↓ 前回の【2010年~2011年】人間椅子日記その6(疾風怒濤~人間椅子ライブ!ライブ!!~此岸礼讃)
僕が人間椅子のファンになった2000年頃から、当時のことを振り返ろうという記事の7本目である。今回は2012年から2013年についてだ。
アルバム『此岸礼讃』発売ツアーでは満員御礼となる会場も複数出てくるなど、新譜発売ツアーでの動員はかなり多くなってきた時期だ。
今回は特に2013年、オジー・オズボーンが主催する音楽フェス、OZZ FEST JAPANへの出演が人間椅子の歴史の中でも大きな出来事である。
筆者もその場で人間椅子の歴史が大きく動いていく瞬間を目の当たりにした。その当時の雰囲気も思い出しながら、2012年から2013年を振り返りたい。
2012年の出来事と感じていたこと
2012年はアルバムなどの作品発表はない年だった。その分、ライブ活動は例年よりも活発になった1年だった。
この当時の筆者は大学院に進学していた。図書館でCDを借りまくる日々だったように記憶しており、音楽の幅を広げたいと思っていた時期だった。
イベントや対バンへの出演が増える
2012年はイベントや対バンへの出演が増えた1年だった。
これまでの人間椅子はあまり近いジャンルのバンドがいないため、他のバンドと関わる機会も少なかった。あったとしても筋肉少女帯やみうらじゅん氏など、限られたミュージシャンだった。
着実にライブ動員が増え、動画サイトなどで注目度が上がってきたタイミングでもあり、少しずつ他のバンドと関わることも出てきた。
筆者が参加しなかったが、行われていたイベントを下記に掲載した。
- 6/23 人間椅子 VS Concerto Moon @SHIBUYA BOXX
- 9/16 野外フェス「木曽鼓動」
- 9/22 野外フェス「夏の魔物」
- 10/7 人間椅子 VS Rock Rolly @下北沢GARDEN
ついに実現した「筋肉少女帯 vs 人間椅子」
2012年の対バンで最も印象的だったのは、やはり筋肉少女帯とのライブだろう。筋少とはかつてより親交があったとは言え、筋少の活動休止があって長らく対バンはなかった。
筆者がこの当時、筋肉少女帯はほとんど聴いたことがなかったものの、世界観が近いらしいことは知っていた。記念のライブになるだろうと思い、すぐにチケットを入手した。
ライブまでの間に、音源を入手したり、ライブでの定番曲を調べたりと準備したように記憶している。
5/19の赤坂BLITZでの公演だった。タイトルは「地獄の決定打!筋肉少女帯VS人間椅子VS人間筋肉少女椅子帯」である。
見事にコラボする時間があることを匂わせており、期待が高まった。そしてチケットはソールドアウトとなり、双方のファンからの期待の大きさを物語っていた。
先行は人間椅子。対バンで人間椅子を見る経験もほとんどなかったため、どんなセットリストで来るのかまったく予想がつかなかった。
ヒットメドレー的に「陰獣」は必ず演奏するのかと思っていたが、思っていたのとは違うセトリだった。むしろ新しい曲を積極的に演奏する方向性だったようだ。
この後も人間椅子は対バンでは新しい曲を中心に演奏しているように思う。この時は、あえて「胡蝶蘭」を演奏していたのはよく覚えている。
対する筋少は「イワンのばか」「日本印度化計画」「踊るダメ人間」「サンフランシスコ」など、短いセトリの中に代表曲をしっかり詰め込んでいた。
筋少初心者の自分にとっては大変ありがたいリストであり、さすが筋少は対バンやイベントはやり慣れているな、と感じた覚えがある。
人間椅子も徐々に知名度を上げつつある中ではあったが、筋少はステージングと言う意味では上手であるとも感じた。
読み通り、双方の出番が終わった後にはコラボレーションの時間が設けられていた。
最初はBlack Sabbathのコピーバンド「ブラック菩薩」。Tony Iommiに扮した内田雄一郎氏がギター、ボーカルは橘高文彦氏、ベース鈴木研一氏、ドラムナカジマノブ氏のメンバーだった。
ギターソロで和嶋氏が加わり、会場は大いに沸いた。
そして2バンドのフルメンバーが揃い、待望の「君は千手観音」が演奏された。ファンであれば誰もが期待していたであろうこの曲、期待通りに演奏されたことが嬉しかった。
テレビ番組「人間椅子倶楽部」でも演奏された「僕の宗教へようこそ」が演奏されると、各バンドの代表曲「りんごの泪」「釈迦」で締めくくられた。
見どころが多すぎて大満足のライブだった。対バンで人間椅子を見るのも初めてだったが、人間椅子ファン以外の人の反応を見られるのも面白かった。
なおこのライブの様子の一部は、映像として後のコラボシングル『地獄のアロハ』に収録された。
5/19 地獄の決定打!筋肉少女帯VS人間椅子VS人間筋肉少女椅子帯 赤坂BLITZ
no. | タイトル |
---|---|
人間椅子 | |
1 | 阿呆陀羅経 |
2 | 賽の河原 |
3 | 胡蝶蘭 |
4 | 深淵 |
5 | 冥土喫茶 |
6 | どっとはらい |
7 | 赤と黒 |
8 | 針の山 |
筋肉少女帯 | |
1 | イワンのばか |
2 | 日本印度化計画 |
3 | ワインライダー・フォーエバー |
4 | ロシアンルーレット・マイライフ |
5 | 家なき子と打点王 |
6 | 孤島の鬼 |
7 | 踊るダメ人間 |
8 | サンフランシスコ |
人間筋肉少女椅子帯 | |
1 | Iron Man(BLACK SABBATH) |
2 | 君は千手観音 |
3 | 僕の宗教へようこそ |
4 | God of Thunder(KISS) |
5 | りんごの泪 |
6 | 釈迦 |
此岸御詠歌(しがんごえいか) ~人間椅子ワンマンツアー 2012年夏~
2012年はツアーがこの1本だけだったが、7月に東名阪の3本の後に、フェスを含む東北の3本が追加となるスケジュールだった。日程は下記の通りである。
- 7/17 大阪阿倍野 ROCKTOWN
- 7/18 名古屋 ell.FITS.ALL
- 7/20 東京渋谷 Shibuya O-WEST
- 9/21 仙台 enn2nd
- 9/22 青森 「夏の魔物」(イベント)
- 9/23 青森 弘前マグネット
筆者が参加したのは7/20の渋谷公演であった。位置づけとしては好評だったツアー、アルバム『此岸礼讃』発売ツアーの続編である。
とは言え、アルバムの縛りは少なく、満遍なく選曲されるツアーであった。
このライブの記憶はあまりないが、選曲については物足りなさも感じていたようにも思う。「芋虫」は久しぶりの演奏だったが、中盤から終盤にかけての流れが毎回同じ過ぎないか、と感じていた。
ライブアルバム『疾風怒濤〜人間椅子ライブ!ライブ!!』の頃に出来上がった定番曲の流れが、ここでも続いていたが、個人的には物足りなく思えた。
しかし今思うと、この時期に選曲を変動させないことで着実にファンを増やしていたとも考えられる。歴の長いファンにとっては、厳しい時期だったかもしれない。
この時「ギラギラした世界」は自分にとっては初であり、アウトロに向かうところで和嶋氏によるソロが挿入されていたのが懐かしく思い出される。
7/20 此岸御詠歌(しがんごえいか) ~人間椅子ワンマンツアー 2012年夏~ Shibuya O-WEST
no. | タイトル |
---|---|
1 | 阿呆陀羅経 |
2 | りんごの泪 |
3 | 狂ひ咲き |
4 | ギラギラした世界 |
5 | 夜叉ヶ池 |
6 | 芋虫 |
7 | 今昔聖 |
8 | 死神の饗宴 |
9 | 深淵 |
10 | 洗礼 |
11 | 相剋の家 |
12 | 道程 |
13 | 地獄 |
14 | 天国に結ぶ恋 |
15 | 針の山 |
En.1 | |
16 | 人面瘡 |
17 | 地獄風景 |
En.2 | |
18 | どっとはらい |
人間椅子の初期再現ライブ
和嶋氏が別に組んでいたブルースバンド和嶋工務店のライブが行われることとなった。普段は人間椅子のライブしか行かないのだが、この時は違っていた。
10/5に『親切丁寧サプライズ~高円寺突貫施工~』と題して企画された対バンは、以下のラインナップであった。
- 和嶋工務店(和嶋慎治・山本征史・金光健司)
- Psychedelic Lolipop(あべちゃん・AIKA・酒井愁)
- 椅子ニンゲン(けんちゃん・なかじ・わじわじ)
3つ目のバンドはどう見ても人間椅子である。しかしあえて覆面バンドとして出演するのであれば、何か企画があるのだろうと思った。
そして9月末に人間椅子公式ブログからもアナウンスがあり、「人間椅子デビュー直前の演目の再現!!」との告知があった。
否が応にも期待が高まる。かつて2003年には「一夜限りの平成元年 ~帰ってきたねずみ男~」と題したライブが行われていたが、地方にいた筆者は参加できなかった。
ここでは「椅子ニンゲン」のみに絞って書いていこう。メンバーの様子は上記のBeeastさんの記事の写真をご覧いただきたい。
鈴木氏はノーメイクで、サングラス・草履ばき、和嶋氏はデビュー以前と同じ作務衣。そしてナカジマ氏は一切喋らないスタイルで、初期の人間椅子を再現している。
1曲目はいきなり未発表曲の「造反有理」だった。「針の山」と同じくBudgieの曲にオリジナル日本語詞を乗せたもの。
続く2曲目は、これまた未発表曲の「わたしのややこ」。2001年のビデオ『見知らぬ世界』発売ツアー以来だったが、思いのほか覚えているものだ。
「陰獣」はCDのバージョンと異なり、オリジナルのロングバージョン。エンディング部分が大きく異なっている。
「神経症I LOVE YOU」はいつかのライブで和嶋・鈴木両氏が急に演奏し始めて、ナカジマ氏がついて行けなかった場面を思い出した。ついにナカジマ氏もここで覚えたことになる。
最後は当時のラストに演奏されていた「桜の森の満開の下」。短いライブながら、スペシャルな楽曲が多く演奏され、記憶に残るライブとなった。
10/5 親切丁寧サプライズ~高円寺突貫施工~(椅子ニンゲンのみ) 高円寺ShowBoat
no. | タイトル |
---|---|
1 | 造反有理 |
2 | わたしのややこ |
3 | 陰獣 |
4 | 神経症I LOVE YOU |
5 | 桜の森の満開の下 |
第九回 人間椅子倶楽部の集い 2012
この年は10月に椅子ニンゲンのライブが印象に残る中、すぐにまた高円寺ShowBoatで集いが見られることが嬉しかったのを記憶している。
1が4つ並ぶ11月11日に高円寺ShowBoatにてこの年も行われた人間椅子倶楽部の集い。徐々に動員が増えつつあったが、ついにソールドアウトとなった。
そのためかなり会場に詰め込まれて見たような記憶がある。
開演前には今年もスクリーンで映像が流れた。ちょうどここで見た「椅子ニンゲン」の模様を再び映像で見ることができた。
「わたしのややこ」のみカットされており、これはもしや…?と期待が膨らむ開演前だった。また入場の特典として、手拭いに加えて初期に作った手作り歌詞カードのコピーがついていた。
ライブ本編はまさに集いらしい選曲。1曲目から「幻色の孤島」というプログレ曲で始められる辺り、ファンクラブライブらしい。
「暗黒星雲」に関して、鈴木氏はやりたい曲であるようっだが、他のメンバーが乗り気ではなかったと語っていた。選曲に際してはメンバー間の意見がなかなか合わないようだ。
今年のカバーは個人コーナーをなくし、メンバーで1曲ずつ持ち寄るスタイル。比較的わかりやすい選曲だが、鈴木氏サバスの中でも地味ながら名曲をセレクトしている。
そして温故知新コーナーとして、デビュー前のレパートリーを披露。人間椅子と言う名前になる前の「死ね死ね団」時代の楽曲「死ね死ね団のテーマ」を当時のボーカル石井氏と演奏した。
そして椅子ニンゲンでも披露された「わたしのややこ」を演奏した。
後半はレア曲と定番をほど良く織り交ぜた選曲。「なまけ者の人生」は初めて聴いたように思う。
アンコールでは抽選会の後、ラストで「どっとはらい」を演奏する際のMCとみせかけて「ごきげんよう」と和嶋氏が言い、「大団円」へ。
和嶋氏があまり気に入っていない曲とのことで、演奏されることは少ない曲だった。満員のShowBoatは熱気が冷めやらず、アンコール1曲では誰も帰る気配を見せず、アンコールが止まない。
そして予定にないアンコールと言うことで「針の山」を演奏。この時ばかりは会場のテンションも急上昇し、いつも以上の盛り上がりを見せたと記憶している。
全体的には選曲も良く、会場のテンションも高いライブだった。夏のワンマンの不完全燃焼が一気に解消されたが、当時はワンマンと集いの満足度の差があまりに大きかったように思う。
11/11 第九回 人間椅子倶楽部の集い 2012 高円寺ShowBoat
no. | タイトル |
---|---|
1 | 幻色の孤島 |
2 | 侵略者(インベーダー) |
3 | 暗黒星雲 |
4 | ギリギリ・ハイウェイ |
5 | 悪魔大いに笑う |
6 | 秋の夜長のミステリー |
カバーコーナー | |
7 | ナカジマ:I Was Made For Lovin’ You(KISS) |
8 | 和嶋:Bridge Of Sighs(Robin Trower) |
9 | 鈴木:Behind The Wall Of Sleep(Black Sabbath) |
ー | |
10 | 死ね死ね団のテーマ(ゲストVo.石井氏) |
11 | わたしのややこ |
12 | なまけ者の人生 |
13 | 東京ボンデージ |
14 | 黒い太陽 |
15 | 地獄のロックバンド |
16 | 幽霊列車 |
17 | ダイナマイト |
En.1 | |
18 | 大団円 |
En.2(予定にないアンコール) | |
19 | 針の山 |
和嶋氏がももいろクローバーZのシングルにギター参加
集いでも既に発表があったが、和嶋氏がアイドルグループのももいろクローバーZのシングルにギターソロで参加することが発表となった。
ももクロと言えば、今も人気はあるが当時は飛ぶ鳥を落とす勢いのグループだった。それだけに大抜擢であり、大きなニュースだった。
9thシングル『サラバ、愛しき悲しみたちよ』の2曲目に収録された「黒い週末」と言う曲。楽曲の詳細については、下記の記事をお読みいただければと思う。
※「黒い週末」についても書いている記事
当時の自分の感覚としては、これは人間椅子の大きな飛躍のきっかけになるのでは、と思っていた。
2012年と言えばアイドルブームが起こっていた最中で、アイドルに様々なタイプの楽曲を提供することが流行り始めていた頃である。
アイドルのリスナーの中には音楽ファンも多いため、人間椅子の名前が少しでも広まればと言う思いが強かったように記憶している。
そして当時はまだ人間椅子のコピーバンドを大学のサークルで組んでいた頃だった。ちょうどクリスマスコンサート前だったため、この曲をコピーしようと言う話になった。
そこでどうせならももクロと同じ編成でやりたいと思い、サークルの少ない女子部員に声をかけて、何とか5人集めることに成功した。
ライブでは「黒い週末」とももクロのコピー、そして女子部員に「針の山」を歌ってもらったりした。楽しい思い出である。
2012年に感じていたこと
少しずつではあるが、対バンやイベントが増えて活動の幅が広がってきたことが実感される1年だった。
しかし今思えば、激動の2013年を迎える前の嵐の前の静けさと言えなくもない。活動自体も今までののんびりした雰囲気の最後の年だったようにも思える。
それを象徴するかのように、デビュー前の人間椅子を思い起こさせるライブがいくつか開催されたのも印象深い。
シークレットでの初期再現ライブ、集いでの歌詞カード配布や「死ね死ね団のテーマ」演奏など、温故知新のタイミングの年だったのかもしれない。
そして良い意味での嵐の始まりは、ももクロのシングルへのギター参加であった。和嶋氏単独の仕事ではあるが、人間椅子としての知名度も引き上げた出来事だった。
当時は人間椅子がアイドルとの関わりを持つことにあまり肯定的ではない向きもあったような気がする。しかし人間椅子は「イカ天」というテレビ番組で世に知られたバンドである。
音楽性はアンダーグラウンドでも、決してメインストリームと隔絶したバンドではなかったはずだ。だからこそ人間椅子の高い音楽性が、少しでも世に出ることは喜ばしいことだと自分は感じていた。
結果的には2013年のブレイクへの足掛かりの1つとなっていたように思える。
2013年の出来事と感じていたこと
この年の出来事と言えば、何と言っても5月のOzzfest Japanへの出演である。人間椅子への注目度が一気に上がった出来事だった。
その結果、メディアからも注目を集め、Web記事が増加した。ライブへの動員も大幅増加となり、ツアーの規模も大きくなり始めた。
2009年頃からのバンドの変化が大きく実を結んだ1年となった。
イベント・フェス出演情報まとめ
2013年も2012年に続き、対バンやフェスへの出演が続いた。筆者が参加していないライブについて、以下にまとめている。
- 4/27 ARABAKI ROCK FEST.13
- 9/14 夏の魔物2013(ROLLYwith人間椅子もあり)
- 7/28 サイトウヒロシ50周年イノチガケ的大感謝祭 真夏のVSシリーズ(犬神サアカス團との対バン) 千葉LOOK ※ソールドアウト
- 11/3 LIVE DVD 発売記念ツアー「四半世紀中」 筋肉少女帯/人間椅子 大阪BIGCAT
- 11/30 樋口宗孝追悼ライブ vol.5 EVERLASTING MUNETAKA HIGUCHI 2013 6th MEMORIA(LOUDNESSなど) Zepp Tokyo
祝!OZZfest Japan 2013出演
3月の人間椅子公式ブログにて、急きょOzzfest Japanへの出演が決定したことが発表された。記憶ではフェス自体の告知はずっと前からなされており、5月のイベントなので直前に決まったと言える。
このフェスでの目玉は、何と言っても2011年に再結成したBlack Sabbathの来日である。残念ながらドラマーのビルワードは参加しなかったものの、オリジナルメンバーでの公演であった。
そんなBlack Sabbathと同じ日の同じステージに人間椅子も立つことが決まったのである。こんなに嬉しいことはない。
日本人で出演するバンドを見る限り、大抜擢と言う印象だった。人間椅子が大きな舞台へと羽ばたいていく様子を目に焼き付けたいと思い、さっそくチケットを購入した。
人間椅子の出番は後半の15:35からだった。隣のステージのSteel Pantherのライブを横目に見つつ、早めに見やすい位置へと移動した。
メンバーが登場し、サウンドチェックが始まると早くも前方では歓声が上がっていた。そして画面に「Next Artist 人間椅子」の文字が表示されると、ひときわ大きな歓声が上がる。
この時点でもはや感動してしまったのだが、会場は大きな熱気に既に包まれている。
後日公開されたライブの映像の一部である。SEはこの時期には既に定着していた「此岸御詠歌」のショートバージョンで演奏が始まる。
どの曲を持ってくるのだろうか、とあれこれ考えた。しかし全く予想外の「相剋の家」だった。
近年の「相剋の家」はリリース時に比べ、より力強いパフォーマンスが印象的だった。ライブで育ってきたかつての楽曲が1曲目に配置されたのである。
やや緊張気味の和嶋氏と終始いつも通りの鈴木氏である。1曲目が終わるとさっそく鈴木氏のMCから、次は「死神の饗宴」である。
この辺りでまた感動してしまったが、筆者が初めてライブに行った頃の楽曲が2曲続いたのである。人間椅子不遇の時代の楽曲であるが、音楽的には極めて高かった時期の楽曲である。
その間も演奏し続け、ライブの定番曲となった2曲を聴いて、大きく育った子どもを見るかのような気持ちになった。
続く曲は「深淵」だった。短いステージの中でこの長い曲を持ってきたことには驚きだ。ただ和嶋氏が苦しみを乗り越えた喜びに溢れるこの曲は、このステージでこそ映える楽曲であろう。
ノブさん・和嶋さんのMCの後に演奏されたのは、初期の代表曲「人面瘡」。2曲続けて長いイントロの曲であったが、こうしたプログレ風味の曲も人間椅子の持ち味である。
そして最後はやはり「針の山」。前方ではモッシュやクラウドサーフが起きており、人間椅子のライブでは見られない熱狂が繰り広げられていた。
演奏が終わってメンバーが去った後には、人間椅子コールが鳴りやまなかった。その日観たステージの中で、こんな光景は人間椅子だけだった。
それだけ人間椅子の演奏のインパクトは大きかったように思う。最初はまだ後ろで見ている人も多かったが、演奏が進むにつれてどんどん人が押し寄せてきた。
他のフェス等でも同じ現象が起きるが、人間椅子の演奏はその音だけで人を引き寄せるものである。この魔力に取りつかれてここまでファンを続けてきたのだな、と改めて思った。
後からインタビュー等を読むと、MCも含めて何度も時間を計測して練習を重ねたようだ。このステージに賭ける思いを感じ、熱い気持ちになった1日だった。
「Ozzfest Japan 2013」出演の感想コメント
人間椅子、大反響につき<Ozzfest Japan 2013>映像を解禁
Ozzfest Japan 2013 に出演した人間椅子への反応
5/12 Ozzfest Japan 2013
no. | タイトル |
---|---|
1 | 相剋の家 |
2 | 死神の饗宴 |
3 | 深淵 |
4 | 人面瘡 |
5 | 針の山 |
17thアルバム『萬燈籠』発売・関連Web記事まとめ
- 発売日:2013年8月7日
- 発売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ
- メンバー:和嶋慎治 – ギター・ボーカル、鈴木研一 – ベース・ボーカル、ナカジマノブ – ドラムス・ボーカル
no. | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 此岸御詠歌 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 2:28 |
2 | 黒百合日記 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 7:04 |
3 | 地獄変 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:14 |
4 | 桜爛漫 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 5:40 |
5 | ねぷたのもんどりこ | 鈴木研一 | 鈴木研一 | 3:13 |
6 | 新調きゅらきゅきゅ節 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 3:32 |
7 | 猫じゃ猫じゃ | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 4:37 |
8 | 蜘蛛の糸 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治、鈴木研一、ナカジマノブ | 3:59 |
9 | 十三世紀の花嫁 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:42 |
10 | 月のモナリザ | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 5:26 |
11 | 時間からの影 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 4:27 |
12 | 人生万歳 | 和嶋慎治 | 鈴木研一 | 3:58 |
13 | 衛星になった男 | 和嶋慎治 | 和嶋慎治 | 6:12 |
合計時間 | 62:39 |
8/7に2年ぶりのオリジナルアルバムが発売となった。Ozzfest Japan 2013出演後まもない時期に発売されるアルバムだけに、気合が入った作品となることが予想された。
発売の告知は5/22の公式ブログで見られるため、急きょ決まったOzzfest Japan 2013出演の最中も制作期間だったのではないかと思われる。その熱量が感じられる作品となった。
和嶋氏の発言では、「マイナーキーでヘビーな曲のみにする」という縛りを設けたようだ。前作『此岸礼讃』では実験的な要素も感じられた作品だったが、今回はそれとは路線が異なる。
Ozzfest Japan 2013出演以前からも知名度が上昇している中での新譜である。人間椅子の魅力がダイレクトに伝わるような作品にしようと言う意気込みを感じられる作品だ。
当時の感覚を思い出すと、また人間椅子が変化したな、という感触だったように思う。比較的分かりやすくメタル的な重厚さを追求した作品となり、これまでの人間椅子とも異なる作風だと思った。
メタル路線となったことで、印象的なリフ・メロディという人間椅子の特徴は少し弱くなったように感じられる。ヘビーな音と勢いを感じさせる作品で、”第2のデビュー作”とも言えるだろう。
YouTubeも徐々に活用するようになり、事前に試聴用の動画が発売前に3本発表されていた。
[試聴] 人間椅子「地獄変」(8/7発売「萬燈籠」より)
[試聴] 人間椅子「此岸御詠歌」(8/7発売 「萬燈籠」より)
8/7発売「萬燈籠」より、「衛星になった男」
「此岸御詠歌」は『此岸礼讃』の発売ツアーより入場SEで使用されていたが音源化はされていなかった。今回改めて録音され、現在に至るまで入場SEとして使用される。
なお各種店舗では購入特典があったが、筆者はタワーレコードの購入者特典のデモ音源「オー!デカダンス」を選択した。
ライブでも演奏されたことはなく、アルバム収録もその後ない幻の音源となっている。楽曲の原型となるような曲ではあるが、初期人間椅子を感じさせるような楽曲である。
そしてアルバム発売にあたり、数々のWeb記事が公開されている。人間椅子への注目度が大きくなっていることがうかがえる。
ロケットニュース24:【インタビュー】デビューから25年で今もっとも研ぎ澄まされたバンド「人間椅子」 ギター・ボーカル和嶋慎治
Pouch(ポーチ):【女子ロック部】「人間椅子」ビギナーに捧ぐ/和嶋慎治さん直伝のニューアルバム「萬燈籠」の楽しみ方はコレだ!!!!!
人間椅子へ、BARKSが宛てた質問公開「ああ、今回のアルバムは聴いてくれる人が増えるな、と思いました」
Qetic【インタビュー】女性ファン、急増中。『萬燈籠』をリリースした人間椅子の素顔に迫る!
人間椅子「萬燈籠」発売記念、和嶋慎治×大槻ケンヂ対談
ROCK ATTENTION 25 ~人間椅子~ | Web Rock Magazine BEEAST
CDJournal:“第二のデビュー・アルバム”の意気込みで作ったアルバム 人間椅子『萬燈籠』インタビュー
エキレビ!:全員集合、人間椅子「地獄の歌を歌ってほしい」編
アルバム『萬燈籠』発売記念インストアライブ
タワーレコード渋谷店で行われたアルバム発売記念のインストアライブに参加した。9/3にタワーレコード渋谷店B1F「CUTUP STUDIO」で行われたものである。
ツアーよりも前に新曲を聴けるインストアライブは貴重な機会だ。メンバーもファンも不思議と緊張しながら、まだライブで馴染みのない曲だけを聴くお披露目会なのである。
今回は冒頭からローチューニング楽曲でスタート。『萬燈籠』の始まりもヘビーに始まる流れを踏襲し、推し曲を続けて演奏していく。
最初は緊張感に包まれるが、鈴木氏のアップテンポな曲が始まるといつも通りのライブになる。この時も「ねぷたのもんどりこ」でスイッチが入っていたように思う。
ラストまで駆け抜け「新調きゅらきゅきゅ節」で終了。この曲は「幸福のねじ」の最新バージョンなんだな、とこの時感じたような記憶がある。
アンコールのみ新譜以外から「針の山」。インストアライブとは言え9曲も演奏し、非常に充実度の高いライブとなった。
インストアライブのレポートも掲載されている。
BEEAST:ニューアルバム『萬燈籠』発売記念スペシャルライブ
Marshall Blog:人間椅子ニューアルバム『萬燈籠』発売記念ミニ・ライブ
9/3 アルバム『萬燈籠』発売記念スペシャルライブ タワーレコード渋谷店B1F「CUTUP STUDIO」
no. | タイトル |
---|---|
1 | 黒百合日記 |
2 | 地獄変 |
3 | 衛星になった男 |
4 | ねぷたのもんどりこ |
5 | 桜爛漫 |
6 | 蜘蛛の糸 |
7 | 人間万歳 |
8 | 新調きゅらきゅきゅ節 |
En. | |
9 | 針の山 |
人間椅子レコ発ツアー 〜萬燈籠〜
インストアライブから間もなく新譜の発売ツアーが行われた。確実に動員が増えることが予測され、いよいよファンクラブで早めにチケットを入手せねばと思うようになった。
ツアーの開催地も今までよりも増え、計10本にわたるツアーとなっている。
なお渋谷の1日目は即日ソールドアウトとなった。その他、渋谷2日目、仙台、大阪ではソールドアウトとなっており、動員の増加が顕著となった。
9/12(木) 札幌 BESSIE HALL
9/15(日) 青森 Quarter
9/16(月・祝) 仙台 enn 2nd ソールドアウト
9/20(金) 博多 DRUM Be-1
9/21(土) 熊本 DRUM Be-9 V1
9/23(月・祝) 大阪 ROCKTOWN ソールドアウト
9/24(火) 神戸 CHICKEN GEORGE
9/26(木) 名古屋 Electric Lady Land
9/29(日) 渋谷 Shibuya O-WEST 「おどろの日」即日ソールドアウト:筆者参加
9/30(月) 渋谷 Shibuya O-WEST 「どろろの日」ソールドアウト
なお筆者が参加したのは即日ソールドアウトとなった渋谷の1日目。2日間の頃は、1日目の新曲は推し曲中心、2日目はレア曲中心になる傾向があった。
インストアを見たので、2日目の方が曲被りがないかとも思ったが、今回は推し曲のクオリティが高いので、1日目を選んだような気がする。単に翌日の夜に予定があっただけかもしれないが…。
しかしこのライブについて、あまり印象に残っている出来事はない。この時ばかりはOZZfest Japan 2013の印象が強いからか、ワンマンのことをあまり覚えていない。
この時だったか覚えていないが、何だか暴れまわるような若い人が増えたな、という印象を受けた時がある。人間椅子の楽曲も攻撃モードだったためか、フェスで知ってやってきた人が増えたのだろう。
しかし明らかに迷惑行為をする人も増えたので困ったものだなと思っていた。いずれ収まるだろうとは思っていたが、その後の人間椅子の作風もまた変化するにつれて落ち着いていった。
あまり筆者のレポートの内容がないため、既に公開されているライブレポートをお読みいただきたい。
エキレビ!:【人間椅子】暗い曲ばっかりだし、地獄の唄を歌うし最高だよ。人間椅子ライブツアーレポ(札幌公演)
BEEAST:大盛りレポ!ロック増量Vol.8「人間椅子レコ発ツアー 〜萬燈籠〜」
BARKS:【ライブレポート】人間椅子、超絶歯ギターも炸裂!満員ぎっしり“おどろ”“どろろ”の日。「追加公演はO-EASTで!」
【ライブレポート】活動25年の実力が放つ珠玉の音 / 勢い止まらぬ熟年ロックバンド『人間椅子』
Marshall Blog:人間椅子 レコ発ツアー『萬燈籠』~おどろの日
Marshall Blog:人間椅子 レコ発ツアー『萬燈籠』~どろろの日
2013.12月号掲載 DI:GA interview
9/29 人間椅子レコ発ツアー 〜萬燈籠〜 Shibuya O-WEST「おどろの日」
no. | タイトル |
---|---|
1 | 黒百合日記 |
2 | 地獄変 |
3 | 桜爛漫 |
4 | 桜の森の満開の下 |
5 | ねぷたのもんどりこ |
6 | 幽霊列車 |
7 | 月のモナリザ |
8 | 暗い日曜日 |
9 | 死神の饗宴 |
10 | 相剋の家 |
11 | 蜘蛛の糸 |
12 | 新調きゅらきゅきゅ節 |
13 | 恐怖!!ふじつぼ人間 |
14 | 人面瘡 |
15 | 針の山 |
En.1 | |
16 | 愛の言葉を数えよう |
17 | ダイナマイト |
En.2 | |
18 | どっとはらい |
人間椅子倶楽部の集い 初の2日開催
筆者が2013年を締めくくる人間椅子のライブは、人間椅子倶楽部の集いだった。会場は変わらず高円寺ShowBoatだったが、昨年既に満員となってしまった。
確実に今年は動員が増えることが見込まれたため、苦肉の策として2日間全く同じメニューで行われることになった。2013年を持って高円寺ShowBoatでの開催は終了となった。
11月9日・10日の土日で開催され、筆者はネタバレを見るのが嫌だったので初日に行くことにした。開場前は、5月に行われたOZZfest Japan 2013の映像が流れていた。
毎年どれかのアルバム特集にすると言っていた鈴木氏のMCが印象に残っている。今回は『二十世紀葬送曲』特集とのことで、4曲も演奏されている。
演奏が難しいためにライブでやらなくなった「夜が哭く」「春の海」「胡蝶蘭」などの長い曲が多く演奏されている。これぞファンクラブライブならではの選曲と言えるだろう。
カバーの中では和嶋氏が選んだ「21st Century Schizoid Man」が印象的だ。映像では見たことがある人間椅子によるキングクリムゾンのカバーが見られたことは嬉しい。
またこの辺りから集いで演奏した曲を、その後のワンマンで演奏することが出てきた。この時は翌年1月のツアーで「暁の断頭台」を地方のみ演奏していた。
ワンマンでは定番曲を固める方針は、この時から少しずつレア曲も復活させるように変化していった。
11/9・10 第十回 人間椅子倶楽部の集い 2013 高円寺ShowBoat
no. | タイトル |
---|---|
1 | 夜が哭く |
2 | 暁の断頭台 |
3 | 月に彷徨う |
4 | 恋は三角木馬の上で |
5 | 春の海 |
6 | 胡蝶蘭 |
カバーコーナー | |
7 | ナカジマ:Spotlight Kid(Rainbow) |
8 | 鈴木:Fairies Wear Boots(Black Sabbath) |
9 | 和嶋:21st Century Schizoid Man(King Crimson) |
ー | |
10 | 野垂れ死に |
11 | 太陽黒点 |
12 | 少女地獄 |
13 | ロックンロール特急 |
14 | マンドラゴラの花 |
15 | 悪魔と接吻 |
16 | あやかしの鼓 |
En.1 | |
17 | 光へワッショイ |
En.2 | |
18 | もっと光を! |
2013年に感じていたこと
じわじわと人気が出ていたところから、OZZfest Japan 2013への出演で一気に露出が増えた1年となった。素直に人間椅子の名前をあちらこちらで見かけるようになったことが嬉しかった。
特にWeb上での記事が明らかに増えていることがわかる。今まではずっと追いかけてくれていたBEEASTで時々記事が出る程度だったが、様々な媒体で取材されることが増えている。
また人間椅子のオフィシャルの告知も次々と入るようになった。一度ツアーがあると、しばらく何の情報も入ってこなくなることがあったが、すぐに次の告知が行われるようになった。
『萬燈籠』発売ツアーの終わりには、2014年1月のツアーの公演も発表された。そして年始すぐのツアーで東京渋谷はO-WESTからキャパの大きいO-EASTに移ることとなった。
対バンなども予定がたくさんあり、目に見えてブレイクが感じられた年だった。
まとめと次回に向けて
2012年~2013年はブレイクに向かう過渡期であり、OZZfest Japan 2013で注目されるようになっていった。人間椅子の”第2のデビュー”となった時期である。
次回は2014年~2015年となるが、ブレイクによって新人バンドのごとく仕事が増えている時期である。活動内容も充実の時期であり、その当時のムードも含めて伝えたいと思う。
次回は【2014年~2015年】人間椅子日記その8(無頼豊饒)だ。
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