【ライブレポート】2025年12月1日(月)JAWBREAKER THE CHILL OF FALL 2025 JAPAN 名古屋 クラブクアトロ

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パンクと言えば良いのか、エモと言えば良いのか。後のバンドの多大な影響を与えたアメリカのバンド、JAWBREAKERがまさかの来日ツアーが行われることになったのである。

JAWBREAKERはインディーズで3枚、メジャーで1枚のアルバムを残して1996年に解散してしまった。2017年に奇跡の再結成を果たしたものの、まさか来日が実現するとは思わなかった。

この貴重な機会は何としても観に行かねばと思い、12月1日(月)の名古屋クラブクアトロ公演に参加してきた。

そこで見たものは、年齢を重ねたバンドの凄みと、一方でアメリカのエモのバンドにしか出せないざらついた悲しみのような感覚を瑞々しく感じ取ることができた。

バンドの歴史、そして変わらぬスピリットを感じた素晴らしいライブだった。そんな名古屋クラブクアトロ公演の模様をレポートした。

なお当日の写真、映像も掲載している。

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ライブレポート:JAWBREAKER THE CHILL OF FALL 2025 JAPAN 名古屋 クラブクアトロ

あのJAWBREAKERが来日する、とても驚きの知らせだった。告知は特設サイトのオープンとともに8月の初めに行われ、第1次先行販売がすぐに行われたのだった。

筆者とJAWBREAKERとの出会いは…などと書くと長引きそうなので、Xの投稿を貼っておくことにする。全く世代ではなく、色んなパンク関連のバンドを漁っている時に気に入ったバンドだった。

非常に有名なGREEN DAYやNIRVANAなどと活動時期を同じくする中、なかなか良い形で活動が続かなかったバンドだったようである。

その様子は2020年にドキュメンタリー映画『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』で記録されている。

JAWBREAKERの日本での知名度となると、今回が初来日と言うことからして、あまり高くはないのだろう。それでも初来日が実現したことは奇跡と言っても良い。

今回の初来日ツアーは、9~10月にアメリカで行われたのと同タイトルで、横浜2公演と名古屋、大阪を回る計4公演である。

なお10月後半には全日程で異なるバンドによるサポートアクトが発表された。

さて筆者が参加した名古屋公演では、2つのバンドがサポートアクトを行うこととなっていた。18時半過ぎに会場に入ると、まだフロアには人が少ない状態だった。

大入りとはいかない客入りの様子であるが、ゆったりと見るにはとても良い環境である。

サポートアクトの印象にも触れておこう。最初のAcademy Fight Songは福岡で2021年に結成されたバンドである。

結成は最近ながら演奏は息が合った力強いもの、非常にラウドながら構築されたサウンドだった。「最初に温めないと」と語っていたMCが印象的だった。

ドラムが非常にパワフルで重たいのが印象に残っている。

2番手のClimb The Mindは名古屋を拠点に1999年に結成されたベテランバンドである。いわゆるエモのサウンドと言う感じで、ギターアルペジオとベースが複雑に絡み合う。

静かな曲調がほとんどなのかと思っていると、ライブ後半にはかなり激しいサウンドやシャウトも聞かれ、多彩な音楽性を持つバンドであることが窺えた。

MCもほとんどなかったが、音楽にとても説得力のあるバンドだった。

2バンドの演奏が終わると、既に20時半を過ぎていた。機材は全て舞台上に置かれていたようで、転換はかなりスムーズだったように感じた。

そして21時になろうかという時間から、JAWBREAKERのステージは始まった。入場曲に合わせて3人のメンバーにサポートメンバーの4人が登場する。

ギター・ボーカルのBlake Schwarzenbach、ベースのChris Bauermeister、ドラムのAdam Pfahlerに、サポートギターのMitch Hobbs(ギターテックでもある)の4名である。

おもむろに弾き始めたイントロは「Boxcar」だった。ライブの最後に披露されるような楽曲で、ライブ冒頭から一気に盛り上がった。

若さ溢れるとは言い難いいで立ちのメンバーではあるが、演奏を始めれば、非常にパワフルである。

会場の音は序盤はやや小さく感じられたが、徐々に迫力のある音になっていった。

続いては1995年のアルバム『Dear You』から「I Love You So Much It’s Killing Us Both」「Save Your Generation」が披露された。

2022年には『Dear You』の発売25年を記念したツアーが行われていたということもあるのか、『Dear You』の楽曲がセットリストに多く組み込まれている印象だった。

「I Love You So Much It’s Killing Us Both」の様子、スタジオ音源よりもどっしりと重みのある演奏だった。

各地で結構曲順が異なっていたようであるが、名古屋では序盤に勢いのあるパンクロックな曲が固められた。

「The Boat Dreams From the Hill」、そして1stアルバム『Unfun』から「Fine Day」が披露された。

「Fine Day」など歌だけではなく、演奏が目立つ部分での表現力に結構衝撃を受けた。バンドの持つクレバーな部分を感じられた演奏でもあった。

また「Fine Day」などスタジオ音源で喋る声の音声が同期で流される曲が何曲かあった。

割とご機嫌な雰囲気なMCが展開していくのも少し意外だった。日本は良い場所だと言うニュアンスの話もあったように思えた。

そして「Sea Foam Green」の後のMCでは、「一緒にコーラスを歌って欲しい」「アイヤイヤ~とね」と語ると大きな歓声が上がった。

事前情報では初日の横浜公演では「Want」は披露されておらず、最近のセットリストで外されることもある、とのことでちょっと冷や冷やしていた。

やっぱり皆聴きたい「Want」、思わず始まった瞬間の映像を撮影した。

そしてお約束の大合唱の様子である。初めて観るJAWBREAKERなので比較はできないが、メンバーのテンションは結構高かったのではないか、と思った。

しかし演奏が終わって何やらBauermeister氏から物言いがついて、実は1曲飛ばして「Want」に行ってしまったようである。

この点について、Schwarzenbach氏は「名古屋の熱気がそうさせた」という粋なMCもあって嬉しい一幕であった。

本当は「Want」の前にじっくり聴かせたかったであろう「Ache」をここで披露する。いかにもアメリカンなざらついた感じがたまらない曲である。

その後はメロディックに疾走する「Sluttering (May 4th)」「Condition Oakland」が披露された。「Condition Oakland」の後半の轟音がたまらなくかっこ良かった。

そしてまるで曲が続いているかのように「Jet Black」へ。続く「Basilica」と併せて、ここはエモを感じさせる、切なくも荒々しい轟音サウンドが心地好かった。

いよいよ本編の終盤、比較的ポップなメロディの「Chemistry」、そして何ともやるせない気持ちになる名曲「Kiss the Bottle」で締めくくられた。

コンピレーション盤『Etc.』で聴ける若い頃のヒリヒリした感じとは異なる、もっとスケール感の大きな楽曲に聞こえた。

非常に流れも良く、バンドの演奏にも迫力があって素晴らしい14曲の演奏だった。アンコールの呼び出しに応えて、メンバーが再び登場。

「パンクロックのアンセム」のようなMCから「Jinx Removing」が披露される。どっしり迫力ある演奏から、こうしたシンプルに疾走していく曲まで、実に幅の広さを感じた。

そしてこの日最後の曲は「Accident Prone」であった。この曲もエモを感じさせるもので、イントロのアルペジオがやっぱりたまらない。

そして轟音のギターの中で歌われる切ないメロディにグッと来ながら、JAWBREAKERのライブが終了した。

全16曲、サポートアクト2組で曲数が少なくなるのかと思ったら、横浜2日目と並んで、本ツアーで最も多い曲数をやってくれたのだった。

なお終演後はセットリストが書かれた紙がファンに配られていた。そしてドラムのPfahler氏はステージに再度登場し、ドラムスティックを手渡したり、ファンサービスも手厚かった。

そうしたステージ上の様子も見届けてから会場を出ると22時過ぎ、時間の長さを感じさせない、とても充実したライブだった。

<セットリスト・収録アルバム>

No.タイトル収録作品
1Boxcar『24 Hour Revenge Therapy』(1994)
2I Love You So Much It’s Killing Us Both『Dear You』(1995)
3Save Your Generation『Dear You』(1995)
4The Boat Dreams From the Hill『24 Hour Revenge Therapy』(1994)
5Fine Day『Unfun』(1990)
6Sea Foam Green『Etc.』(2002)
7Want(※間違えて先に披露)『Unfun』(1990)
8Ache『24 Hour Revenge Therapy』(1994)
9Sluttering (May 4th)『Dear You』(1995)
10Condition Oakland『24 Hour Revenge Therapy』(1994)
11Jet Black『Dear You』(1995)
12Basilica『Dear You』(1995)
13Chemistry『Dear You』(1995)
14Kiss the Bottle『Etc.』(2002)
Encore:
15Jinx Removing『24 Hour Revenge Therapy』(1994)
16Accident Prone『Dear You』(1995)

※当日のセットリストをもらった人に写真撮影させていただいた。

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全体の感想など

JAWBREAKERの初来日ツアー、本当に参加できて良かったと思えるライブだった。

最近はバンド演奏などをしていない筆者にとって、改めてバンドの出す音や空気感の素晴らしさ、一方で同じバンドで演奏し続ける凄みを感じたのだった。

若い頃にはかなりギクシャクした時期もあったようであるが、JAWBREAKERの出す音はとても盤石で力強さを感じた

そして若い頃の演奏は映像でしか観られないが、歳を重ねたことで鳴らせる重みとか凄みを感じさせる演奏であった。

昔に比べれば、やはり前のめりな疾走感は歳を重ねればどうしても落ちていくのは、どのバンドを見ていてもそれは共通する。

それは致し方のないことであるが、その分エモを感じさせる曲の切なさや、どっしりとした演奏はきっと今だからこそ表現できるものではないかと思う。

そして個人的には、やはりアメリカのバンドにしか出せない独特のざらつき、湿り気のない音、一方でそこはかとない悲しみが漂うところが素晴らしいところだと再確認できた。

日本やイギリスのような湿潤な気候だと、やはりサウンドにも湿り気が出るのは興味深いことであり、逆にアメリカの乾いたサウンドには憧れるところがある。

なお曲目としては、3rd『24 Hour Revenge Therapy』から5曲、4th『Dear You』から7曲と、この2枚で大半を占めていたことになる。

活動後半になるほど、シンプルなパンクロックだけではない、エモの要素が強まって行くように思われ、今回のセットリストでもそうした色合いが強かったと思う。

とりわけリリースから30年を迎えた『Dear You』の再評価の機運も高まっているのだろう。

それにしてもサウンドやバンドの演奏も全く古さを感じさせず、楽曲は輝いているように思えた。新曲制作の話も耳にするので、ぜひ新たなJAWBREAKERも見てみたいと思う。

新作リリースでの再来日などと言うことを楽しみにしたくなるようなライブだった。

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