前回:人間椅子全曲トリビア辞典vol.5(13th『瘋痴狂』~15th『未来浪漫派』)
この記事では、人間椅子の楽曲にまつわるトリビアを紹介する。
トリビアとは、「くだらないこと、瑣末なこと、雑学的な事柄や知識、豆知識」を指す。
そんな豆知識を全曲について集めようと言うのが、この記事の主旨だ。
以下の内容を中心に書こうと考えている。
- 楽曲のタイトルのもとになった小説等は何か?
- 歌のフレーズの元ネタ
- スタジオ音源とライブ演奏時の違い
- 楽曲にまつわるエピソード(初披露の方法、制作時のエピソード)
第6回は、16th『此岸礼讃』~18th『無頼豊饒』までだ。
※この記事は読者参加型にできればと思い、こんなトリビアを知っていると言う方は、コメント欄にぜひお寄せください。
あまりに主観的な内容でなければ、書き加えさせてもらい、内容の充実を図ろうと思います。
16th『此岸礼讃』
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- 発売日:2011年8月3日、2016年11月2日(UHQCD再発)
- 発売元:メルダック、徳間ジャパンコミュニケーションズ(UHQCD再発)
- メンバー:和嶋慎治 – ギター・ボーカル、鈴木研一 – ベース・ボーカル、ナカジマノブ – ドラムス・ボーカル
no. | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 沸騰する宇宙 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:06 |
2 | 阿呆陀羅経 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 3:35 |
3 | あゝ東海よ今いずこ | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 4:51 |
4 | 光へワッショイ | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 4:56 |
5 | ギラギラした世界 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 4:29 |
6 | 春の匂いは涅槃の薫り | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 9:45 |
7 | 悪魔と接吻 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 3:26 |
8 | 泣げば山がらもっこ来る | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 4:30 |
9 | 胡蝶蘭 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 8:39 |
10 | 地底への逃亡 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:15 |
11 | 愚者の楽園 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 4:53 |
12 | 地獄のロックバンド | 鈴木研一 | 鈴木研一 | 2:40 |
13 | 今昔聖 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 5:24 |
合計時間 | 68:24 |
- 「此岸」とは、”この世”を意味する言葉であり、対義語は「彼岸」である。タイトルの意味は、この世を肯定しようというものである。アルバム発売ツアーの東京公演は2Daysであり、「此岸の日」「彼岸の日」とそれぞれ銘打たれた。
- ベスト盤を含む通算20作目とも語られる。そのためか、かつて人間椅子の楽曲に登場した言葉がタイトルに使用されるなど、記念碑的な作品となっている。
- 帯惹句は「現実とは偉大な学び舎です。僕たちは様々のことを学ぶために、この世に生まれてきました。」
- アルバム発売前の和嶋氏のコメントで、「大胆な転調や、奇抜なコード進行なども取り入れてあります」とあり、コンセプト以外に曲調についてのコメントは珍しい。
- 小説からタイトルを借りると言う人間椅子の定番の手法が、珍しく用いられていないアルバムである。
- タワーレコードでの購入特典は、デモ音源のCD-R「此岸礼讃への道 THE WAY OF THE SHIGANRAISAN」だった。これまでの人間椅子の歴史の中でもデモ音源が公開されることは珍しい。
沸騰する宇宙
- サビに登場する「オープン、セサミ」は、『アリババと40人の盗賊』に出てくる合い言葉で「開けゴマ」の意味。
- 歌詞に登場する「ソドムとゴモラ」は聖書に登場する都市。
- 2011年3月11日の東日本大震災の影響を受けてか、自然や宇宙の動きを表すような歌詞になっている。
- 近年は「第十二回 人間椅子倶楽部の集い 2016」や2016年のワンマンツアー「地獄の道化師」で演奏されているが、演奏頻度は低めである。
阿呆陀羅経
- 「阿呆陀羅経」とは、上方語「あほだら」と「陀羅尼(だらに)経」とをかけた語。願人坊主(がんにんぼうず)が木魚をたたき、または扇子で拍子をとりながら歌い歩き、銭を乞うた。
- メインボーカルはナカジマノブ、Bメロのみ鈴木研一という珍しい組み合わせ。和嶋慎治はコーラスでボーカル参加している。
- ナカジマ氏ボーカル曲は、ライブ本編後半で演奏されるが、この曲はナカジマ氏コーナーで演奏されることはなく、1曲目に演奏されることが多いなど、立ち位置が異なる。
- 2007年の14thアルバム『真夏の夜の夢』収録の「どっとはらい」に「阿呆陀羅経」と言うフレーズが出てくる。
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あゝ東海よ今いずこ
- 「東海」とは”日本”を意味する言葉。東シナ海の東方に存在する島国という意味で、中世~近世の日本で自国の名称として用いられていた。
- サビは「阿藤快よ今いずこ」に聞こえると当時話題になり、ライブMCでもメンバー間でもその話題となっていた。なおアルバム発売当時は存命だった阿藤氏であったが、2015年に逝去した。
- アルバム発売ツアー以来、おそらく演奏されていないレア曲である。
光へワッショイ
- 和嶋氏が当時よく語っていた「人間は光になるために生まれてきた」という内容をダイレクトに歌詞にしたもの。仏教的な考え方も垣間見える内容である。
- デモCD-Rにおいて、「ワッショイ」のフレーズだけは仮歌段階でも決まっていた。
- ライブでは「第十回 人間椅子倶楽部の集い 2013」で演奏されているが、それ以降は演奏されていない。
ギラギラした世界
- ライブでは、アウトロのリフに入る前には、和嶋氏のみギターを弾く箇所が挿入されることがある。Led Zeppelinの楽曲「Heartbreaker」の一節が組み込まれることがあった。
- デモCD-Rにおいては、サビの主旋律とハモりは和嶋氏と鈴木氏で逆になっていた。
- ライブはアルバム発売ツアーと、2012年のツアー「此岸御詠歌(しがんごえいか)」などで演奏されて以来、演奏頻度は低い楽曲である。
春の匂いは涅槃の薫り
- 1曲あたりの時間としては、9:45で歴代最長である。前作15thアルバム『未来浪漫派』の「深淵」が9:23で最長であったが、記録を塗り替えることとなった。
- タイトルは2010年のツアー「春のにほひは涅槃のかほり」から来ている。なお6thアルバム『無限の住人』収録の「黒猫」にも、類似したフレーズが登場している。
- 2011年のアルバム発売ツアーや、「冬来たりなば春遠からじ ~人間椅子ワンマンツアー 2011年師走~」で演奏されて以来、演奏頻度は極端に少ない。
悪魔と接吻
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- 前作15th『未来浪漫派』をタワーレコードで購入した場合、特典としてついていたCDに「悪魔と接吻」が収録されていた。本作に収録されたものは、同じ音源である。
- タワーレコード渋谷店で行われた『未来浪漫派』のインストアライブで初披露されている。
- ノーマルチューニングで演奏されるが、ギターソロ前の転調部分では6弦開放音をチョーキングした音が入っている。これは指盤より上の部分の6弦ごと押すことでチョーキングが可能になる。
- 1回目のアンコールで演奏される頻度が高い。
泣げば山がらもっこ来る
- タイトルは西津軽郡岩崎村の「岩崎の子守歌」から。同様のフレーズは人間椅子の5th『踊る一寸法師』収録の「どだればち」や6th『無限の住人』収録の「もっこの子守唄」などにも登場する。
- 「もっこ」とは、蒙古から来ているようで、昔の蒙古襲来を恐れる意味がある。
- 津軽弁で歌詞が書かれているが、特に標準語訳はブックレットに表記はない。
- 楽曲はNWOBHMのバンドTANKをイメージして作られたとのこと。
- アルバム発売ツアーで演奏されて以来、演奏されなくなったレア曲である。
胡蝶蘭
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- 2015年2月26日に行われたスコア「人間椅子傑作譜面集」の発売を記念した配信番組では、スコアにしてほしい楽曲を視聴者に尋ねたところ「胡蝶蘭」があがると、和嶋氏は「ハードロックじゃない」と発言。鈴木氏は「ハードロックじゃないの?」と返す場面があった。
- 中間部でギターとベースが同じフレーズを追いかけるように弾く部分は、蝶々が追いかける様子を表現したものらしい。
- アルバム発売ツアー以降も時々演奏され、近年は2017年ライブ盤リリース記念ワンマンツアー「威風堂々」にて地方を中心に演奏された。
地底への逃亡
- 鈴木氏は「宇宙シリーズ」の楽曲をイメージして作ったものの、歌詞は地底に関するものになったとのこと。
- 宇宙らしい要素として、ユニバイブというエフェクターが効果的に使用されている。このアルバムでは「沸騰する宇宙」「今昔聖」などでも使用されている。
- アルバム発売ツアー以降は演奏頻度が低く、レア曲入りしている。
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愚者の楽園
- 「愚者の楽園」とは、もともとローマ・カトリックの古い教義によるもの。そこに住んでいる人は満足していても、実際には人間性を否定するような悪い特徴を持った場所のこと。
- タイトルと同じフレーズは、1991年の2nd『桜の森の満開の下』収録の「爆弾行進曲」に登場する。
- ライブで演奏される際には、スライドバーを持ったまま演奏される。
- アルバム発売ツアーで演奏後、早々に「第八回 人間椅子倶楽部の集い 2011」で演奏され、レア曲入りしてしまった。
地獄のロックバンド
- スラッシュメタルを意識した楽曲ながら、変拍子(5拍子)が用いられている。
- 歌詞に登場する「がぶる」とは、激しく揺さぶるなどの意味がある。
- アルバム発売ツアー後は、「第九回 人間椅子倶楽部の集い 2012」で演奏され、その後の演奏はない。
今昔聖
- 末法思想や空也上人について学ぶ中で、歌詞ができたという楽曲。
- アルバムの中では最後の出来た楽曲で、最後にできた和嶋氏の楽曲は力作が多いとメンバーが語っている。
- Bメロ部分が1993年の4th『羅生門』に収録の「ブラウン管の花嫁」のBメロに似ているという声もあったが、特に言及はなかった。
- タワーレコード購入特典のデモ音源ではリフの制作過程が窺える。そこには「此岸御詠歌」のリフも入っており、「今昔聖」とあわせて2曲が生み出されたと思われる。
- 演奏頻度は高く、近年も2019年三十周年記念オリジナルアルバム『新青年』リリースワンマンツアーで演奏されている。
17th『萬燈籠』
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- 発売日:2013年8月7日、2021年11月24日(UHQCD再発)
- 発売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ
- メンバー:和嶋慎治 – ギター・ボーカル、鈴木研一 – ベース・ボーカル、ナカジマノブ – ドラムス・ボーカル
no. | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 此岸御詠歌 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 2:28 |
2 | 黒百合日記 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 7:04 |
3 | 地獄変 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:14 |
4 | 桜爛漫 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 5:40 |
5 | ねぷたのもんどりこ | 鈴木研一 | 鈴木研一 | 3:13 |
6 | 新調きゅらきゅきゅ節 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 3:32 |
7 | 猫じゃ猫じゃ | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 4:37 |
8 | 蜘蛛の糸 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治、鈴木研一、ナカジマノブ | 3:59 |
9 | 十三世紀の花嫁 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:42 |
10 | 月のモナリザ | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:26 |
11 | 時間からの影 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 4:27 |
12 | 人生万歳 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 3:58 |
13 | 衛星になった男 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:12 |
合計時間 | 62:39 |
- タイトル『萬燈籠(まんどろ)』とは津軽弁で「まん丸の」と言う意味で、月が真ん丸であることを指すもの。なお弘前にライブハウス「萬燈籠」が実在するため、許可を取ったと言う。
- アルバム制作期間が決まっていた中で、OZZ FEST Japan 2013への出演が急きょ決定した。一度ライブの準備に集中し、ライブ終了後にレコーディングが始まった。
- 帯惹句は「およそすべての現実は、永遠に未知のままの幻想だろう。そこに意味を付けるのは、君地震だ。」
- 和嶋氏のインタビュー等によれば、「マイナーキーでヘビーな曲のみにする」という縛りを設けたようだ。そのためアコースティックな曲や、明るい曲調の楽曲は含まれていない。
- タワーレコードで購入すると、未発表デモ音源が特典としてついてきた。タイトルは「オー!デカダンス」であり、アルバム収録はなく、ライブでの披露も一度もない。
此岸御詠歌
- 前作の16th『此岸礼讃』のアルバム発売ツアーより、入場SEで使用されており、人間椅子としては初めてオリジナル楽曲のSEである。なおこれまで和嶋氏が作った「鉄格子黙示録」の導入SEが流れることがあり、その他は既存の楽曲をサンプリングして使っていた。
- 本作に収録されたのは新録バージョンであり、『此岸礼讃』のツアーで使われていた音源とは異なる。
- リフは、琵琶曲の「平家物語」からインスパイアされたもの。前作16th『此岸礼讃』の「今昔聖」を制作する中で生まれたリフのようだ。
- ライブで演奏されたのは、2013年7月28日に犬神サアカス團との対バンライブ(@千葉LOOK)でのみ。それ以降は演奏されたことがない。
黒百合日記
- 歌詞の内容は恋の迷妄さについて歌ったもの、とのこと。
- 中間部はイタリアのプログレバンドGoblinからの影響とのこと。
- アウトロのギターは、オクターブファズをかけたもの。鎮魂歌の意味合いがあるようだ。
- 演奏頻度は比較的高いが、Aメロのキーがかなり高く、和嶋氏が歌えなくなる場面がある。
地獄変
- 芥川龍之介の小説『地獄変』からタイトルをとったもの。「地獄変」とは地獄を描いた図のことである。
- 鈴木氏は歌詞に出てくる「傲慢」「陰険」など全て自分に当てはまるが、「冗舌」だけは当てはまらないとライブMCで語っている。
- アルバム発売ツアーや2014年の「二十五周年記念ツアー ~無頼豊饒~」では演奏されていたが、その後の演奏はないレア曲である。
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桜爛漫
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- 特にシリーズ化はされていないが、”桜”がタイトルにつくのは、2001年の10th『見知らぬ世界』収録の「涅槃桜」以来である。
- 海外から見た日本らしさを強調した楽曲とのこと。中間部の展開では、大正琴が用いられている。
- アルバム発売ツアー以来、演奏されていないレア曲である。
ねぷたのもんどりこ
- 公式に公開されたものではなく、公式に”公認”された非公式MVがアップロードされている。
- ねぷた祭りの囃子の中で、ねぷたが戻ってくる時の囃子のリズムがイントロに使用されている。ちなみに進行のリズムは1990年の1st『人間失格』収録の「あやかしの鼓」、休みは2017年の20th『異次元からの咆哮』収録の「月夜の鬼踊り」で使われた。
- 歌詞に登場する「じゃわめく」とは津軽弁で、ぞくぞくする、体中がざわざわすることを指す。
新調きゅらきゅきゅ節
- 北島三郎のデビュー曲「ブンガチャ節」をメタルで表現したもの。「きゅっきゅきゅー」や「ぶんがちゃっちゃ」などのフレーズはそのまま使用されている。
- ギターソロでは、ギターをスライドさせた三味線のような奏法を用いている。これはブルースギターで用いられる奏法を、日本風にアレンジしたものとのこと。
- ライブでの演奏頻度は高く、ライブ後半やアンコールでの演奏が多い一方、1曲目や前半で演奏されることもある。
猫じゃ猫じゃ
- タイトルは江戸時代、明治時代に流行した「おっちょこちょい節」の別名「猫じゃ猫じゃ」より。「猫ぢや猫ぢやとおしやますが、」などの一節が有名である。
- 本作のレコーディングスタジオ内で猫が紛れ込んでしまい、救出に奔走したとのこと。そのエピソードにインスパイアされ、タイトルに猫が入ったようだ。
- アルバム発売ツアー以来、演奏されることがないレア曲である。
蜘蛛の糸
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- 芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』からタイトルを借りたもの。
- メンバー3人の名前が作曲に並ぶスタイルは本作が初めて。ボーカルはナカジマ氏が担当するため、ナカジマ氏コーナーで演奏される。
- なお筋肉少女帯にも、1994年のシングル『蜘蛛の糸』がある。筋肉少女帯とのコラボを行った際には、お互いの「蜘蛛の糸」をカバーするのも面白いかも、と言う発言もあった。
十三世紀の花嫁
- 和嶋氏が夢の中で鳴っていた楽曲を思い起こして続きを作ったというもので、タイトル・歌詞が夢に出てきたのは初めてのことだそう。詳しくはこのインタビューで書かれている。
- ポエトリー・リーディングのスタイルは、2007年の14th『真夏の夜の夢』収録の「世界に花束を」以来であるが、今回は弾きながら喋ることができるように、工夫したとのこと。
- イントロ部分には、本物のサイレンが効果音として使用されている。
月のモナリザ
- タイトルは実は続いていたアポロ計画のうち、アポロ20号が発見したと言われる月面に合った巨大宇宙船に乗っていた生体反応のある女性「月のモナ・リザ」からとったもの。あくまで都市伝説とされている。
- 終盤のギターソロは、ライブではアドリブが披露され、長く演奏される。
- 鈴木氏の中では「人間椅子倶楽部の集い」で演奏されるタイプのレア曲とのこと。実際に演奏頻度は少なく、「第十四回 人間椅子倶楽部の集い 2018」で演奏された。
時間からの影
- タイトルはH.P.ラヴクラフトの小説『時間からの影』からとったもの。
- 歌詞に登場するフレーズ「現世は夢」は、後に25周年を記念したツアータイトルに使用された。
- ベスト盤には収録されないものの、人気の高い楽曲。そのためかライブでの演奏頻度は比較的高く、近年も2018年「恩讐の彼方~人間椅子2018年晩夏のワンマンツアー」で披露された。
人生万歳
- 仏教の因果応報にもとづいて書かれた歌詞と思われる。
- ライブでは「万歳!」のところで両手を挙げる動作をするのが定番となっている。
- 発売ツアーだけでなく、2016年「怪談 そして死とエロス ~リリース記念ワンマンツアー~」でも演奏されており、まだレア曲入りはしていない。
衛星になった男
- 1960年代の米ソ宇宙開発競争の中、着陸しないままの衛星がある、という話を元に歌詞が書かれている。
- キャンプを行うようになった和嶋氏は、キャンプ地で作曲をするようになった。房総半島でキャンプをした際に、あまりの寒さに指2本でも弾けるリフを作ったのがこの曲。(BEEASTのコラムに詳細な情報あり)
- イントロのアルペジオのみカポタストをつけて演奏される。ライブではダブルネックギターは使用せず、自らカポを外してメインリフに入っていた。
- 発売当時は推し曲の1つであったが、レア曲入りすることとなり、「第十二回 人間椅子倶楽部の集い 2016」で久しぶりに演奏されている。
18th『無頼豊饒』
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- 発売日:2014年6月25日、2021年11月24日(UHQCD再発)
- 発売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ
- メンバー:和嶋慎治 – ギター・ボーカル、鈴木研一 – ベース・ボーカル、ナカジマノブ – ドラムス・ボーカル
no. | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 表徴の帝国 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 5:36 |
2 | なまはげ | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:22 |
3 | 地獄の料理人 | 鈴木研一 | 鈴木研一 | 4:24 |
4 | 迷信 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 5:00 |
5 | 生まれ出づる魂 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 4:58 |
6 | 悉有仏性 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:15 |
7 | 宇宙船弥勒号 | 和嶋慎治 | ナカジマノブ | 3:38 |
8 | リジイア | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 5:35 |
9 | ミス・アンドロイド | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:00 |
10 | グスコーブドリ | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 3:49 |
11 | がらんどうの地球 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:26 |
12 | 結婚狂想曲 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 4:13 |
13 | 隷従の叫び | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 7:20 |
合計時間 | 67:42 |
- アルバムタイトル『無頼豊饒』は、「無頼」が”自由”であり、「豊饒」は”豊かさ”を意味する。精神的に自由であることについて、ロックで表現したアルバム。
- 人間椅子史上初めて、初回限定盤と通常盤の2形態でリリースされた。初回限定盤には、2014年1月18日「バンド生活二十五年〜猟奇の果〜」(TSUTAYA O-EAST)公演の一部分が収録されている。
- アルバムジャケットは浮世絵をイメージしたもの。なおジャケットに自由に色を塗る「ぬり絵コンテスト」企画が行われた。
- 帯惹句は「人は何者でもない。無限の可能性を秘めた、一個の自由な存在だ。」
- ブックレット内には、メンバーの浮世絵風イラスト、なまはげ、がしゃ髑髏と思われるイラストが描かれている。
- リリースの間隔が1年未満となったのは、1995年の5th『踊る一寸法師』~1996年6th『無限の住人』以来のことである。
- アルバムの最後4曲が全てダウンチューニングの楽曲であり、4曲ダウンチューニングの曲が並ぶのは今回が初めてである。
- 前作『萬燈籠』の中に、本作のタイトルとなるワードが隠されている。「蜘蛛の糸」では「【無頼】放蕩し放題」、「十三世紀の花嫁」では「全てが自由で 全てが【豊饒】」とある。しかし和嶋氏いわく、そのような意識はなかったようだ。(こちらのインタビュー参照)
表徴の帝国
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- タイトルは、フランスの哲学者ロラン・バルトの著書『表徴の帝国、記号の国』から。西洋が「意味の帝国」であるのに対し、日本が「表徴(記号)の帝国」だとしている。
- Aメロの歌詞は、「7・5」で割られている。これは日本語に特有の「5・7・5」のリズムを意識したもの。
- 基本は3拍子で作られているが、変拍子に聞こえるように作られている。
- 拍子が複雑なためか、アルバム発売ツアーで演奏されて以来、ほとんど演奏されていない。
なまはげ
- MV撮影は、ファンクラブ会員が観客役で擬似ライブ形式で行われた。その場で初めて楽曲を聴き、何度かライブ形式だが当てぶりで撮影が行われていた。
- ライブではスタジオ音源よりも、かなり遅く演奏される。
- 中間部で和嶋氏のみギターを弾く部分は、もともと和嶋氏が目立つ部分かと思われた。しかし鈴木氏がパフォーマンスをすることになり、和嶋氏は後ろに下がって演奏している。
- 最初のリフの部分で、メンバー3人が唸るのだが、それぞれ同じタイミングに声が重ならないように、少しずつずらしたり、発声を変えてみたりと工夫しているとのこと。
- ライブでは「異世界からやって来た客人(まれびと)の歌」というMCから曲に入る。
- ワンマンライブでは、アンコール最後に演奏されることが多いが、イベントなどでは最初に演奏されることも多い。
地獄の料理人
- 第21回日本プロ音楽録音賞の優秀賞に選ばれている。マスタリングエンジニアの菊地功氏、ミキシングエンジニアの内藤”Teru”輝和氏が受賞した。
- 歌詞には調理方法がいくつも登場するが、ライブではよく調理方法を間違えて歌ってしまうとのこと。
- メインリフのリズムは鈴木氏が好んでいるもので、Mercyful Fateがよく使うとのこと。
- 「泣いたって」の部分では、メロディに合わせて手拍子をするのが定番となっている。
- 演奏頻度は比較的高く、近年も2019年「三十周年記念オリジナルアルバム『新青年』リリースワンマンツアー」で演奏されている。
迷信
- ギターソロでは音が浮遊するようなフレーズがあるが、弦を直接指で引っ張って弾いている。
- ライブでは「未来は無限の可能性を秘めているという歌」というMCから始まることが多い。
- ライブでは「おお」の直前に、鈴木氏が観客を煽るような手の動作をするのが定番となっている。
- ワンマンライブでは本編終盤に演奏されることが多いが、イベントでは1曲目に演奏されることもある。
生まれ出づる魂
- Motorheadを意識して作られた楽曲とのこと。
- ベースのみで始まる楽曲としては、2007年の14th『真夏の夜の夢』収録の「夜が哭く」以来である。
- 中間部の和嶋氏が歌うメロディは、テンポを速くすると1990年1st『人間失格』収録の「針の山」とよく似ている。
- アルバム発売ツアーで演奏されて以来、演奏されることがほとんどないレア曲である。
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悉有仏性
- タイトルの読み方は「しつうぶっしょう」である。仏教の考え方で、生きとし生けるもの全てに仏となる性質を備えている、というもの。
- イントロ部分のギターは4本のギターが重ねられているとのこと。配信番組「帰ってきた人間椅子倶楽部 Vol.1」では3人でギターを重ねて演奏する場面が見られた。
- 通常のバンド編成の音以外に、エレキシタールと木魚が用いられている。
宇宙船弥勒号
- 歌詞のテーマとなっているのは、弥勒菩薩である。弥勒菩薩はゴータマ・ブッダの次に仏になることが約束された菩薩であり、ゴータマの入滅後56億7千万年後の未来にこの世界に現われ悟りを開き、多くの人々を救済するとされる。
- 和嶋氏によれば、「弥勒菩薩は身近なヒーローなのではないか」と考え、仏教世界についてできるだけ平易な表現で歌詞を作った。
- ナカジマ氏コーナーの楽曲ではレア曲入りしており、「第十三回 人間椅子倶楽部の集い 2017」で演奏されている。
リジイア
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- タイトルはエドガー・アラン・ポーの短編小説「リジイア(ライジーア)」から。小説ではライジーアは死後、別の女性の体を借りて甦ると言うゴシック風の小説である。
- ライブでの演奏頻度は低く、アルバム発売ツアーのアンコールで演奏されて以来、ほとんど演奏されていない。
- 2011年の16th『此岸礼讃』収録の「胡蝶蘭」も「ライジーア」から着想を得たもの。ともに12/8拍子となっている点も共通している。(ファンからの質問での回答を参照)
ミス・アンドロイド
- 鈴木氏自身がB級の楽曲を作ろうと意識した楽曲。
- 中間部のツインギターは、イギリスのバンドWishbone Ashを意識したもの。
- レア曲入り宣言を早々にしていたものの、2015年にタワーレコード渋谷店で行われたDVD『苦しみも喜びも夢なればこそ「現世は夢~バンド生活二十五年~」渋谷公会堂公演』の発売ライブで披露されていた。
グスコーブドリ
- タイトルは、宮沢賢治の童話『グスコーブドリの伝記』から。歌詞にも「イーハトーブ」など宮沢賢治を意識したフレーズが登場する。
- 「みんなが一人 一人がみんな」と言うフレーズが登場するが、宮沢賢治は「one for all, all for one」を訳して初めて使ったとされる説もある。和嶋氏はそれを意識して書いたのではないとのこと。
- アルバム発売ツアーで演奏されて以来、あまり演奏されていない。「ミス・アンドロイド」とともにライブDVD発売記念のインストアライブで披露されていた。
がらんどうの地球
- Black Sabbathの4thアルバム『Vol.4』収録の「Undet the Sun」に似てしまったと鈴木氏が語っている。
- アルバム発売ツアーで演奏されて以降は、「第十三回 人間椅子倶楽部の集い 2017」で演奏されている。
結婚狂想曲
- イントロのリフは、フェリックス・メンデルスゾーンの「結婚行進曲」をマイナーにしたもの。
- 本作では鈴木氏のスラッシュメタル曲がなく、またナンセンスソング枠もこの曲で和嶋氏が担っている点はかなり珍しい。
- この曲を録っている際に、アンプの真空管が壊れてしまい、”呪いの”真空管として、「第十一回 人間椅子倶楽部の集い 2015」の抽選会でプレゼントされた。
隷従の叫び
- イントロは、ドイツ製のメトロームが使用されている。
- 曲中に登場する効果音はスプリング・リバーブのバネの音。ダン・エレクトロのDSR-1 Spring Kingを用いて、叩いたり落としたりして録音したとのこと。
- アルバム発売ツアーで演奏されてから、ほとんど演奏されていない。
<Vol.7に続く>
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