【ライブレポート】2025年12月10日(水)人間椅子 2025年冬ワンマンツアー『まほろば』ツアー 名古屋 Electric Lady Land

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ライブレポート

バンド生活36年目を迎えるハードロックバンド人間椅子は、2025年11月19日(水)に通算24枚目となるフルアルバム『まほろば』をリリースした。

リリースを記念したワンマンツアー全9公演が行われており、2025年は唯一のワンマンツアーとなった。

リリースツアーと言うこともあり、各地でソールドアウトを連発しており、ライブへの期待の高さが窺えた。

筆者は12月10日(水)に名古屋 Electric Lady Landで開催されたライブに参加してきた。新譜発売ツアーではあるが、思わぬレア曲も連発して嬉しいライブとなった。

そうした選曲にはバンドの思いがあったようである。

今回の記事はツアー7本目となる、12月10日(水)に名古屋 Electric Lady Landで行われたライブの模様をレポートする。

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ライブレポート:人間椅子 2025年冬ワンマンツアー『まほろば』ツアー 名古屋 Electric Lady Land

冒頭にも書いた通り、人間椅子2025年唯一のワンマンツアーである。既に2024年のツアー時点で、来年はリリースツアーまでライブはしない、と宣言した通りであった。

そのためファン(特に最近ファンになった人たち)にとっては待望のワンマンライブである。名古屋 Electric Lady Landは長らく人間椅子がライブ会場として使用している場所である。

筆者が24年前に初めて観た2001年の『見知らぬ世界』リリースツアーも同じ場所だった。

なお2日前くらいにソールドアウトの知らせが公式Xで発表された。昔に比べると、動員が増えてかなり手狭になっている印象がある。

今回は18:30過ぎに会場に到着、ちょうど自分の番号が呼び出されるタイミングでジャストだった(とにかく外で立って待ちたくないのである)。

場所は柵の後ろ2列目くらいの中央、かなり見やすい場所を確保できた。会場のスタッフさんから「一歩前に詰めてください」の声が飛び交うほど、後ろは詰まっていたようだ。

会場BGMはモーターヘッド、レインボー、レッド・ツェッペリンなどが流れている。

よく考えると『まほろば』収録の「樹液酒場で乾杯」に登場するミュージシャンの在籍したバンドが続いていることが分かる。

※登場するミュージシャンの名前についてアルバムレビューの中で触れている。

会場にはかなり男性が多い印象である。かつて、ストレートの長い髪の”バンギャ”と言われた人たちで溢れていたELLが少し懐かしい。

オジー・オズボーンの「Crazy Train」、そしてブラックサバスの「Wheels of Confusion」が流れるといよいよライブがスタートである。

登場SEは「此岸御詠歌」、メンバーはいつも通りの衣装にて登場。ベースの鈴木氏はステージ中央に来ると、手を合わせる動作をしている。

ライブの幕開けは、新作のタイトルトラック「まほろば」からスタート。音源以上のヘヴィさとともに、アルバムを象徴する”柔らかさ”も感じさせている。

2曲目はそのまま新作からかと大方の予想を外し、意外にも激しいベースから「心の火事」である。会場は意外な選曲に活気づいた。

この時点でうっすらレア曲も織り交ぜていくのかも、と予想したが、どうやらライブが進むにつれ、その予想は当たっていたと分かった。

最初のMCでは鈴木氏から「平日にもかかわらず」と前置きがあり、多くの人に来てもらえたことを喜んだ。

一方で”しっかり”ソールドアウトしたこと(チケット残が0になるまで)をギターの和嶋氏が伝えていた。

なお鈴木氏からはどの県からライブに来ているかチェックが行われ、愛知以外に岐阜・三重・静岡・福井・石川・滋賀・和歌山辺りが挙げられた。(海外からも1人いた)

ここで楽器を持ち替えながら、次の曲紹介では、ムーンショット計画でアバターが複数の体験をすることについて話された。

しかし私たちはこうして会場に来て楽しんでいる、という感動を大切にしたい、という趣旨のMCから「感動の坩堝」が披露される。渋い曲だなと思っていたが、やはりライブでも渋かった。

続く楽曲はまたしてもややレア曲となった「遺言状放送」である。1991年の2nd『桜の森の満開の下』から「心の火事」に続き、早くも2曲が披露された。

人間椅子倶楽部の集いでもそうだが、人間椅子はセットリストの中で同じアルバムから集中して選ぶことが結構あるのだ。

「遺言状放送」演奏後、鈴木氏から「2ndアルバムに入っているけど、こんな曲あったっけ、と言う曲」と紹介があった。

また「夜叉ヶ池だけ聴いてあとは飛ばす、みたいな聴き方をしていませんか、皆さん」「そういう聴き方だと飛ばされる曲です」とのこと。

和嶋氏からは「いやいや、爆弾行進曲とか色々入ってますよ」とフォローが入る。

「古い曲の後は一気に新しい曲で」と言うMCから「樹液酒場で乾杯」が披露されることに。ここで開演前BGMについて説明があった。

やはり「樹液酒場で乾杯」で取り上げたバンドの曲を、登場した順に流していたとのこと。

ただ作った後にKISSのオリジナルメンバーであるエース・フレーリーが亡くなったので、BGMの最初はKISSが流れていたという。

筆者はその時間まだ会場にいなかったが、「番号が悪かった人は全く分からなかったかもしれません」と鈴木氏。

そして曲に行こうと、鈴木氏が小学校のあだ名で「ケン坊」で、そのあだ名で呼び止められて、昆虫がたくさんいる樹を見に行った…と話して、今にも曲に入ろうとしていた。

それをあえて割って和嶋氏から補足情報が入る。実はこれはつい最近の話である、とやや驚きの補足だった(小学校当時の思い出エピソードのように聞こえた)

車に乗った同級生に呼び止められた、と言う話で、「小学生の頃と同じことをしている60手前の人」と言われて会場から笑いが起きた。

若干MCが曲に勝ってしまいそうであったが、「樹液酒場で乾杯」は大いに盛り上がった。

今度は和嶋氏から「懐かしい曲を」ということで、これも準レア曲くらいの「みなしごのシャッフル」が披露される。

鈴木氏は「この曲のギターソロが好き」とのこと。なぜか「それで終わりですか」と、話の続きがあるかと思った和嶋氏に「もっと褒めてほしいんですか」と鈴木氏が返す場面があった。

確かに最近の和嶋氏のソウル重視とも言えるソロに比べると、かなり技巧的で練り込まれたソロである。

再びダウンチューニング用ギターに持ち替えつつ、名古屋の人たちの印象について和嶋氏から語られた。

今回のツアーは新幹線移動もあったとのことで、名古屋駅に降りると優しい雰囲気を感じたとのこと。

一方で青森の人は結構根性が悪い、とやや自虐的に語っていた。隣の家に虫がやって来ると文句を言われたり、と実家での具体的な話題も飛び出した。

(最後には厳しい自然ゆえの芯の強さ、とフォローもいれていた)

全く次の曲と関係のない話をしてしまった、と軌道修正して、阿修羅像、八部衆の話など仏教の用語をたくさん取り入れた楽曲と言うことで、「阿修羅大王」が披露される。

ギターソロ前からの掛け声は会場で一体となって行われた。間髪入れずに、これも少し久しぶりに披露される「冥土喫茶」も飛び出した。

今回はイントロ部分は引き延ばすことなく、音源通りに演奏されていた。

「光の子供」の前には、親しかった友人の奥さんが若くして亡くなり、その人がとても寂しそうにしていたところからこの曲ができた、というMCがあった。

この日のライブは『まほろば』の収録曲の特徴も相まって、じっくりと聴いて楽しむようなライブになっていた。和嶋氏もかなり丁寧にギターを弾いていた印象であった。

「宇宙誘拐」については、実はねぷたのリズムが使われているとのこと。五所川原の立佞武多における掛け声「ヤッテマレ、ヤッテマレ!」をメインリフに用いたのだそうだ。

非常に重厚なリフから中間部の宇宙的な展開まで、これもまたじっくり聴きたい曲だった。なお今回はテルミンは持ち込まれていないようだった。

続けてベースが「ドーン」と重い鐘を鳴らすかのようなフレーズから不気味なギターが加わり、まさかの「大団円」がここで披露された。

筆者が記憶している限り、「大団円」が最後に披露されたのは、2012年の「第九回 人間椅子倶楽部の集い 2012」だった。

ワンマンライブでまず披露されないのは、鈴木氏は気に入っているが、和嶋氏は伝えたいものがよく分からない、ということで外される曲だったと、以前語られていた。

ただ今回のライブは割と「まほろば」「光の子供」など歌メロがポップなものが多く、歌モノ中心のセットリストには違和感なく入り込んでいた印象である。

そして2000年の『怪人二十面相』から2曲が披露されたことになる。

ダウンチューニングコーナーが終わり、ナカジマ氏がMCをするコーナーへ。おなじみのアニキコールの後には、これから歌う「恋愛一代男」について語られる。

その中で「ちょっと惚れっぽい僕だと思いますが」とナカジマ氏が話すと、すかさず和嶋氏から「それは皆さん知らないと思うよ」とツッコミが入っていた。

軽快な楽曲で終盤に向けて盛り上がり、「ノリの良い曲を、迷信!」と和嶋氏が話してスラッシュメタル調のこの曲が披露された。

思えばこの曲もかつての定番曲と言ったところで、最近はやや演奏頻度が減っていた曲だった。

全体的には落ち着いた雰囲気のライブだったように感じたが、この辺りから勢いを感じさせる演奏、会場の雰囲気になっていたように思えた。

確かこの「迷信」だったと思うが、鈴木氏・和嶋氏が二人ともしゃがみこんでの白熱のプレイがあり、この日一番の盛り上がりだった。

歯ギターも披露されながら、ラストはおなじみ「針の山」で幕を閉じた。鈴木氏による「名古屋ー!」の掛け声もあり、ラスト2曲は怒涛の盛り上がりだった。

本編はこれにて終了、アンコール呼び出しからメンバーの登場、今回のツアーTシャツの紹介を和嶋氏が行い、中央にナカジマ氏が立ってモデルを務めていた。

和嶋氏はアコースティックギターを持ち、次の曲にまつわるエピソードが語られる。

後輩の結婚を聴いて嬉しかった、という「永遠の鐘」にまつわるエピソードである。ここでは筆者としては初聴きだったが、具体的なアーティスト名が飛び出した。

それはKEYTALKの小野武正氏の結婚だったのだ。アイドルグループ『PASSPO☆』の元メンバー根岸愛氏との結婚がニュースにもなっていた。

Instagramで見かけたように思うが、和嶋氏の意外な交友関係と言うか、単純に音楽ジャンルとは違うところで繋がるものだな、と思った。

昔だったら、美人と結婚などと言うニュースは不愉快になっていたが、今は違うと和嶋氏が語っていた。

やはりそうした心境の変化が、たとえば2001年の『見知らぬ世界』の頃の曲とはまた違った説得力があるのだろう。(あの頃はまだ呪いの気持ちが込められていた)

和嶋氏はギターを持ち替え、ギブソン社より提供されたエクスプローラーである。ここで披露されたのは、まさかのレア曲「棺桶ロック」だった。

初めて聴いたと言う人も多いだろうが、これも筆者の記憶+調べでは、2011年の『第八回 人間椅子倶楽部の集い 2011』以来である。

個人的には24年前に同じ場所で、『見知らぬ世界』リリースツアーで披露された時のことを思い出していた。

「棺桶ロック」披露後のMCでは、和嶋氏が「結婚から葬式まで冠婚葬祭をやるバンド」と、おめでたい席からあの世への旅立ちまで、駆け抜けるアンコールであった。

一方の鈴木氏からは「「棺桶ロック」はもう2度と聴けないかもしれない」とやや真剣なトーンで話を始めた。

これまではレアな曲をやった後には半ば冗談で語っていたことではあるが、どうやらこの先何年ライブが続けられるかを考えると、冗談ではなくなってきたようである。

和嶋氏からは「鈴木くんは終活モードだそうで」と補足があり、これからはあまりやっていない、レア曲をどんどん織り交ぜていくとのこと。

「レア曲を網羅したい人は全部に来てください」と鈴木氏、一度チャンスを逃したら、もう二度と聴けない曲は確かに出てきそうである。

和嶋氏からは来年全員が還暦になるため、”還暦ツアー”を行うことが発表される。

詳しいことは言えないと言いながらも、一度ではないと言うニュアンスの発言をしてしまい、2回以上のツアーであることが既に決まっている様子であった。

アンコールラストは、最近定番化している「無情のスキャット」だった。やはりこの曲を待っていた人が多かったのか、大いに盛り上がって終了した。

全17曲が終わり、メンバー紹介が行われた。

まず和嶋氏から「これから雪の降る季節」と前置きがあり、「名古屋で、愛知で、東海地方で、日本で、世界で、宇宙で一番白塗りの似合う男」と鈴木氏が紹介される。

鈴木氏からは「愛の伝道師、和嶋慎治」の紹介、そしてナカジマ氏は「裸がユニフォーム」と紹介されていた。

手を繋いで挨拶をすることはなかったが、ナカジマ氏からは「また来るから絶対会おうぜ」で締めくくられた。

<セットリスト・収録アルバム>

No.タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌『萬燈籠』(2013)
1まほろば『まほろば』(2025)
2心の火事『桜の森の満開の下』(1991)
3感動の坩堝『まほろば』(2025)
4遺言状放送『桜の森の満開の下』(1991)
5樹液酒場で乾杯『まほろば』(2025)
6みなしごのシャッフル『怪人二十面相』(2000)
7阿修羅大王『まほろば』(2025)
8冥土喫茶『未来浪漫派』(2009)
9光の子供『まほろば』(2025)
10宇宙誘拐『まほろば』(2025)
11大団円『怪人二十面相』(2000)
12恋愛一代男『まほろば』(2025)
13迷信『無頼豊饒』(2014)
14針の山『人間失格』(1990)
アンコール
15永遠の鐘『まほろば』(2025)
16棺桶ロック『見知らぬ世界』(2001)
17無情のスキャット『新青年』(2019)
※オリジナルアルバムを記載
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全体の感想+来年の”還暦ツアー”へ

今回の『まほろば』リリースツアー名古屋公演は、しみじみと味わい深いコンサートになった、という印象だった。

新作『まほろば』が柔らかい雰囲気の作風を目指したと和嶋氏が語っていた通り、やはりライブでもそんな柔らかい雰囲気が今までより前面に出ていた感じもした。

メタルっぽい攻撃的なノリや、おどろおどろしく怪奇性の高い曲などはあまりなく、どちらかと言えば歌が前面に出てくるタイプの曲がセットリストには多めに見込まれていた。

会場の雰囲気的にも落ち着いた人が割と多かったのか、終始穏やかなライブだった。

何となく和嶋氏の表情が正直なのだが、勢い余って我を忘れたような表情は少なめであり、結構落ち着いてプレイしていた様子だったので、演奏のクオリティは高かった。

そしてやはり注目はセットリストの組み方であろう。今までの新譜リリースツアーと言えば、かなり新曲が主体で、残りは定番曲が散りばめられる、というのが多かった。

今回は『まほろば』の13曲のうち、披露されたのは8曲だった。これまでのリリースツアーでは9曲披露されることが多かったので、大差ではないが1曲少なくなっている。

大きな変化は定番曲をかなり抑えて、残りをレア曲や準レア曲で固めたところであろう。

思い返せば、2019年の『新青年』頃までは、人間椅子はかなり”売れっ子”モードのライブだった。新譜のリリースツアーは新規ファンを取り込むべく、入門編となり得るセットリストだった。

新作を中心に聴いてきた新しいファンに過去の作品も遡って聴いてもらうため、代表曲を散りばめるのが最も良い戦略と言うことになろう。

ただコロナの時期を経て、人間椅子もモードがだいぶんと変わってきた。今回のライブで明言された通り、まさに”終活モード”である。

来年”還暦ツアー”を行って、果たしてあと何年ライブができるのだろうか、と考えるだろう。大病しなければ10年はできる、しかし15年はどうか、20年は無理だろう、と先が見えてくる。

人間椅子も『まほろば』をリリースして、計300曲近い楽曲を世に送り出してきた。これらの曲たちを披露する機会がふんだんにある状況ではなくなってきたのである。

これからの人間椅子は過去の曲を振り返るライブが多くなっていくのだと思う。ぜひ見届けられる人は、今後のライブは見逃さないように参加していただきたいところだ。

【人間椅子】人間椅子の楽曲は全部で何曲なのか?発売された音源からカウントしてみた

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