【ライブレポート】2022年4月18日 人間椅子「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」東京 Zepp DiverCity(TOKYO)

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人間椅子

人間椅子のワンマンツアーが、2021年の『苦楽~リリース記念ワンマンツアー~』以来、約半年ぶりに開催された。

今回は、1995年にリリースされたアルバム『踊る一寸法師』の再発記念ワンマンツアーと言うことで、いつもとやや違ったセットリストのライブになった。

4月18日(月)にZepp DiverCity(TOKYO)にて行われた、ツアーファイナルの模様をレポートする。

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ライブレポート「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」東京 Zepp DiverCity(TOKYO)

前半では、ライブ当日までの流れをおさらいしておこうと思う。

後半ではライブレポートとセットリストを掲載した。今回は、セットリストにギター・ベースがノーマル・ダウンチューニングいずれを使用しているかも書き添えている。

5thアルバム『踊る一寸法師』の再販からツアー決定まで

今回のツアーの経緯について、時系列に少しまとめておきたい。

1995年にリリースされた人間椅子の5thアルバム『踊る一寸法師』は長らく廃盤で入手困難となっていた。中古市場で見かけると、プレミア価格で取引されている状態だった。

なかなか再販されない理由には、レーベルとの間の権利の問題等があったようだが、2021年11月24日に、待望の再販が行われることが決定した。

そしてリマスター、UHQCDでの発売となり、音質も大きく改善された。これまで埋もれて聞こえなかった音が聞こえてきたのは嬉しかった。

【人間椅子】ついに復活の大名盤『踊る一寸法師』レビュー+UHQCDとオリジナル盤の音質比較

そして2022年の元旦に、「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」の告知が行われた。

人間椅子の歴史の中で、1枚のアルバムの再発を記念したワンマンツアーは初めてのことではないだろうか。Twitter上では再発記念ツアーの要望は多かったように思えるが、声が届いたのかもしれない。

この記念すべきツアーに対し、筆者はツアーの予習記事を作成した。その中で、アルバム『踊る一寸法師』の楽曲が、直近でどのライブで披露されているのか、まとめている。

【人間椅子】2022年春”『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー”に向けて予習しよう! – ツアー情報と選曲予想

中でも「羽根物人生」「三十歳」などは近年のライブ演奏はなく、「モスラ」「エイズルコトナキシロモノ」「時間を止めた男」なども、ファンクラブ限定ライブのみでの披露が続いていた。

今回はこうしたレア曲の披露もかなり期待される。また11月24日に同時リリースされた『萬燈籠』~『異次元からの咆哮』からの選曲も多めになるのでは、と予想していた。

過去の作品の再発ツアーということで、どんな構成のライブになるのか、そしてメンバーのテンションとしては、どのようなものなのか、興味を惹かれるものだ。

ライブレポート

今回のツアーは、全7公演で4月3日~18日までの約2週間で全国を回る、短期決戦である。きっとできるうちにツアーを完遂したいという思いからだろう。

いつもツアーファイナルまで我慢できず、セットリストを見てしまうが、今回は短いので我慢することにした。

ちらほら「この曲をやった」など目に入ってしまうこともあったが、ライブ全体の構成は知らないまま、ライブに向かった。

4月18日の月曜日、春らしい周期変化の天気の中、どんよりと曇り空だ。開場時刻近くなると、しっかりと雨が降ってくる予報である。

ギターの和嶋氏は、雨男であることがファンの間では有名だ。和嶋氏が気合を入れると雨が降る、と言われており、今日のライブも気合十分すぎるくらいのようである。

今回は先行物販に間に合う時間に会場に到着。既に会場付近ではポツポツと弱い雨が降り始めていた。

先行物販では、今回のツアーTシャツと、2004年の12thアルバム『三悪道中膝栗毛』のUHQCDを購入した。店員さんからは、「最後の1枚です」とのことだった。

開場前にナカジマ氏が客席の様子をツイートしていた。今回も隙間なく敷き詰められた座席、開演までこの中でマスクをして過ごすのが苦痛に感じられそうで、ギリギリまで外で過ごすことにした。

開演近くまで、Twitterのフォロワーさんとカフェでお話しして、18時55分に着席。場所はN列で、前は通路で人はおらず、また横も通路でゆとりのある席だった。

ほぼ定刻通りにライブはスタート。入場SEは久しぶりに「新青年まえがき」であった。

気になる1曲目は、何と『踊る一寸法師』の1曲目から「モスラ」。アルバム1曲目をライブ1曲目にするというベタなことはあまりしない人間椅子だが、今回は珍しい。

どっしりとしたリズムに、すっかり「モスラ」の演奏に慣れた3人の様子である。

2曲目は同じく『踊る一寸法師』から「ギリギリ・ハイウェイ」。実はこの流れ、筆者はツイートで予想+希望していたのだが、まさか本当にその通りになるとは。

本日の鈴木氏の第1声は「本日は大変お足元の悪い中、また平日にもかかわらず…」で始まった。和嶋氏の雨男ぶりについても語られる。

なお「モスラ」については、鈴木氏は「和嶋くんの歌詞がスゴい」とベタ褒めだった。一方で以前には、曲がいまひとつと言うことで演奏しなくなったと語っていた気がする。

また「モスラは25年ぶりくらいに演奏した」との発言もあったが、人間椅子倶楽部の集いでは2015年に演奏していた。しかし通常のライブでは、長らく演奏されなかったのは事実だろう。

そして「リリース当時のライブを再現した」との発言について、調べてみると95年のリリースライブでは、全く違う曲順だった。記憶と言うのは、色々と書き換えられるものである。

最初のMCでは、さっそく楽器をダウンチューニング用に持ち替えて、次は2021年の最新作『苦楽』から「夜明け前」。前回のライブで大化けする曲だったとわかり、さらに好きになった楽曲だ。

続く「巌窟王」は、少々久しぶりに感じる楽曲。この辺りから、メンバーの演奏も力が抜けて、良い演奏になってきた印象だ。

ギターのみ再びノーマルに持ち替えたところで、次の楽曲はもう予想できる。名曲「どだればち」である。

鈴木氏が「りんごの泪」の津軽三味線ギターを和嶋氏に教えてもらうも、難しかったというエピソードも飛び出る。和嶋氏のギターのハードルも上がっていたが、いつも以上に長いソロは冴え渡っていた

再びMCに入ると、和嶋氏はダブルネックギターに持ち替える。鈴木氏は「『羽根物人生』で使ってたけど、こっちの方が良いですよ」と語り、「羽根物人生」の披露は今回ないことが判明。

和嶋氏が、「ビートルズばかり聴いて引きこもっていた人物についての本のタイトルが『時間を止めた男』だった」というMCを述べ、久しぶりに披露された「時間を止めた男」。

サビの辺りでは、スタジオ盤だと鈴木氏のコーラスが入るが、いつの間にか歌わなくなり、「コーラスを止めた男」と言われていた気がする。今回もコーラスはなかった。

この日のライブはギターの音がやや小さめ。もっとド迫力の音でこの曲も聴きたかったが、後半の哀愁漂うアルペジオを12弦ギターで聴けたのは嬉しかった。

その後も「泥の雨」「瀆神」とヘビーな楽曲が続く。「瀆神」「巌窟王」と、2019年の『新青年』からの楽曲が多く、だからSEは「新青年まえがき」だったのか、と思ったりする。

そして本日のハイライトでもあった、鈴木氏の超名曲「踊る一寸法師」である。毎回のライブで迫真のパフォーマンスが見られる楽曲だが、今回はさらに磨きがかかった演奏だった。

特に中間部の静かになるパート。つんざくように響く鈴木氏の絶叫と、それに呼応する和嶋氏のワウギターが何とも恐ろしく、それでいて妖艶な響きだった。

恐ろしいのに美しい、そんな境地に達した「踊る一寸法師」だったように思う。見るたびに進化しているような気がする。

そして間髪入れずに「暗い日曜日」へ、この流れは筆者としては1つのピークだった。『踊る一寸法師』の中で、和嶋・鈴木両氏の”らしい”曲を選べば、この2曲になると思う。

ずっと変わらない鈴木氏、その一方で和嶋氏は「暗い日曜日」を作っていた頃から大きく変わった。今の和嶋氏に「暗い日曜日」は似合わない、と言う人もいるだろう。

しかし、あえて今の和嶋氏がこの曲を歌う時、人間椅子として長く活動してきた歴史に思いを馳せることができるのだ。

そんな人間椅子の歴史を感じる曲順から、MCでは和嶋氏が「『踊る一寸法師』を作って、バンドを続けることができた」と改めて語る。

そしてここで近年のヒットナンバー「無情のスキャット」が披露された。苦難の道を経て、今ここにあることを高らかに歌うような、素晴らしい流れであった。

別の会場では「見知らぬ世界」を演奏したそうである。「無情のスキャット」と同じく、和嶋氏が覚醒したタイミングの楽曲が配置されていることに、感慨深く思えた。

ここまでダウンチューニングを使用する楽曲がかなり長く続いた。今まで「ダウンチューニングコーナー」と言って何曲か演奏していたのが、ライブの大部分を占めるのが今回だった。

そんな重苦しい曲はここまでで、ナカジマ氏が歌う「至上の唇」で、一気に会場は明るい雰囲気に。和嶋・鈴木両氏ともに、背面弾きを披露するなど、見た目にも華やかなシーンだった。

そして筆者としてはもう1つのピークだったのが、ラスト前「幸福のねじ」。和嶋氏のキー問題もあり、演奏頻度は減っていたが、久しぶりの披露。

メロディを変えて、歌いやすいキーにしていたが、やっぱりこの曲のパワーはすごい。人間椅子初期の躍動感が甦る1曲である。

そしてラストは「針の山」。前回の『苦楽』リリース時にも配信があったが、(おそらく)権利関係で「針の山」は披露されなかった。

しかし今回はそれもクリアできたのか、「幸福のねじ」「針の山」と、人間椅子の原点を感じられるような並びに興奮した。

テンションが高いままに本編は終了。

今回のライブ、ここ最近の中では結構音が大きめだったのが、個人的には良かった。

昔に比べると、人間椅子のライブも音が小さくなってしまったな、と寂しい気持ちだった。しかし今回はこれまでよりは大きめで、ロックバンドらしい音だった。

アンコールで登場した和嶋氏・ナカジマ氏は今回のツアーTシャツを着用。和嶋氏によれば、リリース時は白黒のTシャツだったが、今回はカラーになったとのこと。

鈴木氏のMCで「盛り上がっているところ、水を差すようで悪いですが」と始めた、「エイズルコトナキシロモノ」。これも通常のライブではかなり久しぶりの披露となる。

人間椅子の昔のライブと言えば、盛り上がっているところに水を差すような並びばっかりだったな、と思い出したりしていた。

なおこの曲では、ギターはダウンチューニング、ベースはノーマルと言うイレギュラーな編成で演奏される点も面白い。

そして鈴木氏もダウン用のベースに持ち替えて、「なまはげ」でアンコール終了。「異世界からやって来た~」の部分を鈴木氏も横で言っているのが面白かった。

いつもはこの曲がアンコールのラストに配置されるが、「まだあの曲をやってないぞ」という1曲が残っている。

前回の『苦楽』のツアーと異なり、ダブルアンコールの応えてメンバーが再び登場。最後に演奏されるのはもちろん「ダイナマイト」。

個人的には最後にどっしりと終わるより、怒涛の勢いで駆け抜けて終わる曲の方が、爽快感をもってライブを終えられるように思う。

首を振り回しているうちにあっという間に終わってしまったが、全17曲で2時間半ほどのライブだった。

会場の外に出ると、強めの雨と風。やっぱり和嶋氏の気合は十分だったことがわかる、『踊る一寸法師』再発記念ツアーのファイナルであった。

なお、ライブ会場には当時のドラマーだった土屋巌氏もいたようだ。Instagramに人間椅子へのメッセージとともに今回のライブのことが書かれていた。

<セットリスト>

※ライブ終演後に貼りだされたセットリスト表

※公式Twitterによるセットリスト

no. タイトルギターベース
SE新青年まえがき
1モスラノーマルノーマル
2ギリギリ・ハイウェイノーマルノーマル
MC
3夜明け前ダウンダウン
4巌窟王ダウンダウン
MC
5どだればちノーマルダウン
MC
6時間を止めた男ダウン(ダブルネック)ダウン
MC
7泥の雨ダウンダウン
8瀆神ダウンダウン
MC
9踊る一寸法師ダウンダウン
10暗い日曜日ダウンダウン
MC
11無情のスキャットダウンダウン
MC
12至上の唇ノーマルノーマル
13幸福のねじノーマルノーマル
14針の山ノーマルノーマル
En.1
15エイズルコトナキシロモノダウンノーマル
16なまはげダウンダウン
En.2
17ダイナマイトノーマルノーマル
※「ギター」「ベース」について、ノーマル・ダウンチューニングのいずれか記載した。

※Spotifyの公式プレイリスト

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全体の感想とまとめ

4月18日(月)に行われた「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」@東京 Zepp DiverCity(TOKYO)公演のレポートをお届けした。

新作のツアーでもなく、リリースのないツアーでもない、過去のアルバムの再発を記念したツアーというユニークな企画だった。

どちらかと言えば、95年のリリース当時のツアーに参加したという人は少数派だろう。筆者も当時は小学校低学年だったから、もちろん参加していない。

選曲と言う意味では、やはりアルバムリリースツアーでなければ、アルバムの中の渋い曲までなかなか普段演奏できない。それは作品数の多い人間椅子にとっては、特にその傾向にある。

もう何年、何十年と演奏しなくなってしまう曲の中にも、良い曲はたくさんある。そんな”埋もれた名曲”を発掘するには、再発記念ライブとは実に良い企画だと思う。

今回のライブに行った筆者の、素直な感想は以下の通りである。

この際、1stアルバム『人間失格』から順に、当時のリリースライブの再現ツアーを敢行してほしいところである。

思えば、人間椅子は”イカ天”バンドとしか見られない期間が長かった。「いや、現役のバンドだ」と、愚直に活動を続け、どういう訳か、2010年頃から動員が増加していった。

そしてOZZ FEST JAPANへの出演から、「無情のスキャット」MVのバズりまで、この10年間で状況は一変した。

「もう十分、今のバンドであることはアピールできたのではないか」と筆者は思う。次は、これまで膨大に作ってきた過去の作品を掘り起こす時期が来ても良いのでは?と考えている。

そして新規にファンになった人も、どんどん過去に遡って作品を聴いていくはずだ。ますます過去の作品への注目度は高まるだろう。

今回の「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」は、そんな過去の作品に新たな意味を与える、重要な一歩になったように思う。

もちろん常に新たな作品を作り続ける姿勢には敬意を表しつつ、そろそろ過去の整理の時期に入っても良いのでは?と思う次第である。

”今も昔も”スゴいバンドとして、人間椅子の活動が続いていくことを願うばかりである。

【ライブレポート】2021年9月27日 人間椅子『苦楽 ~リリース記念ワンマンツアー~』東京 Zepp DiverCity(TOKYO)

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