【エレファントカシマシ】エピックソニー期という時代 前編(1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』~4th『生活』)

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エレファントカシマシ
画像出典:Amazon

デビューから30年を超えるバンド、エレファントカシマシ。最近はボーカル宮本浩次氏のソロ活動が話題であるが、やはり筆者としてはエレカシとしての活動が気になっている。

エレファントカシマシと言うと、アルバムごとに作風が異なることが特徴だ。そして、大きく分けるとレコード会社の移籍とともに、転換点を迎えていることが多い。

中でもエレカシが最初に在籍した”エピックソニー”の時代は、カルト的な人気がある。筆者もそんなエピックソニー時代が大好きな1人だが、一方で最初は取っつきにくさも感じる音楽性である。

では、なぜエレカシファンはエピックソニー時代に惹かれるのか?

今回の記事では、エピックソニー時代に対してエレカシファンが感じる想いを、少しでも言語化できたらと思って作成した。

前編の今回は、1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』~4th『生活』の時期を振り返るとともに、この時期のエレカシの魅力に迫っていきたい。

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【前書き】”エピックソニー”とは?

この記事を読んでいる人は、既にエレカシのファンが多いと思われる。だが改めて、エレファントカシマシのエピックソニー期とは何のことなのか、振り返っておこう。

エレファントカシマシは1981年にメンバーの、石森敏行(ギター)と冨永義之(ドラムス)を中心に結成され、後に宮本浩次(ボーカル)が加入。

1986年に高校時代に高緑成治(ベース)が加入して現在のメンバーとなる。同年、CBS SONY SDオーディションに入賞し、双啓舎と契約する。

この双啓舎という事務所は、エレカシのための事務所だったようで、社長の綾部和夫氏がエレカシの理解者だったと言う。

そして1988年にエレカシはエピックソニーからシングル「デーデ」、アルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』でデビューする。

”エピックソニー”とはつまり、当時在籍していたレーベルのことである。このレーベルでシングル9枚、アルバム7枚をリリースして、契約が打ち切りとなっている。

その後のエレカシはポニーキャニオンと契約し、ポップな路線で「悲しみの果て」「今宵の月のように」などで、ヒットを飛ばすようになる。

レーベルの移籍前後で、音楽性や露出のスタンス等が全く変わったため、レーベル名でエレカシの歴史を区切ることが慣例となった。その後も、レーベルが変わるたびに音楽性に変化があった。

エピックソニー期のエレカシについては、これから詳しく述べていくが、とにかく自由であったことが特徴だ。

本人たちがどう思っていたかは別にして、自由にやらせてもらっていた、と言うのが正しいかもしれない。エピックソニー期のアルバムとその変化を通じて、この時期のエレカシを紐解いていこう。

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エピックソニー期の作品解説・レビュー(前編)

今回はデビュー盤1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』から、伝説的な4th『生活』までの4枚を紹介していこう。

ここではいくつかの代表的な楽曲を取り上げながら、各アルバムの特徴を述べていく。

1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』

  • 発売日:1988年3月21日
  • 収録シングル:1st『デーデ』(1988年3月21日)
no. タイトル作詞作曲時間
1ファイティングマン宮本浩次宮本浩次3:41
2デーデ宮本浩次宮本浩次2:29
3星の砂宮本浩次エレファントカシマシ4:19
4浮き草宮本浩次宮本浩次3:05
5てって宮本浩次宮本浩次3:54
6習わぬ経を読む男宮本浩次宮本浩次3:46
7BLUE DAYS宮本浩次宮本浩次4:37
8ゴクロウサン宮本浩次宮本浩次2:45
9夢の中で宮本浩次・石森敏行石森敏行4:15
10やさしさ宮本浩次宮本浩次6:18
11花男宮本浩次宮本浩次3:12
合計時間42:21

エレファントカシマシの衝撃のファーストアルバムである。筆者はリアルタイムでは聴いていないが、音楽誌『ROCKIN’ON JAPAN』を中心に、大きく注目されたと言う。

音楽的には、ストレートなロックンロールが中心となっている。メンバーが憧れていたというRCサクセションの影響が色濃く感じられるアルバムだ。

このファーストアルバムには、デビュー前からのレパートリーが含まれているが、現在もライブで演奏されるような代表曲が多数収録されている。

やはり1曲目「ファイティングマン」は外せない名曲であろう。攻撃的なイントロ、「黒いバラ取り払い…」で始まる冒頭の歌詞、どれをとっても凄まじいパワーだ。

デーデ」「星の砂」のように、社会に対する反発のような歌詞が見られる楽曲もある。シンプルな言葉ながら、独特の言葉遣いが見られるのも、この時期の特徴である。

花男」では、ロックサウンドに、どこか民謡のようなこぶし回しの歌唱が特徴である。この”タメ”の効いた歌いまわしは、この後の作品でより顕著となっていく。

全体的にはストレートなロックンロールに、宮本氏の叫びが乗っかる、という爽快な作品である。テンポ良く聴くことができ、緩急のつけ方もちょうど良い。

一方で、後のエレカシ作品を知ったうえで比較すると、”エレカシ前夜”と言った内容とも言える。

宮本氏の個性的なボーカルが印象的だが、音楽的にはジャンルがはっきりとしたポップな作品である。

この後の作品が異色すぎるが故に、振り返って聴くと”エレカシらしさ”という点では薄味と感じる人もいるかもしれない。

2nd『THE ELEPHANT KASHIMASHI II』

  • 発売日:1988年11月21日
  • 収録シングル:3rd『おはよう こんにちは』(1988年11月2日)
no. タイトル作詞作曲時間
1優しい川宮本浩次宮本浩次4:41
2おはよう こんにちは宮本浩次宮本浩次4:33
3金でもないかと宮本浩次宮本浩次3:49
4土手冨永義之冨永義之4:00
5太陽ギラギラ宮本浩次宮本浩次6:41
6サラリ サラ サラリ宮本浩次宮本浩次2:52
7ゲンカクGet Up Baby石森敏行・宮本浩次石森敏行3:27
8ああ流浪の民よ宮本浩次宮本浩次5:04
9自宅にて宮本浩次宮本浩次4:59
10待つ男宮本浩次宮本浩次4:30
合計時間44:36

前作から7か月ほどのハイペースで制作された2ndアルバムである。しかし1stの延長線上にあるかと言うと、既に様々な面で変化も見られている作品だ。

まずは前作の爽快感に比べると、重苦しい雰囲気が漂っている点である。サウンド面での変化はないものの、軽快なビートの曲は減り、ずっしりとヘビーなリズムの楽曲が多い。

1曲目「優しい川」は、まさにエピック期エレカシの幕開けとでも言うような、重々しい楽曲だ。スローテンポに宮本氏の絶叫が響き渡る。

そしてライブでの演奏も多い「おはよう こんにちは」は1stからの攻撃性を受け継ぎつつ、けだるい雰囲気になっている。宮本氏独特のタメの歌い方が、演奏を崩壊させていくようなヒリヒリ感がある。

太陽ギラギラ」「サラリ サラ サラリ」の流れには、1stにはないダークさのようなものが見られる。どこか閉塞感、そして戸惑いのようなものが感じられる楽曲となっている。

ライブ「待つ男」も、壮絶な叫びを聞かせてくれる楽曲ではあるが、やはり1stに比べればずっしりと重たいサウンド。「花男」にあったような高揚感は感じられなくなっている。

宮本氏はテレビで見るような華やかなステージで歌うことを夢見ていたようだが、実際はずいぶん尖ったバンドとして演出されることが多かったようだ。

その最たるものとして、上記「おはよう こんにちは」の客電つけっぱなしの渋谷公会堂公演がある。本人たちが望んだものではなく、演出として行われたらしい。

その結果として、自分たちの目指すものと、求められるものの間で葛藤が生じ始めた時期でもあるようだ。そんな苦悩がダイレクトにヘビーな雰囲気として、表れた作品と言えよう。

結果的には、エピックソニー期らしい雰囲気が漂い始めた作品という見方もできるだろう。

3rd『浮世の夢』

  • 発売日:1989年8月21日
  • 収録シングル:4th『浮雲男』(1989年8月2日)
no. タイトル作詞作曲時間
1「序曲」夢のちまた宮本浩次宮本浩次3:17
2うつら うつら宮本浩次宮本浩次6:40
3上野の山宮本浩次宮本浩次5:04
4GT高緑成治・宮本浩次高緑成治4:01
5珍奇男宮本浩次宮本浩次7:14
6浮雲男宮本浩次宮本浩次3:30
7見果てぬ夢宮本浩次宮本浩次4:07
8月と歩いた宮本浩次宮本浩次3:46
9冬の夜宮本浩次宮本浩次3:20
合計時間41:06

前作より9か月でリリースと、早いペースでの作品作りが行われている。バンド名を冠したアルバムタイトルは前作まで、今回は日本語表記のアルバムタイトルとなっている。

大きな変化と言う点では、2つある。1つは歌詞の文学的な要素が強まったことである。

「序曲」夢のちまた」から「うつら うつら」の流れは、文学青年の目線から描かれたような歌詞となっている。ロックンロール的な軽快さはなく、ずっしりと重さが感じられる。

見果てぬ夢」も同様の傾向の楽曲だが、宮本氏の叫びはさらに強さを増しており、フォークのような力強さを持っている。初めて聴く人には最も取っつきにくく感じられる部分ではなかろうか。

もう1つの変化としては、宮本氏が拙いながらギターを始めたことである。まだ立って演奏することもままならない状況ながら、アルバムの随所でその演奏を聴くことができる。

ライブでの定番「珍奇男」は、宮本氏の弾き語りからスタートして途中からバンド演奏になっていく。フォーク的な力強さと、ロックのパワーのどちらも感じられる名曲であろう。

冬の夜」も宮本氏の弾き語りだが、演奏を間違えたまま収録されている点は話題になった。本当に一発録音の記録となっている点が驚くべきことである。

全体的には宮本氏の作るメロディがフォークと言うか、演歌のようにも感じられるアルバムである。

また宮本氏がギターを始めたことで、バンドサウンドが崩れ始めたようにも感じられる。それが結果的にフォークのように感じられるかもしれない。

その分、宮本氏の作る歌詞やメロディを際立たせているようにも思う。

次作『生活』と合わせて、宮本氏の独白のような世界観の作品となっている。ただ『生活』で完成を見る宮本氏の独白のような世界観は、ここでは模索の段階であるとも見える。

4th『生活』

  • 発売日:1990年9月1日
  • 収録シングル:5th『男は行く』(1990年7月21日)
no. タイトル作詞作曲時間
1男は行く宮本浩次宮本浩次6:58
2凡人 -散歩き-宮本浩次宮本浩次5:56
3too fine life宮本浩次石森敏行・宮本浩次4:31
4偶成宮本浩次宮本浩次7:16
5遁生宮本浩次宮本浩次12:05
6月の夜宮本浩次宮本浩次3:05
7晩秋の一夜宮本浩次宮本浩次10:08
合計時間50:00

エピックソニー期の中で最も問題作とされつつ、最も人気が高い作品とも言える名盤である。曲数は7曲とミニアルバムのようだが、フルアルバムとしての作品である。

前作『浮世の夢』で見せた文学的な要素をさらに発展させ、1人の引きこもりの文学青年のコンセプトアルバムのような内容となっている。

本作の特徴としては、異様なミックスと、一方で高い音楽性である。

まず一聴してわかる通り、宮本氏のボーカルとギターの音が異様に大きくミックスされており、他のメンバーの楽器は遠くの方でわずかに聞こえるだけである。

その一方で7曲のコンセプトアルバムのような楽曲群は、ハードロックとプログレの要素を感じる。

アルバム前半はハードな楽曲で固められており、「男は行く」「凡人 -散歩き-」は1stのような軽快さではなく、ハードロックのリフで押していくような、どっしりとヘビーな攻撃性である。

唯一宮本氏以外が作った「too fine life」のみ軽やかな楽曲であるが、アルバム内ではちょうど緩急の付くポイントである。

後半は一気に暗いムードへと変貌し、「偶成」ではまだロマンチックな陰鬱さながら、「遁世」では世捨て人のような主人公の独白が延々と続く内容である。

最後の「月の夜」「晩秋の一夜」は、少し光明の見えるような、精悍な印象の2曲だ。いずれもプログレを感じさせるような、構成も見事な楽曲である。

アルバム全体を通じて、宮本氏の作詞・作曲ともに冴え渡っている印象である。一方でバンドとしてのサウンドは完全に崩壊したと言って良いような状態である。

ある意味では、宮本氏の弾き語りでも成立してしまう作品だ。それだけ宮本氏が先を行ってしまったが故に、このようなサウンドとなり、一方で高い評価を受けた作品であると言える。

なお、本作について、さらに詳しいレビューについては、以下の記事にまとめている。

エピックソニー期の魅力とは何か?(前編)

エレカシファンの間でも、常に”エピックソニー期”の良さが語られる。「人はなぜ”エピックソニー期”に惹かれるのか?」、この問いに対して、なかなか言語化して答えるのが難しい。

しかし、ここではあえてその感覚を言語化してみたいと思う。今回は1stから4thまでのエピックソニー期のエレカシの魅力に焦点を当てて書いてみた。

4人のサウンドのみで作られる独特な音楽性

エピックソニー期のエレカシの作品を聴くと、およそ80年代終わりのサウンドとは思えない、荒削りで独特な音になっている。またバブルの時代にあって、世間には全く迎合しない歌詞となっている。

そしてバンドの4人で作り出した生々しいサウンドと、宮本氏の絶曲が、剥き出しのロックサウンドとして、一部のコアなファンを作り出したようである。

既に述べてきたように、1stでは怒りや葛藤をシンプルなロックンロールに乗せた、比較的分かりやすいロックンロールが中心であった。

それが2nd以降は内省的な色を帯び、音楽的にもヘビーさが増してくる。3rdでは宮本氏のカラーが強まり、バンド色を失い始めた。

そして文学的な表現が歌詞に見られるようになり、4thでは文学青年を主人公にしたコンセプトアルバムのような内容となった。楽曲・歌詞ともに、エピックソニー期の頂点とも言えるだろう。

4thを除き、ほとんどバンド4人だけのサウンドで作られている。そしてほぼ一発録りで収録されており、そんな剥き出しの音にも惹かれるものがあると言える。

そして以降の作品群と比べても、宮本氏の叫びっぷりが凄まじい。特に3rdや4thでは、ヘビーな楽曲に絶叫が加わることで、恐怖さえ感じるような迫力に満ちている。

なぜこんな音楽性を作り出すことができたのだろうか?その要因として、エレカシがかなり自由に音楽活動をすることができた、と言うことが挙げられるのではなかろうか。

エレカシの所属する事務所「双啓舎」の社長である綾部和夫氏は、当時のエレカシの理解者として、活動を支えてくれたようだ。

アルバム制作の方針としても、外部のプロデューサーを入れることなく、セルフプロデュースで4thまでは作られている。プロデュースを外注していれば、絶対にこんなアルバムはできなかっただろう。

やはり当時はレコードやCDが売れる時代であり、こういったマニアックな作品群をリリースできたことが幸運であったとも言えるかもしれない。

”エレカシのドキュメンタリー”としての見方

エレカシファンは、音楽性のみならず、エピックソニー期のエレカシと言うバンドの佇まいに惹かれているように思う。

剥き出しのサウンドを閉じ込めたこの時期のアルバムは、ある種の不安定さがある。それゆえ、バンド自体がまだ”こんなものじゃない”と思わせる伸びしろの大きさを感じる。

まさにエピックソニー期は、エレカシ、そして宮本氏自身の音楽性を模索し続けていた時期だった。そんな苦悩や葛藤がそのままアルバムにパッケージされている。

そんなエピックソニー期のエレカシは、”エレカシのドキュメンタリー”として楽しんでいる人が多いのではないかと思う。ここでは1st~4thのアルバムを、バンドの変化と言う点から見てみよう。

1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』は、ロックンロールという音楽的な枠がはっきりあり、目指す音楽がはっきりとあった。そのためバンド全体に勢いがあり、爽快な印象を与える。

またバンドメンバーの関係性においても、宮本氏が作詞・作曲を行いつつも、4人が対等な印象である。宮本氏の個性が注目されるバンドだが、1stに限ってはまだ1人のメンバーと言う立ち位置だ。

その意味では、1stのアルバム自体の評価が高いものの、エレカシらしさと言う点ではまだ途上である。

そして2nd『THE ELEPHANT KASHIMASHI II』になると、1stアルバム時のバランスは崩れていく。1stの延長と思われる楽曲もあるが、宮本氏の個性が抜きんでていく過程を見ることができる。

「優しい川」や「太陽ギラギラ」などに見られる、世間に対する鋭いまなざしや、そのアウトプットの仕方において、宮本氏は全く独自路線を歩み始めている

まだ4人のバンドとしての形を保ってはいるものの、宮本氏は別のところを見始めているような印象を感じる作品だ。

そして3rd『浮世の夢』に至ると、いよいよ宮本氏と他3人のメンバーの間での立ち位置の違いが明確になってくる。宮本氏は自分でギターを弾き始め、表現したい内容とバンドとの距離ができていく。

決してメンバーとの関係が悪くなったのとは違うが、宮本氏の目指すものにだんだんついて行けなくなっている戸惑いや、不協和音のようなものを感じるところだ。

一方で宮本氏のメロディや歌詞はだんだん個性が花開き始めている。まさしくエピックソニー期らしさを増すのが3rdアルバムであろう。

4thアルバム『生活』では、いよいよ宮本氏の個性が爆発した作品と言える。そして音楽的にも物凄い構築力を発揮し、これまでに比べるとコードワークなどは段違いにレベルアップしている。

ここまで来ると、宮本氏と他のメンバーの距離は大きく開いてしまったように思う。結果的に、宮本氏のワンマンバンドにどんどん近づいていく。

筆者の推測ではあるが、この『生活』を作り上げるに至って、宮本氏と他メンバーの関係性は1stの時から変化が決定的になったのではないか、と思う。

その変化とは、宮本氏がバンド仲間の1人から、制作者として重要人物へと変わっていくことであったと思う。

どうやら1st時点から周囲の注目は宮本氏に向かっていたようだが、その個性の開眼がますます進んだのがエピックソニー期であった。多くのファンはそんな宮本氏の個性に惹かれたのだろう。

そして『生活』というとんでもない問題作ながら、実は凄まじい名作を生み出すに至り、セールスとは別に、制作者としての宮本氏なくしてはエレカシは成り立たない状況が出来上がったと言える。

その後のエレカシは宮本氏が制作面で引っ張っていくことで、ヒットに結びついていった。エレカシがエレカシになっていく過程、それこそがエピックソニー期とも言える。

かなり歪で個性的な作品が並ぶものの、エレカシ、そして宮本氏の成長するドキュメンタリーこそが、エピックソニー期の魅力の1つであり、ファンを惹きつけるのではないかと思う。

エピックソニー期に宮本氏が描きたかったもの

最後にエピックソニー期の魅力として、やはり宮本氏が描き出したもの、と言う視点は外せないだろう。宮本氏がやりたかった音楽、そして歌詞の世界観とは何だったのだろうか。

いつもエピックソニー期について考える時、素晴らしい文章が7thアルバム『東京の空』に収められている。それはロッキング・オンの渋谷陽一氏が書いている文章である。

全文はぜひCDを購入して読んでもらいたいが、エレカシが歌おうとしているのは、「社会に対する居心地の悪さ」であり、「我々の存在に対する異和感」であると述べている。

実に的確な文章であり、エレカシの本質をとらえたものだと思った。宮本氏は、常に「こんなものじゃないだろう」という思いで、楽曲を作ってきた。

1stアルバムの「ファイティングマン」で「正義を気取るのさ」と歌ったように、もっと素晴らしいものがあるのじゃないか、と思って音楽に向かっている。

しかしその希望のようなものは、作品を追うごとに絶望感へと変化していき、いよいよ4th『生活』では精神的に引きこもった作品となり、自分と世間とを分断したような作品となった。

違和感や葛藤をどこに向けるのかによって、攻撃性としてアウトプットされることもあれば、深く自分の中に落ちていくようなヘビーさとしてアウトプットされることもある。

そんな誰しもが抱える葛藤や違和感を歌っていること、そしてそれ自体が持つ不安定さが、そのまま表れたようなエピックソニー期には、やはり惹かれるものがあると言えるだろう。

そして特に思春期にエレカシを聴いた筆者のような人は、どっぷりハマりやすかった。思春期は自分と社会との距離感や、自分の在りように悩む時期であり、そんな若さゆえの悩みと重なる。

さらに言えば、そんな不安定な葛藤や悩みを、きれいにまとめた音ではなく、バンド4人だけの剥き出しの音で作り上げたところにも意味があるだろう。

聞き流すことなど決してできないような、ド迫力の音だ。スピッツの草野マサムネ氏が「正座して聴いていた」などというエピソードがあるぐらい、説得力のあるものである。

社会に対して、自分に対して何らかのわだかまりを抱える人にとっては、実は普遍的なテーマを歌っていたのがエピックソニー期である。それゆえ、一部の層にしっかり刺さったと言えるのだろう。

まとめ

今回はエレファントカシマシのエピックソニー期について、1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』~4th『生活』を中心に、その魅力を振り返ってみた。

4人で作り上げた、あまりに独自なサウンドと世界観は、エレカシの歴史においても極めて重要な意味を持っている。それはエレカシというバンドの在りようを決める時期であったとも言える。

宮本浩次という人物が、エレカシの世界観を形作る、ということが、より明確になったと言うこと。そして4作を通じて、その方向性が明確になっていったこと自体が重要である。

そしてエピックソニー期には、何か居心地の悪さを感じている人が抱える気持ちを、その荒削りな音で表現したところにも、惹きつける要素があったと言えよう。

さらに4thまでの作品は、エレカシ、そして宮本氏の進んでいく音楽性は、不安定な要素も大きかった。そんな試行錯誤の過程、ある種のヒリヒリ感も、作品の評価をむしろ高めているかもしれない。

未完成感、不安定さを抱えながら、宮本氏は叫び続けたことが、エピックソニー期のエレカシの大きな魅力と言えるのかもしれない。

後半では5th『エレファントカシマシ5』~7th『東京の空』までを取り上げて、エピックソニー期のエレカシをまとめたいと思う。

後半5th『エレファントカシマシ5』~7th『東京の空』の記事

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