【エレファントカシマシ】エピックソニー期という時代 後編(5th『エレファントカシマシ5』~7th『東京の空』)

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エレファントカシマシ
画像出典:Amazon

デビューから30年を超えるバンド、エレファントカシマシ。最近はボーカル宮本浩次氏のソロ活動が話題であるが、やはり筆者としてはエレカシとしての活動が気になっている。

エレファントカシマシと言うと、アルバムごとに作風が異なることが特徴だ。そして、大きく分けるとレコード会社の移籍とともに、転換点を迎えていることが多い。

中でもエレカシが最初に在籍した”エピックソニー”の時代は、カルト的な人気がある。

前回は1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』~4th『生活』の時期に絞って、その魅力をまとめた記事を作成した。

今回はその後編として、5th『エレファントカシマシ5』~7th『東京の空』の時期を取り上げる。その後のポップな路線に繋がる、実は重要な時期である。

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【前書き】4th『生活』以降のエレカシと宮本浩次

今回取り上げる時期のエレカシがどんな様子だったのか、簡単に振り返っておこう。少しボーカル宮本氏のプライベートな状況にも触れる。

1990年に怪作とも言える名盤『生活』をリリースしたエレファントカシマシ。この時期まで宮本氏は実家で暮らし、実家の自分の部屋で火鉢を持ち込んで暮らしていたようだ。

そしてその後、宮本氏は実家を出て、一人暮らしを始めた。と言っても、実家のある赤羽に一人暮らしをし、ご飯を食べに実家に行くことも多かったようだ。

そして、同時期に付き合っていた彼女と別れたことで、ライブの本数が大幅に減ってしまったというエピソードもある。

宮本氏にとって、バンドとして売れていない中、私生活もやや不安定な時期だったようだ。

※この頃については、2010年12月号の「ROCKIN’ON JAPAN」のインタビューに詳しく書かれている。

作品づくりにおいても、宮本氏の悩みは深まっていた。メンバーにアレンジを任せるのは大変なのではないか、外部のプロデューサーを入れるのがいいのではないか、色々と案を出したようだ。

(5th~7thはそれまでと違い、プロデュースは宮本氏の名前になっている。)

最終的には、宮本氏がアレンジの主導権を握る、というスタンスに落ち着いた。その方法論を見出した宮本氏はもやが晴れたような気持ちだったそうだ。

エピックソニーとの契約はアルバム『東京の空』を制作後に切れてしまったが、目指すべき方向性がようやく見つかった宮本氏には、不安はそれほどなかったようだ。

そしてしばらくの時間をおいて、1996年以降はヒット曲を世に出すこととなる。

この時期のエレカシも、混沌とした中にあったが、少しずつ光明が見え始めていく時期だ。サウンド的にも作品を追うごとにまとまりを取り戻していく。

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エピックソニー期の作品解説・レビュー(後編)

ここでは5th『エレファントカシマシ5』~7th『東京の空』までのアルバム紹介を行う。

各アルバムの代表的な楽曲を取り上げながら、特徴をまとめた。

5th『エレファントカシマシ5』

  • 発売日:1992年4月8日
  • 収録シングル:6th『曙光』(1992年3月25日)
no. タイトル作詞作曲時間
1過ぎゆく日々宮本浩次宮本浩次6:56
2シャララ宮本浩次宮本浩次7:18
3無事なる男宮本浩次宮本浩次3:53
4何も無き一夜宮本浩次宮本浩次4:32
5おれのともだち宮本浩次宮本浩次5:52
6夕立をまってた宮本浩次宮本浩次4:26
7ひまつぶし人生宮本浩次宮本浩次6:09
8お前の夢を見た(ふられた男)宮本浩次宮本浩次5:15
9通りを越え行く宮本浩次宮本浩次4:13
10曙光宮本浩次宮本浩次7:15
合計時間47:20

2ndアルバム以来、再びバンド名をタイトルにしたアルバム。ヘビーながら輝きのあった4th『生活』に比べると、どんよりと重苦しさの漂うアルバムだ。

1曲目「過ぎゆく日々」から、のっぺりと重たいムードが漂う。攻撃的とも言えない、気の抜けたようにも感じられる。

続く2曲目「シャララ」も、ストリングスが導入されているが、宮本氏のダウンチューニングギターの重たい音の方が目立つ。

サウンド的には前作よりまとまりがあるが、宮本氏のダークなギターが印象に残る。

軽やかな「無事なる男」が差し込まれるも、その後も重々しい楽曲が続いていくアルバムである。全体的に1曲当たりの時間は長めで、アップテンポな楽曲は1曲もない。

前作『生活』と比べられて、一般には評価が低めのアルバムだ。しかし見どころのないアルバムではなく、筆者はむしろ気に入ってよく聴いている作品である。

まずはアルバム全体がハードロック要素が強いことだ。リフを主体とした重々しい曲調は、70年代ハードロックを思わせる作風であり、演奏が実はカッコいい。

そして4thまで歌詞の主人公は”青年”と思われるが、5thでは急に結婚した”大人”になっている点が興味深い。家族を持ち、社会の中に生きる大人を無理やり歌っているような印象である。

その不思議な世界観と、さりげなく毒が込められた歌詞は、本作でしか味わえないもの。とは言え、向かうべき所のわからない不安が色濃く表れたような歌詞でもあろう。

バンドの状態としては決して良くない不健康な雰囲気が漂う。しかしどういう訳か、ズルズルと聴いてしまう、中毒性の高い不思議なアルバムである。

6th『奴隷天国』

  • 発売日:1993年5月21日
  • 収録シングル:7th『奴隷天国』(1993年4月21日)
no. タイトル作詞作曲時間
1奴隷天国宮本浩次宮本浩次4:22
2太陽の季節宮本浩次宮本浩次4:43
3絶交の歌宮本浩次宮本浩次4:37
4おまえはどこだ宮本浩次宮本浩次4:23
5日曜日(調子はどうだ)宮本浩次宮本浩次3:40
6浮世の姿宮本浩次宮本浩次4:01
7果てしなき日々宮本浩次宮本浩次4:48
8いつものとおり宮本浩次宮本浩次5:05
9宮本浩次宮本浩次7:02
10寒き夜宮本浩次宮本浩次4:18
合計時間47:20

1stアルバムのようなシンプルなロックに回帰しようと作られたアルバム。前作に比べると明らかに熱量の高さは感じる。

ただし”暑苦しい”とでも言うような、異様な怒りが迸る作品になっているのだ。

まずは表題曲「奴隷天国」のインパクトである。前作に続くハードロック路線のリフだが、ハイテンションに叫ぶ宮本氏が妙に恐ろしい。

アルバム前半から中盤は、ヘビーさも感じさせつつ、怒り散らしている楽曲が並ぶ。「絶好の歌」の軽快ながら歌詞を聴くと恐ろしい内容であり、かえってコミカルに聞こえてくる。

浮世の姿」「果てしなき日々」の流れも、テンションの高さはあるも、暑苦しい雰囲気が漂っている。ただし「いつものとおり」はポップさの萌芽が見える。

」で叫びまくった後に、しっとりと聴かせる「寒き夜」の流れがとても良い。攻撃的な楽曲が多い中で、ラストに配置された「寒き夜」が救いのように感じられる。

『エレファントカシマシ5』と同様、あまり成功したアルバムとは言えない。ただエレカシの歴史の中では面白いアルバムだと思う。

音楽的には前作のハードロック路線を引き継ぎつつ、サウンドはバンドらしさを取り戻している。しかし、歌われる内容があまりに老成したもので、ロックサウンドとのアンバランスさがある。

歌詞に出てくる主人公は、何だか”近所のオヤジ”のような存在。社会や人間関係に不満を持ち、ぶつぶつと文句を言っているような人がたびたび登場する。

前作がかなりウェットな内容だったのが、一転ドライでギスギスした雰囲気が漂う。男臭いと言えば、このアルバムもかなり男臭いと言えるだろう。

好みは分かれそうだが、筆者はこのアルバムもとても気に入ってよく聴いている。

7th『東京の空』

  • 発売日:1994年5月21日
  • 収録シングル:8th『極楽大将生活賛歌』(1993年10月1日)、9th『この世は最高!』(1994年4月21日)
no. タイトル作詞作曲時間
1この世は最高!宮本浩次宮本浩次3:59
2もしも願いが叶うなら宮本浩次宮本浩次4:04
3東京の空宮本浩次宮本浩次12:37
4真冬のロマンチック宮本浩次宮本浩次3:39
5誰かのささやき宮本浩次宮本浩次3:55
6甘い夢さえ宮本浩次宮本浩次3:21
7宮本浩次宮本浩次2:22
8極楽大将生活賛歌宮本浩次宮本浩次3:52
9男餓鬼道空っ風宮本浩次宮本浩次3:35
10明日があるのさ宮本浩次宮本浩次2:46
11星の降るような夜に高録成治・宮本浩次高録成治・宮本浩次3:38
12暮れゆく夕べの空宮本浩次宮本浩次6:05
合計時間54:16

エレカシのアルバムの中で最高傑作に挙げる人もいる名盤である。

宮本氏が前作までの苦悩から抜け出すことに成功した。アレンジをメンバーに任せるのでなく、宮本氏が引っ張って考えていくスタイルを確立したようである。

あまりに快調に曲ができて、次回作以降に持ち越した楽曲もあったぐらいだと言う。そんな宮本氏の絶好調ぶりがうかがえる、突き抜けた雰囲気に包まれている

アッパーな「この世は最高!」や「男餓鬼道空っ風」は前作を受け継ぎつつ、生々しい攻撃性ではなく、娯楽作品へと昇華しているように思える。

もしも願いが叶うなら」「誰かのささやき」など、これまでになくポップでシンプルなメロディを聴くこともできる。

決してエレカシとしての佇まいが変わった訳ではない。しかしこだわりがそぎ落とされ、闇雲に表現していたものが、きっちりロックとしての形を持つようになった

1st以降は苦悩の連続だったが、ここに来てエレカシの個性を確立しつつ、音楽的にも軸のはっきりしたものになっている。

歌詞は前作に続き男臭い内容が多いように思う。前作の「寒き夜」に見えるロマンチックさが、本作ではさらに拡大されたようにも感じられる。

エピックソニーの攻撃性はしっかり持ちつつ、次のポニーキャニオンのポップさへと橋渡しするような作品だ。

※より詳しいレビューは、以下の記事をお読みいただきたい。

エピックソニー期の魅力とは何か?(後編)

エレカシファンの間でも、常に”エピックソニー期”の良さが語られる。「人はなぜ”エピックソニー期”に惹かれるのか?」、この問いに対して、なかなか言語化して答えるのが難しい。

今回はエピックソニー期後半にあたる5th~7thの時期の魅力に迫りたい。3つの要素から、この時期の良さを述べていくことにする。

ハードロック路線のバンドサウンドへの回帰

前回の記事では、4th『生活』において、ハードロックのアプローチが用いられ始めている点を指摘した。ハードなリフと、展開の多さなどが特徴的であった。

エピックソニーの後期も、ハードロックの要素を感じさせる楽曲が多くなっている。もう1stのようなロックンロールはあまり聴くことはなくなった。

特に5th『エレファントカシマシ5』はエピックソニー期において、最もハードロックらしい作品だ。しかも内省的な世界観と相まって、暗くヘビーなハードロックに仕上がっている。

6th『奴隷天国』は5thのウェットでヘビーな要素はなくなり、暑苦しくアッパーに進んでいく楽曲が多い。リフ主体の楽曲は多く、男臭い演歌のようなメロディが乗っかるアルバムである。

7th『東京の空』になると、徐々にポップスの比重が大きくなっていく。それでもリフを主体とした楽曲は残り続け、その傾向はポニーキャニオン時代にも受け継がれていく。

4thでは宮本氏の歌とギターばかりが強調され、バンドサウンドは崩壊していった。エピックソニー後期は、バンドサウンドへの回帰の過程と言っても良いだろう。

そしてハードロックを経由しつつ、ポップスへと向かうプロセスでもあった。音楽性に変化が多いエレカシだが、最も安定していたのはこの路線のように思う。

エピックソニー前期が、最も独自性を持つ”ヤバい”エレカシだとすれば、後期もその独自性とともに、徐々に普遍性を獲得していく時期だと言える。

最も”男臭い”・”おじさん”的世界観

エピックソニー後期は、前期に比べれば分かりやすいが、相変わらず独特過ぎる世界観も健在だ。それはどこかおじさん臭い歌詞である。

4th『生活』までの歌詞は、宮本氏の等身大に近いものであった。それは、自己が肥大した思春期特有の世界観とも言えるものである。

しかし5thでは急に社会人としての男の姿が描かれている。家庭を持ち、社会人の一人として働く人間の生活を歌ったような内容となっている。

この時の宮本氏の生活が歌詞の世界観と一致していたとは考えにくい。しかし、社会との接点を意識し始めたことで、歌詞の内容が変わってきたのかもしれない。

続く6thも系統としては似ているが、怒りに満ちた歌詞の内容となっている。メロディの演歌臭さもあり、やけに男臭い作品となっている。

7thはやはり歌詞でも少し変化があり、恨み節は減り、ロマンチックな青年へと回帰している。しかし言葉遣いは江戸っ子のような不思議なちぐはぐ感もある。

この時の宮本氏は20代中盤であった。漠然とした中年の男に対する憧れがあったのだろうか、と想像するところである。

さらには、宮本氏の歌い方も、どことなくおじさん臭さがある。男臭い歌詞、男臭い歌が中心のこの時期だが、筆者は個人的にとても気に入っている。

攻撃性のアウトプットの確立とポップさの萌芽

6thと7thの間には明確に線を引くことができる。楽曲の作り方や、表現の仕方が明らかに変化したと言える。

1stアルバムではわかりやすく怒りを表現することに成功したが、2nd以降はその表現の仕方に苦悩してきた。葛藤や悲しさなどが、入り混じり、わかりにくい方向に進んでいった。

5thではどこか虚しさが漂い、6thでは改めて1stのような怒りを呼び戻そうとするも、ちぐはぐな印象となってしまった。

それ自体も、エレカシのファンであれば、1つの歴史として楽しむことができる。ただポップな音楽として楽しむことは難しい作品であった。

それが7th『東京の空』では、これまでの怒りの表現をポップな形でまとめることに成功している。完全にポップに寄ったものでもなく、これまで難解さとのバランスは絶妙だ。

続くポニーキャニオン時代に続く音楽性の萌芽が見えるとも言える。

7th『東京の空』の溌剌とした雰囲気は、このアルバムでしか感じることができない貴重な音が収められている。

生々しい攻撃性と、エンターテイナーとしての宮本氏の始まりの両者を楽しめる。7thはエピック期の最後と新たな始まりを感じさせる重要な作品だ。

【総括】エピックソニー期のエレカシとは

前回の記事と、今回とでエピックソニー期のエレカシの魅力をまとめてきた。最後に改めてエピックソニー期の魅力について総括して終わろうと思う。

まずは、感情の行き場のなさがエピックソニー期の特徴と言える。この時期のエレカシは怒りや悲しみの表現方法に苦悩してきた

1stアルバムは攻撃性が明快なアルバムだっただけに、同じような作品を求められたのだろう。しかし宮本氏は素直な表現をするほどに、難解な方向に行ってしまった。

それ自体がエピックソニー期を輝かせているとも言える。デビュー当初の音楽性にこだわらず、その時々の感情をダイレクトに表現してきたことが人気の理由とも言えよう。

時に直接的な怒りとして(6th『奴隷天国』など)、時に深い悲しみとして(4th『生活』など)、表現方法も変えながら、生々しい音として作品にしてきた。

偽りのない感情表現と、その不器用さに人は惹かれるのではないだろうか。

それに関連し、バンドや宮本氏の調子の良し悪しがわかりやすい、と言う点も特徴だ。

表現したいものと、それを音楽で表現する方法が明確であれば、アウトプットとしての作品も良くなる。しかしそれがなかなか上手くいかず、波がある点がエピックソニー期である。

エピックソニー期で傑作を挙げれば、1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』、4th『生活』、7th『東京の空』であると筆者は思っている。

シンプルなロックを鳴らした1st、宮本氏の孤独や悲しみを生々しく表現した4th、これまでの感情をポップな形で表現した7th。

これら3作が一般的に見れば名作であると思われる。しかし、その狭間にある作品が決して駄作ではないと思う。

むしろ不安定さを抱えた危うさが、エピックソニー期らしさとも言える。その浮き沈みのドキュメンタリーこそ、エピックソニー期の魅力とも考えられるのだ。

最後に、エピックソニー期の終わりが、決して暗い終わり方ではなかった点も見逃せない。ポニーキャニオン時代に向けて、表現を確立する過程であった点も特徴である。

エピックソニー後期の2作、5th『エレファントカシマシ5』・6th『奴隷天国』は、まだ表現方法に迷いが見られた作品であった。

しかし7th『東京の空』では、大きく表現スタイルが変化し、ライブも宮本氏自身が盛り上げようとするなど、明らかな変化があったようだ。

これまで持っていたこだわりを捨て、宮本氏がバンドの音を作っていくスタイルに変化した。それにより、宮本氏の中のスイッチが入り、テンションの高い楽曲が出来上がっていった。

エピックソニー期という1つの時代が、次へと繋がる重要な時期であったのだ。自由に悩み、模索しながら音楽を作る時間があったことで、殻を破って次に進むことができた。

紆余曲折あったものの、エレカシの持つ音楽性の高さは、ようやく世間にも認知されるところとなっていく。

それでもエレカシは洗練された音楽としてではなく、常にエピックソニー期の武骨さを抱えたまま、活動を続けてきたのだと思う。

エレカシの原点にして、バンドとしての不器用さがそのまま表れた、愛すべき時代がエピックソニー期なのだ。

改めてエピックソニー期の作品を聴き直してみたくなった。少しでもエピックソニー期の魅力を再確認できる記事となっていればと思う。

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