自部屋に流れるあの歌 Vol.1 AGHARTA – ILE AIYE〜WAになっておどろう〜 (1997)

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角松敏生
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プロデューサーとしての角松氏の手腕 – なぜ自身の名義よりも他の楽曲がヒットしたのか?

最後にプロデューサー的な立ち位置の角松氏の手腕について触れておきたい。

「ILE AIYE〜WAになっておどろう〜」の作詞・作曲のクレジットは「長万部太郎」であり、今となっては角松敏生の名前で出せば良かったと、先のインタビューにも書かれていた。

角松氏と言えば、自身の音楽活動を1981年にスタートさせているが、早い段階でプロデュースや楽曲提供など他のミュージシャンとの仕事も数多く行ってきた。

中でもヒットした作品としては、たとえば杏里氏の1983年の「悲しみが止まらない」では、角松氏はプロデューサーとして関り、オリコン週間4位を獲得した。

また中山美穂氏の作品にも多く関わり、楽曲提供とプロデュースを行っている。

1988年にアルバム『CATCH THE NITE』がオリコンチャート1位、自身の7thアルバム『BEFORE THE DAYLIGHT〜is the most darkness moment in a day』が2位となる快挙も成し遂げた。

さらにはシングル「You’re My Only Shinin’ Star」もオリコン1位を獲得している。

このように角松氏は他のミュージシャンと交流しながら、積極的に楽曲提供やプロデュース活動を行ってきた。

他の歌手とデュエットした楽曲をまとめた記事

ただ角松氏自身の楽曲よりも、提供した楽曲や「ILE AIYE〜WAになっておどろう〜」のように変名でリリースした楽曲の方がヒットに結び付いている。

一般的な認知としては提供した中山美穂氏の楽曲などで知られているように思われ、角松氏も自身名義の楽曲でヒットを出したいと今も語っている。

それではなぜ角松氏は楽曲提供やプロデュース作品がヒットになりやすいのだろうか?

単純な話であるが、それは角松氏が表現者よりもプロデュース的な作業が得意なのではないか、ということである。

角松氏は音楽に対して、かなりシビアであり完璧主義であると思う。作品に一切の妥協がなく、そのため作品の細部にわたってこだわりが感じられる。

そして楽曲やアルバムを俯瞰して見つめる視点が鋭い。そのためコンセプトや作品の狙いが緻密に構築され、作品を裏から支えて魅力を増すことに貢献している。

こうした能力はプロデューサーとしては非常に重要だ。作品の環境を整えてくれるから、シンガーは安心して歌に専念できるのである。

今度は角松氏自身の作品に目を向けてみよう。この場合、角松氏は表現者であり、かつプロデューサーとしての役割も担う。

しかし角松氏はプロデューサー的視点が強い故に、自身の表現に対して厳しすぎるのではないかと思う。つまり表現者に徹することができない点がネックになっているのではなかろうか。

角松氏のライブを見ると、常に角松氏は全体の音や自身のボーカルの音の響きを気にしている。どうしてもパフォーマーよりも、まず総合監督的な視点が職業病のように出ているように見える。

作品においても、プロデューサーとしての完璧さを求めている。それが楽曲や歌のストレートな魅力を、邪魔してしまっているのではないか、と個人的には思う。

一方で楽曲提供やプロデュース作品は、最後は歌い手の個性に委ねることになる。そこまでいくと、角松氏の意図を超えたものにならざるを得ない。

しかし、シンガーが思い切り歌うことで、作品にパワーが宿ることになる。やはり聴き手が感じ取るのは、歌い手の声や歌、そしてパワーだ。

緻密に作品を構築することと、それを表現することはやはり別の作業だと思う。角松氏の場合、どうやらそれが別々の人で行われている方がヒットにつながりやすいようだ。

「ILE AIYE〜WAになっておどろう〜」は自身が歌っているが、変名であったがゆえに、肩に力が入らず、のびのびと表現できた結果なのかもしれない。

もちろん曲がヒットする理由はこんなに簡単な理由ではないだろう。作曲者、プロデューサー、歌手など様々な人の相互作用、そしてミラクルがヒットを生み出すのだ。

そう考えると、角松氏自身のヒット作は、あえて角松氏が歌い手に徹することで生まれてくるのかもしれない。

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まとめ

今回は「ILE AIYE〜WAになっておどろう〜」について、深く掘り下げて紹介した。もともとはNHKみんなのうたで放送され、長野オリンピックで演奏されるまで至った。

1つの楽曲がここまで多くの人を魅了した事実が、曲に込められたパワーの大きさを物語っている。今も多くの人に愛され、カバーが生み出されている。

後半では作曲した角松敏生氏にフォーカスをあてて書いてみた。プロデューサーとしての手腕の凄さ、その一方で自身名義の楽曲でヒットが出ない苦悩にも触れた。

この記事ではプロデューサーとしての目線が厳しすぎるのではないか、と書いた。筆者自身も角松氏の楽曲が好きなだけに、もっと世に知られてほしいと思っている。

近年は『EARPLAY ~REBIRTH 2~』など、過去のリメイクにも取り組み、より良い音で過去の名曲が蘇っている。ぜひCDを手に取って、この機会に聴いてみていただければ嬉しい。

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