【エレファントカシマシ】ボーカル宮本浩次が歌の途中で不思議な掛け声を入れる時期と作品の魅力について

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ボーカル宮本浩次を中心とするロックバンド、エレファントカシマシ。その魅力は語り尽せないほどあるが、作風が時期によっても異なるのが1つの特徴である。

中でも、今回は宮本氏が不思議な”掛け声”を多用していた時代に着目してみようと思う。

宮本氏が「オーイエー!」や「エブリバディ!」など叫んでいるのは、ライブ映像等で見かけたことがあるかもしれない。しかし一時期、それ以外にも様々な掛け声が飛び出す時期があるのだ。

その掛け声はカッコいい、というよりも、不可解であり、一体どういったものを目指していたのか謎である。

今回は宮本氏が不思議な掛け声を多用していた時期の作品に迫り、何故そんな掛け声を言っていたのか、考察してみたい。

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不思議な掛け声が登場する時期

まずは不思議な掛け声が登場する時期について、まとめておこう。

そもそもエレファントカシマシ宮本氏は、歌の中で掛け声を発することが1stアルバムの頃からあった。ただ「イェー!」「ヘイ!」など、ごく一般的な掛け声が時々聞かれるくらいであった。

それはロックンロールバンドのボーカルとしての掛け声と言う印象である。

エピックソニーに在籍した時期のエレカシは、3rd『浮世の夢』頃から、日本文学に傾倒し、老成した歌詞・世界観へと変化していった。その傾向は、4th『生活』で1つの頂点を迎えたと言えるだろう。

そして5th『エレファントカシマシ5』辺りから、不思議な掛け声が登場し始める。「ヨッ!」とか「ホッ!」といった、独特の合いの手が増えている。

その掛け声は、ロックンローラーと言うより、どこか”江戸っ子”的である。

続く6th『奴隷天国』では、掛け声の多さにおいて頂点を迎えた。宮本氏が絶えず「ホイッ!」「ああー!」など、掛け声を発し続ける本作は、攻撃的で暑苦しいも言える作品である。

名盤と言われる7th『東京の空』では、その掛け声の多さは継続しつつも、どこかカラッとして陽気に聞こえ始める。

そしてポニーキャニオンに移籍して制作された快作8th『ココロに花を』。ポップな路線に移行し、不思議な掛け声は鳴りを潜めつつ、「ホウッ」という掛け声だけが生き残った。

まとめると、おおよそ『エレファントカシマシ5』~『ココロに花を』辺りが、不思議な掛け声を聴くことができる時期である。

9th『明日に向かって走れ-月夜の歌-』以降、掛け声はあまり聞かれなくなる。そして東芝EMIに移籍してからは、江戸っ子のような掛け声はさらに少なくなっていった。

しかしユニバーサルミュージックに移籍した18th『STARTING OVER』の頃、再びごく一部の曲で「ホウッ」という掛け声が復活している。

ただそれも定着することなく、掛け声は再びそれほど聞かれることはなくなった。

【エレファントカシマシ】エピックソニー期という時代 後編(5th『エレファントカシマシ5』~7th『東京の空』)

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なぜ掛け声が増えたのか?

『エレファントカシマシ5』~『ココロに花を』の頃、宮本氏は不思議な掛け声が多く発せられるようになった。

その真相は定かではないものの、なぜ掛け声が増えたのか、筆者なりに考察を試みた。

オジサン臭さを目指していた?

まずは5th『エレファントカシマシ5』と6th『奴隷天国』辺りで、掛け声が増えた点についてである。

これには、3rd『浮世の夢』~4th『生活』で、歌詞の内容が内省的になっていった点と無関係ではないように思える。

世の中はバブル景気に浮かれる中、それに馴染めなかった宮本氏は、逆行するかのように厭世的で文学的な表現を、楽曲で行うようになった。

4th『生活』までは、宮本氏と近い年齢の文学青年が主人公となっている楽曲が多いように思われる。

一方で5th『エレファントカシマシ5』になると、もう少し年齢が上になり、働き盛りの年代、あるいは結婚している年代をテーマにしたが曲が増えている。

当時の宮本氏が結婚していた訳でもないのに、なぜか「奥さんにプレゼント」などの歌詞が登場するのは、やや不思議な感じもする。

これは宮本氏が自分とは異なる、社会で働く大人に一種の憧れのようなものも込め、歌詞にしていたのかもしれない。あるいはそうした世界観の小説に傾倒していた可能性もある。

さらに言えば、”オジサン臭さ”をあえて目指し、憧れていたのではないか、とも考えられる。

この”オジサン臭さ”は、不思議な掛け声とは無関係ではないように思われる。中高年になると増えてくる「どっこいしょ」のような、勢いをつける時に使う掛け声のようだからだ。

宮本氏が掛け声を使うのは、割とリズミカルで勢いのある楽曲である。宮本氏自身も、オジサンのようになりきり、間を取る時に「ヨッ!」「ホッ!」と言っているように思えるのだ。

それにしても『奴隷天国』では”掛け声天国”とも言える状況になっているが。

宮本氏の調子の良さの象徴?

どこか”オジサン臭さ”を目指していたかに見えた宮本氏であったが、そういった憧れで楽曲の世界観を作っていたのは、『奴隷天国』までだったように思える。

7th『東京の空』は、宮本氏のポップセンスが開眼し始め、これまでのやや難解な世界観から脱却し始めている作品である。

そして続くポニーキャニオン時代の黄金期を予感させる、溌剌とした作風になっている。

掛け声に関しては、『奴隷天国』の流れを受け継いでいる楽曲もあり、相変わらず多めではある。しかし暑苦しさよりも、調子の良さを感じさせる

7th『東京の空』~8th『ココロに花を』の頃の掛け声は、宮本氏の調子の良さの象徴のようにも思えてくる。

そして徐々に掛け声自体のバリエーションは減り、残ったのが「ホッ!」「フッ!」辺りだけである。

その後の掛け声の使われ方を聴いても、やはり宮本氏が調子良く歌っている楽曲で掛け声が使われているように思える。

東芝EMIに所属してから少なくなったのも、そうしたテンションの高さはなくなったからであり、ユニバーサルミュージックで復活しているのも、うなずける部分がある。

ただ、最初が”オジサン臭さ”への憧れがあったとすれば、それに合う楽曲を作っていた頃には相性が良かったが、曲調の変化とともに、掛け声が減ったとも考えられる。

やはり『エレファントカシマシ5』~『東京の空』辺りの、江戸っ子的な口調でコブシを回して歌うような楽曲との相性が良かった、ということなのだろう。

不思議な掛け声が聴けるおすすめ作品

ここまでエレカシ宮本氏の不思議な掛け声について書いてきた。何よりも、まずは聴いていただくのが良いだろう。

これまで挙げている『エレファントカシマシ5』~『ココロに花を』の時期について、作品ごとに紹介した。とりわけ掛け声が聴きどころの楽曲を取り上げて紹介している。

また発売時期は異なるものの、当時に収録された音源も併せて紹介した。

エレファントカシマシ5(1992)

前作の『生活』が内省的でありながら攻撃的な作品で名作とされるが、同様に内省的ながらどこか力の抜けた本作である。

それゆえやや地味な印象の作品だが、前作よりロック寄りのサウンドと、コンパクトでポップな方向性を模索しようとしている様子も窺える。

そして家庭のある男をテーマにするなど、等身大の宮本氏からすると、やや年上の年代を歌おうとしており、それゆえの”オジサン臭さ”が漂うアルバムである。

1曲目の「過ぎゆく日々」は、淡々と進んで行く楽曲だが、中間の展開でリズミカルになる。そこでさっそく「ヘイッ」や「ホッ」などの掛け声が登場する。

無事なる男」は陽気な雰囲気の楽曲で、この曲でも「ヘイッ」と力強い掛け声が聞ける。次作『奴隷天国』の曲調を予感させる部分もある。

本作でとりわけ掛け声が多いのは、「お前の夢を見た(ふられた男)」であろう。ヘビーなリフで重苦しい曲であるが、アウトロでは掛け声と言うか宮本氏の叫び声が続く。

次作『奴隷天国』に比べれば控えめだが、不思議な掛け声の始まった記念のアルバムと言える。

奴隷天国(1993)

前作までの内省的な路線から、1stアルバムの攻撃的なロックをもう一度鳴らそう、と意識して作られたアルバム。

久しぶりにバンドサウンドが力強いが、それとともに宮本氏のボーカル・掛け声が暑苦しいほどに前面に出てくるアルバムでもある。

掛け声と言う意味では、エレカシ全作の中で最も掛け声の多いアルバムと言えるだろう。

1曲目の「奴隷天国」、出だしがもはや掛け声から始まっている。そして後半には「奴隷天国よ、ヘイッ!」と叫び続けるのだ。

絶交の歌」や「浮世の姿」などリズミカルな曲は、もうとにかく掛け声だらけである。合間に「ハイッ!」「ヘイッ!」「ホッ!」と絶え間なく掛け声が入る。

また「太陽の季節」や「おまえはどこだ」など、比較的ヘビーな曲でも唐突に掛け声が入る。特に「おまえはどこだ」はシリアスな曲調ながら、突然の「ホウッ!」と言う掛け声に笑ってしまう。

いつものとおり」は、ポニーキャニオン時代を先行するかのポップな曲だが、中間で急にヘビーなリフになるのが面白い。そして不思議な掛け声のオンパレードである。

そして「」で掛け声と叫び声・絶叫が入り乱れ、暑苦しさは頂点を迎える。しかし最後は「寒き夜」で、ほとんど掛け声がなく、しめやかに終わるのがとても良い。

宮本氏の”掛け声芸”とも言える掛け声が楽しめるアルバムと言えるだろう。

東京の空(1994)

前作ではバンドサウンドに回帰したものの、楽曲制作の方針に行き詰まりを感じていた宮本氏。本作から宮本氏自身が全面的にプロデュースすることで、活路が見出された。

本作でエピックソニーとの契約は解消されるが、新たな方法論を見つけた喜びに満ちており、エピック期において最も溌剌とした作品で、名盤に挙げられる。

前作で見せた掛け声の多さは、やや減りつつも本作でも聴ける。ただし、前作が暑苦しい印象の一方、本作はどこか陽気に感じられる。

それは「誰かのささやき」での「ヨッ!」「ホッ!」などに見られる。

『奴隷天国』の流れを汲んでいるのは「極楽大将生活賛歌」や「男餓鬼道空っ風」辺りで、歌詞カードにも「ホゥッ」と書かれているくらいである。

また掛け声とはやや異なるが、ある言葉が連呼されるのもこの作品での特徴である。「この世は最高!」での「最高」とか、「暮れゆく夕べの空」での「自由」「Freedom」などである。

前作と明らかに異なるのが、掛け声に心地好さが感じられる点である。”オジサン臭さ”を意識していた状態から、宮本氏本来の掛け声に変わった感じがしている。

調子の良さと言うか、楽しげな様子が伝わってくるアルバムである。

【アルバムレビュー】エレファントカシマシ – 『東京の空』(1994)

ココロに花を(1996)

エピックソニーとの契約解消後、ポップな作風へと変化したエレファントカシマシ。『東京の空』で見つけた楽曲制作の方法論をさらに進め、その爽快感が前作より続くアルバムだ。

全体的にはポップなメロディが前面に出てきた印象であるが、まだエピック時代の尖った部分も残りつつの、過渡期の作品と言うこともできる。

『東京の空』から、さらに不思議な掛け声は減りつつあるが、「ヘイッ!」「ホウッ!」などの掛け声はまだ残っている。

1曲目の「ドビッシャー男」は、エピック期を色濃く感じさせるようなロックナンバー。そして掛け声や叫び声もこの曲については隠すことなく披露している。

移行期であることを感じさせるのは「孤独な旅人」である。つとめてポップに歌おうとしつつも、随所に掛け声が出てきてしまう辺り、昔と今のエレカシがせめぎ合う感触だ。

Baby自転車」「うれしけりゃとんでゆけよ」なども、エピックの色を残しつつ、掛け声を楽しめる楽曲になっている。

そして本作はデビュー25周年を記念したdeluxe editionがリリースされており、ぜひそちらをおすすめしたい。DISC-2には未収録の「夢を見ようぜ」「さよならばかり」「BABY BABY」が聞ける。

sweet memory〜エレカシ青春セレクション〜(2000) (初回限定盤:Disc2)

”青春”をテーマにした、ポニーキャニオン~EMI時代のベストアルバムである。ただし初回限定盤のDisc-2にはエピック期の未発表曲2曲を聴くことができる。

収録されたのは1994年で、『東京の空』の時期のアウトテイクである。レアな音源ではあるが、掛け声が非常に多いため、ぜひともおすすめしたい。

石橋たたいて八十年」は、中間部でなぜか各国の都市名を列挙していく展開があり、掛け声を言ったり、叫んだりと騒がしい曲である。

始まりはいつも」は、どっしりとした曲調。ボーカルにディレイがかかっており、掛け声も残響している不思議なアレンジである。「ヨッ!」「ホイッ!」などが響き渡るのが面白い。

掛け声の多さからすると、『奴隷天国』と『東京の空』の間くらいの曲調と言った印象である。

まとめ

今回の記事では、エレファントカシマシの宮本浩次が繰り出す不思議な掛け声を特集した。

こんな記事を書いたのも、宮本氏の掛け声はどこかクセになると言うか、好きな要素として結構重要なものなのである。

掛け声を発するのは、歌の間合いを取っているかのようでもある。リズムに乗っている時の宮本氏が掛け声を発することが多いように思われる。

そして宮本氏の持っているリズム感は天才的なものがある。バンドメンバーは宮本氏のリズムに合わせて演奏しているくらい、彼のリズムが絶対的なものなのだ。

エレカシは宮本氏がバンドに演奏を任せたり、自らが演奏を仕切ったりと、そのバランスが変化するのが特徴的なバンドである。

宮本氏の掛け声が多かった時期は、宮本氏がプロデュースやアレンジを全面的に行うようになった時期とある程度重なっている。

そう考えると、掛け声は宮本氏が歌いながら、リズムも形作ると言う意味で、実は重要な意味があるのかもしれない。

マニアックな聞き方にはなるが、宮本氏の掛け声に注目して、エレカシの曲を聴き直してみるのも面白いだろう。

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