ハードロックバンド人間椅子の楽曲は、ギターの和嶋慎治とベースの鈴木研一の2人を中心に作られている。
鈴木研一氏の楽曲は、デビュー時からテーマ・音楽性が一貫しているのが特徴だ。
ブレない鈴木氏の楽曲群の中には、シリーズを冠したものがある。今回は鈴木研一のシリーズ楽曲を一覧にしてまとめてみた。
人間椅子における鈴木研一の音楽性
まず人間椅子における鈴木氏の楽曲の特徴をまとめておきたい。
洋楽ハードロックからの強い影響
鈴木氏の楽曲には一貫して、洋楽のハードロックの影響を感じられる。特にイギリスのBlack Sabbathの影響は大きく、ダークでヘビーな音楽である。
それ以外にもおどろおどろしい、サタニックな要素のあるバンドなど、一癖あるバンドをお気に入りとして挙げている。
※鈴木研一氏が影響を受けたHR/HMについてまとめた当ブログの記事
そして鈴木氏の音楽性はデビュー当時から一貫しており、全くブレない。
対する和嶋氏は、その時に自分が表現したい音楽を作ってきた人である。
和嶋氏は2001年の10th『見知らぬ世界』では明るい曲調の楽曲が増え、2006年の13th『瘋痴狂』では落語を大胆に取り入れた「品川心中」など実験的な作風も見られる。
鈴木氏は、他ジャンルのエッセンスは入れつつ、大きな路線変更が行われたことはない。
和嶋氏の変化が大きい時代には、一貫してハードロックを作り、人間椅子らしさを守ってきたとも言える。
人目につきやすい楽曲が和嶋氏に多い一方で、陰ながらハードロックバンドとしての人間椅子の良曲をたくさん生み出してきたのが鈴木氏なのだ。
ストレートで描写的な歌詞
鈴木氏が作詞を行うことは少ないものの、和嶋氏の歌詞とは対照的なストレートな歌詞が特徴である。
たとえば、”地獄”をテーマにした楽曲では、地獄の世界観を水木しげる氏の漫画のようなコミカルなタッチで歌詞にしている。
観念的で難解な和嶋氏の歌詞との対比で、わかりやすく描写的な歌詞が持ち味であると言えよう。
鈴木氏自身は作詞が苦手だと話しており、近年はアルバムに1曲歌詞を書く程度まで作詞を減らしている。
”シリーズ”化した楽曲群も
一貫した音楽性と世界観ゆえに、楽曲がシリーズ化したものがある。それが今回取り上げるテーマである。
「楽曲のシリーズ化」とは文字通り、楽曲が1つの題材を引き継いで何作も作られることを指している。
シリーズの内容はこの後じっくり取り上げるとして、人間椅子における鈴木氏のスタンスは長く続けるということにあるようだ。
デビューのきっかけとなったテレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国」の最終回では、以下のように語っている。
NazarethやBlack Sabbathのように20年、30年と続くバンドとして生き残っていきたいなと思います
長く続いているバンドに憧れ、発言通りに人間椅子は30年以上続くバンドとなった。
バンド以外にも、たとえば鈴木氏は映画「男はつらいよ」シリーズのファンであり、”マンネリの美学”と称賛している。
長く続けることの美学を持つことによって、鈴木氏の楽曲シリーズが誕生したのではないかと思う。
楽曲シリーズのまとめ
ここからは、鈴木研一氏の楽曲シリーズの内容と、含まれる楽曲の紹介を行っていこう。
鈴木氏によるシリーズ化されている楽曲は現在、以下の3つであると思われる。
- 地獄シリーズ
- 宇宙シリーズ
- パチンコシリーズ
これらのシリーズを紹介する前に、シリーズ全体を通じたルールとして、「鈴木氏単独作曲の楽曲」であることを前提とした。
以下では、各シリーズに含まれる楽曲の特徴、楽曲一覧をまとめた。
地獄シリーズ
地獄シリーズの定義と特徴
地獄シリーズは、鈴木氏の楽曲シリーズの中でも最も数が多い。そして定義によって、どこまでを含むかが異なってくる。
公式に定義はないため、今回は地獄シリーズの定義として、「地獄の〇〇」というタイトルの楽曲に絞った。
その理由は、「地獄の◯◯」をタイトルにした楽曲の数が多く、鈴木氏自身もこのタイトルをシリーズ化していくと述べていた。
また鈴木氏が敬愛するKISSのアルバムの邦題に「地獄の軍団」や「地獄のさけび」などがあり、それに影響を受けたと考えられるためである。
音楽的には短時間で、スラッシュメタルの要素を感じるような速い楽曲が多い。80年代以降を中心に活躍したJudas PriestやIron Maiden、Slayerなどの影響を感じる。
なお、地獄をテーマにした楽曲は多数存在するため、別の項で「地獄の◯◯」という形ではないタイトルの楽曲も紹介している。
地獄シリーズの楽曲一覧
「地獄の◯◯」(およびそれに類するもの)は7曲存在する(2020年8月現在)。
1. 地獄のロックバンド(2011年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:16th『此岸礼讃』
記念すべき「地獄の◯◯」シリーズ第1作目。変拍子のスラッシュメタルという独特の楽曲である。
地獄の獄卒たちが亡者を責める様子をバンド編成に例えたもの。「がぶる」「なぶる」など和語を取り入れた歌詞もコミカルに聞こえる。
2. 地獄への招待状(2014年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:ベストアルバム『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』
厳密には「地獄の◯◯」ではないものの、地獄シリーズとした取り上げた。オリジナルアルバムに未収録で、ベストアルバムに収録された新曲の扱いである。
地獄シリーズには珍しく、和嶋氏による作詞である。北海道弁の「あずましい(居心地が良い)」など、方言を用いた歌詞が特徴的だ。
Motorheadのような曲調で、今までありそうでなかったタイプの楽曲。
3. 地獄の料理人(2014年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:18th『無頼豊饒』
鬼たちが食べる亡者を調理する料理人という切り口で、地獄を描いた楽曲。鈴木氏らしいハードロックと、キャッチーなサビがライブでも大いに盛り上がる。
最後の「焼いて食うか」などの調理法が並ぶ歌詞では、よく順番を間違えて歌ってしまうとのこと。
鈴木氏自身も料理をするのが好きのようで、主催のイベント「ハードロック喫茶ナザレス」で手料理が振る舞われることもある。
4. 地獄の球宴(2016年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:19th『怪談 そして死とエロス』
獄卒が亡者を責める様子を野球に例えた楽曲。生首をボールに見立て、それが飛んでいく様子を「しゅるんしゅるん」など、独特の擬音語で表現している。
「風が吹いたら元通り」とは、地獄の責め苦を受けても死ぬことはできず、風が吹くと最初から同じ責め苦を受け続けるという、地獄を端的に表現した言葉である。
鈴木氏の歌うキーとしてはあえてかなり高く、苦しそうに歌うことで味が出ているとも言える。ギターソロの始まり方も「かっ飛ばせー」のリズムになっているなど、和嶋氏も”球宴”に花を添えている。
5. 地獄のヘビーライダー(2017年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:20th『異次元からの咆哮』
地獄の獄卒の中には、巨漢のバイク乗りもいるのではないかという設定で、バイクで亡者を蹴散らしていく様子が歌われる。
バイクと言えばJudas Priestが連想され、「Breaking the Law」のオマージュとも思われる展開がある。
なおこの楽曲は鈴木氏がバイクの卒業検定で一度不合格となってしまうも、その後取得できた記念に作られた。ライブ時には、バイクのハンドル部分がステージに置かれるパフォーマンスも見られる。
公開!ヘビーライダー!!
— バッサン (@isunohito) September 8, 2018
大阪でのパフォーマンス!#人間椅子 pic.twitter.com/yxMUbGYkED
6. 地獄の申し子(2019年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:21th『新青年』
テーマ設定について明言されたことはないが、タイトルからすれば”地獄に生まれるべくした存在”の歌である。地獄が居心地の良い場所に感じる者からの目線で、地獄が描かれている。
30周年を記念したアルバムに収録されることもあり、メンバーそれぞれが歌う箇所がある。「もっと○○」の歌詞は、それぞれのメンバーに似合う言葉が当てられ、その部分を当人が歌っている。
7. 地獄のご馳走(2019年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:21th『新青年』(CDのみ収録)
ボツになりかけた楽曲だったが、ボーナストラックとしてCDにのみ収録されている。
歌詞は地獄で亡者を食べる虫の視点から描かれている。「地獄の食い放題」とは、亡者から見れば「食われ放題」であることを指し、コミカルながらグロテスクな歌詞であることがわかる。
Iron Maidenを思わせるようなリフであり、虫が這いずるような細かい動きのリフに仕立て上げたとのこと。
地獄シリーズ以外の地獄をテーマにした代表曲
上記の地獄シリーズ以外にも、地獄をテーマにした楽曲が多数ある。中でも代表的な楽曲を紹介する。
1. 針の山(1990年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:Tony Bourge, Burke Shelly, Ray Phillips
・収録アルバム:1st『人間失格』
Budgieの楽曲にオリジナル詞を乗せた、今や人間椅子の代表曲の1つ。歌詞は和嶋氏によるもので、俳人の種田山頭火を意識しているようだ。
「針の山」の和嶋氏の歌詞は、平易で描写的なものだった。後に鈴木氏が作る地獄シリーズに大きな影響を与えたのではないかと推察される。
2. 地獄(1996年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:6th『無限の住人』
ストレートに”地獄”をタイトルにした楽曲。地獄シリーズとしては、この楽曲を元祖地獄シリーズと捉えるのが妥当なのかもしれない。
サビの歌詞が鈴木氏らしい、地獄の責め苦の様子をコミカルに描写している。
中間部では、10秒ごとに時報を意識してベースのハーモニクスを弾いている。ちょうど1分経過すると元の展開に戻るが、死ねずにまた始めから責め苦が始まる様を表している。
3. 地獄風景(2000年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:9th『怪人二十面相』
地獄的な運動会をテーマに作られた楽曲。冒頭は三三七拍子で始まり、「騎馬戦」「表彰台」などのワードが散りばめられている。
楽曲としてはスラッシュメタルであり、ライブのアンコールで幾度となく演奏されてきた。
2000年代前半頃には、鈴木氏が学生服を着て演奏するのが定番だった。その当時の様子は、映像作品『見知らぬ世界』内のライブ映像にて確認できる。
4. 冥土喫茶(2009年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:15th『未来浪漫派』
“メイド喫茶”ブームに掛けたタイトルだが、地獄シリーズにふさわしい楽曲である。あの世にある喫茶店をテーマに、人間椅子の中ではエクストリームな要素を強く感じる曲調だ。
なお「冥土」とは、地獄・餓鬼・畜生の三悪道のことで、厳密には地獄のみを指してはいない。
ライブ時にはベースを下ろしてマイクパフォーマンスをすることもあり、ライブ映像作品『苦しみも喜びも夢なればこそ「現世は夢~バンド生活二十五年~」渋谷公会堂公演』で確認できる。
5. 地獄変(2013年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:17th『萬燈籠』
芥川龍之介の小説『地獄変』からタイトルをとったもの。「地獄変」とは地獄を描いた図のことであり、地獄シリーズと言っても良いテーマである。
作詞は和嶋氏によるもので、描写的な鈴木氏の歌詞とは対照的に、地獄的な心のありようを歌詞にしている。
鈴木氏は歌詞に出てくる「傲慢」「陰険」など全て自分に当てはまるが、「冗舌」だけは当てはまらないとライブMCで語っている。
鈴木氏以外による「地獄」がタイトルにつく楽曲
最後に鈴木氏作曲ではない地獄がタイトルにつく楽曲もまとめてみた。
1. 少女地獄(1999年)
・作詞・作曲:和嶋慎治
・収録アルバム:8th『二十世紀葬送曲』
夢野久作の小説『少女地獄』からタイトルをとったもの。男が少女になったとしたら、という独白を綴った歌詞が不気味である。
地獄を描く曲ではないものの、常軌を逸した世界観は地獄的と言ってもおかしくはない。
2. 地獄のアロハ(2015年)
・作詞:大槻ケンヂ、和嶋慎治 / 作曲:和嶋慎治、内田雄一郎、本城聡章、鈴木研一、橘高文彦
・収録アルバム:シングル『地獄のアロハ』
筋肉少女帯とのコラボ・ユニット「筋肉少女帯人間椅子」として制作されたシングル曲。ダークサイドを歌ってきた2グループから最も遠いものとして、「アロハ」と組み合わせたタイトルとなった。
和嶋氏のダークな歌詞と大槻氏のアロハから連想される歌詞が組み合わさり、不条理な世界観となっている。
3. 地獄小僧(2019年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:ナカジマノブ
・収録アルバム:21th『新青年』
日野日出志氏による漫画『地獄小僧』からタイトルをとっており、ファンであるナカジマ氏が作曲を行っている。
歌詞の中では、地獄で生まれ、亡者に責め苦を与える存在について歌っている。ディミニッシュを感じさせる不気味なコードワークは、和嶋・鈴木両氏にはない曲調で興味深い。
宇宙シリーズ
宇宙シリーズの定義と特徴
宇宙シリーズは、文字通り「宇宙」をテーマにした楽曲群のことを言う。テーマだけでなく、音作りにおいても宇宙的なサウンドを取り入れることが特徴である。
宇宙シリーズは、鈴木氏がイギリスのスペースロック・バンドHawkwindに強い影響を受けたところから始まっている。
曲調はハードロックよりも、サイケロック的な要素があり、歌メロが印象的な楽曲が多い。シンセやテルミンを用いるなど、バンド以外の音を持ち込むこともある。
地獄シリーズに比べると楽曲数が少ないため、タイトルの言葉などでは縛らずに、宇宙をテーマにしたものを宇宙シリーズと呼ぶようである。
宇宙シリーズの楽曲一覧
宇宙シリーズの楽曲は6曲存在する(2020年8月現在)。
1. 宇宙遊泳(1996年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:6th『無限の住人』
宇宙シリーズ第1弾は、なんと漫画「無限の住人」のイメージアルバムに収録されている。”宇宙は昔から存在した”という理屈によって、収録できたとのことである。
冒頭から”ピコピコ”とシンセの音が入り、Hawkwindの影響をかなり感じる。一方で和嶋氏の歌詞は、アルバムの世界観に合わせて、雅で和風な言葉遣いで宇宙を表現しているのが面白い。
2. 天体嗜好症(1998年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:7th『頽廃芸術展』
『頽廃芸術展』に収録された本作は、宇宙的なサウンドを取り入れつつ、よりポップなメロディの楽曲となっている。タイトルは稲垣足穂の小説『天体嗜好症』から取っている。
和嶋氏による歌詞は、「宇宙遊泳」の和語を用いた表現とは対照的に、ハイカラな印象を与える言葉遣いである。
中間部にはフリーなソロのパートがあり、ライブではドラムソロが入れられる時期もあった。
3. 夜間飛行(2004年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:12th『三悪道中膝栗毛』
フランスのパイロット・小説家であるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる小説「夜間飛行」からタイトルを取っている。
前のめりなリズムに、観念的な二字熟語を多用した歌詞が乗ることで、不思議な快感が得られる楽曲である。
当時の和嶋氏はテルミンそのものを使わずに、ギターのツマミで調整するテルミン音を楽曲の中で使用していた。
4. 地底への逃亡(2011年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:16th『此岸礼讃』
サウンド的には宇宙シリーズを目指して作られたものの、タイトルには”地底”が入ることになった楽曲。
地底には地上とは異なる文明があり、新たな次元に上昇する世界がある、といったテーマであろうか。「夜間飛行」と同様、前のめりなリズムがスリリングな印象を与える。
ギターソロには、ユニバイブというエフェクターが用いられ、大げさな音の揺れが楽曲にスペイシーな味付けを加えている。
5. 宇宙のシンフォニー(2017年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:20th『異次元からの咆哮』
地獄シリーズと同様、タイトルが「宇宙の◯◯」となった第1弾の楽曲。楽曲的には古めかしいハードロックを基調に、スペイシーな音が加えられている。
Aメロではギターにフェイザーの波を小さくかけ、宇宙的なサウンドとなっている。エレキシタールも神秘的な世界観を作り出すのに一役買っている。
またベースは普段のイーグルではなく、プレシジョンベースが使われており、柔らかい音作りになっている。
歌詞は「天体嗜好症」に近い、軽妙な言葉遣いが耳に残る。
6. 宇宙のディスクロージャー(2019年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:21th『新青年』
宇宙シリーズの中にあっては、最もハードロック色の強い楽曲かもしれない。
ディスクロージャーとは、物事が明らかにされることを指すが、ここではUFOに関するディスクロージャーについて歌っているらしい。
そのさらに背後には、壮大な陰謀論も歌われているようだ。ダークサイドによって隠されてきた歴史や事実が明かされる、という意味深長なメッセージも込められている。
テルミンなど宇宙的サウンドは健在だが、牧歌的なカラーは薄い。メッセージ性の強い楽曲であり、「地底への逃亡」と近い世界観である。
7. 宇宙海賊 (2021年)
・作詞:和嶋慎治 / 作曲:鈴木研一
・収録アルバム:22th『苦楽』
宇宙シリーズでは初めてのダウンチューニングによる楽曲である。
冒頭には強めのディレイをかけた古風な宇宙サウンドが挿入されているが、すぐにへヴィなギターリフへと変わるのが、宇宙シリーズとしては新しい。
中間部には、海賊がギターを弾いたつもりで、敢えて上手ではないフレーズを弾いている。またテルミンとギターが交互にソロをとっているのも面白い。
これまでで最も不気味な宇宙シリーズの楽曲と言えるだろう。
パチンコシリーズ
パチンコシリーズの定義と特徴
パチンコ好きの鈴木氏が、楽曲にも取り入れたのがパチンコシリーズである。パチンコの台をモチーフにしたものから、タイトルのみ匂わせるものまでバリエーションがある。
活動初期の「へヴィ・メタルの逆襲」や「わ、ガンでねべが」などの”ナンセンスソング”と位置づけ的には近いかもしれない。人間椅子の幻想的な側面とは、対極にある楽曲群である。
あまりに人間椅子の世界観と外れるためか、近年は作られなくなったシリーズだ。人気のある楽曲もあるため、ライブでは演奏される曲もいくつかある。
パチンコシリーズの楽曲一覧
パチンコシリーズの楽曲は5曲存在する(2020年8月現在)。
1. ダイナマイト(1995年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:5th『踊る一寸法師』
鈴木氏の好きなパチンコとスラッシュメタルが融合した名曲。
ダイナマイトは「権利物」と呼ばれるパチンコ台の区分の機種の1つである。歌詞はダイナマイトの台の説明をするような内容で、パチンコそのものを題材にしている。
楽曲は当時鈴木氏が愛聴していたSlayerの影響をそのまま受け、かなり速い曲となっている。
2. 羽根物人生(1995年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:5th『踊る一寸法師』
ダイナマイトが「権利物」とすると、「羽根物」を題材にしたのがこの曲。「ダイナマイト」はパチンコそのものを歌っているが、この曲はパチンコを匂わせつつ人生を語るような歌詞である。
曲調は四畳半フォークで始まり、後半は12弦ギターが入りEaglesの「ホテルカリフォルニア」のように展開する。コーラスワークも作り込まれており、近年にはないタイプの作風である。
3. エキサイト(1998年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:7th『頽廃芸術展』
スラッシュメタルのパチンコシリーズ第2弾であるが、「ダイナマイト」に比べると歌メロがはっきりした楽曲だ。メタルと言うよりは、ポルカのようにも聞こえる。
エキサイトも実在するパチンコ台であるが、この曲では「羽根物人生」のようにパチンコそのものを題材にはしていない。最後には「人生こそがでっかい博打だ」と、実は人生論の曲だとわかる。
4. 銀河鉄道777(1998年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:7th『頽廃芸術展』
『頽廃芸術展』に収録される2曲目のパチンコシリーズ。
実際のパチンコ台に焦点化するのではなく、パチンコを打つことそのものを歌った曲である。パチンコにのめり込んでしまう鈴木氏自身のことを歌った曲ともとれる。
同アルバムに収録されている「ED75」とともに”鉄道シリーズ”という説もあるが、今回は取り上げていない。アウトロのギターはホールトーン・スケール(全音音階)と言う特殊なスケールが用いられた。
5. 膿物語(2007年)
・作詞・作曲:鈴木研一
・収録アルバム:14th『真夏の夜の夢』
タイトルがパチンコ機「海物語」をもじったものであり、隠れパチンコシリーズの楽曲とも呼べる。歌詞の内容はパチンコとは一切関係なく、むしろ地獄シリーズに近いグロテスクな内容だ。
アニメソングの主題歌を意識して作られており、「Aメロ・Bメロ・サビ」という歌謡曲的な展開になっている。ギターソロも速弾きではなく、コードを意識したフレーズを用いている。
まとめ
この記事では、人間椅子のベース鈴木研一氏によるシリーズ楽曲を紹介してきた。いずれも鈴木氏が好きなものを詰め込んだ楽曲となっており、それが一貫していることもよくわかる。
人間椅子が再びブレイクするにあたっては、和嶋氏による怪奇的・幻想的な歌詞の世界観が軸になっている。
和嶋氏は理想的な世界やダークサイドを観念的に描こうとするが、鈴木氏はかなり現実的である。鉄道やパチンコなど現実にあるものを題材を歌詞にし、目に見えない世界も視覚的に描く。
その中で鈴木氏の地獄シリーズ・宇宙シリーズはうまく順応しているが、パチンコシリーズは入る余地がなくなってきた感はある。
鈴木氏自身は「自分には歌詞の才能はない」と断言するが、楽曲の世界観においても、2人の間で理想と現実のバランスをとっているような気がする。
現在は和嶋氏がアルバムの世界観を形作っていく方針は、今後も大きな変化はなさそうだ。その中で鈴木氏の楽曲の持ち味がどのように発揮されていくのか、ファンとして楽しみなところである。
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