デビュー40周年を迎えたシンガーソングライター、音楽プロデューサーの角松敏生。2021年6月19日に横浜アリーナで40周年を記念したコンサートが実施された。
過去にWOWOWで放送された5本のライブの計6番組を3カ月にわたり特集される。
プロデュースや楽曲提供などの活動も幅広く行ってきた角松氏。一方でシンガーとしての角松敏生には、他のシンガーと組んでデュエットを行った曲が多数ある。
今回は角松氏が作曲したデュエット曲をすべてまとめて紹介する。腕利きのシンガーとのハーモニーを楽しめる楽曲は、角松作品の中でもおすすめのものばかりだ。
どのアルバムで入手できるのかなど、情報をまとめている。
- 角松敏生について
- 角松敏生のデュエット曲紹介
- IT’S HARD TO SAY GOOD-BYE(国分友里恵)
- I CAN’T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME(杏里)
- Never Gonna Miss You(吉沢梨絵)
- もどり道(ANNA)
- 風のあやぐ(下地暁)
- Smile(千秋)
- アマミクの珠(千秋)
- 鏡の中の二人(凡子)
- I See The Light~輝く未来~(カバー、千秋)
- DADDY~you’re my shadow~(MAY’S)
- 扉をひらいて(都志見久美子)
- Nica’s Dream(カバー、吉沢梨絵)
- A Night in New York (カバー、あんにゅ)
- まだ遅くないよね(吉沢梨絵)
- It’s So Far Away(小此木まり)
- まとめ
角松敏生について
まずは角松敏生の活動の歴史を、ごく簡単に振り返っておこう。
1981年、日本大学在学中にシングル『YOKOHAMA Twilight Time』、アルバム『SEA BREEZE』でデビュー。
デビュー時から作詞・作曲、3rdアルバム『ON THE CITY SHORE』からセルフプロデュースも行う。
またいち早く、他のアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行い、1983年には杏里の「悲しみが止まらない」がヒットしている。
80年代中盤~後半には、夏を意識したシティポップ路線から、最先端のダンスミュージックを取り入れて、都会的なサウンドを作り上げた。そしてプロデュース業も加速することとなる。
1988年には、中山美穂のアルバム『CATCH THE NITE』がオリコンチャート1位、自身の7thアルバム『BEFORE THE DAYLIGHT〜is the most darkness moment in a day』が2位となる。
また中山美穂のシングル「You’re My Only Shinin’ Star」もオリコン1位を獲得している。
90年代に入ると、内省的な楽曲が増え、自身の音楽に対する限界から1993年の日本武道館公演をもって活動の”凍結”を行う。その後は、歌手活動はしないものの、音楽活動は継続した。
”凍結”中は、新人ボーカリストのオーディション企画VOCALANDを立ち上げ、アルバム『VOCALAND』もリリースしている。
また長万部太郎と言う名前で、バンドAGHARTAを結成。NHKみんなのうたに起用された1997年の「ILE AIYE〜WAになっておどろう〜」がヒット。
V6にもカバーされ、1998年の長野オリンピックではAGHARTAとしてライブ演奏を行った。
※「ILE AIYE〜WAになっておどろう〜」に関する情報をまとめた記事
そして1998年5月の日本武道館公演で、”解凍“を宣言する。1999年の12thアルバム『TIME TUNNEL』以降はコンスタントにリリースを行う。
2001年には活動20周年を記念したコンサートが東京ビッグサイトで行われた。(2日間の予定が初日は台風で中止となり、2年後の2003年にリベンジ公演が行われる)
後に5年ごとに周年の大規模なライブが行われることが恒例となった。
2006年にベーシストの青木智仁、2007年にギタリストの浅野祥之が相次いで亡くなり、”角松バンド”の中心的人物を失うという悲劇を経験する。
作品としては、2000年以降は音楽的に多様なアプローチも導入している。
2002年には民族音楽を大胆に取り入れた『INCARNATIO』、2014年にはプログレッシブロックをイメージした『THE MOMENT』などが制作されている。
2010年以降は、ややオリジナル作品のリリースペースは落としている。その一方リアレンジ・リメイク作品を織り交ぜ、ライブ活動は継続して行っている。
活動初期の楽曲のリメイクに積極的に取り組み、2012年には『REBIRTH 1 〜re-make best〜』、2020年に『EARPLAY 〜REBIRTH 2〜』がリリースされている。
角松敏生のデュエット曲紹介
角松氏のキャリアを振り返ると、自身の名義の作品以外にも楽曲提供やプロデュースを多数行っていることが分かる。
そんな角松氏と関わりの深いミュージシャンとのデュエットは、角松作品の1つの魅力である。力のあるボーカリストとの息の合ったハモりは聴き応え十分だ。
ここからは、そんなデュエット曲の主だったものを紹介していこう。
紹介するのは、角松氏の個人名義の作品に収録され、角松氏と他の誰かがパートを分けて歌っているものだ。そして音源のみならず、ライブ映像に残っているものも紹介しようと思う。
またデュエットは男女2人によるものらしいが、男性2人(デュオ)の作品も紹介する。
デュエットなのかコーラスなのか判断に迷うものもあった。ここでは、2人のボーカルの振り分けが平等なものを中心に選んだ。
なお並び順は大まかに時代順となるように配置した。
IT’S HARD TO SAY GOOD-BYE(国分友里恵)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:レコードシングル『DO YOU WANNA DANCE』(1983)、コンピレーション・アルバム『SUMMER TIME ROMANCE〜FROM KIKI』(1984)、バラードベスト『T’s BALLAD』(1986)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 20th Anniversary Live AF-1993〜2001』(2004)
角松氏のデュエット作品の中でも最も古い楽曲ではなかろうか。シンガーソングライターの国分友里恵氏との王道バラードのデュエットだ。
国分氏は自身の活動とともに、角松氏の作品にもコーラスで参加していた。なお彼女の1983年の1stアルバム『Relief 72 hours』はAORの名盤である。
この「IT’S HARD TO SAY GOOD-BYE」は、AORの影響をかなり色濃く受けたスローバラードだ。繰り返されるソウルフルなサビのハーモニーが素晴らしい。
20周年を記念した東京ビッグサイトでのライブにて、デュエットが実現している。なおスタジオ音源としては、バラードベスト『T’s BALLAD』が完全バージョンとして入手しやすいだろう。
I CAN’T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME(杏里)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:アルバム『COOOL』(杏里、1984)、セルフカバーアルバム『The gentle sex』(2000)、ライブDVD BOX『The 25th Year DVD-BOX TOSHIKI KADOMATSU The Traces of 1998~2006』(2007)
杏里氏のラジオ番組に角松氏が出演したことがきっかけで、角松氏としては初の楽曲提供を行うこととなった。『Bi・Ki・Ni』『Timely!!』の2作でダンサブルな楽曲を提供し、ヒット作となる。
続く『COOOL』も角松氏が制作に関わり、「I CAN’T EVER CHANGE YOUR LOVE FOR ME」を提供している。本作収録のバージョンは、杏里氏ソロで歌ったものだ。
そして角松氏が提供した楽曲をセルフカバーアルバム『The gentle sex』にも収録された。しかしこちらは角松氏がソロで歌っているものだ。
ではいったいデュエットはどこで聴けるのか?
それは通販限定で発売されたDVD BOX 『The 25th Year DVD-BOX TOSHIKI KADOMATSU The Traces of 1998~2006』の20周年の”リベンジ”となった2003年の横浜アリーナ公演のライブ映像だ。
デュエットの印象が強い曲だが、実はデュエットで収録された音源はない。テレビなどでデュエットしたこともあるため、印象は強いがそれぞれのソロで歌われている。
Never Gonna Miss You(吉沢梨絵)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:シングル『Never Gonna Miss You』(吉沢梨絵 Duet with KADOMATSU.T、1997)、アルバム『VOCALAND2 〜Male,Female & Mellow〜』(1997)、ライブBlu-Ray/DVD『TOSHIKI KADOMATSU CONCERT “He is Back”』(2015)、ライブBlu-Ray/DVD『TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live ~逢えて良かった~ 2016.7.2 YOKOHAMA ARENA』(2016)
角松氏が活動”凍結”中に行っていた新人ボーカリスト発掘企画、VOCALANDの中で制作された楽曲。シングルカットもされ、オリコンチャート29位を記録している。
吉沢梨絵氏は、歌手活動をこのVOCALANDでスタートしており、現在は女優としての活動が多くなっている。
近年の角松氏の作品に久しぶりに参加しており、角松氏の35周年ライブで久しぶりにデュエットを披露している。
印象的なサビのメロディであり、角松氏のデュエット曲の中でも人気の高い楽曲ではなかろうか。筆者もNo.1に挙げたい名曲だと思っている。
音源としてはアルバム『VOCALAND2 〜Male,Female & Mellow〜』が入手しやすい。YouTubeでもオフィシャルに音源を聴くことができる。
もどり道(ANNA)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:アルバム『ANNA』(ANNA、1997)、アルバム『The gentle sex』(2000)、シングル『Always Be With You』(2002)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 20th Anniversary Live AF-1993〜2001』(2004)、バラードベスト『Players Presents TOSHIKI KADOMATSU Ballad Collection』(2007)
VOCALANDの企画でデビューしたANNAによるソロアルバムに収録された楽曲である。ANNA氏は1996年にシングル「Heart to you 〜夜が終わる前に〜」でソロデビューしている。
角松氏によるセルフカバーがリリースされ、2001年の20周年記念ライブにANNA氏がゲスト出演し、デュエットバージョンが披露されている。
なおその時のライブ音源が、シングル「Always Be With You」に収録された。
もともとデュエット用に作られた楽曲ではないため、厳密にはデュエット曲ではないかもしれない。
楽曲としては女性目線から別れを決意するラブソング。「時の轍の向こう 愛が見える」という哲学的とも言える歌詞は、角松氏の歌詞の中で筆者が最も好きなフレーズである。
風のあやぐ(下地暁)
- 作詞:角松敏生・下地暁、作曲:角松敏生
- 収録作品:アルバム『TIME TUNNEL』(1999)、シングル『風のあやぐ』(下地暁、1999)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 20th Anniversary Live AF-1993〜2001』(2004)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 25th Anniversary Performance 2006.6.24 YOKOHAMA ARENA』(2006)、MV集『Sound Movies 1998-2012』(2013)
角松氏が宮古島で出会ったシンガーの下地暁氏とのデュオであり、男性と組んで歌うのはこの曲が初となる。
下地氏は島の言葉「宮古方言」を歌にしており、「風のあやぐ」でも下地氏のパートは方言を用いて歌われている。
都会的なサウンドや世界観を歌ってきた角松氏にとっては新鮮なデュエット曲だ。2002年に民族音楽を取り入れた『INCARNATIO』の布石とも言えるような楽曲で、とても味わい深い。
下地氏のシングルで別バージョンでリリースされている。また20周年、25周年のライブでもデュエットを披露している。
なお現在も交流があるようで、下地暁氏の娘である下地美波のソロデビューシングルのプロデュースを角松氏が担当している。
Smile(千秋)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:シングル『Smile』(2006)、アルバム『Prayer』(2006)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 25th Anniversary Performance 2006.6.24 YOKOHAMA ARENA』(2006)、ライブDVD『Performance 2006″Player’s Prayer”SPECIAL 2006.12.16 NAKANO SUNPLAZA』(2008)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 30th Anniversary Live 2011.6.25 YOKOHAMA ARENA』(2011)、MV集『Sound Movies 1998-2012』(2013)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live ~逢えて良かった~ 2016.7.2 YOKOHAMA ARENA』(2016)
沖縄出身のシンガー千秋とのデュエットソングであり、角松氏としても久しぶりのデュエット曲である。 千秋氏はしゃかりのメンバーであり、角松氏のツアーでコーラスとして参加していた。
映画『ミラクルバナナ』の主題歌となったこの曲は、角松氏としては25周年記念シングルと言う位置づけである。
アルバム『Prayer』にアルバムバージョンとして収録されているが、シングルにあったイントロがなくなっている。
「風のあやぐ」のような沖縄風のメロディではないが、どことなく土着的な雰囲気が漂うのは千秋氏の歌唱によるものだからだろうか。
この曲もサビのハーモニーが見事であり、とても温かい気持ちになれる名曲である。
千秋氏は角松氏のツアーにもコーラスとして参加することが多く、ライブで披露する機会も多かった。そのため25周年・30周年・35周年でデュエットが披露されている様子を見ることができる。
アマミクの珠(千秋)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:ファンクラブ限定販売アルバム『TOSHIKI KADOMATSU I』(2008)
2009年のアルバム『NO TURNS』に先駆けて、いくつかの収録楽曲とカバーや新曲を含めた、ファンクラブ限定販売のアルバムに収録された楽曲である。
新曲で他のアルバムには入っていない貴重な楽曲が「アマミクの珠」である。
アコースティックを中心としたゆったりしたアレンジ、『INCARNATIO』の頃の楽曲を思わせる民族音楽的なメロディが印象的である。
デュエットでは女性シンガーをフューチャーすることが多いが、どちらかと言うと角松氏がメインボーカルのこの曲。
ぴったりと千秋氏がコーラスで寄り添うように歌うスタイルとなっている。
余談であるが、このアルバムのタイトルはずっと『角松』だと思っていたが、実は違うことに初めて気が付いた。
鏡の中の二人(凡子)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:アルバム『NO TURNS』(2009)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU Performance 2009 “NO TURNS” 2009.11.07 NHK HALL』(2010)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live ~逢えて良かった~ 2016.7.2 YOKOHAMA ARENA』(2016)
沖縄出身のシンガー凡子とのデュエットソング。凡子氏は2006年より角松氏のツアーバンドメンバーとして、千秋氏とともにコーラスとして参加していた。
これまでのデュエットはバラード寄りの楽曲が多かったが、この曲はファンク色のある跳ねるビートが特徴だ。リズムとしてはデビュー曲「YOKOHAMA Twilight Time」を思わせる。
男女が交互に歌っていくよりも、ハモる部分が圧倒的に多くなっている。凡子のボーカルは角松氏と非常に相性よく音が重なり合うため、ハモりは1つのボーカルのように聞こえる。
またライブでは2人が手を繋ぐパフォーマンスなどもできて、ライブでも盛り上がる曲となっている。
凡子氏は2010年にソロアルバム『Desert Butterfly』をリリースしており、角松氏がプロデュース・一部楽曲提供も行っている。
I See The Light~輝く未来~(カバー、千秋)
- 作詞:GLENN SLATER、訳詞:高橋知伽江、作曲:ALAN MENKEN
- 収録作品:アルバム『THE MOMENT』(2014)
”プログレッシブ・ポップ”と銘打って作られた大作『THE MOMENT』のラストに配置された楽曲。
アルバム本編からはやや外れた立ち位置で、なぜならディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の主題歌のカバーだからだ。
小此木まり・畠中洋が歌った日本語吹き替えオリジナルに感動した角松氏が、千秋氏とともにカバーをしたものである。
これまでのカバーに比べると、角松氏の歌唱箇所は少ない。オリジナルと同じ振り分け方をしたためであろう。
また女性ボーカルに合わせて角松氏にとって高いキーとなることが多いが、今回はかなり低いキーとなっている。これも原曲にもとづくものである。
なお配信限定で別の女性ボーカルとのデュエットバージョンもある。これはボーカルのオーディション企画が行われて、準グランプリ2人(1人に絞れなかった)によるものだ。
I SEE THE LIGHT〜輝く未来〜 feat.MAO
I SEE THE LIGHT〜輝く未来〜 feat.RINA
DADDY~you’re my shadow~(MAY’S)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:アルバム『Traveling』(MAY’S、2015)、ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live ~逢えて良かった~ 2016.7.2 YOKOHAMA ARENA』(2016)
この楽曲は角松氏名義の作品には収録されていないが、角松氏のライブ映像に収録されているので紹介したい。
デュエットの相手はMAY’Sのボーカル片桐舞子である。MAY’Sは男女2人組の音楽ユニットであり、2014年にはAGHARTAの「WAになっておどろう」のカバーも行っている。
楽曲の内容は、父と娘の絆について歌ったもの。これまでは男女のラブソングをデュエットで歌ってきた角松氏だが、若いシンガーとのコラボらしいテーマの作品となっている。
角松氏の活動35周年でデュエットを披露している。なお片桐氏は、角松バンドのコーラスとしてツアーにも参加しており、アルバム『SEA IS A LADY 2017』にもコーラスで参加している。
扉をひらいて(都志見久美子)
- 作詞・作曲:角松敏生?
- 収録作品:ライブDVD『TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live ~逢えて良かった~ 2016.7.2 YOKOHAMA ARENA』(2016)
Tokyofmで2021年3月まで13年間放送していたラジオ番組「ODAKYU SOUND EXPRESS」。その縁で、2015年に角松氏が小田急ロマンスカーのショートムービーを作成していた。
その際に書き下ろしの新曲が流れていたのが、この「扉をひらいて」である。現在は特設ページもなくなっており、オフィシャルにその映像を確認することはできない。
その後も音源化されることもなかったが、デュエットをした都志見久美子とともに、活動35周年のライブで披露することとなった。
しかしまだ最後まで完成していない楽曲とのことで、途中までの披露で終わっている。
非常に爽やかなダンスチューンになっており、ぜひ完成版を聴きたいところだ。なお都志見氏は、その後角松氏のライブにもコーラスとして参加している。
Nica’s Dream(カバー、吉沢梨絵)
- 作詞・作曲:Horace Silver
- 収録作品:セルフカバーアルバム『Breath From The Season 2018〜Tribute to TOKYO ENSEMBLE LAB〜』(2018)
セルフカバーとカバーで構成され、ジャズ・アレンジを行ったアルバム『Breath From The Season 2018〜Tribute to TOKYO ENSEMBLE LAB〜』に収録された楽曲。
そもそもはトランペット奏者の数原晋が中心のグループTOKYO ENSEMBLE LABの1988年にアルバム『Breath From The Season』が発端であった。
プログラミングとビッグバンドの融合という斬新なアレンジは、今回も健在。デュエット曲は、再びともに活動をすることとなった吉沢梨絵と「Nica’s Dream」である。
オリジナルは1954年に作られたジャズのスタンダードであり、様々なアーティストによって演奏されている。
『Breath From The Season』ではインストだったが、今回はボーカル入りだ。スキャットも含め、かなり複雑なメロディを歌いこなす両者のボーカルは圧巻である。
舞台俳優としてのキャリアを重ねた吉沢氏の段違いのレベルアップを感じることができる。
A Night in New York (カバー、あんにゅ)
- 作詞・作曲:DEBORAH CLARLKIN・RONALD BRUCE ROGERS
- 収録作品:セルフカバーアルバム『Breath From The Season 2018〜Tribute to TOKYO ENSEMBLE LAB〜』(2018)、ミニアルバム『東京少年少女(初回限定盤)』(2019)
Elbow Bones And The Racketeersが1983年に発表した「A Night in New York」のカバーである。
オリジナルを尊重したアレンジであるが、打ち込みのビートを使用したことで、オリジナルよりタイトでダンサブルな仕上がりとなっている。
本家は女性ボーカルであるため、角松氏とデュエット形式になったのだろう。お相手は男女2人組の音楽ユニットコアラモード.のボーカルあんにゅである。
これまでのデュエットの相手からすると、やや意外な感じがするボーカリストだ。今までは”カッコいい系”のボーカルスタイルが多かったが、あえて言えば”かわいい系”である。
しかし歌唱力はさすがであり、その声質もあって、楽しげな雰囲気のカバーになっている。ライブでもオーディエンスを巻き込んでサビを歌える楽曲となっていた。
なおあんにゅも角松バンドのコーラスとしてツアーに参加している。
そしてミニアルバム『東京少年少女』の初回限定盤には「A Night in New York [Extended Club Mix]」として収録され、より原曲に近い構成のアレンジとなっている。
まだ遅くないよね(吉沢梨絵)
- 作詞:KOUTA・角松敏生、作曲:角松敏生
- 収録作品:ミニアルバム『東京少年少女』(2019)
ミニアルバム『東京少年少女』は架空のミュージカルのサウンドトラックというコンセプト盤である。舞台作家のKOUTAの構想をもとに、角松氏がイメージした音を具体化した作品となっている。
歌詞のイメージは女の子同士の友情に関するものだが、広く大事な人との関係について歌ったもの。若々しく前向きな歌詞になっていると言う印象だ。
そしてデュエット曲としても、角松氏のこれまでの作品にはないタイプの楽曲だ。バラードでもなく、AOR的とも異なる、ファンク要素もあるが普遍的なポップスともいえよう。
デュエットの相手は、オリジナル曲としては20年ぶりに吉沢梨絵である。「Never Gonna Miss You」の頃は21歳だったが、ミュージカル女優として経験を重ねた歌唱力の成長が凄まじい。
非常に複雑にメロディが絡み合うアレンジは、彼女の歌唱力あってのものだ。どこかミュージカル的な雰囲気も感じるこの楽曲に相応しいデュエットパートナーだと思った。
It’s So Far Away(小此木まり)
- 作詞・作曲:角松敏生
- 収録作品:ミニアルバム『東京少年少女』(2019)
『東京少年少女』の最後に配置された楽曲ではあるが、世界観はアルバムの内容とはやや異なるもの。
そして「I See The Light~輝く未来~」の日本語オリジナルバージョンを歌った小此木まり(現在は小此木麻里)とのデュエットである。
彼女が『東京少年少女』のコーラスを歌ったのがあまりにも上手だったため、どうしてもデュエットしたいと、1日で書き上げてしまった曲だと言う。
そんな勢いで作られた楽曲は、非常にストレートで胸を打つメロディだ。そしてこれぞ角松デュエットの王道とも言えるバラードであり、待ってました!と言いたくなる内容である。
歌詞は大人が子どもを思う心について歌ったもの。ただそれに限らず、大事な人への思いを歌った普遍的な内容となっているように思えた。
まとめ
今回の記事では、角松敏生氏がこれまで作ってきたデュエットソングを集めて紹介してきた。
こうして歴代のデュエットソングを並べてみると、曲調のバリエーションや歌詞の世界観も大きく広がっていることがわかるだろう。
デュエットというと、男女でラブソングを歌うのが定番である。角松氏もそんな定番のデュエットからスタートして、親子を歌ったものから、より普遍的な絆を歌ったものまで広がった。
さらにデュエットのパートナーによっても、曲調は多様であり、シンガーの合わせて自在に曲を制作していく手腕は、プロデューサーとしての角松氏の得意技と言えるだろう。
そしてやはりデュエットは男女のハーモニーの絡み方が、聴いていて心地よい。3度のシンプルな重ね方も、主と副がたびたび入れ替わるような複雑なハモりも、どちらも楽しいものだ。
2人で作り上げる歌にも様々なドラマがあり、ライブでその現場を見たいものである。
今後角松氏がどんなデュエット作品を作っていくのか、これからも楽しみにしたいところだ。
※【角松敏生】1991年~1993年と言う時期について – 活動”凍結”前夜がなぜ魅力的なのか?
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