって、独自な音楽性を有するバンドだ。

バンドは1999年に1枚のアルバムを残して活動休止となってしまう。その後、2014年に活動再開し、2枚のアルバムをリリースしている。

今回はAmerican Footballのリリースした3枚のアルバムを通じて、彼らの描くものに迫ってみたい。背景情報を深堀りするよりも、音から見るものを拾い出す作業をしてみようと思う。

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American Footballについて

最初にバイオグラフィー的な内容をまとめておきたい。

American Footballは”エモ”に括られるジャンルであるが、エモの持つ焦燥感や攻撃性とは異なる音楽性を持つ。優しいギターサウンド、穏やかに流れるリズムが特徴的だ。

このような音楽性はいかにして生まれたのか?

オリジナル・メンバーは、マイク・キンセラとスティーヴ・ラモス(Dr)、スティーヴ・ホルムス(G)の3人であった。それぞれ別のバンドを組んでいたメンバーで結成されたバンドである。

マイク・キンセラは兄のティム・キンセラとともに、Cap’n Jazzを組んでいた。ハードコアの流れを組む轟音バンドであり、American Footballの音楽性とは随分違うようにも感じられる。

さらにはキンセラ兄弟を中心に、ポストロックのバンドJoan of ArcがCap’n Jazzの解散を受けて結成された。

American Footballの音楽は、各メンバーが前身となるバンドで演奏してきたジャンルのエッセンスを吸収しつつも、それらとはまた異なるアプローチの音楽を目指したものと思われる。

あえてパンク的な攻撃性は表に出さず、かと言って”癒し”というジャンルには当てはまらないニュートラルでドライなサウンドが魅力である。

その後、前身バンドを経て、1998年にEP、1999年にバンド名をタイトルにした1stフルアルバムがリリースされた。バンドとしては2000年に活動休止し、非常に短い活動期間だった。

しかしその音楽性が高く評価されたため、1枚のアルバムを残したのみだったが、根強い人気を誇るバンドとなっていた。

2014年にバンドはライブ活動を再開し、2016年には2ndアルバム『American Football(LP2)』をリリース。そして2018年には3rdアルバム『American Football(LP3)』が発売されている。

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American Footballが描くものとその変化 – 全アルバムレビュー

これまでリリースされた3枚のアルバムについて、楽曲やサウンドから描こうとしたものをイメージしつつ、レビューを行った。

また1stアルバムからどのように変化を遂げているか、にも着目した。

1st「American Football(LP1)」 (1999)

American Footballを伝説たらしめた名盤中の名盤の1stアルバム。言葉にすると、本質的なものから離れてしまいそうな繊細さを描いた名盤である。

何と言ってもまず1曲目「Never Meant」はファンにとっては印象深いだろう。アルペジオと変拍子、そして広がるようなコードワークが瑞々しいサウンドになっている。

このアルバムでは静寂を表現した曲と、やや衝動性を描いたような曲が混在している。

たとえば2曲目「The Summer Ends」や4曲目「For Sure」はアコースティックで、トランペットが心地良く、静けさを表現したものだ。

一方で3曲目「Honestly?」や6曲目「But The Regrets Are Killing Me」など、オルタナティブロック的なリズム感のある楽曲もみられ、若さも感じられる。

このアルバムで描かれるイメージは、若さゆえの未完成感であるように思う。ややパンク的な要素あり、ジャズやフュージョン的な要素あり、と音楽的にも様々な方向に向いている。

そして描くものとしても、大人びた静けさもあれば、若さゆえの疾走感も感じられる。いくつかの要素が、剥き出しで置かれたような印象があり、その雑多さが心地よさでもあるのかもしれない。

アルバムを通したイメージは、夜から深夜にかけての孤独や不安が表現されているように感じた。有名なジャケット写真も、どこか深夜に1軒だけ付いている明かりのようでもある。

10代、20代の焦りや不安を穏やかにすくい取ったような繊細なアルバムだと感じた。

2nd「American Football」 (2016)

1stアルバムから15年以上の時を経て作られた2ndアルバム。あまりに偉大な唯一のアルバムが基準となるため、2枚目を作るのは難しかったのではないかと思う。

しかし見事に1stの音像を受け継ぎつつ、成熟したアルバムが完成している。そして1stが深夜のイメージなら、2ndは早朝の爽やかな様子を切り取ったように感じられる。

1stで感じられた焦燥感が薄れ、穏やかに流れるような曲が増えた。2曲目の「My Instincts Are the Enemy」は無機質に流れるビートと隙間のある音が、”らしさ”を出しつつ温かみもある。

3曲目の「Home Is Where the Haunt Is」は今まで以上に美しいメロディラインを前面に押し出した楽曲だ。

どちらかと言うとAmerican Footballはボーカルは前に出ることは少なかった印象だが、本作ではマイク・キンセラの優しいボーカルを堪能することができる。

若さゆえの技巧的な部分は、より少なくなって、心地よいギターやボーカルを中心に据えた温かみのある作品へと進化している。尖った部分が減ったものの、年齢を重ねた深みと捉えると納得できる。

深夜から早朝へと時間が進んだような雰囲気のサウンド、ボーカルを押し出したシンプルなアレンジなど、より音楽的な輪郭がはっきりとしたアルバムとなった。

1stアルバムの佇まいは残しつつ、穏やかな余裕を感じられる作品となっていた。

3rd「American Football」 (2019)

2ndアルバムは1stアルバムの音像を受け継ぎつつ、より爽やかな印象を持つ作品だった。3rdアルバムの本作は、2ndの作風を押し広げつつも、また違ったアプローチを垣間見る作品となった。

分かりやすい変更点は、ゲストボーカルの参加である。3人の女性ゲストボーカルが参加しており、楽曲に新しい色付けをしている。

前作でボーカルを押し出した楽曲が増えたが、本作ではさらにそのアプローチを推し進める形となった。

またアレンジ面では、よりアンビエントな雰囲気が強まったようだ。前作まではバンド感の強いサウンドだったが、さらに楽器の数も増えて奥行きのある音作りとなっている。

1曲目の「Silhouettes」では、美しいアルペジオは健在だが、コーラスが充実した奥行きのあるサウンドとなっている。

グロッケンシュピールも使用されており、深みのあるアンビエントな音となっている。

3曲目の「Uncomfortably Numb」はゲストボーカルが参加している。前作の音像を受け継ぎつつ、さらに心地よさを感じさせる音作りになっている。

隙間のある音にはなっているが、ギターだけでなくボーカルも絡み合うようなアレンジとなっており、さらに奥行きのあるハーモニーを構築している

3rdアルバムの本作は、いよいよ1stが持っていた若さから来る焦燥感のような印象はなくなっている。ただし2ndのような爽やかな朝のような印象とも異なり、心の奥に染み込むような深みがある。

そしてサウンド面でも、エモの持つ乾いたギターサウンドから、コーラスワークも巧みな豊潤な音へと変化している。

いわゆる狭義のエモバンドという括ることはできない、American Footballの音楽性の広さを明確に示した作品と捉えることもできるように思う。

特に本作ではポストパンクやネオアコ的な要素や、環境音楽などの影響を色濃く感じられるものとなった。

ジャケットから見える作風の変化とまとめ

ここまでAmerican Footballが発表した3枚のオリジナルアルバムについて、それぞれの特徴とその変化を追ってみた。

エモの文脈で語られる名盤1stアルバムから、より音楽性の幅を広げつつ、豊かな音を求めるかのように作品をリリースしてきたように感じられた。

もともと1つのジャンルにこだわらず、エモやジャズ、フュージョンなど様々なジャンルの融合が特徴の1つだった。それゆえ、活動再開後の作品は、なお音楽性を広げているように思われる。

そんなバンドの変化は、アルバムのジャケットに如実に表れているように思う。

American Footballのアルバムジャケットは、彼らが通っていたイリノイ大学の友だちの友だちの家の写真だと言う。1stは外観、2ndはその家の内部を写したものだった。

そして3rdアルバムはその家があるイリノイ州アーバナの町外れの野原の写真らしい。

建物の外観を写した1stアルバムは、American Footballというバンドの音楽性の全体像をまずは示した作品と言うことになろう。こんな音楽をしようとしている、という見取り図のようなものだ。

そして家の中には何があり、どんな人が住んでいるのか、それを示したのが2ndアルバムである。それゆえか、1st以上に人間味を感じさせる温かい作風となっていたように思う。

続く3rdは家から離れて外の風景を見ている。いよいよAmerican Footballは新たな地平に立ち、より大きなものを取り込みながら変化の時を迎えているようにも思える。

もちろんそれは今までと全く異なるもの、という意味ではない。2ndまででしっかり土台を作ることができたからこそ、より広い視野で作品を作ることができた、と考えるのが良さそうだ。

そうなると、次に続いてリリースされるアルバムがどんな作品になるのか、非常に楽しみなところだ。しかし音楽的にどのように広がろうとも、American Footballは軸が全くぶれていない

常に1stアルバムの”あの家”からスタートした、美しいギターサウンドとメロディ、それらが絶妙に絡み合う楽曲が、常に変わらずある。

そして2020年に予定されていた来日公演が延期となり、現在は2021年に公演が予定されている。まだ先行きは見えないが、ぜひ現在のAmerican Footballを感じたいところだ。

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