人間椅子の快進撃は止まらない。
活動30年を超え、それだけ休止もなく続いていることだけでも凄いことだが、ここ10年ぐらいの間ずっと右肩上がりの状態であることは本当にあり得ないことだ。
最近の人間椅子のブレイクの要因は、こちらにまとめている。 ↓
そしてついに念願の海外公演が2020年2月にドイツ、イギリスで実現した。
世界的な新型コロナウイルスの広がりを見せる本当に直前の時期に初海外ツアーができたことも、奇跡的であり、今の人間椅子は何か持っている。
僕自身、人間椅子は絶対海外で評価されると信じて疑っていなかったので、今回海外進出への一歩を踏み出したことは、本当に喜ばしいことだった。
今回は人間椅子の海外進出に向かうまでの道のりを振り返り、そしてなぜこのタイミングで海外進出ができたのか、その理由を考えてみたい。
人間椅子が海外に行くまで
実は人間椅子の海外進出の話が持ち上がったのは、今回が初めてではなかった。
それは2016年の「怪談 そして死とエロス~リリース記念ワンマンツアー~」の追加公演にて、ロシアのモスクワで行われる『RAMF 2016』と呼ばれる イベントへの出演の話があった。
しかしその後直前になって、「現地で同時期に各種の大きなイベントが重なるため、ロシア政府から重度なセキュリティ強化が求められ対応が難しくなったこと」が理由でキャンセルとなった。
とても残念なことではあったが、海外公演が現実味を帯びてきたことは嬉しかったのを記憶している。
またそれ以外にも海外に向けて、MVの中に英語字幕を取り入れるなど、アピールを続けてきたこともあった。
宇宙からの色
徐々にYouTube動画のコメントには海外の方からのコメントがたくさん来るようになり、いよいよ海外から本格的に評価され始めた…!と感じていた。
そして「無情のスキャット」でいわゆる”バズる”ことになった。
「無情のスキャット」の楽曲の魅力をまとめた記事はこちら ↓
面白かったのは、海外の方の「リアクション動画」がたくさん投稿されたことだった。こうした動画も含め、海外からの反応は今までより大きなものとなった。
↓その声をまとめたサイトもある。
そしてメンバー自身のリアクション動画も作られて、特に鈴木さんの動画はめちゃくちゃ面白い。
またYouTubeにアップされている曲を中心に、英訳詞が載せられることも増えてきた。
2019年7月には英語での「無情のスキャット」動画視聴への御礼コメントが出された。たどたどしい英語コメントを微笑ましく見られた方も多かったのではなかろうか。
そして新作「新青年」発売のツアーでは中野サンプラザでの公演も発表され、冬の30周年ツアーも決まる中、ついに2019年10月8日に海外公演のアナウンスがあった。
日程と会場は以下の通りであった。
- 2020年2月19日(水)ドイツ ベルリン・Lido Berlin
- 2020年2月20日(木)ドイツ ボーフム・Zeche Bochum
- 2020年2月21日(金)イギリス ロンドン・The Underworld Camden
発表に際して、英語での告知コメントも出された。
そしてファンに向けては、ファンクラブ限定ライブ「人間椅子倶楽部の集い」で直接その発表を聴くことができた。
12月には30周年を記念して『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤』がリリースされ、全曲に英訳が付くなど海外を意識したものとなった。
そして年明けの2020年1月には対バンもやったLEO今井さんの英語通訳による、インタビュー動画もアップされた。LEO今井さんの人間椅子リスペクト度合いに感動した人も多かったのではないかと思う。
【海外の人向け】LEO今井が英語で聞く初の欧州ツアーインタビュー【前編】
【海外の人向け】LEO今井が英語で聞く初の欧州ツアーインタビュー【後編】
いよいよ海外公演へ出発である。
出発の時のInstagramはさながら皆で見送りをしているような気分になり、高揚感に包まれた。
そしてドイツ2公演、イギリスで1公演が行われた。
2020年2月21日 ロンドン公演「無情のスキャット」
「品川心中」では落語部分の英訳を書いた紙をスタッフが持つという人間椅子らしい光景がみられた。
また現地では観光も少し楽しめたようで、その後無事に帰国となった。
帰国時の様子
海外公演の様子はWeb記事にもなっている。
そして海外公演を現地で見た人の反応としては、以下のようなものがあった。
「国籍も言語も関係ない。ただロックが好きであれば良いんだ!」
「この夜は天使と女神と仏陀が一緒に歌っていたに違いない。」
などなど、アツいコメントが残されている。
今回の海外公演は、お客さんの人数も入って、何より大いに盛り上がった公演となったようだ。本当に世界的に注目されるバンドになりつつあり、ずっと応援してきて良かったなとしみじみ思う。
31年目と言うベテランバンドが、今海外進出をして成功を収めるというのは本当にすごいと思った。
そこで人間椅子がなぜ海外から評価され、海外公演が実現したのか、考えてみたい。
なぜ海外公演が実現できたか?
僕は次の4つの要因を考えてみた。
ハードロックを受け入れる音楽的な土壌
海外はハードロックという音楽の土壌は日本よりも豊かだ。
今回公演したヨーロッパ各国、アメリカと言えば、今更言うまでもなくLed Zeppelin、Deep Purpleなど名だたるハードロックバンドが生まれた国々だ。
その音楽的な土壌は日本と随分と異なると思う。
僕自身は海外に行ったのはカナダに1度だけだが、街中でCCRやThin Lizzyと言った昔のロック・ハードロックが普通に流れていた。
やはりハードロックと言うジャンルを聴く耳を持った人たちからすれば、人間椅子はぴったりハマるだろう。
人間椅子のハードロックへのこだわり
そして人間椅子が本当にアメリカやイギリスのハードロックに対してリスペクトし、その音楽性を受け継ぎながらも、日本人(もっと言えば青森県人)の解釈を入れた独自のハードロックを鳴らしているからに他ならない。
人間椅子の曲は随所に往年のハードロックのオマージュと思われる箇所がある。
たとえば「無情のスキャット」についても、メインのリフはギターの弦をスライドさせてうねるような音を出している。
これはBlack Sabbathの「Vol.4」に収録されている「Supernaut」のリフに影響を受けていると和嶋氏が語っていた。
あるいは「黒猫」「東洋の魔女」「無情のスキャット」のアウトロ等に出てくる、ギターソロを何本か重ねる方法も、Black Sabbathの影響を感じる。
たとえば「Paranoid」収録の「War Pigs」や「Master of Reality」収録の「Into the Void」のアウトロなどがそうだ。
War Pigs
Into the Void
人間椅子はこういったオマージュを、ちょこっとやってみたという話ではない。31年間ずっとやってきたのだ。
それが僕はとにかくすごいことだと思う。そしていわゆる”リバイバル”みたいな昔を懐かしんでやっているのとも違う。
日本人がハードロックをやるとどうなるか、ということをしっかり盛り込んでオリジナルなものになっている。
それが津軽三味線ギターであり、文学的な日本語詞を載せることであり、ということになる。こういったオリジナルな要素がなければ、ここまで海外からの評価を得られなかっただろうと思う。
海外に発していこうという意識の高さ
人間椅子は変わらずオリジナルなハードロックをやってきた。だとすれば、なぜ海外からこれまではあまり注目されてこなかったのか。
(Arch Enemyのマイケル・アモット氏のように98年「頽廃芸術展」で好きになったという強者も一部に入るが、やはりレアなケースのように思う。)
これは「自分たちがどんなバンドなのか」ということを強く意識し始めたからに他ならないだろう。
オズフェストへの出演など、しっかりと評価され露出が増えていった中で、自分たちのやっている音楽と、周囲からの印象の間のギャップのようなものが、少しずつ埋まっていった過程がここ数年だと思う。
それは楽曲についても人間椅子らしいものを追求してきたことでもあるし、日本のイメージをより際立たせた服装、アートワークなどもすべて含めてである。
やりたいことをやりながら、それをきちんと届く形で届けるという意識がとても強くなっていた要因は大きいと思う。
かつての人間椅子も楽曲は良いものはたくさんあるのだが、今の人間椅子はしっかり届けることを意識した見せ方をしているからこそ、海外からもしっかり評価されるようになったのだと感じている。
動画配信やSNSなどでの広がり
昔であれば海外にはなかなか情報が届かないという側面があった。
海外の人が人間椅子のCDを手に入れるのは難しく、歌っている内容もわからない、という状況が続いていた。
それが「人間椅子名作選 30周年記念ベスト盤」では全編英訳歌詞がつくなど、海外を意識した発信が行われるようになった。
動画サイトや各種SNSは確実に国を飛び越えて、人間椅子の情報を伝えることに一役買っている。
そして今回の海外公演では、いつも日本での人間椅子の活動を海外に発信する方向だったが、ついに海外でのライブので情報を国内の僕たちが受け取る、ということが起きた。
良い時代になったな、と思いつつ、その流れに人間椅子が乗れていることが良かったと思う。
これは広報面を担っている北氏など、スタッフの方の働きも大きい事だと思う。
まとめ
これ以外にも、英語を使える人と組むようになったことなど、人間椅子の海外進出を促した要因はあると思うが、思いつくところを書いてみた。
僕自身も書きながら改めて人間椅子というバンドの凄さ・面白さを再確認できた。さらにどんな活動が展開されていくのか、楽しみなところだ。
ただ今回の新型コロナウイルスの影響で、アメリカでのライブ、そして弘前でのライブの中止、さらに春のツアーについても延期となってしまった。
とても残念なことではあるが、人間椅子は困難の連続を乗り越えてきたバンドだ。「大丈夫」なんて無責任なことは言えないが、今の人間椅子はますますパワーアップしている。
きっとまた僕たちにかっこいいハードロックを聴かせてくれる日が来るだろう。
これからの人間椅子にも目が離せない。
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