ここ最近よく聴いたアルバムの中から、”おすすめアルバム”を選んで毎月記事にしている。
※先月(7月~8月)のよく聴いたおすすめアルバムに関する記事
9月は後半に、eastern youthと人間椅子のライブに参加したため、両バンドの楽曲を聴く機会が多かった。よって、あまり新しいアルバムに触れる機会が少なかった。
今回は9月のブログ記事を執筆する上で、よく聴いたものをいくつか選んでみた。また過去の名作も改めて取り上げて、その良さを再確認したいと思う。
Chihei Hatakeyama – Late Spring (2021)
1枚目に紹介するのは、最新のアルバムである。アンビエントやドローンのジャンルで活躍するChihei Hatakeyamaの2021年のアルバム『Late Spring』だ。
Chihei Hatakeyamaは、2006年に最初のアルバムをリリースしている。そして国内外のレーベルとの間で70作を超える、非常に多くの作品をリリースしている。
筆者は、中でも数作品にしか触れていないが、例えばStijn Hüwelsとの共作『Jodo』を愛聴している。10分超えるような長尺の曲も含まれる4曲入りアルバムで、そのサウンドの心地よさに惹かれる。
彼の作り出すサウンドの中でも、轟音系のアンビエントよりは、やはり静かにBGMとしても心地よい作品を好んで聴いている。
本作『Late Spring』は小津安二郎の『晩春』にタイトルを得たアルバムだと言う。先程の『Jodo』もそうであるが、仏教的な世界観を思わせるタイトルがいくつか見られる。
なお作品の背景情報等については、本作『Late Spring』についてHatakeyama氏自身が語っているロングインタビューが公開されている。
Hatakeyama氏自身が『Late Spring』について語った映像も公開されている。
今回はジャズのレーベルGearboxからリリースされた点は異色であるが、これまでの作品と大きな違いはなく、ゆったりと音が紡がれるアンビエントの楽曲は健在だ。
本作の特徴は、比較的短い楽曲で構成されている点にある。それぞれ自然や時間の移り変わりを感じさせるタイトルがついており、コンセプト性も感じられる。
あまり難しいことは考えずとも、音に身を任せて耳を傾けるだけで心地よさを感じられる作品である。
それでいて「Spica」は繰り返されるフレーズが、不連続的に繋げられて揺らぎも感じさせる。耳をしっかりと傾けると、発見も多い作品である。
Hatakeyama氏もインタビューで語っているが、流し聞きもできるように作っているそうだ。
聴いていて違和感のあるような難解な楽曲はなく、聴きながら眠りに入ることもできるような心地良さである。
角松敏生 – EARPLAY 〜REBIRTH 2〜 (2020)
先日活動40周年のライブ”TOSHIKI KADOMATSU 40th Anniversary Live”を終えた、日本のシンガーソングライター・音楽プロデューサーの角松敏生氏のリメイクアルバムである。
2012年には過去の楽曲のリメイク作品第1弾となる『REBIRTH 1 〜re-make best〜』をリリース。サウンドやコーラスの面で出来に満足できていなかった80年代前半の楽曲を中心にリメイクを行った。
一方の本作は、もう少し幅を広げて80年代後半までの楽曲も収録されている。そしてキーボードの小林信吾氏(2020年没)とともにプロデュースを行っている。
AORファンであれば、すぐにピンと来るタイトルとジャケットである。角松氏も愛聴していたというAirplayの名盤『Airplay』を真似したものだ。
そしてオリジナル曲だけでなくカバーも収録され、Airplayの楽曲からは「Cryin’ All Night」がカバーされている。
角松氏の楽曲で言うと、前回のリメイク第1弾『REBIRTH 1 〜re-make best〜』ではメロディ・歌詞の手直しもあったが、本作は概ねオリジナルを活かしつつ、ブラッシュアップした印象だ。
例えば打ち込み全盛期の「I Can’t Stop The Night」や「I CAN GIVE YOU MY LOVE」などは、バンドと融合し、厚みのあるサウンドになった。
特に「I CAN GIVE YOU MY LOVE」は、亡くなったベーシスト青木智仁氏のイントロの印象的なベースリフが挿入されている点が嬉しい。
オリジナル音源には生ベースが入っておらず、ライブ映像などでしか、そのスラップベース入りのバージョンを楽しめなかった。
大幅なアレンジが施されたのは、1986年の『TOUCH AND GO』収録の「Take It Away」である。角松氏自身、オリジナルでも満足いくアレンジができたので、別バージョンという位置付けのようだ。
また角松氏自身がアレンジを行っていない2nd『WEEKEND FLY TO THE SUN』収録の「CRESCENT AVENTURE」のリメイクも痒いところに手の届く良い選曲である。
個人的にはカバーなしでオリジナルのみで構成して欲しかったが、それでもオリジナルを活かしたリメイクは聴き馴染みやすい。
角松氏の作品にこれから触れると言う人にもおすすめの1枚である。
eastern youth – 地球の裏から風が吹く (2007)
先日9月22日にeastern youthは、LINE CUBE SHIBUYA(旧渋谷公会堂)にてワンマンライブを行った。筆者も参加し、そのライブレポートも公開している。
セットリストは初期よりも、比較的近年の楽曲の中から自信作を披露したような印象だった。
中でもライブ前半に、「沸点36℃」「サンセットマン」と、筆者が特に好きなアルバム『地球の裏から風が吹く』から2曲演奏された。
2000年代後半のeastern youthの作品の中でも、特におすすめしたいアルバムである。
ジャケットは、石田徹也氏の「兵士」が使用されている。このジャケットからして、ただならぬ雰囲気が漂っている。
※eastern youthの絵画・イラストが使用されたアルバムのまとめ
しかし内容は奇をてらったものではなく、この時期のeastern youthらしい、どっしりとしたロックを聴かせてくれる。
導入曲のような「地球の裏から風が吹く」からシングル化された「沸点36℃」の流れが心地よい。初期のような疾走感とは異なるが、煮え立つようなパワーがある。
中盤の楽曲も、スローからアッパーな曲の緩急が素晴らしい。「野良犬、走る」のヘビーさから、「五月の空の下で」の開放感の流れが特に好きだ。
アルバム終盤の悲哀もまた良い。「サンセットマン」〜「夜がまた来る」までは、じっくりと噛み締めながら聴きたい。
なお曲のタイトルも石田徹也氏の作品タイトルからインスパイアされたものが多い気がする。絵画と音楽がクロスするような、非常に豊かな作品だと思う。
この時期のeastern youthは初期のわかりやすい衝動から、より内に秘めた激情を感じるような楽曲が多い。その分、少しとっつきにくく感じる人もいるかもしれない。
しかし本作は、この時期の作品でも特に聴きやすく、かつ充実度の高い作品だ。初期しか聴いていない人も、ぜひ手にとって欲しいと思う。
Ozzy Osbourne – The Ultimate Sin (1986)
割と有名なアルバムだが、ずっと聴いていなかった作品、と言うのはないだろうか。本作は筆者にとって、そんなアルバムだった。
人間椅子からBlack Sabbath、そしてOzzy Osbourneのソロへと流れてきた。オジーが在籍したサバスのアルバムは、どれもよく聴いたものである。
しかしオジーのソロは、全部追いかけるほどは聴いていなかった。1st『BLIZZARD OF OZZ』から順番に聴いて、3rd『BARK AT THE MOON』で止まり、その後の作品をポツポツ聴いていたくらいだ。
一般にソロでは1stと2ndの評価が高く、3rdから少しずつ評価が低めになっていく。本作『The Ultimate Sin』も、あまり高い評価ではないようだ。
しかし評価と言うのは、音楽的に革新的な要素があるかどうか、が大きなポイントになっているように思う。好みの作品かどうかは、また別の問題である。
もし評価が低いからと言って、本作を聴いていないのはもったいないと感じた。非常にストレートで、3rdまでのオジーよりもわかりやすいハードロックだ。
タイトル曲の「The Ultimate Sin」はヘビーなリフから始まり、哀愁のあるメロディが入ってくる名曲。
「Secret Loser」や「Killer of Giants」「Shot In The Dark」など全般にメロディアスな楽曲が多い点も聴きやすい。ハード・ヘビーなオジーとはまた異なる魅力に溢れている。
80年代らしいサウンドと言えばそうかもしれない。そしてオジー特有のクセのようなものは、あまり感じられず洗練された作品だと言える。
しかしむしろ80年代サウンドが好きな人にとっては、堪らないアルバムとも言える。オジーソロ作品を初めて聴く人にはあえておすすめしないが、決して避けるようなアルバムではないことがわかった。
Boards of Canada – Music Has the Right to Children (1998)
今月最後に紹介するのは、何度も繰り返し聴き、聴くほどに好きになる名盤である。
Boards of Canadaはエレクトロニカなるジャンルを話す時には、必ず名前が出てくるような重要なグループである。
その割には、情報が少ないようで、以下のように何者であるのか真相をまとめた記事が公開されているのが興味深い。
1986年より兄弟のユニットとして活動を開始。カナダ、とあるが、スコットランド出身だそうだ。
80年代にカセットテープでのリリースがあり、CDアルバムとして1998年に初めてリリースされたのが、本作『Music Has the Right to Children』である。
ヒップホップに影響を受けた淡々としたビートに、シンセや環境音によって構成されたミニマルなサウンドが特徴である。
アルバムは1分ほどの短い曲と、6分ほどの長めの楽曲から構成されている。短い曲はアンビエントのような緩やかな旋律、そして長い曲にはサンプリングされた音と無機質なビートが刻まれる。
以降の音楽ジャンルを知ると、チルアウトやローファイヒップホップなど、多くのジャンルに影響を与えたであろう、情報量の多さを感じる。
無機質でありながら、聴いているとどんどんと引き込まれていく。これがBoards of Canadaの魅力である。
本作は特に他の作品と比べても、その無機質さが際立つ作品だと思う。『The Campfire Headphase』などはよりオーガニックな雰囲気があるが、個人的には本作の方が好みである。
無機質なビートと、サンプリングされた電子音。そこに時折加わる環境音が、作品を豊かにしている。
何かを考えながら作業をするときの、BGMにはとてもおすすめのアルバムである。
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