このブログでは、毎月よく聴いたおすすめのアルバムを5枚ずつ選んで記事にしている。
※先月(9月~10月)よく聴いたおすすめアルバム5枚紹介記事
実は、11月にアップした記事は3本だけだった。少し忙しかったのと、アイデアはあるものの、書くのに時間のかかる記事が多かった。
その一方で、良いアルバムを何枚か見つけることができた。今月は最初の4作が、新たに聴いて良かったと感じたアルバムである。
ジャンルで言えば、ローファイヒップホップやダンスミュージックが多めである。
最後にTHEイナズマ戦隊のアルバムを取り上げたが、紹介記事を書く中で改めて良いアルバムだったので、ここでも取り上げておきたい。
Rasmus Faber – So Far 3(2010)
1枚目に取り上げるのは、スウェーデン出身の音楽プロデューサー、キーボーディスト、DJなどをこなすRasmus Faberである。
クラブシーンなどでは非常に有名な人物だと思われるが、あまり詳しくない筆者はつい最近知ったミュージシャンである。
2002年にデビューし、2003年に自身のレーベルFarplane Recordsを設立し、その第1弾となった「Ever After」が世界的にクラブシーンでヒットする。
女性シンガーとコラボし、ポップなメロディと爽快感のあるサウンドの楽曲が、1つの様式となっている感がある。
日本との関わりは多く、日本のアニメ音楽に大きく影響を受けているようで、声優で歌手の中島愛とコラボレーションした「Ame (Rain)」と言う楽曲も制作している。
その他にも多くの日本のミュージシャン、声優に楽曲提供を行っており、日本での人気も高い。そこで日本独自企画盤としてシリーズ化したのが 『So Far』シリーズである。
シングル曲をまとめ、リミックス音源が多数収録されている。2010年にリリースされた『So Far 3』が今回紹介したいアルバムである。
シングルや代表曲のリミックス・ヴァージョンに加え、新人女性シンガーのFRIDAをフィーチャーした新曲も4曲収録されている。
Myspaceで偶然発見したと言うFRIDAとのコラボ曲はとても良い。アルバムは2枚組で、1枚目の1曲目がシングル化された「HIDDEN THOUGHTS」である。
RASMUS FABER feat. FRIDA / HIDDEN THOUGHTS 【Music Video】
透明感があり、少しメランコリックな雰囲気のあるFRIDAのボーカルに、高揚感のあるトラックがとても相性が良い。
ダンスチューンであると同時に、癒し要素まで感じられる1曲に仕上がっている。
個人的に最も惹かれた曲は、3曲目に収録されている「Demanda」である。
Demanda (Original Mix) (feat. Clara Mendes)
アコースティックギターがどことなくラテン風味を感じさせるダンスナンバーであり、ラテンのリズムに合わせたメロディラインが頭から離れない。
作業用のBGMとしても最適であり、高揚感をもって作業に向かうことができる。全体的にポップでわかりやすいメロディと、爽快なビートが心地よいアルバムである。
ダンスミュージックは、無機質でやや取っつきにくいものも中にはあるが、このアルバムは初心者でも非常に入りやすいのでおすすめである。
個人的には少し玄人的な音楽性の、2019年作『Two Left Feet』なども、彼のまた異なる側面としておすすめしたいところである。
水中スピカ – mEq(2021)
2018年に京都で結成された4人組バンド、水中スピカのアルバムをよく聴いている。今気になっている日本のバンドの1つである。
”女性ボーカルのオルタナティブロックバンド”はたくさんあるが、このバンドは少し肌触りが異なる印象である。
まずは特徴的な点として、2本のクリーンギターが複雑に絡み合うサウンドである。ギターの野口氏はピック弾き、ギター・ボーカルの千愛氏は指弾きで演奏され、異なる風合いのギターが絡み合う。
個人的には千愛氏のタッピングを駆使したフレーズワークは、かなり見応え・聴き応え十分である。奏法解説的な動画も公開されており、とても難しそうなフレーズである。
ジャンル的には複雑なフレーズとリズムが絡み合う、マスロックであろう。そこにポップなメロディライン乗っかる、独特な浮遊感が心地よい。
※muevo pick up「水中スピカ 独自のバランス感覚で鳴らす、独創的で普遍的な音」
彼らのデビューアルバムが『mEq』である。電解質の濃度を表す単位をタイトルにし、理系的な構築されたサウンドを表すかのようである。
MVが2本アップされている。1本目はアルバム3曲目に収録された「Triage」である。
Triage (Official Music Video)
イントロから引き込まれるような複雑なギターの絡み合い、そして次第に緩やかになりながら歌に入る。曲の中でも頻繁にリズムが移り変わり、浮遊感と緊張感が同居するかのようだ。
サウンド的には、筆者の好きなAmerican Footballを思わせるものだ。
アルバム2曲目に収録されている「Oshiroi」は、寺院で撮影された日本を感じさせるMVに仕上がっている。
Oshiroi (Official Music Video)
風景の中に溶け込んでいく奥行きのあるサウンド、メカニカルなサウンドながら、深く精神世界に入り込んでいくようである。
アルバムを通じて決して難解なものではなく、音に耳をすませば心地好いサウンドが広がっている。しかし聴き込むと、非常に複雑なサウンドが広がり、かっちり構築されていることがわかる。
1stアルバムでこの完成度なので、先がとても楽しみなバンドである。
Bodikhuu – Rio & Bodianova(2019)
3枚目に紹介するのは、モンゴルのトラックメイカーであるBodikhuuが2019年にリリースしたアルバムである。
ジャンルとしては、筆者がここ最近よく聴いているローファイヒップホップに括られる。ジャジーなピアノやギターのサンプリングに、意図的にチープでヨレたリズムを合わせている。
さてBodikhuuはモンゴルでクレーン技師をしながら、ミュージシャンとして活動しているそうだ。ボロボロになったMPC(サンプリングを行う機材)で曲を作っていると言う。
そんな室内の様子が映し出されたビデオもアップされている。
そしてアルバム『Rio & Bodianova』はリオデジャネイロ、そしてボサノバなどラテンミュージックへの憧れから作られ、邦題は『ボディア・ノヴァ ~リオへの憧憬』となっている。
実際にリオに行ったことはないと言い、その様子を想像しながら作ったと言うのだ。
何ともその作曲の背景を聞くだけでも、ロマンチックな気持ちにさせてくれる。
1曲目に収録された「De Janeiro」は、2015年にEPとしてリリースされた『Rio EP』にも収録されている。
De Janeiro
ロマンチックなムードの中、やや走るようなリズムが、旅へと気持ちを誘うようである。パーカッションが効果的に入り、ラテン色がそれとなくブレンドされている。
そして微妙なパーカッションの揺れが、土着的なグルーブとなっている。
3曲目の「Linda」も『Rio EP』に収録されていた楽曲で、サンバのリズムを取り入れた陽気な雰囲気の楽曲。
Linda
まさに”リオへの憧憬”とも言うべき、ロマンが感じられる。
音楽は自宅にいながら、世界中あらゆるところに旅ができる。本作もそんな旅行気分を味わえる趣の作品である。
そしてローファイヒップホップと言うジャンル(彼はあまりジャンルを意識していないようだが)は、自分の部屋の中で楽しむBGM的なものが多いイメージである。
その中にあって、モンゴルから遠くリオデジャネイロへの旅を体験できる、面白い作品だと思う。
Nujabes feat. Shing02 – Luv(sic) Hexalogy(2015)
4枚目に紹介したいのは、トラックメイカーのNujabesとヒップホップMCのShing02によるアルバム『Luv(sic) Hexalogy』である。
まずNujabesという不思議な名前の人物は、東京都出身の日本人である。2010年代以降に起きたローファイヒップホップのルーツの1人と言われている。
トラックメイカーにして、その活動はレコード店「GUINNESS RECORDS(ギネスレコード)」の開店から始まり、インディペンデントレーベル「hydeout productions」も運営していた。
そんな彼の人気作が「Luv(sic)」シリーズと呼ばれる一連の楽曲がある。NujabesからヒップホップMCのShing02に「12インチを作ろう」というメールを受けたところから始まる。
ジャズピアニスト、高瀬アキの「MInerva’s Owl」をサンプリングしたビートに、Shing02は『音楽の女神に宛てて書いた手紙』と言うテーマでリリックを書いた。
この楽曲が発端となり、6作にわたる連作が作られることになる。が、Nujabesは2010年2月26日に交通事故で亡くなってしまう。
それは4作目・5作目を作っている途中のことだったと言う。彼の死を挟み、紡がれた楽曲であり、全く意図せず楽曲に劇的な物語が生まれてしまったのである。
このようにもともとコンセプトアルバムと言う形で作られたものではないが、6作の楽曲とリミックス音源やバージョン違い、インストゥルメンタルを含む2枚組CDとしてリリースされた。
この「Luv(sic)」シリーズの誕生秘話は、以下のサイトに詳しく出ているため、興味のある人は読んでいただきたい。
筆者自身、このアルバムは衝撃的であった。何が衝撃なのか、と言われると言語化が難しい。が、ただならぬ雰囲気とでも言おうか、聴き込むほどに不思議な感動に包まれる名作なのである。
今回はNujabes氏の生前に制作され、当初は3部作の予定だった最初の3曲を取り上げたい。
Nujabes – Luv(sic) feat.Shing02 [Official Audio]
2001年にリリースされた「Luv(sic)」はジャズ色の強いトラックに、前のめりなラップが乗っかる。シリーズの中では、最もフラットな印象な淡々とした印象がある。
続く「Luv(sic) Part 2」は、続編として意識はされずに作られたのだと言う。
Nujabes – Luv(sic) Part 2 feat.Shing02 [Official Audio]
日本ではこのPart 2の人気が高いようである。確かに普遍的なコード進行のトラックは、「Luv(sic)」シリーズにドラマチックな要素を持ち込んだ点で意義深い。
Part 3を作るつもりはなかったShing02氏だが、続編を提案したのはNujabes氏だったと言う。当初の形とは異なる形で、Nujabes氏の2005年のアルバム『Modal Soul』に収録された。
彼が亡くなった後に、再レコーディングされたバージョンが収録されている。
Nujabes – Luv(sic) Part 3 feat.Shing02 [Official Audio]
Part 2よりさらにドラマチックになったのがPart 3と言う気もする。Shing02氏のラップもより人間味が感じられ、どんどん完成度が上がっている。
そして『新たな出会い~別れ~再会』というテーマでPart 4以降が作られるはずだったが、Nujabes氏が亡くなってしまう。遺されたトラックを元に、Grand Finale/Part6までが作られた。
何と2001年から2013年までの時間をかけて完結に至った連作である。その時間の重み、Nujabes氏の死と言う悲劇とともに、特別な意味を持つことになったシリーズである。
歌詞の内容までじっくりと聴きたいアルバムである。
THEイナズマ戦隊 – GALAPAGOS(2016)
11月には当ブログの記事で、初めてTHEイナズマ戦隊を取り上げた。これまでの歴史とおすすめの17曲を選んだ記事を作成している。
筆者がイナ戦を聴き始めたきっかけは、2004年にテレビ番組「メンB」での歌唱であった。どうしてもその頃の、活動初期の時代の楽曲を好んで聴くことが多かった。
改めて最近の楽曲も聴いてみた時に、特に完成度が高い名盤だと思ったのが、2016年のアルバム『GALAPAGOS』であった。
”ガラパゴス化”は、ガラパゴス諸島が独自の生態系を持つことから、ビジネス用語として、外部との互換性を持たなくなってしまうネガティブなニュアンスの言葉として知られる。
あえてそのガラパゴスを逆手にとって、自身を、日本の中にあって”ロックンロール”にこだわってきた独自のバンドとして捉えたアルバムなのだ。
そんなテーマ性をが、1曲目の「ロックンロール・ラブレター」で歌われている。”ガラケー”ならぬ”ガラバン”であると宣言している。
さて、そんなテーマ性を持たせつつ、アルバムの内容は非常に充実している。何よりも、ストレートな良いメロディと言う、イナ戦の魅力が非常に良い形で表れている。
以下に全曲の試聴映像がアップされている。
ALBUM 『GALAPAGOS』全曲試聴
中でも、ライブでは以前から披露されていたという「33歳」が素晴らしい。33歳で父を亡くしたボーカル上中丈弥氏が同じ33歳になった時に作られたと言う曲。
「33歳」MV
”がむしゃらなロックンロールバンド”というイメージを崩さぬよう、作ってしばらくリリースに到らなかったが、このタイミングでようやくリリースできると思ったそうだ。
他にもイナ戦らしいストレートな「終わらないストーリー」や「合言葉 ~シャララII~ 生きててくれてありがとうな」は爽快感があり、カラッと晴れている印象。
筆者としては「朝焼けの唄」「さよならSummertime Blues」の流れに、バンドとしての成熟を感じられてとても好きだ。
また「Lightning Boy」では、あまりこれまでなかったオシャレなコード使いも見られて、直球・変化球を自在に使い分けるような曲作りが素晴らしい。
サウンド面や曲のバリエーションはあるものの、やはりイナ戦の魅力はメロディの良さである。ここに尽きるアルバムはやっぱり名盤なのだ。
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