韓流ブームだった日本でなぜ韓国トロットは流行しなかったのか? – 近年再ブームの兆しも!?

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韓国には”韓国トロット”と呼ばれる、独特な音楽ジャンルが存在する。日本では幾度となく韓流ブームが訪れたにもかかわらず、なかなか日本に浸透しなかった音楽ジャンルだ。

韓国トロットとは、日本の演歌のメロディが韓国で浸透したもので、近年はダンスビートと融合した、少々変わった変遷を遂げた音楽ジャンルである。

日本では演歌が若い世代になかなか聴かれない影響もあるのか、トロットは日本にはあまり浸透していない。

一方の韓国では若い世代も、”ネオ・トロット”と呼ばれるジャンルで浸透しているそうだ。なぜ日本では流行らなかったのだろうか。

今回は日本におけるトロット流入に関する近年の動きと、なぜ本国では若い世代に受けたのに、日本では浸透しないか、について考察してみようと思う。

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韓国トロットと日本での動き

まずは韓国トロットと日本ではどのような動きがあったのか、筆者の知るところでまとめたい。

韓国トロットとは?

そもそもトロットとは、日本でいう「演歌」や「歌謡曲」に相当する韓国の大衆音楽ジャンルというのが大まかな説明である。

日本統治時代の1930年代に日本の演歌や歌謡曲の影響を受けたものだが、今回扱うトロットとはもっと後の時代のものである。

1980年代以降、トロットのメドレーを安価なシンセサイザーや電子オルガンの高速な2拍子に乗せたポンチャックと呼ばれるジャンルが登場する。

ポンチャックはテクノファンに支持されることとなり、一方のトロットも2000年代以降、ポンチャックのような速いビートに演歌のメロディを乗せるスタイルとなっていく。

若い世代にも支持が広だったのは、2004年にチャン・ユンジョンの「オモナ」の記録的ヒットが大きいようである。

日本だと戦後歌謡のような曲調であり、これが2000年代にヒットしたというのは日本人からすると大変興味深いところがある。

また2005年にはパク・サンチョルの「無条件」がヒット、こちらも新世代のトロット曲として注目を浴びた。

さらに2009年にガール・グループ出身のホン・ジニョンがトロット歌手に転向してデビュー曲「愛のバッテリー」も有名である。

日本での演歌の歌番組のような雰囲気であるが、国民的に人気があるのは日本と異なるところである。

日本における韓国トロットを巡る動き

実は日本の歌謡曲・演歌が土台にあるトロットであり、韓国で独自の進化を遂げた。しかし日本ではあまり知名度がなく、流行して来なかった歴史があるように思う。

2000年代以降、日本ではいわゆる”韓流ブーム”が何度か起きており、トロットがブームになりそうな雰囲気はあったものの、それほど浸透しなかった。

ちなみにAIによる日本での韓流ブームの流れを以下に示す。

  • 第1次(2003年〜2008年頃)
    • ドラマ『冬のソナタ』の大ヒットと「ヨン様」ブーム。
    • 中高年女性層を中心に火がついた。
  • 第2次(2010年〜2012年頃)
    • 少女時代やKARA、BIGBANGなどによるK-POPブーム。
    • 10代〜20代の若い世代や男性層へファンが拡大。
  • 第3次(2017年〜2019年頃)
    • BTSやTWICEの人気、チーズタッカルビなどの韓国グルメ・メイクブーム。
    • SNSを通じた若年層の強い支持が特徴。
  • 第4次(2020年〜現在)
    • コロナ禍のステイホーム期を背景に『愛の不時着』『梨泰院クラス』などの配信ドラマや映画『パラサイト』がヒット。
    • ファッション・食品・コスメなど「Kカルチャー」全体が日常生活へ完全に定着。

これ以前には、1980~90年代に桂銀淑(ケイ・ウンスク)や金蓮子(キム・ヨンジャ)の来日により、トロット歌手が日本で活躍するという動きがあった。

しかしこれはトロットが入ってきた、というより韓国人が日本の演歌界で活動をした、と言う人気の方が強い印象である。

2010年代にトロット流入の可能性

本国でネオトロットブームが起きていた2000年代後半、やはりその動きを受けてか、日本でも若干トロットを受け入れる雰囲気が起きた。

先ほどの韓流ブームの歴史で言えば、日本では第2次ブームが起きていた時代背景もあった。

筆者が韓国トロットについて知るきっかけになったのが、クレイジーケンバンドによるカバーであった。

2010年の12thアルバム『MINT CONDITION(ミント・コンディション)』にパク・サンチョル氏の「無条件」のカバーが収録された。

どこか”頓珍漢”な雰囲気がCKBと見事にマッチし、これはオリジナルも聴いてみたいと感じて、韓国トロットに行き着いたのだった。

CKB以前にもトロットを取り入れていた歌手がいた。元ハロー!プロジェクトの演歌歌手である前田有紀が、韓国トロットを導入した韓国シリーズを2009年から展開していた。

2009年の「ケンチャナ〜大丈夫〜」、2010年「ミアネヨ〜ごめんなさい〜」はバラード路線だったが、2011年の「釜山発」はまさにネオ・トロットでアップテンポな曲だった。

2011年に上記の曲を中心にアルバム『釜山発 〜韓国シリーズベスト〜をリリース、ただこの路線は続かなかった。(2012年に前田氏が結婚して芸能活動休止となった)

また本場の韓国から、「オモナ」がヒットしたチャン・ユンジョン氏が日本デビューするという出来事もあった。

2012年10月10日に日本クラウンから日本デビュー、2集に収録の「花(꽃)」の日本語版であるシングル「うそつき太陽」がリリースされた。

2013年2月、日本セカンドシングル「最期の川」発売となるも、日本での活動はここで終了となる。

韓国での人気の高さと本人の結婚、日韓関係の冷え込みなどが理由だったようだが、結局日本では思うほど売れなかったのではないかと思う。

もう1つ記憶に残っているのは、川崎麻世氏によるカバーである。パク・サンチョル氏の「無条件」を2015年7月1日に日本語詞でカバーしてリリースしていた。

どうも日本語詞にするとB級感がさらに増してしまい、何だか違うなと言う感もある。

このカバー以降、なかなか日本でトロットの話題を聞くことは少なくなり、「無条件」が旧統一教会の信者らが踊るダンスで話題になったくらいだった。

旧統一教会信者が全力で踊る「無条件ダンス」の破壊力 安倍元首相死去でネット急上昇 | 東スポWEB
安倍晋三元首相が銃殺された事件を受けて、ツイッター上に、あるダンス動画が拡散されている。 旧統一教会は1954年に韓国で…

また現地、韓国のトロットが日本で話題になることもそれほど多くはなく、LPGの「Doorbell of Love」が日本の演歌ファンの間で流行したという話があったくらいである。

一方で、キムヨンジャ氏の2013年の「アモール・ファティ(아모르 파티)」が2017年に韓国でヒットした、と言う話題がある。

EDMのビートを用いた斬新なものだが、これも日本ではそれほど話題になっていない。

結局のところ、2010年代の第2次・第3次韓流ブームいずれにおいても、日本ではトロットが受け入れられることはなかったと言えるだろう。

2020年代に再びトロット流入のチャンス?

日本で「トロット」と言うワードを久しぶりに耳にすることになったのが、2024年の『トロット・ガールズ・ジャパン』である。

もともとは韓国での「現役歌王」と呼ばれるトロットのオーディション番組で、最終戦を日本で『トロット・ガールズ・ジャパン』として開催する、ということだったらしい。

日本ではWOWOWで無料放送・無料配信されるとともに、YouTube、TikTok、Instagram、X(旧Twitter)といったSNSでも幅広い展開が準備されている、大規模なものだった。

韓国からは現役のトロット歌手が選ばれているが、歌われる楽曲はトロットではなく、日本の歌謡曲が中心だったようだ。

その後、番組から選ばれた4人がsis(エスアイエス)を結成、「愛のバッテリー(사랑의 배터리)」をカバーしたことが話題となった。

プロデュースおよび日本語詞の担当はヒャダイン(前山田健一)氏であり、トロットの良さを残しつつ、現代的にアップデートされた。

TikTokなどでの拡散されたことから、韓国トロットがついに日本でも流行る可能性が出てきたのだった。

ただsisはトロット調の楽曲をメインに据えているようではないため、今後さらにトロットの楽曲が日本に入って来ないと、再び尻すぼみになる可能性もある。

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なぜ日本では韓国トロットが流行しなかったのか?

韓国では、日本の歌謡曲・演歌をベースに独自に発展した韓国トロットと言うジャンルが人気を博した。しかも若い世代にもある程度支持されているようである。

一方で日本の状況を見ると、これほどK-POPブームがあったにもかかわらず、おそらく「トロット」と聞いて1曲でも思い浮かぶ日本人はほとんどいないのではないか。

日本にも取り入れようとする動きはあったものの、なぜここまで日本では受け入れられなかったのだろうか。最後に私見を述べておきたい。

筆者が思うに、日本は若い世代・中高年世代との音楽的な隔たりが大きくなり過ぎたこと、そして「歌謡曲」のジャンルがある時期からついに消失してしまった点にあると思う。

昭和~平成の前半くらいまで、日本には「歌謡曲」と呼べるジャンルが残っていた。歌謡曲の定義は様々にあろうが、老若男女が口ずさめる音楽、だと思っている。

口ずさめる・歌える、と言う点が大事であり、音楽的に小難しい事が分からなくても、歌って楽しめる音楽=歌謡曲が世代をこえて愛される音楽と言うことになる。

その中で、やや尖った・リズムの難しいものなどが若者向け、より演歌・歌謡曲に近いものが中高年向け、とお互い行き来しつつも、上手く棲み分けされていた。

たとえば平成の時代、演歌歌手の冠二郎氏は1992年に「炎」をリリース、若い世代にも支持されるアップテンポな演歌を歌った。

一方でサザンオールスターズは若者に支持されたバンドであったが、「SEA SIDE WOMAN BLUES」は、明らかに内山田洋とクールファイブなどを意識した楽曲である。

こうした双方の歩み寄りのようなものが、2000年代後半くらいからなくなり、若者の音楽と演歌・歌謡曲が分断される現象が起きている。

時を同じくして、韓国ではかつての日本において、若者の音楽と演歌が歩み寄ったように、トロットが流行することとなった。

韓国が日本の後を追いかけているのか、そこまではよく分からない。日本は若者と中高年の間に存在した「歌謡曲」不在の中、中間に位置したトロットはどちらにも受けにくかったようだ。

近年はTikTokで音楽が流行するパターンが多く、中高生~大学生くらいの年代に受けやすい”ノリ”みたいなものが、音楽の流行るポイントだったように見える。

ただここ最近はノリだけでなく、口ずさめる”歌”の要素も復活の兆しを感じる。たとえばM!LKが2025年にリリースした「好きすぎて滅!」などは、かつての歌謡曲を思わせるものである。

こういう路線の楽曲がまた日本で流行り出すのであれば、韓国トロットの入り込む余地も生まれてくるのではないか。

韓国トロットが好きな筆者にとっては、もっとこのジャンルの魅力が伝わって欲しいと思うところである。

※意外と名作揃いの演歌コンセプトアルバム紹介

意外と名作揃いの演歌コンセプトアルバム紹介

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