2021年の人間椅子は、22ndアルバム『苦楽』がリリースされ、そのリリースツアーが開催された。久しぶりのライブで、改めて人間椅子のライブの良さを体感した人も多かったのではないか。
アルバム『苦楽』では、ライブで楽しめるような”掛け声”を多く入れたと言う。考えてみると、人間椅子の楽曲には、一緒に歌いたくなる”掛け声”が入っている曲が多数あることに気づく。
そこで今回の記事では、これまでの楽曲で一緒に歌いたくなる”掛け声”が入ったプレイリストを作り、それぞれの楽曲と挿入されている掛け声を紹介する。
ライブで演奏される場面を思い出しながら、楽しめる内容になればと思う。
※曲数が多いため、1/2は2013年のアルバム『萬燈籠』まで、2/2は2014年のアルバム『無頼豊饒』以降の楽曲を紹介している。
ライブで一緒に歌いたくなる”掛け声”が入った楽曲(1/2)
今回の記事を書くにあたり、人間椅子の楽曲を聴き直してみると、様々な掛け声があることが分かった。一緒に口ずさめるものを入れていくと、膨大な数の楽曲になってしまった。
そこで、”掛け声”に入れるものを絞りたい。筆者の独断ではあるが、以下のような点を意識しながら、合計36曲を選んだ。
- 「ハイ!」や「オー!」など、意味のない言葉が、効果的に用いられているもの
- 意味のある言葉の場合、メインのボーカル以外がユニゾンで叫ぶもの
- とにかく”楽しそうな”もの
古い楽曲から順に並べている。1/2は2013年のアルバム『萬燈籠』までの楽曲である。
初期は鈴木氏ボーカルの楽曲で掛け声が多めだが、徐々に和嶋氏の楽曲でも増えていく印象である。
※ライブで一緒に歌いたくなる”掛け声”が入った楽曲Spotifyプレイリスト
猟奇が街にやってくる
- 作詞・作曲:和嶋慎治
- 収録アルバム:0thアルバム『人間椅子』(1989)、ベストアルバム『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
インディーズからリリースされた通称”0th”アルバム『人間椅子』収録の初期の楽曲。2009年のベストアルバム『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』に再録された。
冒頭のリフから掛け声が入っており、少し気の抜けた感じが面白い。サビの「猟奇を見せよう」も一緒に歌いたくなるポイント。
ライブのアンコールなどに演奏され、軽快に盛り上がることができる曲だ。
りんごの泪
- 作詞:和嶋慎治、作曲:鈴木研一・和嶋慎治
- 収録アルバム:1stアルバム『人間失格』(1990)、ベストアルバム『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤』(2019)など
ベース・ボーカル鈴木氏が初めて作ったリフがこの曲。人間椅子が初期からずっと演奏し続けている代表曲。
サビの「りんごりんごりんご」もそうだが、後半部分のギターソロ前のリフで「おい!おら!」と掛け声が挿入されている。お祭り的な盛り上がりで楽しい。
ヘビーな人間椅子に対比して、楽しい人間椅子パートを担っている楽曲である。
※【アルバムレビュー】人間椅子 – 人間失格(1990) アルバムとしての魅力と、その歴史的な意義
爆弾行進曲
- 作詞:和嶋慎治、作曲:鈴木研一・和嶋慎治
- 収録アルバム:2ndアルバム『桜の森の満開の下』(1991)
戦争について歌った楽曲であり、アップテンポでライブでも大いに盛り上がる楽曲。
掛け声で言えば、中間部の行進曲風のリフの間に「はい!」の掛け声が入っている。また「突っ込め!突っ込め!」もライブでは一緒に盛り上がりたいところ。
幸福のねじ
- 作詞・作曲:和嶋慎治
- 収録アルバム:3rdアルバム『黄金の夜明け』(1992)
シングル曲にもなった、人間椅子のライブの定番曲である。スラッシュメタル風のリフと、ややプログレ風味の複雑なフレーズが人間椅子らしい。
掛け声は、Aメロの中に入っているだけだが、ライブでは冒頭のリフから掛け声が入ることがよくある。掛け声を言ったり、首を振ったりとライブではとにかく忙しい曲である。
もっと光を!
- 作詞:和嶋慎治、作曲:鈴木研一・和嶋慎治
- 収録アルバム:4thアルバム『羅生門』(1993)
シングル化され、清水宏のオールナイトニッポン・オープニングテーマに起用された。
「なぜ!」の部分は歌詞であるが、掛け声として一緒に叫ばずにはいられない。2番は色を順番に言っていくのだが、しっかり頭に入っている人はなかなかの人間椅子マニアであろう。
かつてはライブ定番曲だったが、近年は演奏頻度が少なめ。アルバム『苦楽』発売ツアーにて、会場によっては久しぶりに演奏された。
どだればち
- 作詞:和嶋慎治、作曲:鈴木研一・和嶋慎治
- 収録アルバム:5thアルバム『踊る一寸法師』(1995)、ベストアルバム『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)など
津軽弁で書かれた歌詞が特徴の楽曲。近年もライブで演奏される頻度は高めである。
冒頭のリフから合いの手のような掛け声が入っている。「あらどした」の掛け声は、各々の言い回しの個性が出るところだ。
掛け声を楽しんだ後は、後半では和嶋氏によるアドリブが続くのがライブの定番だ。
※【人間椅子】ついに復活の大名盤『踊る一寸法師』レビュー+UHQCDとオリジナル盤の音質比較
地獄
- 作詞・作曲:鈴木研一
- 収録アルバム:6thアルバム『無限の住人』(1996)、ベストアルバム『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤』(2019)など
鈴木氏による”地獄シリーズ”の第1弾となる楽曲。スラッシュメタル風でありながら、中間部には”時報”をイメージしたプログレッシブな展開も面白い。
掛け声は冒頭のリフの部分に登場。掛け声の部分は短いものの、イントロから非常にテンションが上がる掛け声である。
※【アルバムレビュー】人間椅子 – 無限の住人(1996) 初のイメージアルバム、そして人間椅子の音楽性を広げた名盤
地獄風景
- 作詞・作曲:鈴木研一
- 収録アルバム:9thアルバム『怪人二十面相』(2000)、ベストアルバム『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』(2014)など
”地獄シリーズ”の楽曲であり、地獄における運動会をイメージした歌詞である。鈴木氏お得意のスラッシュメタルで、イントロは三三七拍子になっているのが面白い。
掛け声はイントロ部分であり、「地獄」と同じパターンになっている。「奈落のゴールにまっしぐら」の部分も、つい一緒に歌いたくなる。
また後藤マスヒロ氏の怒涛のドラムも楽しめる楽曲になっている。
東洋の魔女
- 作詞:和嶋慎治、作曲:鈴木研一
- 収録アルバム:11thアルバム『修羅囃子』(2003)
昭和30年代に活躍した女子バレーボールチームの通称からタイトルを借りている。鈴木氏が1曲目にヘビーな曲を担当する流れが続いていたころの曲である。
ヘビーな曲の中に、「ベイべ、ベイべ」の合いの手は、少し気の抜けた感じで斬新だった。
長らく光の当たらない曲だったが、2018年の『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』にMVが収録され、久しぶりにライブでも披露された。
野球野郎
- 作詞:和嶋慎治、作曲:後藤升宏
- 収録アルバム:11thアルバム『修羅囃子』(2003)
人間椅子には珍しいスポーツを題材にした楽曲。それでもベースボールを野球と訳した正岡子規を扱うなど、文学的な味わいも込めている。
印象的な掛け声「ワンストライク!」~「バッターアウト!」が挿入されている。ここで野球野郎はバッターではなく、ピッチャーであることが分かる。
ちなみにこの掛け声の収録には、スタッフの川端さんも参加していると言う。
二十一世紀の瘋痴狂
- 作詞・作曲:和嶋慎治
- 収録アルバム:13thアルバム『瘋痴狂』(2006)
Johnny Winterの「Rock and Roll, Hoochie Koo」に影響を受けて作られた楽曲。和嶋氏のブルース色が強く表れている。
掛け声はBメロの後ろで「ローリン、ローリン」と歌われている。またサビの「二十一世紀の瘋痴狂」もコーラスとして挿入されており、一緒に歌えるパートは多くなっている。
この頃から少しずつ人間椅子の楽曲も、ライブで盛り上がれるような掛け声が増えてくる。
無慈悲なる青春
- 作詞:和嶋慎治、作曲:ナカジマノブ
- 収録アルバム:13thアルバム『瘋痴狂』(2006)
ナカジマ氏が人間椅子に加入して、初めて作曲で参加した楽曲。鈴木氏がいつも担うスラッシュメタル枠を、今回はナカジマ氏が担当している。
「青春の~」の前の部分で、「はい」の掛け声が挿入されている。あまりテンションの高くない掛け声が面白い。
あまり演奏されることがなくなってしまい、ファンクラブの集いで演奏されることがある。
猿の船団
- 作詞:和嶋慎治、作曲:ナカジマノブ
- 収録アルバム:14thアルバム『真夏の夜の夢』(2007)
2作連続でナカジマ氏が作曲を担当し、今作では軽快なロックンロールナンバーとなっている。映画『猿の惑星』の世界観をモチーフに、和嶋氏がコミカルな歌詞をつけている。
掛け声はいくつか挿入されており、「猿の船団」や「地球を返せ」、その後の「うーぱー(と言っているかわからないのだが)」など、ライブでも一緒に楽しめる楽曲である。
狂ひ咲き
- 作詞・作曲:和嶋慎治
- 収録アルバム:ベストアルバム『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
20周年を記念に作られたベストアルバムに、書き下ろしの新曲として収録された。これまでの人間椅子の楽曲に出てきたようなフレーズが散りばめられている。
掛け声の箇所は少ないが、サビの合間に「うぉーうぉー」という掛け声が挿入されている。あまりライブで披露される機会は少ないが、時々レア曲として披露される。
冥土喫茶
- 作詞・作曲:鈴木研一
- 収録アルバム:15thアルバム『未来浪漫派』(2009)、ベストアルバム『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』(2014)
和嶋氏のカラーが強い『未来浪漫派』の中で、ひときわ鈴木氏らしさが光るスラッシュメタル曲。”メイド喫茶”とかけたタイトル、描写的な歌詞と鈴木氏の個性が光る。
掛け声は「黄泉の国のすぐそこ」の前の部分に、「だい」(表記は不明)と叫ぶような声が入っている。漢字なのか、それとも”Die”なのか、気になるところではある。
泣げば山がらもっこ来る
- 作詞:和嶋慎治、作曲:鈴木研一
- 収録アルバム:16thアルバム『此岸礼讃』(2011)
「どだればち」以来の、津軽弁による歌詞が特徴的な楽曲。またタイトルと同じ表現は、6thアルバム『無限の住人』収録の「もっこの子守唄」に登場している。
掛け声は「山がらもっこ来るぞ」の部分で、威勢の良い「はい」が挿入されている。Motörhead風の曲で盛り上がる曲だが、ライブでの演奏頻度は低い。
ねぷたのもんどりこ
- 作詞・作曲:鈴木研一
- 収録アルバム:17thアルバム『萬燈籠』(2013)、ベストアルバム『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』(2014)
鈴木氏が愛する弘前のねぷた祭りの中で、戻り囃子のリズムを冒頭に持ってきた曲。ねぷたのグロテスクな絵の世界観と、人間椅子の楽曲が見事に融合した名曲。
冒頭の鈴木氏の合いの手、そして「空が鳴る」の部分の和嶋氏の合いの手など、盛り上がりポイントが多数。ねぷたとB級メタルの両方を楽しめると鈴木氏も太鼓判の1曲。
新調きゅらきゅきゅ節
- 作詞・作曲:和嶋慎治
- 収録アルバム:17thアルバム『萬燈籠』(2013)、ベストアルバム『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』(2014)
北島三郎のデビュー曲「ブンガチャ節」をメタルで表現した曲。ライブの前半でも、後半でも演奏される万能タイプの楽曲である。
それもそのはず、「きゅっきゅきゅー」や「ぶんがちゃっちゃ」などユニークな掛け声が散りばめられている。曲調としては「幸福のねじ」を新しくしたような印象である。
ライブで一緒に歌いたくなる”掛け声”が入った楽曲(2/2)へ
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