【ライブレポート】2022年12月2日(金)浜田省吾 ON THE ROAD 2022 Welcome Back to The Rock Show “EVE” パシフィコ横浜

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浜田省吾

ソングライター浜田省吾は、ソロデビューから2021年で45周年を迎えていた。あまり周年を謳うのは好きではないという浜田氏だが、昨年ツアーが計画されていたものの、中止となっていた。

2022年、ようやく1月に日本武道館公演、そして待ちに待ったツアーが敢行された。ツアータイトルは「ON THE ROAD 2022 Welcome Back to The Rock Show “EVE”」である。

ライブ活動への本格復帰”前夜”といった意味合いだろうか。どんな演出、セットリストになるのだろうか、と期待しつつ、12月2日(金)のパシフィコ横浜公演を観た。

70歳目前と思えぬパワフルなステージ、そしてじっくりと浜田氏の歌が伝わってくるライブだった。そして、”EVE”と名付けた意味合いも、何となく分かるセットリストであった。

今回は12月2日(金)のパシフィコ横浜公演をレポートするとともに、セットリストから今回のツアーの意味合いについて、考えてみたいと思う。

※セットリスト等、ネタバレを含むため、これから公演を観る人は注意されたい。

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ライブレポート:12月2日(金)パシフィコ横浜公演

みなとみらいエリアの中でも海沿いに位置するパシフィコ横浜。12月に入り、途端に寒くなった上、このエリアは海からの風が強く、さらに寒さが増す。

しかし入場すると、中は熱気が伝わってくる。物販には長蛇の列ができており、今日の公演を楽しみに待つファンで溢れ返っている。

筆者はCD・DVD販売に立ち寄ると、「MONEY」が入っている作品はどれか、と店員さんに尋ねている女性に出会った。

「『DOWN BY THE MAINSTREET』に入っていますよ」と言うと、シングル盤はないかと探しているのだと言う。

はて、シングルになっていたかと思い出せず、なかったのでは…と思いながら、会場に入る。筆者が座ったのは、1階席の前方の座席群の1番後ろだった。

今回のライブ、事前に確認したのだが、「隣の人と会話する程度の声量で歌う」「出演者の登場や呼びかけ、ファンサービス、演出効果に反応して、一時的に大きな声を出す」は容認するのだと言う。

まだマスク着用は継続されていたが、ようやく”声出し”できるライブと言うのが嬉しかった。

暗転すると、浜田氏が歌うThe Beatlesの「In My Life」が流れて、メンバーが入場する。1月の日本武道館公演での入場SEと同じである。

【ライブレポート】2022年1月7日 浜田省吾”40th Anniversary ON THE ROAD 2022 LIVE at 武道館”

ふと隣にいた夫婦で来ていたと思われる女性を見ると、もうタオルで目頭を押さえて泣いている。久しぶりの浜田氏の全国ツアー、ようやく見られたという万感の思いなのだろう。

そして1曲目は、町支寛二氏のアコースティックギターが高らかに響き、「光と影の季節」だ。

これほどライブ1曲目に相応しい曲もないのだが、一方で「そう来たか!」という思いもあった。そして声出しできるライブ、真っ先に皆で歌えるパートのあるこの曲を持ってきた浜田氏の心遣いを感じた。

2曲目は「HELLO ROCK & ROLL CITY」。これまた浜田氏のライブには欠かせない楽曲であり、もちろん「Hello, Yokohama City」と歌われていた。

浜田氏にとって、横浜は大学進学のため初めて上京した地であり、縁のある場所である。

ドラムから始まり、ギターリフが入ってくる「この夜に乾杯!」へ。この流れ、聞き覚えがあるなと思ったら、「ON THE ROAD 2006-2007 “MY FIRST LOVE IS ROCK’N’ROLL”」と同じ始まり方だ。

最初のMCでは、公演のガイドラインについて。マスクはあるけど、声は少し出してOKとのことで、周りを思いやりつつライブを楽しみましょう、と語った。

今夜こそ」と「君がいるところがMy Sweet Home」を立て続けに披露。ホーンセクションが映える楽曲が続き、ゴージャスなアレンジを聴くことができた。

今回の浜田氏の歌唱は最初からかなり安定している。1月の武道館では序盤やや本調子ではない様子も窺えたが、やはりツアーで歌い慣れているからか、脂の乗った状態と言った印象だった。

パシフィコ横浜でライブをするのは初めてとのMCがあった。新鮮な気持ちでのライブ、ということもこの日の熱気を高めたのかもしれない。

浜田氏はいったん着席を求め、少しスローな曲を歌うとのこと。「君の名を呼ぶ」「あれから二人」と、大人のラブソングが続く。

この辺りで感じ始めたのは、90年代以降の曲が圧倒的に多いことである。

バンドメンバーのみインストで「我が心のマリア」を演奏後、「光の糸」では震災前の東北の光景が映し出されていた。「我が心のマリア」ではウクライナの風景が流れていた。

旅するソングライター」が続き、アルバム『Journey of a Songwriter 〜 旅するソングライター』の曲順が再現された。

ここも「ON THE ROAD 2015 “Journey of a Songwriter”」の冒頭を思わせ、随所に近年の「ON THE ROAD」を思い起こさせる曲順が見られた。

第1部のラストは「モノクロームの虹」。ストレートなロックナンバーに会場が大いに盛り上がり、第1部が終了。

インターバルでは「40 Years of ON THE ROAD TOUR 1982-2022」として、40年間のツアーを写真で振り返るスライドが流れた。

ここで使われるBGMはおそらくやらない曲だろうと思うと、「MONEY」や「ラストショー」が流れていたのは少し意外な感じがしていた。

波の音からゆったりと「夏の終り」で第2部がスタート。少し意外な選曲だったが、ツアーが始まったのが暑い時期で、今もその感覚であると言う浜田氏のMCに納得した。

その後は、美術館に行った時のエピソードが語られる。大人1枚を買おうとしたら、65歳以上は半額と言われてしまい、いろいろなことが駆け巡ったとのこと。

そして昭和何年生まれかと聞かれて、免許証を見せなければいけないのか、と焦ったが見せなることなく、結局半額で観たとのこと。

また別の公演では、70歳以上が半額で、堂々と大人料金で観たと自慢げに町支氏に話し、笑いが起こった(誕生日の早い町支氏は既に70歳)

「こんなMCから次のロマンチックな曲に入れるのだろうか」と笑いつつ、「横浜のこの時期の綺麗な風景に似合う」と披露されたのは、名バラード「星の指輪」。

幼い子どものいる夫婦の物語、でもこの歌詞はそれぞれが大切な人に置き換えながら、温かい気持ちになれる超名曲である。

今回のライブでも1つのハイライトだったとも言える。(ライブ終了後、みなとみらいを歩くとイルミネーションが美しかった)

この辺りは1曲ずつ浜田氏がMCを挟みながらゆったりと進行する。

眠れない夜にスマホを見た時、人が死ぬ前に後悔することで、大切な人にありがとうと言えなかったこと、というのがなるほどと思ったとのこと。

そこで『初秋』ってアルバム皆持ってる?と尋ねて、なかなかレア曲の「君に捧げるlove song」である。シングルとバラードベスト『初秋』にのみ収録されている楽曲である。

映像にはMVに登場するシーンがイラストで描かれており、味わい深いものだった。

第2部最初に披露された3曲も、90年代~00年代の浜田氏らしいバラードである。少年の成長物語を描いた80年代までから、90年代以降、歌の主人公も成長し、夫婦になり子どもが生まれた。

そんな人生の機微を描いた、ソングライター浜田省吾の真骨頂とも言える楽曲群である。

ここからライブ終盤へと駆け抜ける。浜田氏が自身の”旅”について、目指すところに到達するより、その過程の瞬間を大切に、という趣旨のMCから「ON THE ROAD」である。

「ON THE ROAD」をツアー名に冠して40年、テーマ曲とも言えるこの曲は、いつも心を熱くしてくれるのである。

女性コーラス2人による歌から「I am a father」と、さらに胸が熱くなる展開。長田進氏のギターソロがいつも以上に鬼気迫るプレイだったのが印象的だ。

そのまま「J.BOY」で会場は一体感を増していく。浜田氏から来年のアリーナツアーの告知がなされ、会場はひときわ大きな拍手、平和に音楽を楽しめる時間が続きますようにとMCが締めくくられた。

本編最後は「家路」、圧倒的人気を誇るこの曲が2006年のリメイクバージョンで披露された。

「I am a father」~「家路」まで、”少年の成長物語”という浜田氏の大きなテーマを、時代を遡るかのように配置されたのが、とても印象的であった。

随所に「ON THE ROAD」の歴史、そして浜田氏の歴史を感じさせる仕掛けがなされたセットリストになっている。

ほどなくしてアンコールに呼び出され、メンバーが登場。披露されたのは意外にもFairlife名義で発表されていた「みちくさ」である。

そしてバンドメンバー紹介を行いつつ、次の曲は「この新しい朝に」。2021年に発表された新曲だったが、披露の機会がなく、今回のツアーが初めての生演奏となった。

MVにも使用された渋谷や新宿などの風景がスクリーンに映し出された。

これで終わりかと思いきや、「もう1曲ロックンロール行くかい?」と嬉しいMCから「終りなき疾走」で、一気に会場のテンションは最高潮に。

この曲の見どころの1つは、町支氏のギターソロ。スタジオ音源のスティーヴ・ルカサーが弾いた名フレーズを、今も弾き続ける姿はいつ見てもカッコいい。

アンコール1度目は、2020年以降の浜田氏の活動を振り返るような曲順だった。Fairlife、自身名義久しぶりの新曲、そして1月の日本武道館公演である。

再びアンコール呼び出しに応え、メンバー全員が中央で一礼。そしてラストに披露されたのは「日はまた昇る」だった。

今回のライブが最後のこの曲に集約されていたように感じる。”旅”が進んで行く、ということ、それは立ち止まったり、上手く進めなかったりしても、その瞬間もまた”旅”なのだろう。

そんな人生の歩みを感じさせる味わい深いライブだったように感じられた。

会場を出ると21時30分近く、インターバルがありつつ、22曲・2時間半ほどのライブが、またこうして見られたことが嬉しかった。

会場外には、今回もツアートラックが駐車されている。2人組の男性に声を掛けられ写真撮影を行ったところ、筆者も写真を撮影してもらった。

ライブ前から、会場の中で、そして会場を出てから、短い時間の中で様々な人たちに出会えた。これも浜田省吾氏が繋いでくれたご縁である。

↓<セットリスト(収録作品つき)

No.曲名収録作品
SEIn My Life(The Beatles)
<第1部>
1.光と影の季節My First Love(2005)
2.HELLO ROCK & ROLL CITYDOWN BY THE MAINSTREET(1984)
3.この夜に乾杯!My First Love(2005)
4.今夜こそHome Bound(1980)
5.君がいるところがMy Sweet Home青空の扉〜THE DOOR FOR THE BLUE SKY〜(1996)
6.君の名を呼ぶSAVE OUR SHIP(2001)
7.あれから二人青空の扉〜THE DOOR FOR THE BLUE SKY〜(1996)
8.我が心のマリア (instrumental)初秋(2003)
9.光の糸Journey of a Songwriter〜旅するソングライター(2015)
10.旅するソングライターJourney of a Songwriter〜旅するソングライター(2015)
11.モノクロームの虹SAVE OUR SHIP(2001)
<第2部>
12.夏の終り誰がために鐘は鳴る(1990)
13.星の指輪その永遠の一秒に〜The Moment Of The Moment〜(1993)
14.君に捧げるlove song初秋(2003)
15.ON THE ROADON THE ROAD(1982)
16.I am a fatherMy First Love(2005)
17.J.BOYJ.BOY(1986)
18.家路Home Bound(1980)
<アンコール1>
19.みちくさIn the Fairlife(2020)
20.この新しい朝にこの新しい朝に(2021)
21.終りなき疾走Home Bound(1980)
<アンコール2>
22.日はまた昇るSAVE OUR SHIP(2001)
※収録作品は、オリジナルを優先しつつ、浜田省吾氏による歌唱・現在入手しやすい作品を選んだ
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セットリストから見える”EVE”と名付けた意味とは?

今回のツアーは、ファンクラブツアーを除けば6年ぶりとなる。そしてライブ開催中止を乗り越え、ようやく開催にこぎ着けた公演であった。

そして興味深いのは、タイトルの「Welcome Back to The Rock Show “EVE”」である。

今回のセットリストを振り返りつつ、”EVE”と名付けられた所以について考察してみようと思う。

セットリストの特徴・各パートの意味するところ

今回のツアーのセットリストを見て、まず気付くのは90年代以降のアルバムからの楽曲が圧倒的に多いということである。

具体的に言えば、1996年の『青空の扉 〜THE DOOR FOR THE BLUE SKY〜』以降の楽曲がセットリストの6割を超えている。

それまで”社会派”ロッカーという世間的なイメージがあったが、『青空の扉 〜THE DOOR FOR THE BLUE SKY〜』でもともとのポップなソングライティングに回帰した作風をとった。

後にはまた社会的メッセージの強い曲も作ることとなるが、より自由な曲作りとなった印象である。

現在に至るまでその作風は続いており、今回のツアーでは、今の浜田氏の立ち位置に至る過程を再確認するためのセットリストだったように思う。

また随所に近年のツアーや、浜田氏の活動を振り返るような曲の並びがあることは、レポートの中でも触れた。

例えば以下の並びである。

  • 「光と影の季節」~「君がいるところがMy Sweet Home」:近年のライブでのロックな楽曲の定番のハイライト
  • 「光の糸」~「旅するソングライター」:「ON THE ROAD 2015 “Journey of a Songwriter”」の冒頭
  • 「みちくさ」~「終りなき疾走」:2020年以降の浜田氏の活動を振り返る

以上のように、今に繋がる浜田氏の楽曲を振り返り、次に進むという意味から”EVE”と言う言葉を使ったのでは?と思った。

ソングライターとしての浜田氏自身の中で確立された時期、成熟を始めた楽曲から現在までの歩みを見せたかったのかもしれない。

浜田氏が「今歌いたい曲、聴いて欲しい曲を選んだ」とMCで語っていた通り、何らかの意図があったということは間違いがないだろう。

なぜ90年代以降の曲が多かったのか?に関する考察

加えて、こうした近年の楽曲中心の選曲になった理由として、他の時代の曲を外す要因があったのではないか、とも考えた。

これまでの活動、これからの活動を見据えての今回のセットリストだったのでは?という考察である。

理由①:1月に行われた日本武道館公演とセットで考えられていた?

まずは2022年のライブ活動として、1月に行われた日本武道館公演とセットで考えられているのでは?という点である。

1月6日・7日に行われた日本武道館公演は、1982年に浜田氏が初めて日本武道館公演のセットリストを再現するというユニークな企画ライブだった。

”ON THE ROAD”と名付けて40周年を記念し、その名前がつく直前のライブを再現したのだった。

その際には70年代、80年代始めまでの代表曲が披露されている。たとえば「路地裏の少年」「ラスト・ダンス」「片想い」「悲しみは雪のように」「ラストショー」などである。

これらについては日本武道館で披露されたことで、外されたのかもしれない。唯一重なっているのが「終りなき疾走」だった。

「終りなき疾走」は、浜田氏の”旅”の道のりを歌ったものであり、今回のセットリストを見る限り、そのコンセプトに合致していることで、外せなかったのだろう。

しかし初期の楽曲の多くは、もう振り返ったと言うことで外されたのかもしれない。

理由②:ファンクラブツアー用に80年代後半の曲は温存された?

では80年代後半、ファンからも人気の高い『DOWN BY THE MAINSTREET』『J.BOY』辺りの楽曲が外されたのはなぜだろうか?

これも、今回のコンセプトに沿って決めた結果外れた、と言えばそれまでだが、もう一つ要因があるのではないか、と考えた。

それは開催中止となった、ファンクラブ限定ツアー『100% FAN FUN FAN 2020 “Journey of a Songwriter” since 1975 Welcome back to The 80’s Part-2 “DOWN BY THE MAINSTREET”』の存在である。

2020年秋~冬に行われる予定だったこのツアーで、80年代後半の楽曲に限ったライブを行う予定だった。おそらく選曲もある程度決まっていたのではないか、と推測される。

ファンとしての希望も含め、この企画が立ち消えになった、とは思いたくはない。今は通常のツアーを行うことを優先させる段階であり、それらが終わった際には行われることに期待したい。

それゆえ、80年代後半の楽曲はファンクラブ限定ツアーのために温存する意味もあり、今回はその時期の楽曲を多く含めることはしなかったのかもしれない。

なおファンクラブ限定ツアーでは、70年代・80年代前半の楽曲を披露するツアーは既に行われている。

理由③来年のアリーナツアー開催でオールタイムベスト的なセットリスト?

今回久しぶりの全国ツアーとなったため、選曲はオールタイムベスト的な内容になるのか?と思っていた人もいるのかもしれない。

しかし”EVE”としたと言うことは、その続編があるだろうと予想も立つ。やはり2023年に全国アリーナツアーが予定されていることが、浜田氏の口から告げられた。

そう考えると今回のツアーでは、間が空いたこともあり、これまでの歩みを振り返る、というワンクッション入れる意味合いがあったのではないか、と推測する。

そしていよいよ2023年のツアーにて正式にツアー活動に復帰し、全時代からの選曲となるのかもしれない。

アルバムやツアーなど、コンセプトを持ってそれに沿う楽曲を組む、というプロデューサー的視点を浜田氏は比較的強く持ったミュージシャンであると、筆者は感じている。

そうであればこそ、ライブも1回の内容だけでなく、過去のツアー、そしてこれから行われるツアーと時間軸に並べて見てみるのも面白いだろう。

今回のライブの内容が持つ意味合いは、2023年の全国ツアーが行われて、改めてはっきりと見えてくるのかもしれない。

次のツアーもとても楽しみになる、2022年の「ON THE ROAD 2022 Welcome Back to The Rock Show “EVE”」だった。

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