【アルバムレビュー】人間椅子 – 無限の住人(1996) 初のイメージアルバム、そして人間椅子の音楽性を広げた名盤

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人間椅子
画像出典:Amazon

活動歴30年を超える日本のハードロックバンド人間椅子その活動は一貫したものである。活動休止がなく、1,2年に1枚ずつオリジナルアルバムを出し続けてきた。

日本文学からタイトルを借りた、おどろおどろしいハードロックを鳴らし続けてきた音楽性も一貫している。その中で唯一1枚だけ、漫画のイメージアルバムを作ったことがある。

それが今回取り上げる1996年のアルバム”無限の住人”である。この記事では、”無限の住人”の全曲レビューと、全体レビューを行っていきたい。

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イメージアルバム『無限の住人』とは?

  • 発売元:ポニーキャニオン
  • 発売日:1996年9月20日、2008年9月17日(再発)、2020年8月19日(再々発)
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター、ボーカル、鈴木研一 – ベース、ボーカル、土屋巌 – ドラムス

前々作の4th『羅生門』でメルダックとの契約が終了した人間椅子は、活動の舞台をインディーズに移していた。そして1995年にフライハイトより5thアルバム『踊る一寸法師』をリリース。

翌1996年にリリースされたのが『無限の住人』である。漫画『無限の住人』の作者である沙村広明氏は、人間椅子のファンであり、イメージアルバムの制作を人間椅子に依頼したという。

一応、漫画『無限の住人』の”イメージアルバム”ではあるが、楽曲は漫画の内容をなぞったものではない。人間椅子のオリジナルアルバムとして聴いても、違和感のない内容となっている。

ただし漫画の世界観とかけ離れた内容はNGとなっていたようで、鈴木氏の”パチンコシリーズ”などは登場せず、江戸時代頃までの日本を舞台にした楽曲が多くなっている。

近年は廃盤となっていたが、2020年に全編リマスターによる再販が行われた。これはアニメ『無限の住人 -IMMORTAL-』の第2シーズンの主題歌を人間椅子が担当したことがきっかけであった。

リマスター盤には、シングル『刀と鞘』に収録されていた「桜下音頭」、そしてアニメ主題歌「無限の住人 武闘編」が、ボーナストラックとして収録されている。

※リマスター盤を聴いた雑感について、以下の記事にまとめている。

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アルバム『無限の住人』全曲レビュー

続いて、『無限の住人』に収録されている全楽曲のレビューを行う。今回は2020年のリマスター盤に収録されたボーナストラックも含めて行っていく。

なお、各楽曲の細かい情報については、既に以下の記事にまとめている。この記事では、情報以外の部分で、各楽曲の考察をまとめてみた。

以下が各楽曲の作詞・作曲と演奏時間の情報である。

no.タイトル作詞作曲時間
1.晒し首鈴木研一鈴木研一6:59
2.無限の住人和嶋慎治和嶋慎治4:56
3.地獄鈴木研一鈴木研一3:51
4.蛮カラ一代記和嶋慎治鈴木研一・和嶋慎治4:47
5.莫迦酔狂ひ和嶋慎治和嶋慎治7:55
6.もっこの子守唄和嶋慎治和嶋慎治2:33
7.刀と鞘鈴木研一鈴木研一4:24
8.辻斬り小唄無宿編和嶋慎治和嶋慎治3:25
9.宇宙遊泳和嶋慎治鈴木研一6:53
10.黒猫和嶋慎治和嶋慎治8:45
11.桜下音頭沙村広明沙村広明・和嶋慎治4:55
12.無限の住人 武闘編和嶋慎治和嶋慎治4:07
   合計時間63:32

晒し首

人間椅子のアルバムとしては珍しいタイプの楽曲で幕開けとなる。ハードなリフで押し進めるタイプではなく、歌モノとしての要素が強い曲である。

楽曲としては、鈴木氏らしく晒し首の様子を視覚的に連想させるような歌詞である。しかしメロディや演奏からは、哀愁を感じるような”泣き”の要素が強い。

実によくできた名曲だと思う。Black Sabbath譲りのパワーコードリフ、Judas PriestやIron Maidenばりの疾走感、そして演歌やフォークソングのような哀愁が見事に融合している。

そして和嶋氏のギターも楽曲に花を添えている。テクニカルなフレーズと泣きのフレーズのバランスが絶妙だ。

おどろおどろしいだけが魅力ではない、人間椅子の幅広さを感じさせる名曲である。

無限の住人

2曲目はアルバムタイトルを冠した楽曲であるが、「晒し首」に続いて歌モノの楽曲だ。随所に和風の音階を散りばめながら、フォーク的な要素もある佳曲である。

前半と後半で大きく雰囲気が変わる曲である。前半ではKing Crimsonのようなギターアルペジオが印象的なAメロから、美しいメロディラインが印象的だ。

後半は一気にアッパーな展開とともに、鈴木氏の小節回しが心地よい。前作の「どだればち」などで見せる鈴木氏の民謡のような歌い方は、人間椅子の1つの魅力でもあるだろう。

地獄

このアルバムの中では、ライブでの演奏頻度が高い楽曲である。スラッシュほどの速さはないものの、アルバムの中では疾走感のある楽曲だ。

そして鈴木氏の”地獄シリーズ”の幕開けであり、鈴木氏が描く視覚的でコミカルな表現がさく裂している。短い曲の中に、時報をイメージした中間部を取り入れるなど、楽曲の構築も素晴らしい。

アウトロ部分での疾走感は、地獄に堕ちていく様子をイメージしているのだろうか。様々な仕掛けがあって、シンプルながらさすがのアレンジである。

蛮カラ一代記

メタルらしい前曲から、一気に軍歌のようなメロディの曲である。『無限の住人』のイメージアルバムということで、和風のメロディラインを意識して作ったものかと思われる。

非常に日本らしさの目立つ曲ではあるが、楽曲はどことなくLed Zeppelin風である。中間部のリフは「Heartbreaker」を思わせる。

そしてラストにアップテンポに展開する部分もとても良い。近年の人間椅子にはあまりない、音数の多いリフであり、しかもリフがハモるなど仕掛けが多く面白い。

莫迦酔狂ひ

ここまで比較的ライトな楽曲が多めだったが、ここで一気にヘビーな楽曲である。”酒”をテーマにしたこの曲は、ヘビーかつプログレッシブな楽曲だ。

冒頭のリフは、8分の7拍子の6拍目からスタートするトリッキーなものである。ヘビーに始まったかと思えば、歌が始まると一気にアップテンポになるなど、展開が非常に多い曲だ。

これこそ、この時期の和嶋氏らしいタイプの楽曲である。そして酔っ払いのフワフワした意識を表現したような、落ち着きのない展開もスリリングだ。

もっこの子守唄

ヘビーな楽曲の後の小休止となるような楽曲である。まるで大正琴の練習曲になりそうな、典型的な和音階のメロディが耳に残る。

海外のハードロックのアルバムには、アコースティックの楽曲が収録されることが多い。本作もその流れを汲みつつ、日本らしい楽曲が配置されている印象だ。

ハードな曲が好きな人からするとスキップしてしまいそうな楽曲だが、アルバムの流れとしてはちょうど良い位置に小休止ができるようになっている。

アルバムのピースとしても重要な楽曲だと思う。

刀と鞘

シングルカットされた楽曲であるが、定番化することはなかった楽曲だ。刀と鞘を男女の関係に見立てた歌詞の内容だが、露骨な表現だという批判もあったのが定番化しなかった要因のようである。

ただ楽曲としてはよくできたものだと思う。印象的なメインリフと、歌謡曲的な展開とメロディが融合し、ハードロックと日本の歌謡曲のいいところをミックスしたような内容となっている。

ここでも和嶋氏のギターソロが冴えわたっている。前半はクリーントーンでブルーステイストなソロ、後半で思い切り弾けるようなソロの流れが心地よい。

辻斬り小唄無宿編

「刀と鞘」の曲調を受け継ぎつつ、より軽快なロックンロールと三味線奏法のギターが印象的な楽曲だ。こういったタイプの楽曲も、活動初期からの和嶋氏らしいものである。

曲調としては、いわゆる”サーフロック”をイメージしたものであるが、違和感なく本作に収録されている。歌詞の内容や三味線ギターを取り入れることで、うまくコンセプトから外れない楽曲となった。

このアルバムではコンセプトがあることで、いかにその中で幅広い楽曲を作れるか、という面白さもあったのではないかと思う。

宇宙遊泳

本作の中で、最もコンセプトから外れている楽曲である。宇宙をテーマにした楽曲だが、「江戸時代から宇宙はあった」と言う理由で収録できたようだ。

Hawkwindに影響されたスペースロックであるが、不思議と違和感なくアルバムの中に収まっている。アルバム全体がゴリゴリのハードロックが少ないため、楽曲としてもバランスはとれている。

鈴木氏の優しげなボーカルとメロディ、そして和嶋氏のどこか雅な歌詞が見事に融合している。宇宙シリーズながら、歌詞は古典のようである点がとても粋な楽曲である。

黒猫

アルバム最後を飾るに相応しく、ヘビーかつ複雑に展開していく力作である。現在に至るまで人間椅子の代表曲の1つとして演奏され続けている名曲だ。

冒頭から奇数拍のブレイクで始まるリフ、そしてヘビーなリフへと展開していく。Black Sabbath直系のリフと、次々展開するプログレッシブなアレンジがかっこいい。

歌詞の世界観は、どことなく異国風でもあり、中間部では和風でもある。1曲の中に様々な顔を見せ、それを1曲にまとめる人間椅子のアレンジ力を感じさせる楽曲だ。

桜下音頭

シングル『刀と鞘』に収録されている楽曲であり、曲の元となるアイデアは『無限の住人』の作者沙村広明氏が作ったものだ。

楽曲としてはディスコ歌謡曲的な内容である。ボーカルをメンバー全員で回すなど、軽快なムードが漂うアレンジとなっている。

人間椅子にしてはポップ過ぎるかもしれないが、こういった楽曲も時には面白い。

無限の住人 武闘編

アニメ『無限の住人 -IMMORTAL-』の主題歌として制作された楽曲である。今の人間椅子をしっかり表現しつつ、アルバム『無限の住人』を思い起こさせる世界観も健在だ。

アルバムには収録されなかったタイプの、スラッシュメタル風の曲調。サビ以上にAメロのリズムと、掛け声の印象が強く、アニメの主題歌としてもインパクト十分だ。

アルバムの時代よりも、むしろ若返ったようなエモーショナルな演奏である。聴き比べると、勢いのある今の人間椅子を感じ取ることができるだろう。

アルバム『無限の住人』の全体レビュー

それでは最後にアルバム全体のレビューを行っておこう。筆者としては、人間椅子のアルバムの中でもNo.1に挙げたいアルバムだ。

それぞれNo.1アルバムはあろうが、アルバム『無限の住人』の良さについて掘り下げてみたい。

イメージアルバムの中で人間椅子の世界観を構築、拡張している

まずはイメージアルバムという制約の中で、人間椅子の世界観を構築している点である。

人間椅子がテーマをオーダーされて、それに合わせて作ったのはこの作品のみだ。ただアルバムを聴く限り、オーダーにもとづいて制作することは楽しい作業だったのではないか。

”和風”や”江戸時代”などのテーマは人間椅子にとって相性の良いものではあるが、全くイコールの世界観ではない。人間椅子の楽曲は、ハードロックを軸に様々なジャンルの要素を取り入れているからだ。

本作でも音楽的な幅広さは健在であり、コンセプトの中でいかに幅を広げられるか、楽しんでいるように見える。全曲レビューで書いたように、軍歌やフォーク、サーフロック・スペースロックと幅広い。

むしろ、歌詞の世界観がコンセプトに縛られる分、あえて音楽的には広げているようにも見える。結果として、人間椅子の音楽性を広げることに繋がったようにも思う。

前作『踊る一寸法師』は、インディーズになったことでのびのびと制作することができたようだ。その流れもあり、人間椅子の世界観を拡張したアルバムとも言えるのではないか。

ポップなメロディとヘビーさのバランス

本作のもう1つの特徴は、ポップさが前面に出たアルバムである、ということだ。

実は人間椅子の作品としては、ゴリゴリのハードロックの楽曲は少なめのアルバムである。70年代ハードロックの、1つのリフで押し進めるタイプの楽曲が実は少ない。

その反面、歌のメロディが印象的な楽曲が多い。アルバム冒頭の「晒し首」「無限の住人」の2曲も、歌メロが耳に残る楽曲であり、リフで押していくタイプの曲でもない。

アルバムの中でヘビーな楽曲は和嶋氏の「莫迦酔狂ひ」「黒猫」であるが、ヘビーさとともに難解さもセットになっており、これらもあまりメタル風味は感じにくい。

後半の「刀と鞘」「辻斬り小唄無宿編」の2曲も、ギターリフは印象的ながら、歌モノのイメージの方が勝る。やはり全体的には、歌が前面に出ている印象のアルバムだ。

ただ展開を多くすることで、ハードロック的な要素を1つの楽曲の中に詰め込むことに成功している。最初に耳に入るのは歌だが、聴き込むとハードロック要素も十分に感じられるのである。

結果的には、ポップさとヘビーさのバランスがとても良いアルバムと言える。それゆえ非常に聴きやすいアルバムとも言えるので、筆者としてはとても気に入っている面がある。

ヘビーな音作りとミックスの問題

最後にサウンド面での特徴であるが、良い点と悪い点があると感じている。

まず良い点としては、各楽器の音作りは独特でヘビーなものとなっており、これぞ人間椅子サウンドになっている。特にギターとベースの音作りがとても良い。

ギターに関しては、4th『羅生門』まではギターのピックアップがリア(硬い音)だったが、5th『踊る一寸法師』からフロント(太い音)へと変更されている。

本作ではヘビーかつソリッドの両者を持ったギターサウンドになっている。言葉で表現すれば”ズブズブ”というような、重くも切れ味のあるサウンドである。

そしてベースも、ソリッドで歪んだサウンドになっている。言葉にすれば”ギリギリ”と歪んだ音がしっかりと聞こえるような、主張の強いベース音に仕上がっている。

これらギターとベースが組み合わさり、ソリッドでヘビーなサウンドに仕上がっている。

ただし悪い点としては、ミックスの問題がある。他の人間椅子のアルバムに比べ、低音がカットされており、ギターの音が小さいという特徴がある。

ソリッドなサウンドな反面で、人間椅子らしいヘビーさはあまり感じられない。またギターの音も控えめで、ハードロックのアルバムとしては物足りない音になっているようにも感じる。

漫画のイメージアルバムとしての意向があり、ある程度ポップにまとめるという方針もあったのではないか。結果的に、歌が目立つように楽器の音は、後ろに引っ込められたように感じる。

歌モノのアルバムとして聴きやすくなっている反面、こうしたサウンド面でロックらしさが弱まっている点は否めない。

2020年の再販でもリマスターで全体の音圧は上がったものの、やはりミックスの影響で迫力不足の感もある。ぜひリマスター盤、リミックス盤の2種類を聴いてみたいところであった。

まとめ

今回の記事では、人間椅子の1996年の6thアルバム『無限の住人』を掘り下げて考察してみた。

人間椅子のオリジナルアルバムとしても非常に充実度の高い作品である。そして漫画のイメージアルバムという縛りがあったからこそ、音楽的にはバリエーション豊かな作品になっている。

そしてイメージアルバムという性質上、普段の人間椅子よりも少しハードロック要素は弱め。その分、メロディの印象的な楽曲が多く、聴きやすいアルバムとなっている。

人間椅子に求める音楽性はそれぞれあると思うが、筆者としてはこういったキャッチーな人間椅子が好きである。そしてキャッチーながら、ハードロックやプログレのツボはしっかり押さえている。

この時期の人間椅子の魅力は、何と言っても音楽的な幅広さと深さだと思う。メルダックの4枚でしっかり音楽性を固めたのち、『踊る一寸法師』以降は自由に音楽性を広げている。

現在の人間椅子は、よりハードで若々しい印象が強いが、むしろこの時代の方が老成したバンドのように思える。それはこの作品含め、前後数作についても同様に言えることだ。

過去の作品を遡ると、また違った人間椅子の魅力に気づくことができる。現在リマスターされた良い音でアルバムを聴けるため、ぜひ『無限の住人』を手に取って聴いていただきたい

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