TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのエンディングテーマには、これまでずっと洋楽が使われている。
原作者の荒木飛呂彦氏が洋楽を好むこともあって、歴代のエンディング曲は全て既存の洋楽であった。
アニメを見て初めて楽曲を知ったという人も多いためか、エンディング曲を紹介する記事は多数アップされている。
この記事では前半では、もう一歩踏み込み、エンディング曲と、収録されたアルバム、さらに洋楽入門となるような内容をまとめた。
後半には、音楽ジャンルごとに、登場キャラクターの元ネタとなるアーティストや楽曲を紹介している。
TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズエンディングに起用された楽曲+収録アルバム紹介
前半では、TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズエンディングに起用された楽曲を紹介する。
主に楽曲と収録アルバムの紹介、そしてアニメとの関連なども触れている。
Yes – Roundabout (1971)
- アニメシリーズ:1部「ファントムブラッド」、2部「戦闘潮流」
- 収録アルバム:『Fragile(邦題:こわれもの)』(1971)
2012年~2013年まで放映された1部「ファントムブラッド」、2部「戦闘潮流」のエンディングテーマである。
曲はイギリスのプログレッシブロックバンド、Yesの1971年の4thアルバム『Fragile(邦題:こわれもの)』収録の「Roundabout」である。
印象的なアコースティックギターのイントロが各話の終わりを告げ、そのままエンディング曲に流れる構成は秀逸であった。
実際の楽曲は8分を超える大作で、エンディングでは回によって異なるパートが流されることがあった。
1部の舞台は1888年のイギリス、2部の舞台は1938年のアメリカであった。いずれも内容が神話のような物語であるためか、エンディングにはプログレッシブロックが選ばれたのかもしれない。
Yesなどのプログレッシブロックは、クラシックやジャズなどとロックが融合したジャンルである。曲が長く、展開が多いのも特徴で、曲やアルバムにコンセプトが設けられることも多い。
「Roundabout」が収録された『Fragile(邦題:こわれもの)』は、プログレッシブロックの名盤の1つとされる。
玉手箱のように様々な曲が飛び出すアルバムで、最初は難解に聞こえるかもしれない。ボーカルを重ねた「We Have Heaven」から、複雑な「Heart of the Sunrise」まで幅広い。
アルバム1つで物語が作られ、ジョジョのような長大な物語ともマッチしているようにも思える。
プログレッシブロックは1970年代に多くの名盤が生まれている。その他の名盤を知りたい場合には、以下の記事が参考になるだろう。
The Bangles – Walk Like an Egyptian (1986)
- アニメシリーズ:3部「スターダストクルセイダース」
- 収録アルバム:『Different Light(邦題:シルバー・スクリーンの妖精)』(1986)
2014年~2015年まで放映された3部「スターダストクルセイダース」の前期エンディングテーマである。
曲はアメリカのポップロックバンド、The Banglesの1986年の2ndアルバム『Different Light(邦題:シルバー・スクリーンの妖精)』収録の「Walk Like an Egyptian」である。
女性によるバンドであり、「Walk Like an Egyptian」は全米でNo.1を記録している。
物語は1988年に、エジプトへと向かう旅である。物語の2年前にリリースされ、かつタイトルがまさに物語を象徴するもので起用されたのではないか、と想像する。
曲はダンサブルなリズムに、どことなくオリエンタルな雰囲気が漂う。しかしThe Banglesの中でも、やや異色の曲のようで、同じタイプの曲を期待するとなかなか見つからないだろう。
アルバム『Different Light』は陽気でストレートなロックナンバーが多く、メロディアスな楽曲はとても心地よい作品になっている。
80年代らしいポップで分かりやすい楽曲が多いグループで、アルバム内では他にも「Manic Monday」が有名である。日本でも、トヨタ・ターセルのCM曲として起用された。
他には1989年の「Eternal Flame(邦題:胸いっぱいの愛)」などのヒット曲がある。
Pat Metheny Group – Last Train Home (1987)
- アニメシリーズ:第3部「スターダストクルセイダース」
- 収録アルバム:『Still Life (Talking)』(1987)
3部「スターダストクルセイダース」の後期エンディングテーマである。
曲はフュージョンバンドのPat Metheny Groupが、1987年にリリースしたアルバム『Still Life (Talking)』収録の「Last Train Home」である。
ブラシを使ったドラムが、列車の進行を思わせるサウンドで、承太郎たちの厳しい戦いの旅のつかの間の休息を思わせるような効果になっている。
そして律儀にも、旅の舞台である1988年付近にリリースされたアルバムからの選曲であった。
アルバム『Still Life (Talking)』は、フュージョンというジャンルにおける名盤の1つである。
フュージョンとは、ジャズやロック、ラテン音楽などを融合したジャンルである。多くがボーカルのない楽曲であり、大衆向けに聴きやすい音楽であるともされる。
フュージョンの中にもクラシック寄り、ソウル寄り、ロック寄りなど、様々な派生ジャンルがある。なおPat Metheny Groupによる『Still Life (Talking)』は、ラテン音楽の要素を感じさせるものだ。
ボサノバなど、ゆったりとしたリズムが心地よい作品になっている。
Savage Garden – I Want You (1996)
- アニメシリーズ:第4部「ダイヤモンドは砕けない」
- 収録アルバム:アルバム『Savage Garden』(1997)
2016年に放映された4部「ダイヤモンドは砕けない」のエンディングテーマである。
曲はオーストラリアのデュオSavage Gardenの1997年の1stアルバム『Savage Garden』に収録された「I Want You」である。
1990年代後半に世界的に人気を博したグループで、「I Want You」は彼らのデビューシングルであった。
4部の舞台は1999年、日本の杜王町であった。街の中で繰り広げられる奇怪な出来事が描かれ、旅を進めていく3部とは異なり、身近に起きるホラー的な要素の強い作品だった。
そして作画も、これまでの作品よりポップかつカラフルなものになり、「I Want You」の爽やかな雰囲気とマッチしている。
Savage Gardenは打ち込みを使ったポップな楽曲が特徴で、ニューウェイブなどの影響も感じさせつつ、一方で落ち着いた雰囲気の楽曲も魅力である。
彼らは2枚のアルバムしか残していないが、2nd『Affirmation』ではアダルト・コンテンポラリー(日本で言うところのAORなど)の雰囲気も感じさせる。
なおSavage Gardenという言葉は、6部「ストーンオーシャン」で「サヴェジ・ガーデン作戦」というタイトルでも登場する。
Jodeci – Freek’n You (1995)
- アニメシリーズ:第5部「黄金の風」
- 収録アルバム:アルバム『The Show, the After Party, the Hotel』(1995)
2018年~2019年まで放映された5部「黄金の風」の前期エンディングテーマである。
曲はR&BグループのJodeciが、1995年にリリースした3rdアルバム『The Show, the After Party, the Hotel』収録の「Freek’n You」である。
5部の舞台は2001年のイタリア、ギャング団「パッショーネ」でDIOの息子「ジョルノ・ジョバァーナ」がギャングスターに登りつめていくストーリー。
主人公がギャングであるというストーリーにマッチした煌びやかで、どこか危険な香りを、メロウなソウルなエンディング曲で表現する面白さがある。
そしてアニメのエンディング曲としてソウルが用いられるのも異例のことだと思われる。
Jodeciはソウルの中でも、甘くメロウな楽曲が多くなっている。アルバムの中では「Love U 4 Life」なども同系統の楽曲である。
ソウルのジャンルには、よりタイトなビートのファンクやヒップホップなども存在するが、Jodeciの場合はかなりメロウな楽曲が多めである。
アルバムを通じても、「Freek’n You」のような曲調が多くなっている。
Enigma – Modern Crusaders (2000)
- アニメシリーズ:第5部「黄金の風」
- 収録アルバム:アルバム『The Screen Behind the Mirror』(2000)
2018年~2019年まで放映された5部「黄金の風」の後期エンディングテーマである。
曲はドイツのヒーリング・ミュージックのグループEnigmaが、2000年にリリースした4thアルバム『The Screen Behind the Mirror』収録の「Modern Crusaders」である。
5部も後半となり、物語もより緊張感が高まる展開になっている。Jodeciによる煌びやかなソウルから、荘厳かつ緊迫感のある楽曲へのシフトは見事だった。
「Modern Crusaders」では作曲家Carl Orffによる声楽作品『Carmina Burana』がサンプリングされ、コーラスとしてバックに流れている。
「Modern Crusaders」はボーカルありの楽曲だが、Enigmaはインストゥルメンタル中心の音楽グループである。
古典音楽とダンスビートを融合させた、新しい形のヒーリング・ミュージックの先駆者である。アッパーな曲もあるが、静かで癒されるような楽曲も多い。
なお4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する宮本輝之輔のスタンドがエニグマであり、Enigmaから取られている。
※『The Screen Behind the Mirror』のレビューを書いた筆者による記事
Duffy – Distant Dreamer (2009)
- アニメシリーズ:第6部「ストーンオーシャン」
- 収録アルバム:アルバム『Rockferry』(2009)
2022年に放映された6部「ストーンオーシャン」のエンディングテーマである。
曲はシンガーソングライターのDuffyが、2009年にリリースした1stアルバム『Rockferry』に収録された「Distant Dreamer」である。
6部は2011年~2012年のアメリカの刑務所が舞台である。シリーズ初の女性が主人公であり、ますます個性豊かなキャラクター・スタンドが登場する作品になっている。
「Distant Dreamer」が収録されたアルバム『Rockferry』は、2008年イギリスで最も売れたアルバム、世界でも4番目に売れたアルバムだった。
ハスキーでソウルフルなボーカル、楽曲は60年代を思わせるポップス・ソウルが並んでいる。アルバムラストに配置された「Distant Dreamer」はスケール感のあるバラードになっている。
しっとりした楽曲以外にも、「Mercy」などソウル色の濃い楽曲もカッコいい。
2020年にレイプ被害に遭っていたことを告白した彼女だったが、今回のジョジョでの起用で再び注目が集まっている。
次ページ:音楽ジャンル別にみる「ジョジョの奇妙な冒険」登場人物の元ネタ
コメント