【人間椅子】ついに復活の大名盤『踊る一寸法師』レビュー+UHQCDとオリジナル盤の音質比較

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2021年11月24日に、人間椅子の過去5作品がUHQCDで再販となった。

そのうち、1995年に発売された5thアルバム『踊る一寸法師』は、長らく入手困難だっただけに、ファンとしては大いに嬉しい出来事だった。

そこでこの記事では、UHQCDで蘇ったアルバム『踊る一寸法師』について、書いてみた。

前半にはアルバム『踊る一寸法師』のレビューを、後半ではオリジナル盤とUHQCDを聴き比べた、音質の違い等について、雑感を書き記した。

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5thアルバム『踊る一寸法師』レビュー

  • 発売日:1995年12月10日、2021年11月24日(UHQCD再販)
  • 発売元:フライハイト、徳間ジャパンコミュニケーションズ(UHQCD再販)
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター、ボーカル、鈴木研一 – ベース、ボーカル、土屋巌 – ドラムス
no.タイトル作詞作曲時間
1.モスラ和嶋慎治鈴木研一5:15
2.暗い日曜日和嶋慎治和嶋慎治6:34
3.どだればち和嶋慎治鈴木研一・和嶋慎治5:37
4.ギリギリ・ハイウェイ和嶋慎治和嶋慎治4:18
5.エイズルコトナキシロモノ鈴木研一鈴木研一6:06
6.羽根物人生鈴木研一鈴木研一5:41
7.三十歳鈴木研一・和嶋慎治・土屋巌鈴木研一4:33
8.時間を止めた男和嶋慎治和嶋慎治5:29
9.ダイナマイト鈴木研一鈴木研一1:54
10.踊る一寸法師和嶋慎治鈴木研一6:28
   合計時間51:54

人間椅子は、これまで所属していたメルダックとの契約が解消となり、インディーズでの活動を行うことになる。結果的には唯一のインディーズからの作品となったのが、『踊る一寸法師』である。

アルバムジャケットには、漫画家大越孝太郎氏が制作したフィギュアが使用されている。インパクトが強すぎて、なかなかにホラーなジャケットである。

筆者が人間椅子を聴き始めた当時、2000年頃にはまだ『踊る一寸法師』は廃盤にはなっておらず、普通に入手できた。いつ頃から廃盤だったのか全く覚えていないが、長らく入手困難盤だった

時々中古販売サイトなどを覗くと、金額が5桁になっており、早く再販になって欲しいなと思っていた。

なお2018年10月24日より音楽配信サイトにてダウンロード販売が開始され、サブスクリプションでも聴くことは可能になっていた。

が、やっぱりファンとしては、あのジャケットも含めて、盤で手元に置きたいのである。今回の再販は大変にめでたい出来事であった。

人間椅子を深め、広げた作品

さて、『踊る一寸法師』がどんな作品なのか、少し押さえておきたい。

かつてのインタビューなどでは、インディーズに行ったことで、メジャーでの諸々の縛りから脱して、自由に作れたアルバムだったと語られている。

確かに各曲を順に聴いていくと、これまでの人間椅子にはなかった自由なモチーフの楽曲が多くなっている

たとえば鈴木氏のパチンコシリーズ「羽根物人生」「ダイナマイト」である。鈴木氏の趣味全開であり、曲調も前者は四畳半フォーク、後者はスラッシュメタルと、これまでにないものである。

また和嶋氏も「暗い日曜日」という、休日に感じてしまう陰鬱な気持ちを歌ったこの曲は、怪奇や幻想を歌ってきた人間椅子としては、あまりにも人間臭い内容である。

このように本作は、怪奇や幻想を歌にしてきた人間椅子のイメージを突き崩す部分もあった。当時の反応はどうだったのかわからないが、多少賛否両論あったのではないかと推測する。

一方で、これまでの怪奇路線も健在であり、「モスラ」「時間を止めた男」「踊る一寸法師」など、独特のヘビーなサウンドはさらに磨きがかかっている。

本作はこれまでの人間椅子を深める一方、新たな世界観に広げていく2つの方向に拡散したアルバムだと言えるだろう。

実は”第2のデビュー盤”?

また、かつてのインタビュー等では、本作が”第2のデビュー盤”とも語られていたようだ。近年の人間椅子を知る人なら、どこかで聞いたフレーズではなかろうか。

くしくも今回同時発売となった、2013年の17thアルバム『萬燈籠』も、”第2のデビュー盤”と語られることがある。

その理由は、OZZ FEST JAPAN 2013に出演した直後の作品であり、イカ天以来の大きな舞台で演奏したことで、再デビューのような気持ちだったという。

『踊る一寸法師』は、そのような華々しい状況ではなく、むしろメジャーから離れるという寂しい状況であったのに、なぜ”第2のデビュー盤”と言ったのか。

それは、やりたい音楽を続ける、という決意の作品だったからではないか。アルバイト生活になっても、好きな音楽をやるために人間椅子を続けるという、覚悟がそこにはあったのだろう。

だからこそ、歌の内容以上に、メンバーの人間性がにじみ出る作品になったのではないかと思う。いばらの道ではあっても、地に足をつけて活動を続けていく、人間椅子の宣言である。

こう考えると、本作の「三十歳」という曲は、メンバーの30歳を記念しただけでなく、バンドを続けていくぞ、という決意が込められているとも聞こえてくる。

現在はメンバーの年齢も50代後半となったが、ここまで活動が続いたのも、『踊る一寸法師』というアルバムをリリースできたことが大きいのかもしれない。

やはり”第2のデビュー盤”と呼ぶべき、重要作なのだと改めて思った。

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オリジナル盤とUHQCD再販盤との音質比較

後半では、これまで入手困難だったオリジナル盤と、新たに発売されるUHQCDの音質の違いなど、気づいた点を書いておきたい。

なおオリジナル盤は、実際には手元になく、実家に保管されている。ただしオリジナル盤を丸ごと音質を下げずにコピーした音源を作成したため、その音源との比較を行う。

オリジナル盤『踊る一寸法師』のサウンド

最初に、これまでずっと聴いてきたオリジナル盤のサウンドの特徴を述べておく。

初めて聴いた時の感想は、いまだによく覚えている。「ドラムがキンキン鳴っている」というものだった。

「シャン」ではなく「キン」と言う感じが言葉にすると正しい気がする。

そのサウンドが宇宙的と言うか、やや不思議な効果を放っているようにも感じた。これについては、録音スタジオか、エンジニアの人の癖なのかなと思う。

と言うのも、日本のバンド怒髪天は、かつて『踊る一寸法師』が発売となったレーベル、フライハイトからリリースを行っていた。

怒髪天の音源を聴いた時にも、同じシンバル類のサウンドだった。

※ちなみに録音はフライハイトスタジオ、エンジニアは田村英章氏であり、確かにRooftopのインタビューを読むと人間椅子、怒髪天のレコーディングをしているそうだ。

田村英章(STUDIO FREIHEIT)('07年6月号)
Rooftop レコーディング・エンジニア列伝 其ノ壱 田村英章(STUDIO FREIHEIT) 本誌の読者にはインディーズ時代の怒髪天の一連の作品でご存知の方も多いだろう、インディペンデント・レーベル“フライハイト”。同レーベルが所有するスタ…

ドラムのサウンドについては、やや賛否ありそうな気がするが、もちろん『踊る一寸法師』のサウンドには良い所もある。

それは、バンドの熱気が伝わってくるような、楽器の音が前面に出ているサウンドである。別の言い方をすれば、ライブで演奏しているような熱気を包んだ演奏が吹き込まれている、と感じた。

各楽器がしっかり分かれて聞こえつつも、凄く近いところでまとまって聞こえているような印象である。だからライブハウスで聴いているような、臨場感がある。

そのためか、オリジナル盤の音源もそれほど古臭い感じがしない。普遍的な音の録り方をしていることで、25年以上前の音源とは思えない音になっている。

さらに、これまでとの変化で言えば、和嶋氏のピックアップがフロントに変わったことで、よりヘビーなサウンドになっている。

そしてギターの音が前面に出ていて、極悪なサウンドになっている。これはエンジニアの人の好みだったのか、ハードロックらしいサウンドに仕上がっており、気に入っている。

和嶋氏のギターのピックアップの使用遍歴をまとめた記事

UHQCD再販盤を聴いた感想

11月24日、UHQCD盤の『踊る一寸法師』が手元に届いたので、全曲を通して聴いた最初の感想を書き残しておきたい。

さっそく1曲目の「モスラ」。それほどオリジナル盤と大きな印象の違いはない。

ある程度予想はしていたが、オリジナル盤も迫力のある音なので、よりクリアになった感触はあるものの、驚くような音の変化というものは感じられなかった。

3曲目「どだればち」までは大きな印象の違いはないが、引き込まれたのは4曲目の「ギリギリ・ハイウェイ」だった。イントロから音の広がり方が全然違う

リマスター音源の良い所は、埋もれてしまって聞こえなかった音が、浮かび上がってくることだと思う。

ダビングが多くされている曲や、奥行きのある曲、また逆に音数の少ない曲なども、大きく変化して聞こえる。

「ギリギリ・ハイウェイ」は、和音の広がりとパワーコードによるタイトなサウンドが入り乱れる。

その切り替わり方が、非常に明瞭になり、パワーコードの部分はより立体的なサウンド、そして音の余白までも分厚く感じられる(不思議な表現だが)のだった。

次に印象的だったのは「羽根物人生」である。この曲こそ、見事に埋もれていた音が蘇っている

特に中間からのダビングギターの音色が美しい。12弦ギターでのリフも、哀愁を帯びたサウンドで、こんなに美しい曲だったかと驚いた。

どうしてもサウンドより、四畳半フォーク的なメロディばかりが耳に行ってしまっていた。しかしこの曲でやりたかったのは、やっぱりハードロックだったのである。

前半はUriah Heepの「Lady In Black」そのものであり、後半のギターソロの雰囲気はおそらくEaglesの「Hotel California」だったのではないか。

こうしたハードロックのオマージュであることは、頭で分かっていながら、オリジナル盤ではそれを音で感じられなかった。

しかし、奥行きのあるサウンド、後半の鈴木氏のベースと和嶋氏のギターソロが絡み合う感動は、UHQCDでのリマスター盤だからこそ感じられたものだと思った。

そして筆者が好きで仕方ない「時間を止めた男」、これもとにかく素晴らしかった。ヘビーなリフと、ダビングされたギターがしっかり響いている。

そして残響を残しつつ12弦ギターでの後半部分、久しぶりに人間椅子の曲で泣いてしまった。

余韻に浸る間もなく、「ダイナマイト」が始まる。この曲も、音が潰れてしまって聞き取れない部分がずいぶんとクリアになっている。

Venomリスペクトだとすれば逆効果かもしれないが、ファンとしては埋もれたギターの音が聞こえるのは素直に嬉しい。

ラストを飾る「踊る一寸法師」も圧巻であった。やはり轟音のリフから、静かになる部分への変わり目が、余韻を残しつつもはっきりと音が切り替わるところが良い。

そして鈴木氏の笑い声までも、非常にクリアに聞こえるのが面白い。アウトロに向けた盛り上がりも、オリジナルより迫力を感じるものであった。

全体を通じて、音の迫力が増したのはもちろんだが、奥行きのあるサウンドの「羽根物人生」「時間を止めた男」など、渋い曲でリマスターの良さを実感できた

もともと和嶋氏のギターが前面に出たサウンドだったので、リフものの楽曲は、オリジナルの良さが引き立っていた。

ひとまず1周しての感想である。聞けばもっと発見があるのだろう。

95年当時に録音されたこの音源に、どんな音が吹き込まれていたのだろうか。リマスター音源は過去の人間椅子と再び出会う場所だと感じた。

まとめ

今回はUHQCDで再販された人間椅子の名盤『踊る一寸法師』について書いた。

人間椅子にとって大きな意味を持つ本作は、人間椅子の世界観を深めつつ、さらに広げていくような挑戦的な内容になっていた。

サウンドも整然としたものではなく、演奏の熱気が伝わってくるような音に仕上がっていた。

UHQCDではその熱量をさらに伝えるとともに、オリジナルでは埋もれてしまった、細部のこだわりを発見することができる

これまでの『踊る一寸法師』では聴けなかった音が聴けたことが嬉しかった。まだまだ発見はありそうであり、聴き馴染んだ曲たちながら、改めてじっくりと耳を傾けてみたい。

今回初めて『踊る一寸法師』を手にするという人はもちろん、長年オリジナル盤で聴き続けてきた人にも、おすすめの音源である。

ぜひ入手できるときに、お早目に入手していただければと思う。

人間椅子のその他の作品を入手する方法についてまとめた記事はこちら

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