【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第11回:Venom 最強のB級メタルバンドの歴史的名盤は?

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歴史の長いバンドは、必ずと言っていいほど「何から聴けば良いのか?」問題が出てくる。

そこで初めて聴く人向けに、最初に聴くのにおすすめのアルバムを紹介するシリーズ記事を書いている。

これまで10回の記事を書いており、国内ミュージシャンを多く取り上げてきた。今回は海外のメタルから、最もおすすめしてはいけないバンドをおすすめしたい。

NWOBHM期に登場したバンドながら、あまりに異端児過ぎたVenomである。”状態の悪い録音”が特徴になってしまうほど、とにかくクセが強すぎるバンドである。

Venomを聴こうという人が、この記事から入るとも考えにくいが、やっぱりその良さをおすすめしたいので、ここに記すこととした。

初めてVenomを聴くという人におすすめのベストアルバム・オリジナルアルバムを紹介した。

前回:【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第10回:浜田省吾 おすすめのアルバムの聴き進め方とは?

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Venomについて

まずはVenomというバンドについて紹介しておきたい。

Venomは1979年にイングランドで結成されたバンドである。クロノス(ベース・ボーカル)、マンタス(ギター)、アバドン(ドラム)の3人がオリジナルメンバーだ。

Venomと言うと、およそこの3人のオリジナルメンバーによる時期をイメージする人が多いだろう。

1981年に1stアルバム『Welcome to Hell』をリリース。

当時のNWOBHMの流れにあって、がなるボーカル・とにかく質の悪い音・性急なリズムと、他に類を見ないめちゃくちゃな楽曲・サウンドでインパクトを残した

またジャケットやメンバー衣装、楽曲のタイトルなど、一貫して悪魔崇拝をイメージさせるものである点も特徴である。

本人たちは本気で悪魔崇拝では全くなかったようだが、ダークな世界観が混沌としたサウンドと相まって、後のブラックメタルなどに多大なる影響を与えた。

そして1982年リリースの2ndアルバム『Black Metal』はタイトルそのものが後にジャンル名となるほど、強烈なインパクトを残す作品となった。

ただ中身はスラッシュメタルの最初期のアルバムであり、後にBig4と呼ばれるMetallicaやSlayerが影響を受けたスラッシュメタルの始祖でもあるのだ。

このようにスラッシュメタルやブラックメタルなど、現在のエクストリームなメタルの大元になっているとも言えるバンドである。

【HR/HM】元祖スラッシュメタルの魅力- スラッシュメタルの名盤1st紹介

しかしVenomは後続のスラッシュメタルのバンドほど、一般的には評価されていない。それは”ポンコツメタル”などとも言われるほど、演奏力が低いことに原因があったとも言われる。

とにかく3人の無法地帯とも言えるパワフルな演奏こそが魅力であり、その勢いは1stからかろうじて3rdアルバム辺りまでは続いた。

しかし徐々にバンドの空気感は悪くなり、1985年にはギターのマンタスが脱退。1987年には中心人物のクロノスが脱退し、その後は何度もメンバーチェンジが行われることとなった。

オリジナルメンバーで再集結したこともあったが、最終的にはクロノスだけが残ってVenomを続けた。

その後2015年に、クロノス以外のマンタス・アバドンがVenom Inc.を結成。クロノスを中心としたVenomと、残り2人によるVenom Inc.の2つに分裂してしまったのだった。

活動後期に進むほど残念な話題が目立つようになるが、デビューして数年間のVenomの煌めきは、無敵状態だったと言えるだろう。

それはエクストリームなメタルという1大ジャンルを作ってしまうほどのパワーだったのである。

しかし改めて、Venomは万人におすすめできるバンドではない。その理由は、1つにはスタジオ音源においてすらめちゃくちゃな演奏である。

およそオーソドックスなハードロック・ヘビーメタルを聴く人達には受け入れ難いような、演奏そして音質の悪さである。

また黄金期と言われる時期が、ごく一瞬しかないのも理由である。名盤と言われる初期の数作を除き、それ以降は”好きな人は好き”というレベルの作品が並ぶ。

ただ一方で、バンドの良さはその一瞬の煌めきにこそある、と言う考え方もある。粗削りでめちゃくちゃな演奏の中に、輝くダイヤの原石を見る、という楽しみ方ができる人には最適だ。

破天荒だからこそ、むしろ既存のジャンルにない音楽を”勝手に”作り出せたのかもしれない。エクストリームなメタル好きな人がその原点を知りたいなら、Venomはおすすめしたいバンドである。

なおVenomの歴史から音楽的な特徴まで、愛のある文章で詳細に書かれているSIGH川嶋氏の記事もご覧いただきたい。

SIGH川嶋氏がVENOMを語る!< ~ BIG 4 になれなかった悲劇のバンド VENOM その1~ >

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メタリカにも影響与えるなど、エクストリームメタル系の始祖でありながらBIG4にな…|Rock & Pop|Heavy R...
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”はじめて”のベストアルバムは?

それではVenomのおすすめのアルバムを紹介していきたい。まずはベストアルバムからである。

筆者としてはベストアルバムから聴くことはおすすめしていない。そしてVenomに関しても、できれば後に紹介するオリジナルアルバムから聴いていただきたいと思っている。

ここで紹介するのは、オリジナルアルバムを補完する意味でのベストアルバムである。つまりシングル曲などアルバム未収録楽曲を聴くためだ。

Venomは数限りなくベスト盤・コンピレーション盤がリリースされており、筆者も全く追いきれてはいない。

筆者が聴いて良かったと思えた作品にはなるが、2002年リリースの『In League with Satan』である。

ベストアルバム『In League with Satan』(2002)

本作はオリジナルメンバーの在籍した1st『Welcome to Hell』~4th『Possessed』と、シングル曲等で構成された、2枚組のベストアルバムである。

手っ取り早く初期のVenomを聴くには、ちょうど良い作品と言うことになる。

シングル曲である「Die Hard」や「Acid Queen」といった名曲、またスラッジすら感じさせるヘビーな「Warhead」もVenomには欠かせない楽曲である。

またメロディアスなイントロが印象的な「Nightmare」も名曲であり、これらは押さえたい所だ。

さらにVenomの中でも特におすすめできない4th『Possessed』の主だった楽曲もこちらで聴けるので、3rdアルバムまで入手して本作と組み合わせれば十分とも言えるだろう。

”はじめて”のオリジナルアルバムは?

いよいよ本題の、初めて聴くのにおすすめのアルバムである。

案の定、1枚に絞り切る事は難しいため、何作かの候補と聴く順番のおすすめを紹介することとした。

初期の2枚『Welcome to Hell』『Black Metal』という歴史的名盤

Venomと言えば、間違いなくこの2枚のアルバムから入るのがおすすめである。1st『Welcome to Hell』、2nd『Black Metal』である。

Venomは、聴いて一発で好きになるか、聴けないかどちらかだと思う。この2作を聴いて、ばっちりハマった人がVenom好きになるのである。

2作のうち、先に聴くのは2nd『Black Metal』がおすすめだ。

2ndアルバム『Black Metal』(1982)

後に”ブラックメタル”というジャンルの名前にもなったタイトルの本作は、エクストリームなメタルの原点がたくさん詰まっている名作である。

1曲目の「Black Metal」は、スラッシュメタルの原点の1つと言って良い楽曲だろう。転がるように前に進むドラムと鋭利なギター、地の底から叫ぶようなボーカルが不気味である。

クロノスのボーカルにはまったくメロディがなく、そのためコード進行も通常ではありえない物になっている曲がある。

それが独特の不気味さ、そしてエクストリームな雰囲気を作り出しているように思える。

本作の良さは、スピード一辺倒にはならず、変幻自在にバリエーション豊かな楽曲が並んでいる点である。

3曲目「Buried Alive」は、蠢くようなドラムとダークな雰囲気であり、そのまま3曲目の「Raise the Dead」でスピーディーに展開していく流れも見事だ。

また「Countess Bathory」は、ミドルテンポの重厚な楽曲であり、エクストリームなメタルの原点とも言える。数多くのバンドにカバーされた名曲の1つである。

次に紹介する1stに比して、よりブラックメタル的なダークな世界観が構築されており、アルバムトータルの構成もレベルの高い名盤と言えるだろう。

もう1作の名盤、1st『Welcome to Hell』は、Venomの特徴とも言える「音の悪さ」が際立ったアルバムである。

1stアルバム『Welcome to Hell』(1981)

どうやらデモ音源がそのまま正式にリリースされてしまった、と言う話もあるが、2ndと比べても段違いに音が悪いため、何を演奏しているのかよくわからないほどだ。

代表曲と言われる「Welcome to Hell」「Witching Hour」が収録されている。

「Welcome to Hell」は意外にも陽気なハードロックと言う印象であり、実は1stではそこまでダークさが前面に出ていないことが分かる。

しかし「Witching Hour」は、スラッシュメタルの先取りをした名曲である。

ツーバスを踏んでいるのか聴き取れない音の悪さだが、スラッシュメタルの王道とも呼べるリズムをもう1981年で完成させていたのだ。この曲も多くのバンドにカバーされた。

2ndに比べてダーク要素は弱めだが、「One Thousand Days in Sodom」などエクストリームな要素は既に1stから登場しているのが分かる。

Venomの原点にして、まだNWOBHMの範疇にある1stも外せないアルバムである。

隠れ名盤『Calm Before the Storm』『Cast in Stone』

Venomは1stと2ndに全てがある、と言っても過言ではないが、もちろんその他の作品にも魅力はある。中でも、筆者がおすすめする”隠れ名盤”のアルバム2枚を、ここでは紹介する。

Venomと言えば、オリジナルメンバー3人の時代が有名だが、1987年にギターのマンタス脱退後に作られた、5th『Calm Before the Storm』も実はなかなか良いアルバムである。

5thアルバム『Calm Before the Storm』(1987)

メンバーには、マイカスとジム・クレアが加入し、まさかのツインギター体制となっている。ギターフレーズが美しくなり、これまでの荒々しさに、メロディアスな要素が加わった。

これまでクロノスのボーカルには一切のメロディがなかったが、本作では一部分にメロディがあったり、メロディアスなコード進行が用いられている。

たとえば「The Chanting of the Priests」では、これまでのVenomにはないキャッチーなコード進行が新鮮だ。

さらに「Under a Spell」では、まさかのコーラスがクロノスのボーカルとハモっている。本当にハモっているのか怪しい音階だが、それがかえって得も言われぬ美しさを漂わせている。

こうした変化は結果的にメロディックデスメタルの先駆けとなるサウンドとなり、またしてもVenomは後に登場するメタルジャンルのパイオニアとなっていたのである。

マンタス脱退後に起死回生を狙ったのであろう、そうした勢いもまた初期を彷彿させる。

それにしてはあまりに低評価のアルバムであるのが残念だ。再びSIGH川嶋氏による『Calm Before the Storm』の評価もお読みいただければと思う。

SIGH川嶋氏がVENOMを語る 2!< ~Venom その2 : 実はメロデスの元祖でもある Venom、知られざる名盤 “Calm Before the Storm” ~ >

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最後に紹介するのは、メンバーチェンジを経た後に、再びオリジナルメンバー3人が揃って制作された9thアルバム『Cast in Stone』である。

9thアルバム『Cast in Stone』(1997)

本作は2枚組で、1枚目が新曲によるフルアルバム、1枚目が過去の楽曲のリテイク集である。

アルバム1曲目の「The Evil One」が、いきなり超絶ヘビーなサウンドで素晴らしいアルバムの幕開けとなっている。

Venomらしいスラッシュメタルの「Raised in Hell」や、エクストリームな「Destroyed & Damned」など、これまでのVenomを総括するように、バリエーション豊かな内容となっている。

初期のような荒々しさとは異なるが、『Calm Before the Storm』の時期のメロディアスな要素も経て、Venomなりのヘビーメタルを構築した内容となっている。

「普通のメタルになってしまった」と評する人もいるが、もともとVenomがやっていたことを、その当時の最新のサウンドで再構築したアルバムであり、やっと時代が追いついただけなのだ。

Venomが初期に作っていた音楽が、時を経てようやく”普通のメタル”になったのだから、いかにVenomが先を行っていたかが再確認できるアルバムと言える。

ちなみに2006年のリマスター盤においては、さらにボーナスCDがついており、初期の代表曲のリメイク音源がついている。

『Calm Before the Storm』や『Cast in Stone』については、ファンの間でも名盤と言う人もいれば、駄作だと切り捨てる人もいる。

初期2作があまりに完璧だったゆえ、その後のVenomに何を求めるのか意見が分かれるところだろう。

ただ節目ごとに、気分一新して作られた上記2作は、Venomらしい勢いが感じられるアルバムとして筆者は気に入って聴いている。

まとめ

今回はNWOBHM期に登場した異端のバンド、Venomを取り上げて紹介した。

はじめて聴くアルバムとしては、2nd『Black Metal』、1st『Welcome to Hell』のいずれかと言うことになるだろう。

しかし最もVenomらしいこの2作は、音が悪い上にヨレヨレの演奏であり、初心者には最もハードルの高いアルバムとも言えるかもしれない。

ちなみに筆者は最初に2nd『Black Metal』から入ったが、沼の底から聞こえてくるようなダークさに惹かれた。

初期2作があまりに凄いため、他のアルバムが普通に聞こえてしまうのだが、それだけ先駆的な音楽を作っていたバンドだということだろう。

ぜひヘビーメタルの歴史に思いを馳せつつ、Venomのアルバムを聴いてみてほしいと思う。

自部屋の音楽がおすすめするVenom関連アルバムなど

Venom – At War with Satan(1984)

大作に挑んだVenomの3rdアルバム

Mayhem – Deathcrush(1987)

Venomの「Mayhem with Mercy」からバンド名を取ったバンドのEP、「Witching Hour」のカバーを収録。

Slayer – Show No Mercy(1983)

Venomの影響を強く感じるSlayerの1stアルバム

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