【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第16回:The Cure 入門作から個性的な暗黒作品まで

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歴史の長いバンドは、必ずと言っていいほど「何から聴けば良いのか?」問題が出てくる。

そこで初めて聴く人向けに、最初に聴くのにおすすめのアルバムを紹介するシリーズ記事を書いている。

これまで15回の記事を書いており、国内外のベテランミュージシャンを多く取り上げてきた。第16回目は、ロバート・スミスの特徴的なボーカルと翳りのある楽曲が魅力のバンド、The Cureである。

陰鬱としたゴシック調の時代もあれば、軽やかなポップ寄りの時代もあり、音楽的にはかなり幅のあるバンドと言う印象だ。そのためどこから聴けば良いのか迷うと言う人もいるだろう。

今回は時代と言うよりも、音楽性の違いに沿って、The Cureの入門編としておすすめのアルバムを紹介した。

前回:【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第15回:陰陽座 時期ごとの名盤を徹底解説!

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The Cureについて

まずはThe Cureのバンド紹介を、その歴史とともに簡単に振り返っておきたい。象徴的な出来事やヒットした楽曲、音楽性の変化等に注目したいと思う。

The Cureはイングランドのクローリー出身で、1978年にデビューしている。

ロバート・スミス、マイケル・デンプシー、ローレンス・トルハーストの3ピースバンドとしてデビューしたが、度重なるメンバー交代があるバンドである。

デビュー時(1st『Three Imaginary Boys』)はニューウェイヴやポストパンクを感じさせるソリッドなサウンドであり、アルバムには未収録の「Boys Don’t Cry」が代表的な楽曲だ。

80年代初頭の作品は、ポストパンクの雰囲気を引き継ぎつつも、よりミニマルかつ翳りのあるサウンドへと変化していった。

2nd『Seventeen Seconds』時にはロバートの親友であるサイモン・ギャラップ(ベース)が加入した。同作収録の「A Forest」が初めて全英チャートでトップ20入りした。

3rd『Faith』では宗教観を歌い、よりゴシック色を強めつつ、この時代の締めくくりとして、よりダークでサイケデリックな4thアルバム『Pornography』がリリースされる。

当時はメンバーの仲が悪く、ロバートとサイモンが大喧嘩し、サイモンはバンドを脱退し、バンドも休止が決まった。

その後、ロバートはポップで陽気な方向への路線変更を行い、1983年には「Let’s Go To Bed」「The Walk」「The Lovecats」の3作のシングルがスマッシュヒットする。

この年には前身バンド時代のギタリスト、ポール・トンプソンが加入している。

1984年には従来より軽めのサウンドに路線変更した5th『The Top』をリリースし、初めての来日公演も果たしている。

1985年からThe Cureの快進撃が始まる。ベースのサイモン・ギャラップが復帰し、ドラムにはボリス・ウィリアムスを迎え、6th『The Head On The Door』をリリース。

アメリカとイギリスの両国でゴールド・ディスクを獲得することとなった。続く1987年の7th『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』は2枚組の大作で、バラエティ豊かな楽曲が収録される。

本作はアメリカで初のプラチナム・アルバムとなり、世界的に人気を博すこととなった。本作を携えたワールドツアーでキーボードにロジャー・オドネルを迎え、黄金期のラインナップが完成する。

1988年に前作の路線から一転し、初期を思わせるダークな作風の8th『Disintegration』は、レコード会社の心配をよそに全世界でヒットすることとなった。

ロバート・スミスはThe Cureの解散を匂わせていたが活動を継続。1991年にはブリット・アワードの「Best British Group」に選出され、1992年には9th『Wish』をリリースした。

その後、ポールとボリスが脱退し、1996年に10th『Wild Mood Swings』をリリースするも商業的には成功しなかった。2000年の11th『Bloodflowers』をリリースして解散を宣言する。

しかし本作のセールスが好調だったことから解散を撤回。2001年には新曲を含むベストアルバム『Greatest Hits』をリリースした。

暗黒三部作『Pornography』『Disintegration』『Bloodflowers』の全曲を収録したライブ映像作品『Trilogy』を2003年にリリース、また2004年には12th『The Cure』をリリースする。

2007年には1984年以来23年ぶりに来日を果たし、フジロックフェスティバル2007に出演。それ以降、2013年・2019年のフジロックフェスティバルにも出演している。

2008年の13th『4:13 Dream』が現時点での最新作であり、2019年には、ロックの殿堂入りを果たした。

非常にメンバー交代の多いバンドであるが、中心にはロバート・スミスの独特なキャラクターと楽曲の世界観がある。

常に翳りのある世界観を持ちつつも、弾けた楽曲もあれば沈み込むような陰鬱とした楽曲まで、幅広くも不安定なところがThe Cureの特徴である。

そのためアルバムごとに作風の変化も大きければ、作品としてのクオリティも結構変動するところがネックであり、人間臭いところでもあるのだ。

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”はじめて”のベストアルバム

毎回、一応ベストアルバムも紹介することにしているが、そもそもあまりベストアルバムはおすすめしない。バンドの魅力を知るには、まず1枚のアルバムを通して聴くのが良いからだ。

The Cureについても、あまりオールタイムベスト的な、ベスト盤としておすすめできるものも存在しない。強いて挙げれば、2001年の『Greatest Hits』が歴代の人気曲が収録されている。

しかしThe Cureの魅力がこれ1枚で伝わるかと言うと、随分と抜け落ちる部分が大きいようにも思う。

ベストアルバムを聴く理由は別のところにあり、The Cureも含め、パンク・ニューウェイヴ界隈にありがちな、アルバムに収録されていないシングル曲が多く存在し、それらを聴くためだ。

これらを網羅するのは難しいが、たとえば1986年のシングル集である『Staring At The Sea』はベストでありつつ、アルバムとして聴くのも悪くない作品だ。

また2004年にシングルのカップリングやレア曲を集めた4枚組ボックス『Join the Dots: B-Sides & Rarities 1978–2001』もリリースされている。こちらはかなりマニア向けである。

”はじめて”のオリジナルアルバム

The Cureはアルバムごとに作風が変わるため、なかなかどれから聴くのが良いのか、一概に言えないところが難しい。

物凄く大ざっぱにThe Cureの作風を分ければ、陽気でポップな(毒々しさはあるが)”明るいキュアー”と、ゴシック調で陰鬱とした”暗いキュアー”があると言える。

曲単体で見ると、「Just Like Heaven」や「Friday I’m In Love」など”明るいキュアー”が非常に魅力的に感じられる。

しかしアルバム単位となると、”明るいキュアー”はやや散漫な印象を与えることが多く、逆に”暗いキュアー”の方が作品トータルの完成度が高い、と言うのが筆者の見解である。

バランス感覚に優れたおすすめの2枚

まずは、明るさ・暗さのバランス感覚に優れたアルバムを、入門編として聴くことをおすすめする。6th『The Head On The Door』と9th『Wish』の2枚がそれに該当する。

1985年リリースの『The Head On The Door』は、The Cureの快進撃を予感させる、非常にパワフルでありながら、バランス感覚に優れた名盤である。

「In Between Days」「Push」の爽快な曲調から、「Close to Me」など珍妙な雰囲気の曲、さらには「Kyoto Song」「Sinking」など暗黒の雰囲気まで、実に幅が広い。

それでいながら1枚のアルバムとして違和感なく収まっている。バンドの状態の良さの表れか、どの楽曲も必然性をもってアルバムに収まっている印象だ。

また1992年の9th『Wish』は、6th『The Head On The Door』からの黄金期と言われる時代の総決算的な内容になっており、これも見事にバリエーション豊かな楽曲を1枚にまとめ上げている

前作『Disintegration』の雰囲気をまとい、全体にはやや悲しげなトーンで貫かれているが、その合間にロックな楽曲やポップな曲調が良い味付けになっている。

「Apart」「Trust」は暗いトーンの楽曲、「Doing the Unstuck」のキャッチーかつロックな雰囲気もありつつ、「High」「Friday I’m in Love」には希望を感じさせる。

『The Head On The Door』から始まったThe Cureの音楽の旅の1つの到達点とも言える、音楽的に非常に充実した名盤であると言えるだろう。

なお6th『The Head On The Door』から9th『Wish』までの4枚は、どれを取り上げても評価が高く、カラーは少しずつ違えど、良作が揃っているのでおすすめである。

”暗黒”の中でのおすすめの2枚

そして”暗いキュアー”の方がアルバムとしてのトータル感が良い、と書いたが、The Cureには「暗黒三部作」と言われる3つのアルバムがある。

『Pornography』『Disintegration』『Bloodflowers』の3枚であり、次に聴くとしたら、この3枚に手を出しても良いだろう。

この中で真に暗黒なのは4th『Pornography』で、ややクセが強いのであるが、聴きやすいのは8th『Disintegration』と11th『Bloodflowers』である。

『Wish』の雰囲気が好きな人は、おそらく『Disintegration』も気に入る作品になるだろう。バンドの最高傑作に挙げる人もいるぐらい、The Cureのシリアスかつ耽美的な世界観が完璧な作品だ。

本作のミソは曲順にあると思われる。前半には暗くも浮遊感のあるサウンドの楽曲が多めに配置され、聴く者を緩やかにアルバムへと誘う。

「Pictures of You」など、決して暗い訳ではなく、独特の浮遊感を感じさせる楽曲である。

そして後半の「Lullaby」辺りから徐々に緊張感を高め、沼の底に沈みこむような陰鬱とした世界が広がるようなアルバムの流れが秀逸である。

色のゴシックロック調を再現したものであるが、その後の経験値がなせる成熟したサウンドと楽曲が堪能できる名盤である。

そして起死回生の作品となった『Bloodflowers』は、『Disintegration』に比べるとロックサウンドが前面に出たアルバムであり、より現代的なオルタナティブロックの趣がある。

「Maybe Someday」などロックらしいビート感もあるが、”暗黒”にしているのは「Out of This World」や「The Last Day of Summer」など淡々と静かに続いて行くタイプの楽曲である。

The Cureの”暗さ”とは、このような歌に入るまでが長く、アンビエントな雰囲気に包まれるような楽曲のことだと思っている。

『Bloodflowers』には『Disintegration』ほどの憂鬱で耽美的な雰囲気はないが、淡々と刻まれつつも悲しげな楽曲が魅力的な作品と言えるだろう。

”歌に入るまでが長い”The Cureの名曲特集 – ”暗黒”期の楽曲を中心に

まとめ

今回はイギリスのロックバンド、The Cureをはじめて聴く人におすすめしたいアルバムを紹介した。今回も何枚か紹介してしまったので、改めて以下にまとめている。

非常に多彩な表情を見せるThe Cureだけに、紹介したいアルバムも多くなってしまった。ぜひいくつか楽曲を聴きながら、好きな雰囲気の作品から手に取って聴いてみて欲しい。

おすすめのベストアルバム

・『Greatest Hits』(2001)

・『Staring At The Sea』(1986)

おすすめのオリジナルアルバム

・『The Head On The Door』(1985)

・『Wish』(1992)

・『Disintegration』(1989)

・『Bloodflowers』(2000)

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