【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第10回:浜田省吾 おすすめのアルバムの聴き進め方とは?

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歴史の長いバンドは、必ずと言っていいほど「何から聴けば良いのか?」問題が出てくる。

そこで初めて聴く人向けに、最初に聴くのにおすすめのアルバムを紹介するシリーズ記事を書いている。

これまで9回の記事を書いており、多くのベテランミュージシャンを取り上げてきた。

記念すべき第10回目は、2021年にソロデビュー45周年を迎えたソングライター浜田省吾である。

2022年には久しぶりの全国ツアー「ON THE ROAD 2022 Welcome Back to The Rock Show “EVE”」が開催されている。

良質なポップスと、メッセージ性のあるロックを鳴らし続けてきた浜田氏。一貫した音楽性ではあるが、時代によって、多少音楽的なカラーが異なっている。

今回は浜田省吾氏のまず最初に押さえておくべきアルバムと、その後のアルバムの聴き進め方について書くことにした。

これから浜田氏の音楽に触れようとする人に、おすすめの記事となっている。

前回:【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第9回:角松敏生 各年代のおすすめ名盤を1枚ずつ選出!

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浜田省吾について

ごく簡単に浜田省吾氏がどのようなミュージシャンなのか、まとめておきたい。

1952年広島県生まれのシンガーソングライターである。ソロ活動前は、バンド愛奴で活動をし、当時はドラマーであった。

1976年に1stアルバム『生まれたところを遠く離れて』とシングル『路地裏の少年』でソロデビューした。

自身はロックを志向していたものの、レコード会社はポップなソングライターとして期待を寄せた。そのため70年代はポップス路線の作品が続いたが、セールスは伸びなかった。

1979年に日清カップヌードルのCMソングとして書いたシングル「風を感じて」が初のヒット。コンサートホールでのライブも満員になることが出始めた。

1980年の6thアルバム『Home Bound』で、セールスよりも自分のやりたい音楽を貫くと決意し、その後はロック志向の作品が続く。

1982年には無謀と思われた日本武道館公演が、即完売の大成功を収める。これにより注目を浴び、着実にコンサート動員を伸ばしていった。

1983年に独立し、音楽事務所「ロード&スカイ」を設立。

1984年の『DOWN BY THE MAINSTREET』、1986年の『J.BOY』はそれぞれオリコンチャート2位、1位とヒットとなる。

1992年にテレビドラマ「愛という名のもとに」の主題歌として発売されたシングル「悲しみは雪のように」が、初のオリコン・シングルチャート第1位を獲得。

名実ともにトップアーティストとなった浜田氏だったが、90年代は自身の活動に葛藤を抱え、内省的な作品が多くなった。

2000年代以降、オリジナルアルバムのリリースは減ったが、精力的なコンサート活動を展開している。

2018年以降、自身の活動を振り返る形で、過去の作品を年代別で披露するファンクラブ限定コンサートツアーを行っている。

デビュー曲「路地裏の少年」や「MONEY」「J.BOY」など社会派のロックミュージシャンのイメージが一般的には強い。

自身が被爆2世であることから、戦争や戦後の世界の在りようなどを題材にした重いテーマの楽曲も歌う。

一方で楽曲の多くは良質なポップスであり、自身最大のヒット曲「悲しみは雪のように」や「もうひとつの土曜日」「片想い」などのラブバラード曲も有名である。

※その他、浜田省吾氏の活動については、以下の記事に詳しく書いている。

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”はじめて”のベストアルバムは?

オリジナルアルバムを紹介する前に、ベストアルバムについて触れておこう。

浜田省吾氏はキャリアの長さに比して、ベストアルバムの数は少ない。これまで以下4枚のベストアルバムがリリースされている。

  • 『The History of Shogo Hamada “Since1975″』(2000)
  • 『The Best of Shogo Hamada vol.1』(2006)
  • 『The Best of Shogo Hamada vol.2』(2006)
  • 『The Best of Shogo Hamada vol.3 The Last Weekend』(2010)

結論から言うと、筆者としてはそれほどベストアルバムから聴くことはおすすめしない。アルバムをじっくり聴こうと思っている人は、これから紹介するオリジナルアルバムから入るのが良いだろう。

ただ一応、聴き方に応じて、ベスト盤のおすすめもしておこう。

筆者として、最もおすすめのベストは『The Best of Shogo Hamada vol.1』『The Best of Shogo Hamada vol.2』(2006)の2作品である。

※『The Best of Shogo Hamada vol.1』

※『The Best of Shogo Hamada vol.2』

それぞれが2枚組であり、vol.1が1988年~2005年まで、vol.2が1976年~1987年までの楽曲で構成される。

後述する『The History of Shogo Hamada “Since1975″』の楽曲を外しつつ、本当にファンに愛される名曲が詰まった良い選曲になっているのだ。

ちなみに筆者は浜田氏を聴き始めた当初には、この2枚をよく聴いていた。

一方で手っ取り早く定番曲をコンパクトに聴きたい人は、『The History of Shogo Hamada “Since1975”』(2000)である。愛奴時代も含め、1975年から1996年の定番曲が凝縮されている。

なお『The Best of Shogo Hamada vol.3 The Last Weekend』(2010)は、社会派の楽曲を集めた企画性の高いベスト。あえて最初に手に取る必要はないかもしれないと思っている。

”はじめて”のオリジナルアルバムは?

この記事の本題である、初めて聴くのにおすすめのオリジナルアルバムである。

今回も1枚に絞るのが難しかったが、筆者としては9th『DOWN BY THE MAINSTREET』(1984)か10th『J.BOY』(1986)のいずれかをおすすめしている。

この2作品は、セールス的にも大成功を収めたとともに、浜田省吾の集大成とも言える2作品なのだ。浜田省吾氏の音楽性とはこういうものだ、という名刺代わりになる2作品と言って良い。

なぜ2作品選んだかと言えば、微妙に描かれるテーマが異なる2作品で、そのどちらもが浜田氏を象徴するものであるからである。

ここでは2作品のおすすめポイントや、おすすめする理由などまとめている。

9th『DOWN BY THE MAINSTREET』(1984)

1984年にリリースされた9thアルバムである。オリコンチャートでは自身最高位の2位を獲得している。

アルバムジャケットのイラストからも窺えるように、アメリカの青春映画をイメージさせるような、一種のコンセプトアルバムとも言える内容である。

それは10代の少年たちの成長を描くと言う世界観である。そして、それぞれの楽曲を見ると、まるで映画のワンシーンを切り取ったような曲が多くなっているのが特徴だ。

1曲目の「MONEY」は激しいギターサウンドが印象的で、”お金”をテーマにした楽曲。ポップスとしては異例のテーマ設定の楽曲であるが、浜田氏の真骨頂でもある。

続く「DADDY’S TOWN」と合わせて、街の片隅で大人になっていく少年たちと、それを取り巻く社会背景が描かれていく。

一方で10代の恋を描いた「EDGE OF THE KNIFE」や、”悲嘆”をテーマにした壮大なバラード「PAIN」など、ソングライティング的にも脂の乗った楽曲を聴くことができる。

45分と言うアルバム1枚の中に、浜田氏の音楽性をギュッと凝縮したような名盤である。

そして実年齢の浜田氏からすると、自分より若い世代のことをあえて歌ったアルバムという趣だ。ある意味、70年代で描き切れなかった物語を、今の実力で豊かに描き出したと言える。

浜田氏の魅力は、単に社会派のロッカーという訳ではなく、ポップスのアルバムとして社会的背景を込めるソングライターの力量にあると思っている。

しかも80年代に入って浜田氏自身は30代に入り、楽曲制作・コンサート活動ともに十分磨かれていた時期だった。

そんな状況下での本作は、キャリア当初から一貫して描いてきた世界観の総決算的な作品と言えるだろう。

10th『J.BOY』(1986)

1986年の10thアルバム『J.BOY』は、2枚組による大作である。

初のオリコンチャート1位を獲得した作品で、『第28回日本レコード大賞』では「優秀アルバム賞」に選出されている。

タイトルの”J.BOY”とは「Japanese Boy」を意味する造語であり、「日本の」を意味するJの文字を付けることは、後に”Jリーグ”など様々な分野で影響を及ぼすこととなる。

さて、本作のテーマには、「外側から見た日本」があるように筆者は感じる。浜田氏もインタビューで語っているように、急成長した日本がどこか未成熟な国なのではないか、というテーマである。

そうしたテーマ性に沿った楽曲として、たとえば「AMERICA」「J.BOY」などが収録されている。

そして『DOWN BY THE MAINSTREET』で描かれた10代の少年たちの、その後のストーリーと捉えることもできる作品だ。

働く年齢になった彼らは、今まで以上に社会と接点を持ち、社会的な問題にも直面することとなる。

とりわけ社会的なカラーの強い楽曲として、戦争について描いた「A NEW STYLE WAR」「八月の歌」なども、浜田氏ならではのロックナンバーとなっている。

硬派な楽曲の中に、「もうひとつの土曜日」「SWEET LITTLE DARLIN’」など名バラードも収録されている点も見逃せない。

さらに70年代に作られて収録されていなかった「19のままさ」「遠くへ – 1973年・春・20才」、そしてデビューシングル曲「路地裏の少年」の新録が2枚目の前半に配置される。

これでもか、と言うほど浜田氏のこれまで描いてきたテーマがてんこ盛りになっており、2枚組と言う大作の中に散漫になることなく配置されているのが見事だ。

10代の少年たちの成長物語が前作『DOWN BY THE MAINSTREET』だったが、さらに視野が広がり、彼らを取り巻く日本、社会全体という視点から描かれていると言えるだろう。

初めて聴く人には、2枚組と言うとややハードルは高く感じられるかもしれない。が、疲れを感じさせることなく、一気に聴けてしまう名盤である。

そしてソロデビューから前作『DOWN BY THE MAINSTREET』まで、全て包括するようなスケール感の大きなアルバムで、最初に聴くにも最適の作品だと考える。

おすすめのアルバムの聴き進め方は?

初めて聴くオリジナルアルバムとして、『DOWN BY THE MAINSTREET』『J.BOY』の2作をおすすめした。

今回は、さらにその次にどのようにアルバムを聴き進めていくと良いのか、についても紹介したい。

筆者としては、大きく分けて以下の2つのステップが良いのではないか、と考えている。

  1. 80年代のアルバムを網羅する
  2. 70年代に遡るか、90年代以降のアルバムに進む

つまり最初に紹介した80年代半ばの2作品を中心に、80年代へと広げ、さらにその前後のどちらかに広げていく、というプランである。

より具体的な広げ方や、おすすめの作品などを紹介していこう。

80年代のアルバムを網羅する

浜田省吾氏のアルバムにおいて、名作の宝庫であるのが80年代なのは間違いないだろう。

80年代において、最初に紹介した2作品以外のアルバムは以下の4作品である。

  • 6th『Home Bound』(1980)
  • 7th『愛の世代の前に』(1981)
  • 8th『PROMISED LAND 〜約束の地』(1982)
  • 11th『FATHER’S SON』(1988)

どれを手にとっても素晴らしい作品ばかりなので、全ておすすめの作品と言える。

ただあえて1枚だけ選ぶとすれば、1982年の8thアルバム『PROMISED LAND 〜約束の地』である。浜田省吾の音楽性を確立させた、記念碑的な名盤だと言える。

その特徴は、これまで以上にはっきりと社会的メッセージの色濃い楽曲を配置した点にある。2曲目の「マイホームタウン」、そしてラストの「僕と彼女と週末に」が象徴的だ。

ただ本作でも10~20代頃の若者の何気ない日常を描きながら、そこに忍び寄る格差や犯罪と言った、社会的な背景をさりげなく、時に明確に登場させる点が浜田氏らしい。

後の『DOWN BY THE MAINSTREET』『J.BOY』に繋がる重要な作品と言える。

その他のアルバムについても簡単に触れておこう。

6th『Home Bound』は浜田氏がロックを鳴らすと決意した作品であり、海外の名うてのミュージシャンによる盤石のサウンドも聴きどころだ。

7th『愛の世代の前に』は、82年の日本武道館に向けて急ピッチで作られたアルバム。ストレートな作風であるが、普遍的なメロディが随所で光る作品になっている。

11th『FATHER’S SON』は少年たちが大きくなったその後の物語を、ハードなサウンドで描いた作品だ。やや内省的な歌詞が増え、前作までのストレートな路線を離れつつあるのが分かる。

70年代に遡るか、90年代以降のアルバムに進む

80年代の計6作品を十分に聴いたという人は、いよいよ浜田省吾氏の中~上級編に入って行く。

さらに昔の作品に遡るか、現代に近づいていくか、の2つの辿り方があると思う。(もちろん新旧両方に広げて聴いていく、という方法もあるが)

ここまで来ると、あとはそれぞれの好みに合わせて聴いていくことになるだろう。

まず70年代に遡る場合は、順に過去へと戻っていく聴き方が良いように思う。特に2nd『LOVE TRAIN』~4th『MIND SCREEN』辺りは、今の浜田氏とは少し肌触りが違う。

と言うのも、当時流行していたAOR的なサウンドが使われており、洗練されたオシャレなポップスをイメージさせる部分があるからだ。

ただし、浜田氏が作る普遍的で美しいメロディを堪能するには、70年代の楽曲は最適である。

なお、後にセルフカバーベストとしてリリースされた『初夏の頃 〜IN EARLY SUMMER〜』(1997)は、70年代の楽曲を知る入門編として良いかもしれない。

一方で、より近年の作品を聴く場合は、どこから聴いても良いが、新しい方から遡って聴いても面白い。

特に16th『My First Love』(2005)と17th『Journey of a Songwriter 〜 旅するソングライター』(2015)は対になる形で、浜田氏の特徴を分かりやすく示した良盤である。

『My First Love』はストレートなロックを鳴らす浜田氏が出ている。先行シングル「光と影の季節」と「I am a father」は、ロックの浜田氏が戻ってきた!と感じたファンも多かったことだろう。

また少年の成長物語を描いてきた浜田氏だが、父親になった自分からの目線である「I am a father」は、ファンにとって非常に感慨深い楽曲である。

一方で『Journey of a Songwriter 〜 旅するソングライター』は、浜田氏がこれまで行ってきたソングライティングの集大成のようであり、さらに新たな一面も見せる多彩なポップスアルバムだ。

たとえば「旅するソングライター」ではレゲエのリズムが採用され、「夜はこれから」では大胆にダンスミュージックの打ち込みサウンドが用いられており、サウンド面でも多彩だ。

一方で、『J.BOY』などに通じる社会派で重厚な楽曲も見られる。「アジアの風 青空 祈り」は3部作となっており、クラシックのような展開を見せる異色作である。

ただ全曲に通じるのは、70年代の初期から一貫したポップで良いメロディであり、ソングライター浜田省吾の真骨頂を見ることができる名作と言える。

このように『My First Love』はロックミュージシャンとして、『Journey of a Songwriter 〜 旅するソングライター』はソングライターとして、浜田省吾の魅力を堪能できる2枚だ。

まとめ

ここまで浜田省吾氏を初めて聴く人におすすめするアルバムについて書いてきた。作品はいくつも紹介したが、特におすすめのベストアルバム・オリジナルアルバムは以下の通りである。

<ベストアルバム>

The Best of Shogo Hamada vol.1』(2006)

The Best of Shogo Hamada vol.2』(2006)

<オリジナルアルバム>

9th『DOWN BY THE MAINSTREET』(1984)

10th『J.BOY』(1986)

以上の作品から始まり、浜田氏の作品を聴くのであれば、まず「80年代の作品を網羅する」という聴き方で間違いないだろう。

楽曲の良さと浜田氏らしい歌詞の世界観が、見事にマッチした作品がズラリと並んでいる。ベスト盤を聴くよりも、80年代のオリジナル作品から順に聴くのをおすすめしたい。

その後は、好みに合わせて70年代に遡るか、近年の作品を聴くか、ということになる。過去に戻るほどポップな作品が、近年は多彩な楽曲が聴ける、という印象だ。

しかし何度も繰り返している通り、浜田氏のソングライティングは一貫したものがあり、普遍的な良いメロディとストレートに伝わってくる歌詞が1番の魅力だ。

そして歌詞に登場する”歌の主人公”は、浜田氏ともリンクしながら、作品ごとに成長を重ねている。

10代の少年は働き始め、大人になり、結婚し子どもが生まれ、と、歌を通じて人生が進んでいくようでもある。だからこそ幅広い世代に愛されるミュージシャンなのだろうと思う。

浜田氏の作品はそんな楽しみ方もできるので、ぜひ様々な時代の作品を聴いてみてほしいと思う。

ソングライター浜田省吾が世代を超えて愛される理由とは? – ”歌の主人公”をめぐる物語の魅力

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浜田省吾
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