【人間椅子】お気に入りのアルバム5枚のおすすめポイントをひたすら語る記事

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アルバムレビュー

これまで当ブログでは、日本のハードロックバンド人間椅子の作品を何度も取り上げてきた。アルバムに関する情報や、初心者におすすめのアルバムなどを紹介してきた。

しかし筆者が個人的に好きなアルバムについて真正面から語ったことはあまりなかったような気がする。客観的にみておすすめの作品情報も大事だが、主観的な意見も参考になるかもしれない。

そこで今回は筆者がお気に入りの人間椅子のアルバム5枚について、おすすめポイントをひたすら語る記事を書いてみた。

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「自部屋の音楽」筆者が選ぶ人間椅子の好きなアルバム5枚

筆者の中では人間椅子の好きなアルバムは、ほぼ不動のトップ5がある。それが以下の5枚であり、好きな順に並べている。

  1. 6th『無限の住人』(1996)
  2. 10th『見知らぬ世界』(2001)
  3. 5th『踊る一寸法師』(1995)
  4. 9th『怪人二十面相』(2000)
  5. 8th『二十世紀葬送曲』(1999)

90年代後半~00年代初めの作品が全てであり、ベスト盤『押絵と旅する男』(2002)に含まれる作品ばかりである。

その理由は筆者が人間椅子を聴き始めた2000年頃に最も聴き込んだ作品であることと、改めて他の作品と並べて聴いても、クオリティの高さに舌を巻く作品群だからである。

順位としては1位が『無限の住人』、2位が『見知らぬ世界』は不動であり、3位以下はやや迷うところであった。

6th『無限の住人』(1996)

  • 発売日:1996年9月20日、2008年9月17日(再発)、2020年8月19日(再々発)
  • 発売元:ポニーキャニオン
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター、ボーカル、鈴木研一 – ベース、ボーカル、土屋巌 – ドラムス
no.タイトル作詞作曲時間
1.晒し首鈴木研一鈴木研一6:59
2.無限の住人和嶋慎治和嶋慎治4:56
3.地獄鈴木研一鈴木研一3:51
4.蛮カラ一代記和嶋慎治鈴木研一・和嶋慎治4:47
5.莫迦酔狂ひ和嶋慎治和嶋慎治7:55
6.もっこの子守唄和嶋慎治和嶋慎治2:33
7.刀と鞘鈴木研一鈴木研一4:24
8.辻斬り小唄無宿編和嶋慎治和嶋慎治3:25
9.宇宙遊泳和嶋慎治鈴木研一6:53
10.黒猫和嶋慎治和嶋慎治8:45
   合計時間54:26

筆者にとって、人間椅子の不動のNo.1アルバムであり、それは今後も揺らぐことはないであろう作品が、1996年の6th『無限の住人』である。

沙村広明氏が原作の漫画『無限の住人』のイメージアルバムという特殊な位置づけではあるが、純然たる人間椅子のオリジナルアルバムとして楽しむことができる。

なぜNo.1のアルバムに挙げるかと言えば、筆者が人間椅子に求めるものが、この1枚に全て詰まっているからである。

まずは人間椅子がデビュー時から持っている、日本的な雰囲気を全面的に押し出した、和風の装いの楽曲が多い。

しかしあくまで和のテイストは1番外側の装いに過ぎず、音楽を聴いて行くと、ハードロックやオールドロックのあらゆる要素を詰め込んで1枚にまとめ上げた作品になっていることが分かる。

フォーク・演歌的な「晒し首」「無限の住人」「蛮カラ一代記」に、プログレ風味の「莫迦酔狂ひ」「黒猫」、サーフロックの「辻斬り小唄無宿編」、スペースロックの「宇宙遊泳」などがある。

音楽的にはこれだけカラフルなのに、それを和のテイストでまとめ上げる力量に舌を巻くが、逆にそうした縛りがあったこそ、枠の中でいかに遊ぶかという思考になったのかもしれない。

そして人間椅子屈指の”泣き”の要素を感じるアルバムであり、それは日本の演歌や”粋な”雰囲気と、海外のブルース的な泣きの要素が見事に融合したものである。

歌のメロディもそうだが、和嶋氏のギターソロがとにかく泣いている。「晒し首」「地獄」など鈴木氏の残酷な楽曲で泣きのギターが炸裂しているのが素晴らしい。

全体を通じてハード、ヘヴィ、歌モノのバランスが絶妙であり、人間椅子らしい世界観を持ちつつ、アルバムトータル感もある、素晴らしいアルバムである。

そして1st『人間失格』で始めた、小説の世界観を借りて作品を作る、という方法論の1つの到達点としても見ることができるように思う。

【アルバムレビュー】人間椅子 – 無限の住人(1996) 初のイメージアルバム、そして人間椅子の音楽性を広げた名盤

10th『見知らぬ世界』(2001)

  • 発売日:2001年9月21日、2016年11月2日(UHQCD再発)
  • 発売元:トライエム、徳間ジャパンコミュニケーションズ(UHQCD再発)
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター・ボーカル、鈴木研一 – ベース・ボーカル、後藤マスヒロ – ドラムス・ボーカル
no. タイトル作詞作曲時間
1.死神の饗宴和嶋慎治鈴木研一4:49
2.涅槃桜和嶋慎治和嶋慎治6:56
3.侵略者(インベーダー)和嶋慎治鈴木研一5:48
4.さよならの向こう側和嶋慎治和嶋慎治5:38
5.人喰い戦車鈴木研一鈴木研一4:43
6.そして素晴しき時間旅行和嶋慎治後藤升宏6:55
7.甘い言葉 悪い仲間和嶋慎治和嶋慎治5:58
8.自然児和嶋慎治鈴木研一7:02
9.エデンの少女和嶋慎治和嶋慎治5:14
10.魅惑のお嬢様鈴木研一鈴木研一5:56
11.悪魔大いに笑う和嶋慎治和嶋慎治4:37
12.棺桶ロック鈴木研一鈴木研一3:34
13.見知らぬ世界和嶋慎治和嶋慎治5:40
合計時間72:56

ギター和嶋氏の明るい作風が目立つ異色作として語られるが、筆者としては『無限の住人』の次に好きなアルバムとしておすすめしたい。

後に明らかになったことだが、本作を制作する前に和嶋氏は離婚を経験している。表現者としての再出発を誓った、実は和嶋氏にとってのターニングポイントとなる作品である。

和嶋氏の楽曲について、決意の歌となった「見知らぬ世界」を除き、前向きな気持ちがポップで明るい作風となった訳だが、非常に良いメロディが多いのが本作の魅力だ。

歌謡曲風の「さよならの向こう側」「エデンの少女」はとても良い曲だし、ややサイケロック風の「甘い言葉 悪い仲間」やT.REX風の「悪魔大いに笑う」など、ロックのエッセンスが散りばめられている。

対照的に鈴木の楽曲は「死神の饗宴」「魅惑のお嬢様」など、変わらぬ持ち味を発揮してくれていることで、アルバムのバランスが絶妙に取られている。

そして鈴木氏のヘヴィな曲、和嶋氏のポップな曲が交互にやってくることで、アルバムの流れが非常に聴きやすく、飽きさせない流れになっている点も本作の魅力である。

もう1つ本作の好きな点は、和嶋氏の歌詞である。本作ではこれまでにないほど、人間の心理面に焦点化した歌詞になっている。

和嶋氏が身近に見かけた人物や知り合いなどが歌詞のテーマになっており、さらには「死神の饗宴」では死生観についても分かりやすく示すことに成功している点も興味深い。

仏教や哲学などを難解に描くことがこれまで多かったが、もっと直感的に人間の心理を描いた本作の歌詞は、分かりやすくも鋭い視点が多いので、読んでいても面白いものである。

【アルバムレビュー】人間椅子 – 見知らぬ世界 (2001) 転換期、現在の人間椅子へとつながる道

5th『踊る一寸法師』(1995)

  • 発売日:1995年12月10日、2021年11月24日(UHQCD再発)
  • 発売元:フライハイト、徳間ジャパンコミュニケーションズ(UHQCD再発)
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター、ボーカル、鈴木研一 – ベース、ボーカル、土屋巌 – ドラムス
no.タイトル作詞作曲時間
1.モスラ和嶋慎治鈴木研一5:15
2.暗い日曜日和嶋慎治和嶋慎治6:34
3.どだればち和嶋慎治鈴木研一・和嶋慎治5:37
4.ギリギリ・ハイウェイ和嶋慎治和嶋慎治4:18
5.エイズルコトナキシロモノ鈴木研一鈴木研一6:06
6.羽根物人生鈴木研一鈴木研一5:41
7.三十歳鈴木研一・和嶋慎治・土屋巌鈴木研一4:33
8.時間を止めた男和嶋慎治和嶋慎治5:29
9.ダイナマイト鈴木研一鈴木研一1:54
10.踊る一寸法師和嶋慎治鈴木研一6:28
   合計時間51:54

人間椅子が唯一インディーズからリリースした1995年の5th『踊る一寸法師』を第3位とした。

メルダックに在籍した時は、文学的な世界観を壊してはいけないという縛りがあったのか、インディーズからリリースされた本作は枠を取っ払ったような爽快感が作品全体に漂う。

人間椅子の第2のデビューアルバムとも言える記念作である。

音楽的にはこれまでの人間椅子ではやらなかったフォーク路線、スラッシュメタルも取り入れ、歌詞においても現実世界に近い内容も取り入れ、非常にごった煮の作品になっている。

全体的には鈴木氏の曲が多いため、ストレートに楽しく聴ける曲が多いところも、爽快感のあるアルバムになっている気がする。

本作の好きなところは、そうしたごった煮の作品のはずなのに、不思議な統一感があるところである。現実的なテーマも扱いつつ、なぜかアルバムから感じる印象は”異世界感”なのだ。

「モスラ」「エイズルコトナキシロモノ」「時間を止めた男」はSFやオカルトの世界観だが、不思議とパチンコの「ダイナマイト」やお祭り的な「どだればち」まで異世界の曲に聞こえてくるから面白い。

不思議な一体感のミソは、レコーディングを行ったフライハイトスタジオのサウンドにある気がしている。

サウンド全体にやや空間系のエフェクトがかかったような音で、こうしたサウンドが偶然かもしれないが、ごった煮の音楽性を上手く1つの方向性にまとめ上げてくれた。

また「踊る一寸法師」という異形の存在も、異世界感を増すことに貢献しており、ジャケットの不気味さや紫を基調としたブックレットも異世界感を増している。

和や洋いずれの感じでもなく、全体的に宇宙的、異世界を感じさせるサウンドは、人間椅子の新しい扉を開いてくれたアルバムのようにも思う。

9th『怪人二十面相』(2000)

  • 発売日:2000年6月21日、2016年11月2日(UHQCD再発)
  • 発売元:メルダック、徳間ジャパンコミュニケーションズ(UHQCD再発)
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター、ボーカル、鈴木研一 – ベース、ボーカル、後藤マスヒロ – ドラムス、ボーカル
no. タイトル作詞作曲時間
1.怪人二十面相和嶋慎治鈴木研一6:45
2.みなしごのシャッフル和嶋慎治和嶋慎治4:22
3.蛭田博士の発明和嶋慎治鈴木研一5:46
4.刑務所はいっぱい和嶋慎治和嶋慎治5:25
5.あしながぐも鈴木研一鈴木研一5:08
6.亜麻色のスカーフ和嶋慎治後藤升宏4:31
7.芋虫鈴木研一鈴木研一8:41
8.名探偵登場和嶋慎治和嶋慎治2:39
9.屋根裏のねぷた祭り鈴木研一鈴木研一7:22
10.楽しい夏休み和嶋慎治和嶋慎治6:01
11.地獄風景鈴木研一鈴木研一3:29
12.大団円和嶋慎治和嶋慎治8:15
合計時間68:24

江戸川乱歩の小説からタイトルを借りる、”文芸ロック”への原点回帰を図った作品ながら、音楽的には人間椅子史上最も大人っぽいアルバムと言えるのが2000年の9th『怪人二十面相』だ。

気品ある悪役である怪人二十面相を主人公にした緩やかなコンセプトアルバムであり、おどろおどろしい湿り気は控えめに、ダークでありながら洒脱な雰囲気が漂う作品である。

『無限の住人』と同様に、コンセプトが決まっていると遊び心を取り入れたくなるのが人間椅子であり、実に音楽的には凝った作品であるところが何よりの魅力である。

とは言え、コンセプトを大事にした結果、難解な要素や攻撃的過ぎる要素はなく、音楽的に洗練されたポップで聴きやすい作品にまとまっている。

和嶋氏は「みなしごのシャッフル」「名探偵登場」など、ハード過ぎない楽曲でアルバムに彩りを添えている。

鈴木氏は歴代で最も大作が冴え渡っていた時期で、「怪人二十面相」「芋虫」など展開の多い楽曲を見事に構築し、ハード一辺倒ではない楽曲が実に素晴らしい。

和嶋氏の歌詞はあまりメッセージ性は見えず、全曲短編小説・映画を観るような、情景が浮かぶ曲が多いのが、今の人間椅子と随分違うところである。

和嶋氏は後に本作は「歌いたいことがはっきりしない」と自ら批判的に見ているようだが、本作についてはコンセプトにちょうどマッチしていたのではないか。

そしてとにかく当時のメンバーの演奏も素晴らしい。全アルバムの中でも最もタイトかつクリアな音で演奏されており、熟練の域に達した演奏を楽しめるアルバムとも言える。

8th『二十世紀葬送曲』(1999)

  • 発売日:1999年3月25日、2016年11月2日(UHQCD再発)
  • 発売元:メルダック、徳間ジャパンコミュニケーションズ(UHQCD再発)
  • メンバー:和嶋慎治 – ギター、ボーカル、鈴木研一 – ベース、ボーカル、後藤マスヒロ – ドラムス、ボーカル
no. タイトル作詞作曲時間
1.幽霊列車和嶋慎治和嶋慎治5:41
2.鈴木研一鈴木研一6:35
3.恋は三角木馬の上で和嶋慎治和嶋慎治4:39
4.都会の童話和嶋慎治後藤升宏7:07
5.暁の断頭台和嶋慎治鈴木研一5:56
6.少女地獄和嶋慎治和嶋慎治6:06
7.春の海和嶋慎治鈴木研一7:50
8.不眠症ブルース後藤升宏後藤升宏5:45
9.サバス・スラッシュ・サバス鈴木研一鈴木研一3:33
10.黒い太陽和嶋慎治和嶋慎治6:11
合計時間59:16

人間椅子がメジャー復帰した第1作目である、1999年の8th『二十世紀葬送曲』を5位に挙げた。メジャーに戻っても、自由に作ることを心掛け、音楽的には様々な要素が感じられる。

本作の魅力と言えば、まずは全体的に分厚い轟音に仕上がっているところである。他のどの作品と比べても音圧が強い感じの、ドゥームメタルに少し近いサウンドだ。

「恋は三角木馬の上で」「不眠症ブルース」などメタルとは程遠い作風もありながら、サウンドの印象は「暁の断頭台」「黒い太陽」などの轟音系の楽曲に引っ張られる。

しかし本作の”重さ”はサウンドだけではない。まず全体的に6th『無限の住人』と少し近いような、哀愁漂うメロディが随所に見られる。

とりわけ和嶋氏の「幽霊列車」「少女地獄」などが顕著で、後藤氏の「都会の童話」もプログレッシブな中に哀愁が漂う。

さらに和嶋氏の歌詞にも、どこか虚無感や心の傷を負った、どこか不健康な感じのする暗さがある。自身の父の死によるショックが癒えていないとも語っている通り、どこか死を感じさせる曲も多い。

前後の作品を見ても、とりわけ和嶋氏の心の闇が吐露されている作品で、それが分厚いサウンドと相まって、より暗さ・重さを際立たせている。

攻撃性の強いヘヴィメタル的な重さではなく、もっと精神的な重さを感じさせる、この当時の人間椅子らしさを最も感じさせる作品と言う意味で、どうしても惹かれるアルバムである。

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まとめ

今回は「自部屋の音楽」筆者が好きな人間椅子のアルバムを5枚、とにかく語る記事をお送りした。

こうして好きなアルバムを改めて聴きながら、好きなポイントを書いてみると、人間椅子の何が好きなのかも見えてくるのだった。

筆者の場合は、ハードロックサウンドを土台にしながら、多様な音楽性を含みつつ、それをサウンドやコンセプトによって1つにまとめ上げた作品が好きなようである。

またアルバムの中に、綺麗な歌メロや泣きの要素が入っている作品が好きなのも一貫している。

Black Sabbath由来の湿り気あるヘヴィなサウンド、というイメージの強い人間椅子だが、その奥にある様々なロックのエッセンスを感じさせるところに惹かれているのかもしれない。

現在の人間椅子とは違う部分も多い時代であるが、きっとこれからも好きである続ける作品群である。

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