チケット代高騰問題、ファンの気持ちの収め方は?人間椅子のチケット代の変遷から考える

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コンサートチケットの高騰が止まらない。コンサートプロモーターズ協会の調べでは、チケットの平均単価は2016年の6,502円から2025年には1万740円と約1.7倍に上昇していた。

それでも好きなアーティスト・バンドのコンサートに行くのがファンの心理であるが、正直なところ、こうしたチケット代の高騰をどう捉えているのだろうか。

昔から行っている人なら、明らかに「高くなったな」と感じているはずである。それでも行く、という人は、何かしら心の中で折り合いをつけて、コンサートに行っているはずである。

今回の記事では、前半でチケット代が高騰している客観的な事実についてまとめる。後半では心理的な部分で、チケット代高騰をどうやって心の中で収めるのか、という話を書いた。

一般に言われていることに加え、筆者なりの解釈、そして相対的にチケット代を低く抑えているバンド、人間椅子の事例も取り上げて考察してみた。

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チケット代高騰の主な理由

チケット代は明らかに高騰している。筆者の感覚的にコロナの時期を経て、明確に上昇したような印象がある。

冒頭のコンサートプロモーターズ協会のグラフでも、2021年~2022年頃に大きく上昇しているのが分かる。

当時は会場満員に客を入れられない(感染対策で)ので、その分値段が上がる、と言う理屈が通っていた。が、その後も値段は戻らない場合が多く、むしろさらに値上げが加速している。

コンサートチケットに含まれる費用の内訳

前提知識として、コンサートチケットに含まれる費用は何があるのか、見ておこう。AIのまとめを頼りに、筆者が大まかに再構成した。

  • 出演料(アーティスト・タレントへの報酬、事務所のマネジメント料含む):10% 〜 20%
  • 会場費(会場使用料、付設設備など):10% 〜 25%
  • 運営・制作費(ステージ設営、音響や照明の機材費、人件費):25% 〜 35%
  • その他経費(宣伝・広告、各種手数料など):20% 〜 35%

これは小規模ライブハウスの場合か、ホール・アリーナの場合、ドーム・スタジアムの場合でもまた異なる。

会場が大きくなるほど、会場費や運営・制作費の割合が高く、チケット代だけではペイできずに、グッズ販売などで賄うのだと言う。

チケット代高騰の理由

コロナでの事情ではなく、その後も高騰が続く大きな理由の1つは、運営・制作費と人件費の高騰だという。

ステージ設営スタッフや当日の運営・警備スタッフの人手不足のため、人件費が高騰しているそうだ。

併せてステージ資材、それらを運ぶトラックの運送費用なども全体的に値上がりしている。

会場費用もレンタル料そのものの上昇に加え、電気代の高騰も加わっている。

そしてもう1つ大きな要因が、収益構造の変化である。ストリーミング化によるCD販売の不振で、ライブそのもので稼がなければいけない状況になっている。

かつてはライブがプロモーションであり、CD販売で利益を出す、と言う構造であった。海外アーティストの場合、円安による影響もこれに加わる。

デジタル上に乗せることができてしまう音源の価値はどんどん下がり、相対的に生パフォーマンスの価値が上がり過ぎてしまった、とも言えるだろう。

まとめると、1番の理由は運営・制作費・会場費に関わる値上がり、次いで収益構造の変化によるアーティスト側の値上げと言うことになろう。

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ファンはどうやって気持ちを収めているか?

チケット代高騰の理由を見ていくと、「やむにやまれぬ事情」と言う感じである。また運営・制作費の高騰は、誰しもに降りかかる物価高で、チケット代固有の問題ではない。

コンサートに特有の問題として、やはり最も大きいのは「収益構造の変化」と言うことで、ライブでしか稼げない、と言う事情が最も大きいようである。

AIが回答するファン心理

そんな事情もうっすら知った上での、ファンの心理とはどんなものなのか。まずはAIに聞いてみると、こんな点が返ってきた。

  1. 「推しやスタッフに適正な利益が回り、エンタメの質が維持されるなら仕方ない」と、値上げの構造的理由に納得することで理性を保っている。
  2. 「全通(すべての公演に行く)」を止め、予算の都合上、参戦回数を絞るケースが増加している。
  3. グッズ代や他の出費を削る「予算のトレードオフ」、ライブ前後の外食や、普段の生活費(衣服や食費)を少しずつ節約して相殺する。
  4. 配信ライブや映画館の応援上映をポジティブに活用する。
  5. 「悪質な転売屋に流れるよりマシ」という心理的防衛。

2.3.4.については、心理的なものと言うより、具体的な予算の組み方の問題である。ライブには行くという前提で、他の予算を削ることで帳尻を合わせるものだ。

チケット代自体の高騰をどう捉えるかは、1.と5.である。いずれにも共通する要素は、エンタメの質・維持に貢献できるなら仕方ない、というものである。

ただそこまで俯瞰した視点と言うよりは、「推しが苦しまないなら」「推しが苦しむなら自分が身を切る」と言う感覚なのかもしれない。

人間椅子のチケット代変動の事例から

ではここで筆者が好きなバンド、人間椅子のチケット代変動の事例を見ておきたい。人間椅子は同じ年代のキャリアのバンドに比べ、チケット代が安いことで知られる。

2010年頃から現在に至るチケット代の変動は以下のようになっている。(いずれも前売り券)

  • 2010年〜2012年頃:3,500円
  • 2013年〜2017年頃:4,000円
  • 2018年〜2021年:4,300円〜4,500円
  • 2022年:5,300円(地方)、6,300円(東京)
  • 2024年:5,000円(地方)、6,000円(東京)
  • 2026年秋:6,000円(地方)6,500円〜7,000円(東京、席種により変動)

1万円超えが大きなっている昨今においても、2026年の秋ツアーでついに1,000円ほどの値上げに踏み切って、6,000円~7,000円になったくらいである。

人間椅子の場合、冒頭のチケット代内訳で言うと、小規模なライブハウスの部類に入るので、相対的に運営・制作費は低く抑えることができる。

また人間椅子は芸能事務所に所属しておらず、マネジメント・窓口を株式会社hayaokiに委託しているようである。

こうした少人数での体制だからこそ、実現できるチケット代なのかもしれない。

ファンからは「もっと上げてほしい」と言う声も出ている。その心理としては、他のバンドの相場を大きく下回り、ファンのために無理をしているのではないか?というものだろう。

また人間椅子が心地好く活動できるなら、もっと投資しても構わない、という心理もあろう。

とても分かる心理でありつつ、ここで私たちはいったいチケット代として、何にお金を払う、という心でいるのだろうか、と言う問題が出てくるように思えた。

チケット代として私たちは何にお金を払っているのか?

人間椅子の事例から、筆者はチケット代として私たちは何にお金を使っている感覚なのだろうか、と考えさせられた。

運営・制作費など必要経費と思われるものはさておき、アーティストに対して、つまり推している人たちに対してチケットを「〇〇代」として何だと考えているのか、ということだ。

人間椅子で言えば「チケットをもっと上げてほしい」と言う思い、またAIで返ってきた「推しが苦しまないなら」という思いからは、”投資”あるいは”お布施”のような感覚かと思った。

とにかくアーティストやバンドに頑張ってほしいから、お金を払う、と言う感覚である。これがもしかすると推し活のお金の使い方なのかも?と思ったりする。

しかし元来、ミュージシャンやバンドが出演するライブとは、音楽を表現すること・演奏をすることに対して、お金を払っているものである。

だから「私たちの演奏を生で聴く・観るにはこれぐらいの値段だ」と、アーティスト側が決めて値段設定するものである。

一方で投資やお布施であれば、額を決めるのはお金を払う側である。「もっと上げてほしい」と言った考えの背後に投資やお布施があるのは、この点ではないかと思った。

そうすると、実は演奏を聴く・観ると言ったライブの本分とはややズレた状況になってきている、というようにも思える。(アイドルであればズレていないのかもしれないが)

ライブに行くのと推し活が違うのはこの点だと思う。そして投資やお布施としては、グッズ販売などライブ演奏以外のところで、お金を払えるルートが用意されていることが重要だ。

人間椅子の事例に戻れば、ライブの演奏の対価はあくまでバンド側が考える金額にとどめる、と言うのは筆者はとても支持できる姿勢だと思っている。

ファンが払ってくれるから、というお布施のような感覚に甘えずに、バンドとしての矜持をむしろ感じるところである。

穿った見方をすれば、諸々の値上がりを口実に、ファンがお布施や投資の気持ちで払ってくれるからと、チケット代を釣り上げることもできてしまう。

チケット代高騰も「推しのためなら…」という心理は理解しつつも、本来のライブを観るためのチケット、という点からは微妙にずれる点に、気持ち悪さを覚えていたのだった。

特に音楽のライブにおいては、あくまで演奏を体感するためにお金を払っている、という前提を守ることで、音楽のプロとファンと言う関係が健全であるように筆者には思える。

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