僕自身がギターを弾くために、人間椅子の中ではギターボーカルの和嶋慎治氏に関する記事が多くなりがちだ。
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そこで、今回はベース・ボーカルの鈴木研一氏にフォーカスしてみた。鈴木氏と言えば、業界でも屈指のハードロック通で知られる。
過去に各所で鈴木氏が紹介していたハードロックの中から、”クセが強い”バンドの名盤を勝手にセレクトし、紹介していこうと思う。
これを読めば鈴木氏好みのハードロックに詳しくなれるかも?
- ・人間椅子のベース・ボーカル鈴木研一について
- ・鈴木研一に教わる”クセの強い”ハードロックバンドの名盤セレクション
- ・Black Sabbath – Master of Reality(1971)
- ・Budgie – Budgie(1971)
- ・Thin Lizzy – Shades Of A Blue Orphanage(1972)
- ・KISS – Hotter Than Hell(地獄のさけび)(1974)
- ・Blue Oyster Cult – Secret Treaties(オカルト宣言)(1974)
- ・Judas Priest – Sad Wings of Destiny(運命の翼)(1976)
- ・Scorpions – Virgin Killer(狂熱の蠍団)(1976)
- ・Venom – Welcome To Hell(1981)
- ・Tank – Power Of The Hunter(1982)
- ・Mercyful Fate – Don’t Break The Oath(1984)
- ・Slayer – Seasons in the Abyss (1990)
- ・Ghost – Opus Eponymous(2010)
- ・まとめ
・人間椅子のベース・ボーカル鈴木研一について
本題に入る前に、まずは鈴木研一とはいかなる人物なのか。基本情報や人間椅子での立ち位置、ソロ活動などをまとめてみた。
・鈴木研一(すずきけんいち)の基本情報
- 生年月日:1966年3月11日
- 血液型:A型
- 出身地:青森県弘前市
- 出身大学:上智大学外国語学部ロシア語学科
- 主な使用ベース:B.C.Rich Eagle Bass
- その他:甘い物・こってりした食べ物が好みで、酒を飲まない。大学時代は人形劇のサークルに所属していた。山登りや釣りなど、自然に触れることが好き。
・ギター和嶋慎治をハードロックの道に引きずり込んだ張本人?
鈴木氏と和嶋氏が出会ったのは中学時代で、友だちの家でロックの鑑賞会をしている場所で顔を合わせることが多かったらしい。
両者は青森県立弘前高等学校に入学し、高校3年時にともにバンドを組んでいた。
大学受験に2人とも失敗し、浪人時代に文通を繰り返す中で、鈴木氏は和嶋氏に「ブラックサバス ベストセレクション」なるカセットを送っていたそうだ。
和嶋氏はブラックサバスの陰鬱としたサウンドが、浪人の暗い気持ちにマッチし、見事に鈴木氏の啓蒙活動は成功したのである。
ビートルズ、レッドツェッペリン等を好んでいたという和嶋氏のバックグラウンドからすれば、和嶋氏が現在のようなヘビーなサウンドのギターを弾くようになったのも鈴木氏の影響だろう。
一方で、鈴木氏は大学時代に就職活動をして、内定ももらっていたらしい。しかし就職をしないと決めていた和嶋氏と、中古レコード屋でばったり出会ったことがあったと言う。
そこで鈴木氏は運命的な何かを感じ、内定を蹴ってバンドを続けることにした。このエピソードを冗談めかして、鈴木氏は「和嶋くんが悪の道に引きずり込んだ」と語っている。
・人間椅子でのブレない音楽性
人間椅子においては、アルバムの楽曲の大半を和嶋・鈴木の2人で分担して作っている。2人ともハードロックを土台にしながら、その音楽の方向性は異なる。
和嶋氏は常に自分の中で変化を求める志向が強いと思われる。
たとえば、2001年の10th『見知らぬ世界』では、これまでにない明るい曲調の楽曲を多く作った。
2006年13th『瘋痴狂』ではロック落語「品川心中」、2007年14th『真夏の夜の夢』ではロックポエトリー「世界に花束を」など、斬新な楽曲も制作している。
さらに、近年はハードロック色の強い曲調、仏教的な歌詞を前面に出すなど、常に新たな音楽性を求めている。
その一方で、鈴木氏の音楽性は一貫してブレない。
初めて作曲した「デーモン」なる曲は、メインのリフを1st『人間失格』収録の「りんごの泪」、中間部を3rd『黄金の夜明け』収録の「マンドラゴラの花」で使われている。
鈴木氏の作る楽曲は、いつの時代も不気味なハードロック・ヘビーメタルだ。フレーバーとして、歌謡曲やフォーク、演歌等を加えることもあるが、基本にハードロックの血が流れている。
これから紹介する海外の名だたるハードロックバンドの美味しい部分が血肉となり、楽曲制作に活かされている。鈴木氏の楽曲は、まるでいつ行ってもしっかり同じ味が食べられる定食屋のようである。
2019年のアルバム『新青年』でも変わらぬ音楽性を発揮している。
・個人活動「ハードロック喫茶ナザレス」「ナザレス通信」とは?
人間椅子以外の活動をあまり行わない鈴木氏であるが、ライフワークとしてハードロックを伝える活動をしている。
その1つが「ハードロック喫茶ナザレス」だ。ハードロック喫茶ナザレスは鈴木氏がDJとなり、ハードロック・ヘビーメタルをオールナイトで流し続けると言うイベントである。
DJと言ってもクラブのような華やかなイベントを想像してはいけない。お客さんは着席で、思い思いにハードロックをただ聴くと言うイベントだ。
お客さんからのリクエストも受け付けており、筆者も一度参加した際にリクエストを流してもらえた。
鈴木氏が最近気に入っているバンドを知ることができ、またハードロックを掘り下げて聴きたい人には良いバンドを知るチャンスでもある。
そして、最近はWebコラム形式の「鈴木研一のハードロック喫茶ナザレス通信」もBARKSにて連載されている。
こちらは鈴木氏の近況や思い出とともに、必ず内容に関連したハードロックの名盤を紹介している。鈴木氏の人柄がうかがえる朴訥とした文体に、書籍化を希望する声も多い。
・鈴木研一に教わる”クセの強い”ハードロックバンドの名盤セレクション
鈴木氏がライフワークとしているハードロックの啓蒙活動の中で、必ず押さえておくべきバンドとそのアルバムをまとめてみた。選んだ基準としては、”クセの強さ”である。
奇抜な衣装、オカルト的な世界観、漂うB級臭さ…など、独特なバンドを中心に紹介している。また、有名なバンドでも鈴木氏がチョイスする渋いアルバムを取り上げたものもある。
・Black Sabbath – Master of Reality(1971)
人間椅子に多大な影響を与えたバンドである。特にこの3rdは初めて1音半下げチューニングを導入し、人間椅子の楽曲でも多用されるチューニングだ。
ダークでヘビーなサウンド、展開の多さなど2ndまでとはやや異なる作風だ。中毒性のある作品ゆえにファンも多い。
・おすすめ曲 – 8. Into the Void
・Budgie – Budgie(1971)
B級ハードロックの代表格とも言われる、渋いバンドである。ブルース色の限りなく少ないバンドで、独特のヘビーさを感じさせる。
鈴木氏はこの1stの「Guts」という曲を目指して作曲をしていると述べている。かつて青森で放送されたテレビ番組「人間椅子倶楽部」でもカバーされた。
・おすすめ曲 – 1. Guts
・Thin Lizzy – Shades Of A Blue Orphanage(1972)
アイリッシュ音楽を取り入れた、他に似たバンドを見つけられない個性を放つ。ベース・ボーカルのフィル・ライノットの語りかけるようなボーカルスタイルも独特である。
鈴木氏は3rd『Vagabonds of the Western World(西洋無頼)』をよく好きなアルバムに挙げている。
あえて2ndを挙げたのは、テレビ番組「人間椅子倶楽部」で「バカボン、バカボン」と繰り返す曲があると鈴木氏が述べていた。
これは本作収録の「Buffalo Gal」のことで、「バカボン」ではなく「Buffalo Gal」を早口で言ったための空耳ではないかと思っている。
・おすすめ曲 – 2. Buffalo Gal
・KISS – Hotter Than Hell(地獄のさけび)(1974)
鈴木氏が中学時代に初めて出会ったハードロックバンドである。各所でファンであることを語っており、鈴木氏が白塗りをするのは明らかにベースのジーン・シモンズの影響と思われる。
鈴木氏がよくお気に入りのアルバムに挙げるのが、ブレイク前の2ndである。シンプルなロックンロールが多いが、クセになるリフも織り込まれている。
・おすすめ曲 – 2. Parasite
・Blue Oyster Cult – Secret Treaties(オカルト宣言)(1974)
「ヘビーメタル」という言葉が最初に使われたバンド、というエピソードもあるが、なかなか渋いハードロックバンドである。
4th『Agants Of Fortune(タロットの呪い)』が有名であるが、ハードロック好きは初期の3作を好む。
決しておどろおどろしい曲調ではないものの、オカルト的な世界観を歌う。Metallicaもカバーした「Astronomy」が名曲。
・おすすめ曲 – 8. Astronomy
・Judas Priest – Sad Wings of Destiny(運命の翼)(1976)
このバンドも鈴木氏が敬愛するバンドの1つである。ボーカルのロブ・ハルフォードが「メタル・ゴッド」と呼ばれるため、メタルバンドの印象が強い。
しかし初期はハードロックの中に位置づけられるだろう。特にこの2ndは評価が高く、鈴木氏も至る所で好きなアルバムに挙げている。
ロブ・ハルフォードの圧倒的なハイトーンボーカルが堪能できる1枚でもある。
・おすすめ曲 – 1. Victim of Changes
・Scorpions – Virgin Killer(狂熱の蠍団)(1976)
ドイツ出身のハードロックバンドである。いかついバンド名であるが、ある意味”演歌”のような泣きのメロディが特徴的だ。
初期の作品は名盤揃いだが、鈴木氏はこの4thを挙げることが比較的多い。泣きの曲が多い作品もあるが、本作は溌剌としたハードロックも多く聴かせてくれる。
発売当初の衝撃的なジャケット写真は、後にメンバー写真に差し替えられた。
・おすすめ曲 – 2. Catch Your Train
・Venom – Welcome To Hell(1981)
”クセが強い”バンドを挙げれた、間違いなくこのバンドが入るだろう。「録音環境が悪い」ことが特徴と言われるほど、劣悪な音で収録された1stだが、楽曲は粒ぞろい。
スラッシュメタルの元祖とも言われ、後続のバンドには多大な影響を与えた。
2011年「第八回 人間椅子倶楽部の集い」にて、鈴木氏は杉並郵便局の同僚と組んでいたバンド「ゆうメイツ」でVenomのコピーを行っている。
・おすすめ曲 – 7. Witching Hour
・Tank – Power Of The Hunter(1982)
パンクの疾走感をメタルに持ち込んだNWOBHMの流れにあるバンドである。Motorheadの弟分的バンドと言われ、初期の2枚は特にその影響が色濃く出ている。
メンバー変更を経て、メロディアスになった4th『Honour And Blood』も名盤である。人間椅子の10th『見知らぬ世界』収録の「人喰い戦車」は、Tankに影響を受けて作られた。
・おすすめ曲 – 1. Walking Barefoot over Glass
・Mercyful Fate – Don’t Break The Oath(1984)
白塗りメイクに独特の歌唱法のボーカル、キングダイアモンドを中心とするデンマーク出身のバンド。サタニックな雰囲気、プログレに影響を受けた展開の多さなど、クセの強い楽曲を聴かせてくれる。
1st『Melissa』も名盤で、2ndの本作はより北欧臭さを感じる人気作。人間椅子の「踊る一寸法師」等で聴かれる鈴木氏の甲高い笑い声は、キングダイアモンドに大きく影響を受けたものだ。
・おすすめ曲 – 1. A Dangerous Meeting
・Slayer – Seasons in the Abyss (1990)
スラッシュメタルの「BIG4」の中でも、アグレッシブなスラッシュメタルを貫いているバンドだ。
初期はVenomやMercyful Fateの影響を感じつつ、歴史的名盤3rd『Reign in Blood』でエクストリームなスラッシュメタルのスタイルを確立した。
鈴木氏は3rdよりも5thの本作を好んでおり、Slayerの速さとヘビーさのバランスが取れた名盤である。1曲目の「War Ensemble」から、人間椅子の「ダイナマイト」が生まれたと言っても過言ではない。
・おすすめ曲 – 1. War Ensemble
・Ghost – Opus Eponymous(2010)
トビアス・フォージが扮するキャラクターを中心としたスウェーデンのバンド。不気味な見た目ではあるが、70年代ハードロックを感じさせる楽曲が魅力。
鈴木氏は「ハードロック喫茶ナザレス」のお客さんに教えてもらい、すっかりハマったとのこと。ヘドバン Vol.19では鈴木氏がパパ・エメリトゥスのメイクを施し、Ghostの魅力を語っている。
鈴木氏は3rdまでを気に入っており、1stの本作からはB級の良さを感じているという。
・おすすめ曲 – 7. Death Knell
・まとめ
人間椅子のベース・ボーカルの鈴木研一氏から教わる”クセの強い”ハードロックバンドを紹介してきた。
もし「ハードロック喫茶ナザレス」に行く際には、今回紹介したバンドを押さえた上で参加すると良いだろう。
まだまだ紹介しきれなかった良いバンドがたくさんある。筆者自身、ハードロックは全て後追いの世代であり、もともとは全然バンドを知らなかった。
鈴木氏が各所でおすすめしているバンドを1つずつ拾って、知っているバンドを増やしてきた。人間椅子のルーツを感じることができたのも、とても楽しい時間だった。
ぜひ人間椅子とともに、素晴らしいハードロックバンドがより多くの人に知られることを願ってやまない。
※おすすめ曲をまとめたプレイリストはこちら
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