【人間椅子】再ブレイク期を経て”終活期”へ? – ”還暦ツアー”に向けて思うこと

スポンサーリンク

バンド生活36年目を迎えた日本のハードロックバンド人間椅子は、2025年には24枚目となるアルバム『まほろば』をリリースし、ツアーも行うなどなお現役で活動を続けている。

そしていよいよ2026年にはメンバー全員が還暦を迎え、”還暦ツアー”となるライブツアーを軸とした活動が来年は予定されている。

人間椅子は2013年のOzzfest Japan 2013出演を機に再ブレイク、そして2019年には「無情のスキャット」のMVが海外でもバズり、活動の幅を広げてきた時代を経てきた。

しかしその”再ブレイク期”もいよいよ終わりを迎え、次の段階に移ろうとしているのを感じる。

それは『まほろば』ツアー名古屋でのライブでベースの鈴木研一氏が発言した言葉で、「終活モード」に入っている、というものである。

人間椅子メンバーも還暦を迎えるとなれば、いよいよ活動できる期間に限りが見えてきたのは当然と言えばそうである。

そんな人間椅子の活動の”モード”の変化について、今回は”再ブレイク期”を改めて振り返りながら、その後のコロナ期間や現在地について考察しようと言う記事を書くことにした。

終活期”と言うと少し悲しい響きではあるが、これまでとは異なるモードに対して、私たちファンも意識を変化させていく時ではないか、と思ってこの記事を書こうと思った次第である。

スポンサーリンク

今”再ブレイク期”の人間椅子を振り返る

人間椅子の活動の”モード”が変わってきたのを感じている筆者であるが、それは以前の”再ブレイク期”と比較するとよく分かるのである。

筆者が再ブレイク期と呼んでいるのは、およそ2013年~2019年頃に人間椅子への注目度が一気に上がり、活動ペースがとても速かった頃のことである。

そしてずっと右肩上がりに活動規模が大きくなり、リリースした音源のチャートも上がって行く、という時代だった。

そんな右肩上がりだった再ブレイク期の重要な出来事に絞って年表にまとめてみた。

年月日出来事
2009年1月21日ベストアルバム『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』リリース。
同年12月13日・14日「未来浪漫派」ツアーで東京は渋谷O-WESTで2Days(太陽の日・月の日)となる。
2010年12月1日初のライブアルバム『疾風怒濤〜人間椅子ライブ!ライブ!!』をリリース。
2012年11月21日ももいろクローバーZのシングル『サラバ、愛しき悲しみたちよ』に収録された『黒い週末』で和嶋慎治がギター演奏で参加。
2013年5月12日Ozzfest Japan 2013に出演、Black Sabbathと同じステージに立つ。
2013年9月29日・30日「人間椅子レコ発ツアー ~萬燈籠~」の渋谷O-WESTで2Days(おどろの日・どろろの日)がソールドアウト。
2014年1月18日ツアー『バンド生活二十五年 ~ 猟奇の果 ~』でファイナルは渋谷O-EASTへ。
2015年1月24日ツアー『現世は夢~バンド生活二十五年~』ファイナルは渋谷公会堂でソールドアウト。
同年5月13日筋肉少女帯人間で『地獄のアロハ』リリース。
同年11月22日Ozzfest Japan 2015に出演。
2016年2月~11月2-3月『怪談 そして死とエロス ~リリース記念ワンマンツアー~』、6-9月『地獄の道化師』、10-11月『地獄の季節』の計3本のツアーを行う。
2017年11月19日『異次元からの咆哮~リリース記念ワンマンツアー~』のツアーファイナルを東京 Zepp Diver Cityで行い、初のプロジェクションマッピングを使用したライブを行う。
2018年1月13日連続ドラマ『三島由紀夫 命売ります』で主題歌を担当(「命売ります」)。
2019年5月14日「無情のスキャット」のMVをアルバムリリースに先駆けて公開。
同年6月5日21stアルバム『新青年』が自身最高位の14位を獲得。
同年12月13日『バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー』ツアーファイナルは中野サンプラザホール。
2020年2月初の海外ワンマンツアーを敢行。ドイツのベルリン/ボーフム、イギリスのロンドンの3公演。
同年3月「無情のスキャット」のMV再生回数が500万回を突破。

活動規模が大きくなるきっかけを遡れば、2009年の20周年を記念したベストアルバムリリースやそのツアー辺りであろう。

ベテランの枠に入ったことで再評価の機運が高まるとともに、動員がなぜか増え始めたのだった。東京でのライブ会場を見ていくと、明らかにキャパが増えていたのだった。

そしてOzzfest Japan 2013に出演し、敬愛するBlack Sabbathと同じステージで演奏したことが大いに話題を呼び、人間椅子が決定的に注目される機会となった。

今であれば、「人間椅子が出て然るべき」と思われるかもしれないが、当時の雰囲気は「また今回もこういう機会に呼ばれないのか」という後ろ向きなムードがあった。

そんな後ろ向きなムードを吹き飛ばし、人間椅子が文字通り”日の目を見る”ことになったのだった。

2015年にはバンド生活二十五年を記念した渋谷公会堂公演をソールドアウトにし、Ozzfest Japan 2015にも出演し、いよいよ売れっ子街道を突っ走ることになる。

最も忙しかったのではないかと思われる2016年には年に3本のツアーを実施し、その合間にリリースやイベント出演、メディア露出と盛沢山だった。

そして最後の山となったのが、「無情のスキャット」のMV公開と『新青年』リリースの頃だろう。バンド生活三十周年とも重なり、この時もメディア露出がかなり多かった。

さらには「無情のスキャット」が破竹の勢いで再生回数を伸ばし、国内のみならず海外で火が付いた。

それが2020年の初めての海外ツアーに結びついた。ここでコロナの時期に入ってしまい、いったん活動が途切れることとなった。

活動31年目の人間椅子、初の海外進出への道のりとなぜ今海外進出できたのか?

この再ブレイク期の特徴としては、まずはとにかくライブやツアーの本数が多かったことである。毎月何らかのライブやイベントが組まれるほど、出ずっぱりだったイメージがある。

もう1つの特徴は、SNSや動画配信などのリリース・ライブ以外のメディア露出がかなり多かった、ということである。

これはレコード会社の方針でもあったようで、かなりSNSや動画に力を入れたことで、ファンを大きく拡大することに貢献した。

音源やライブの迫力に比して、メンバーの気さくな人柄も伝わったのだった。

人間椅子メンバーもかなり前のめりに活動していたし、レコード会社など周囲もかなりハードな活動を仕向けていた、という雰囲気は今思うとあった。

スポンサーリンク

コロナ期間を経て”終活期”へ?

再ブレイク期を経た後、コロナ期間がやってきた。否応なしに活動ペースが落ちる時期ではあったが、コロナの影響だけではない活動のモードチェンジが行われた感じがあった。

そして三十五周年から『まほろば』リリースへと時間が進むにつれ、新たなモードの方向が見えてきたのだった。

ここではコロナ期~三十五周年頃の雰囲気と、『まほろば』リリースツアーで見えてきたモードの転換について書くことにする。

コロナ期間~バンド生活三十五年の時期

2020年の春頃になると、世の中全体がコロナの時期に入り、音楽業界は全体的に活動ストップを強いられた。

人間椅子も予定していた2020年のツアー(『バンド生活三十年いまだ継続中~人間椅子お礼参りツアー』)が中止となった。

世の中の流れに乗じて、ネット配信番組や無観客配信ライブなども実施してみたものの、やはり生のライブができない状況で、配信だけ行うことには納得がいっていなかったようだ。

三十五周年~海外ツアーでちょうど活動に一区切りがついたタイミングで、コロナによって活動がストップしたことは、人間椅子にとっては活動のモードを考え直すのに良かったのかもしれない。

再ブレイク期のような超売れっ子的なペースの活動はいつまでも続けられないだろうし、それまでの努力が実って、かなりファンが安定的についた状態にはなっていたように見えた。

おそらくこの時期に活動のモードを変えよう、という話し合いなりが行われたのだろう、と推測する。

ただファンの側としては、コロナ期間であるから活動ペースが落ちているのか、意図的に落としたのかは、この時点ではよく分からなかった。

2021年にはアルバム『苦楽』リリースとツアー、2022年には『踊る一寸法師』の再発記念ツアー・『秋のワンマンツアー ~闇に蠢く~』の2本が行われ、活動実績も十分にあった。

2023年には『色即是空』をリリースし、世の中的にもコロナ期間が終わり始め、人間椅子の活動もまた”再ブレイク期”のように戻って行くのか?と思われた。

しかし『色即是空』リリースツアーでは、ベースの鈴木研一氏が持病の脊柱管狭窄症が悪化し、椅子に座った状態で演奏する場面が多く見られた。

人間椅子メンバーも還暦に近づいてきており、やはり活動ペースを落としていくのかな、と感じた1つのタイミングではあった。

2024年はバンド生活三十五年を記念する年だった。ここで活動ギアが一気に入るかどうかを筆者は注目していた。

結果としては、再ブレイク期のような賑やかな活動ペースではない印象を持ったのを、当時記事に書いていた。

【人間椅子】静か過ぎる?バンド生活35周年の幕開け – 人間椅子の現在地とこれから

とは言え、2024年も年に2本のツアーや映像作品『バンド生活三十五年 怪奇と幻想』リリースと十分な活動はしていた。

しかしやっぱり以前とは明らかに活動のモードが違っているのを、この頃に明確に感じていた。

”終活期”への移行?

人間椅子が提供するコンテンツと、ファンの求めるものと言う”需給”を考えた時、今の人間椅子は需要過多の状態だな、と思ったことがある。

ファンの側は、再ブレイク期を経てきた人もそれ以降の人たちもいるだろうが、人間椅子に対する期待度は物凄く高いように感じる。

ライブがあれば必ず参加し、もっとライブやイベントをやって欲しいと思っている人も多いように感じられる。

ただ再ブレイク期のような、ハイペースでのライブ活動やメディア露出をしまくるようなことはしなくなった。

筆者の印象では、人間椅子側の活動ペースは再ブレイク期以前とまではいかないまでも、明らかにゆっくりになっている。

とは言え、ファンの側からの熱量は依然として高く、全く低迷していると言う訳ではない。

ただアルバムチャートを見ると、『新青年』までずっと右肩上がりだったのが、緩やかに低下していると言う側面もあるのだ。

(『苦楽』:20位、『色即是空』:22位、『まほろば』:24位)

つまり、再ブレイク期のようなずっと右肩上がりに、活動規模を増やして新規ファンを次々獲得していくモードは終わっている、ということであろう。

それよりも活動を”継続”していくことが重要になってきているように思える。

そして2025年の『まほろば』ツアー名古屋公演に参加した際、ベースの鈴木氏はライブ活動に対して「終活モード」であることが、和嶋氏の口から語られたのだった。

これから無限にライブ活動ができる訳ではないのだから、300曲近い持ち曲のうち、なかなか披露できていない曲を惜しみなく披露していくのだと言う。

なお鈴木氏の発言について、筆者の主観ではあるが、その場の思い付きで言っている感じではなく、日頃メンバーとこの点については語っているような雰囲気だった。

※ライブレポートはこちら

いつ活動終了となってしまうか分からないから、悔いのないようにやれることはやっていく、という”終活期”に入ったのだ、とその時思った。

加えて、これまでの活動を振り返りつつ、総決算のような形でライブが行われていくことが予想された。

もちろん新作がリリースされることはあるだろうし、新しいことをやらない、という意味ではないだろう。

ただ過去の作品をライブで聴きたいファンのために、あらゆる楽曲を披露していくには、そちらを優先して行わないと、残された時間は限られている、ということである。

まとめ – ”還暦ツアー”に向けて

今回の記事では、再ブレイク期にあった人間椅子は、コロナ期間を経るとともに活動のペースを落とし、今は”終活期”に緩やかに入ったのではないか、と書いた。

ただいきなりライブ活動が終わるとか、急激な変化を指すものではないだろう。

2026年はメンバー全員が還暦を迎えるため、”還暦ツアー”を行うことがライブMCの中では語られていた。

新譜リリースのツアーではないため、これまでと同様に、新旧の定番・レア曲を織り交ぜたセットリストになることだろう。

一方で人間椅子の活動があと何年続くのか、ということも考えてしまう。10年なら70歳で続けることもできそうだが、15年はどうか、20年は無理だろう…となってくる。

人間椅子が今更メンバーの関係悪化や、金銭トラブルで決裂することはあまり想像できない。誰かがバンド活動できなくなるまでは続けてくれるのではないか、と思っている。

そうなると、人間椅子より年上のファンの方々は、もしかすると人間椅子の活動が終わるその瞬間を見届ける前に、人生を終えることになるのかもしれない。

(そんなことを考えるのも、母が今年亡くなったからである)

逆に今20代~40代くらいのファンは、人間椅子の活動終了を見届けられる可能性が高いだろう。

人間椅子もここまで続いたので、ぜひ最後まで見届けられる人には一緒に見届けていただきたい思いが強くなっている。

人間椅子メンバーだけでなく、私たちファンも、人間椅子のファンであることを継続することが大事な段階となってきた、と言えるかもしれない。

新規ファンにはもちろん入っていただきたいが、人間椅子を愛している人たちが、このまま人間椅子が終わるその日まで見届けてくれることを願っている。

【人間椅子】音源より凄い!?ライブの魅力に迫る – 近年の選曲やライブの頻度・楽しみ方まで

人間椅子
シェアする
まるとんをフォローする
スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました