世の中には様々なタイプの「名盤」が存在する。音楽的に革命を起こした名盤、長くヒットし続ける名盤などは、多くの人に知られる作品になる。
一方であまり人に知られることはなかったが、隠れた名盤として一部に熱烈な支持を得ている作品もある。
そうした作品は残念ながら廃盤や入手困難盤となってしまうことが多い。近年はそうした作品もリマスター盤再発などが増え、かつてより入手しやすい時代になった。
そこで今回は筆者が買って良かったと思えた、ちょっとレアなアルバム5枚を紹介する。
買って良かったちょっとレアな5枚のアルバム
今回紹介したいのは「ちょっとレアなアルバム」であり、やや入手困難だった作品が多い。
入手困難になる理由はいくつかあるが、多いのは作品数が少ないバンドは、よほど有名なアルバムでない限り、レア盤になりやすい。
またバンドのメンバーチェンジなどを経て、あまり人気ではない時期の作品などもレアになりやすいものである。
ただそうしたちょっとレアな作品の中にも優れたアルバムが存在する。今回はそんなアルバムたちを紹介する。
Venom – Calm Before the Storm(1987)
1979年にイングランドで結成されたバンド、Venomの5枚目のアルバムである。NWOBHM期にありながら、あまりに独特なサウンドと世界観で、後続のバンドに多大な影響を与えた。
Venomと言えば、初期のクロノス(ベース・ボーカル)、マンタス(ギター)、アバドン(ドラム)のスリーピース時代がもっとも有名である。
このメンバーでの1st『Welcome to Hell』や2nd『Black Metal』が名盤と言われ、攻撃的で音質の悪いサウンドは、後のブラックメタルに大きく影響を与えている。
しかし今回取り上げるのは、ギターのマンタス氏が脱退し、ツインギター体制だった時代のアルバムである。
1987年の5th『Calm Before the Storm』は、これまでのVenomの荒々しさを受け継ぎつつも、ツインギターとなり、ややオーソドックスなヘヴィメタルと融合したような作品である。
楽曲のコード進行も王道のメタルを感じさせるものがあり、さらにがなるだけのクロノス氏がメロディを歌っているところも、ファンの間では話題となっている。
こうした変化に賛否両論あるが、創設メンバー最後となった1985年の4th『Possessed』に比べれば、アルバムのまとまりや完成度において、以前の作品と並べられるものである。
むしろ荒々しさと洗練度が絶妙なバランスであり、Venomらしいポンコツ感はありつつ、ちゃんと進化した音楽性になっていると感じられる。筆者はかなり好きなアルバムだ。
何度か再発が行われており、ジャケット違い・タイトル違い(Beauty & The Beast)など、様々なバージョンでリリースされているのも、何だかB級らしい。
2020年にようやくオリジナルジャケット・タイトルでのリマスター再発が実現し、この機を逃すまいと購入した。

しかしその再発盤も案の定入手困難となっているようで、本当に買って良かったと思う。
※【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第11回:Venom 最強のB級メタルバンドの歴史的名盤は?

Winterhawk – Revival(1982)
1977年にアメリカイのシカゴで結成された、プログレッシブ・ハードロックバンド、Winterhawkの幻の1stアルバムである。
何故かカナダのレーベルから自主制作でリリースされたという本作、オリジナルアルバムとしては本作のみであるため、ややレアなアルバムとなっている。
ギタリスト兼ソングライターのジョーダン・マカラス、ボーカル/ベーシストのダグ・ブラウン、リズム・ギタリストのダン・シーライト、ドラマーのスティーブ・ツカトスの4名で結成された。
時期的にはNWOBHMの時代にあって、どこか古典的なハードロックを感じさせ、そして何よりB級の雰囲気が漂うのは、やはり自主制作ゆえだろう。
しかしカルト的人気のある本作、何が素晴らしいかと言えば、ギターソロがとにかくメロディアスで抜群に上手いのである。
とりわけ壮大な楽曲「Free To Live」の長く続くギターソロの評価が高い。個人的にはバラード調の「Period Of Change」の中間部の流麗なギターソロがたまらなく好きだ。
ストラトキャスターを用いたと思われるが、まさにストラトの良さが前面に出たギターソロで、非常にクラシカルでテクニカルなソロが堪能できる。
一方でそれ以外の曲はロックンロールな曲あり、ハードロックなものあり、と良く言えばバラエティ豊か、悪く言えばまとまりのない作品と言うこともできる。
しかしそんな粗さも吹き飛ばすギターソロの良さ、B級ハードロックの良さが詰まった作品であり、これは間違いなく買って良かったと思える作品である。
Cocteau Twins and Harold Budd – The Moon and the Melodies(1986)
イギリス、スコットランドのロックバンドCocteau Twinsと、アンビエント・ミュージックのパイオニアとも言えるHarold Buddのコラボレーション作品である。
本作は制作に至るまでの経緯も含めて、非常にユニークである。
インディーズ系テレビ局のチャンネル4が、異なるジャンルのミュージシャンをペアにしたフィルム・プロジェクトの案を、レーベル〈4AD〉に持ちかけたのが最初だという。
結果的にそれは実現しなかったのだが、Harold BuddにコンタクトをとったCocteau Twinsはコラボレーション作品を制作するに至った。
その距離感と言うのか、Cocteau Twins的でもあり、Harold Buddらしいアンビエントサウンドにもなっている、絶妙なバランスのブレンド具合なのが素晴らしい。
1曲目の「Sea, Swallow Me」はCocteau Twinsの中でも人気の曲、ポップな雰囲気もありつつ、彼ららしい耽美的な色合いも漂わせている。
一方で「Memory Gongs」「Why Do You Love Me?」はHarold Buddのソロ作と言われても気付かないほど、両者の作品の詰め合わせのようでもある。
Cocteau Twinsは同年にバンド史上最も幻想的とも言える怪作にして名作『Victorialand』をリリースしていた。
本作がその路線の延長線上にあるものではないが、Harold Buddの作風と相まって、幻想的な作風を作り出すことには貢献していたように思える。
長らくレア盤だったようであるが、初リリースから38年を経た2024年にリマスター盤としてついに再発した。

それを機に購入したのだが、もう間違いなく買って良かったアルバムの1つである。
Monsoon – Third eye(1983)
1980年代前半にイギリスのワールド/ポップ・トリオとして活動したMonsoonの唯一のオリジナルアルバムである。
ニューウェイヴの時代において、テクノサウンドにインド音楽をブレンドした先駆的な作品だったようである。
アルバムにも収録された「Ever So Lonely」は、1982年の全英シングルチャートで12位のヒット・シングルとなっている。
実は1982年には解散、解散後にリリースされたのが本作である。そのためか、アルバムとしての構築度(楽曲の並びなど)は、若干粗さも目立っている感はある。
しかし彼らの実験的な音楽性と、ボーカルであるシーラ・チャンドラの魅力的な歌声の組み合わせは唯一無二であり、非常に引き込まれる作品である。
まだまだ実験的な段階でその歩みは止まってしまったが、果たして続いていたらどんな音楽性が花開いていたのだろう、と想像を膨らませて聴くのも楽しい。
本作は2022年に2CD Expanded Editionとしてリイシューされており、筆者のその時に購入した。(2025年には再プレスされている)
アルバム未収録曲の「Indian Princess」が名曲なので、ぜひ手に入れていただきたい。
尾形大作 – 敬天愛人〜幕末青春グラフィティー〜(1988)
最後は日本のアルバムから、1981年にデビューした演歌歌手、尾形大作氏による演歌界で数少ないコンセプトアルバム『敬天愛人〜幕末青春グラフィティー〜』である。
本作は作詞:星野哲郎、作曲:浜口庫之助のコンビで書き下ろされ、幕末の志士10人がそれぞれ楽曲のタイトルとなり、各人をテーマに歌われたアルバムとなっている。
軍歌調の曲やテーマ性から街宣車などで流されることもあるが、純粋に音楽性が非常に高く、優れたアルバムとなっている。
軍歌調の「桂小五郎」や「土方歳三」から、ポップな「高杉晋作」、哀愁漂うタンゴ調の「沖田総司」まで、実に楽曲のバリエーションが豊富である。
それでいて、コンセプトも見事にまとめられた、演歌における数少ないコンセプト作の傑作である。
しかし廃盤になっており、入手困難で知られる。いまだ中古市場では数万円の値が付いている。
筆者は”買った”のではなく、図書館で借りることができた。アルバムレビュー記事でも書いた通り、東京都足立区の中央図書館で2026年8月現在も所蔵が確認されている。

※利用は足立区在住、通学・通勤、あるいは近隣地区(23区、草加市、八潮市、川口市)居住者に限定される。
今回は”買って良かった”なので、厳密には異なるのだが、これはあまりに名作なので紹介した。リマスター再発を強く希望するアルバムの1つである。
※【アルバムレビュー】尾形大作 – 敬天愛人~幕末青春グラフィティー(1988)



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