世間的なヘヴィメタルのイメージを作ってしまったバンドたち – 速い・うるさい・不気味?

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ハードロック
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ヘヴィメタルというジャンルをずっと聴いてきた人と、世間一般の間では「ヘヴィメタル」のイメージは大きく違うように思う。

ヘヴィメタルにはカッコいい曲がたくさんあるのに、なぜか世間的にはヘヴィメタルは「ちょっと変」とか「ダサい」と言ったマイナスイメージが付きまとうように感じるのは筆者だけだろうか。

今回の記事では、なぜヘヴィメタルの一般的イメージがメタルファンとズレるのか、そしてズレる要因はどこにあったのか、について考えてみた。

そして速い・うるさい・不気味…などネガティブとも言えるイメージを与えるに至ったバンドを具体的に挙げつつ、一方で本当はそれがヘヴィメタルの魅力である点についても伝えたいと思う。

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なぜ世間的なヘヴィメタルのイメージが音楽とズレるのか?

ヘヴィメタルと言うジャンルは、ハードロックから派生し、パンクロックのスピード感を巻き込み、ハードロックの激しい部分を取り出したような音楽性を持つ。

速さ・重さ・激しさなど、攻撃的な要素に応じてジャンルが枝分かれするなど、個々のヘヴィメタルの派生ジャンルを見ると、かなり独特なものになっているとも言える。

おそらく世間的には、こうしたヘヴィメタルと言う音楽が持つ特徴が、デフォルメされた形で知られることになってしまったから、変なイメージがついてしまったのではないか、と思う。

これまで日本のお茶の間にヘヴィメタルが入り込んだタイミングが何度かある。

1980年代のジャパメタブームから聖飢魔Ⅱの台頭、漫画・映画「デトロイトメタルシティ」(2008年前後)、アイドルグループBABYMETALの流行(2015年前後)などが挙げられる。

あるいはテレビ番組の激しいBGMとして、タモリ俱楽部の名物コーナー「空耳アワー」などでもヘヴィメタルは常連となっていた。

しかしいずれも音楽だけが流行したと言うより、音楽とともに奇抜な服装や独特な世界観が”面白がられた”という要素がセットになっている。

無論、茶化すことだけを目的にしたものではなかったはずだが、ヘヴィメタルと言う音楽ジャンルを愛していない人からすれば、面白い要素だけが切り取られてしまったということである。

ただヘヴィメタルのファンからすれば、「やり過ぎじゃないの?」と思えるような過激さ・奇抜さが笑えてしまう部分も含めて、愛すべきジャンルであると言う認識の人が多いのではないか。

ロックとはそもそもおかしなもの、と言われるくらいであり、ヘヴィメタルも”おかしい”要素があって当然である。ただしそこに愛があるかどうか、によってイメージは大きく変わってしまう。

ただ”おかしなもの”としてではなく、”音楽的に面白いもの”として、ヘヴィメタルを受け止めていただきたい、と思うところだ。

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世間的なヘヴィメタルのイメージを作ってしまった?バンド紹介

ヘヴィメタルはちょっと「おかしな」ジャンルであるというイメージが世間的にはついているが、そんな”おかしさ”の要素をいくつか取り上げてみようと思う。

たとえば以下の要素を挙げることができる。

  1. 速い
  2. うるさい
  3. 速いギターソロ
  4. デスボイス
  5. 不気味な衣装
  6. 長髪で野性的

実際のところ世間一般にはバンド名や具体的な楽曲としては知られていないのに、なぜかこうしたイメージが知られることになっている。

ではこうしたイメージを作り上げるのに貢献してしまったのはどのバンドなのか?特徴ごとにいくつか具体例を挙げつつ、その魅力を語っていきたいと思う。

速い

ヘヴィメタルと言えば、まず「速い」と言うイメージが強いようにも思える。必ずしもメタル=速いではないのであるが、確かにヘヴィメタルの歴史をたどると速さを突き詰めてきた歴史がある。

まず速いヘヴィメタルの代表格と言えば、1980年代前半から始まったスラッシュメタルと言われるジャンルである。ハードコアパンクのスピード感を取り入れたとも言われるが、とにかくテンポが速い。

たとえばSlayerMetallicaなどがよく挙げられるが、Slayerの「Angel of Death」などはとにかく速い。これ以降もっと速いメタルもあるが、およそスラッシュメタルの印象が世間的にも強いだろう。

もう少し遡ると、スラッシュメタルのもとになった1980年前後のNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)も速いメタルと言えばイメージするものだ。

中でもIron Maidenは有名なバンドであり、「Aces High」などの疾走感が心地好い。

さらに遡れば、ハードロックの草創期から活動するDeep Purpleの「Highway Star」や「Fireball」などがスピード感のあるメタルのかなり初期のものと言っても良いだろう。

確かにあまりに速さを極めていくとおかしくなってくるのであるが、これもサウンドの攻撃性を高めるための手法の1つであったと言うことだ。

うるさい

ヘヴィメタルは「うるさい」というイメージもある。そもそもハードロックから、歪んだギターサウンドに、でかい音のドラムが鳴り響くジャンルであり、その点でうるさいジャンルである。

しかし「うるさい」という意味では、クラシックなどに比して、ロックは全般的にうるさいのだ。

その中でもヘヴィメタルがうるさいと言われるのは、ツインペダルと呼ばれる「ドコドコ」と速く刻まれるドラムや、歪んだギターサウンドが固まりのようになったうるささである。

それは先ほどのSlayerの「Angel of Death」などを聴けば、ドラムがかなり騒がしいことが分かる。

また個人的には1990年代のMetallicaPanteraなどが作り上げた、機械的で音が詰まった轟音のようなサウンドが、メタルの1つのうるさいサウンドの典型になったような気がする。

またニューメタル・ミクスチャーなどと呼ばれるLinkin Park、そしてゴシックの要素も感じさせつつラウドなEvanescenceなどが、こうした”うるささ”を継承しているような気がする。

筆者の意見としては、ヘヴィメタルがオルタナティブロックや電子音楽などと融合し、音の隙間が詰まったサウンドになってからが、ラウドなメタルの時代になったと感じている。

一方で90年代以前のヘヴィメタルは、むしろ音がスカスカで”うるさい”とは程遠いような気がしている。

たとえば70年代後半から活動するMotörheadも、大音量で爆走するバンドと言われるが、90年代以降の音の詰まった”うるささ”とは質が異なるようにも思える。

昔のハードロック時代は迫力あるサウンドであったが、うるさい・騒がしいと言った感じではなかった。どちらかと言えば、ヘヴィメタルと別ジャンルのミクスチャーになって騒がしくなった感がある。

速いギターソロ

ヘヴィメタルと言えば、ピロピロと速く弾くギターソロが特徴であることは、まさにその通りである。

ただ世間的には速弾きの何が凄いのかは分からない部分が多く、エモーショナルにギターを弾く様がカッコいいと思っている節もある。

それはエアギターなるものが流行したところからも、ソロの内容と言うより、パフォーマンスに目が行く人の方が多いことが窺える。

一方で、本当に速いギターソロを弾くプレイヤーもおり、やはりまず頭に浮かぶのはイングヴェイ・マルムスティーンであろう。

いわゆるこうした超絶速弾きは、ロックのギターソロにクラシックの奏法を持ち込んだことに由来するものとされる。

イングヴェイ以前には、25歳の若さで亡くなったランディ・ローズもクラシックギターの素養を持ち合わせ、流麗なギターソロを弾いたことで知られる。

ハードロックにおけるギターソロは、ブルースのフレーズを中心にしたものが多かったが、クラシックのフレーズはブルースとは大きく異なり、よりメロディアスなものだった。

こうしたクラシック要素を持ち込んだのは、Deep Purpleのリッチー・ブラックモアであり、イングヴェイもランディも大きく影響を受けたものと思われる。

やや余談になるが、ピロピロと速いギターソロを弾くヘヴィメタルは、まるでゲーム音楽みたいな印象を受ける人もいるだろう。

そうしたイメージを作り出したのは、DragonForceではなろうかと思う。そしてDragonForceは日本のゲーム音楽にも影響を受けているそうで、ゲーム音楽の方が先に合ったとも言える。

デスボイス

ヘヴィメタルと言うと、しゃがれ声・だみ声のような汚い声で、メロディのない叫び声を発するというイメージもある程度定着しているかもしれない。

こうした唱法はデスボイスなどと呼ばれるが、デスメタルブラックメタルと呼ばれるジャンルなどにおいてよく用いられる。

なぜかデスメタル・ブラックメタルという言葉は、いかにも禍々しい言葉が並ぶからか、言葉として一般的な認知度は高めである。が、実際どんな音楽なのかよく分からない人が多いのも事実であろう。

筆者もこのジャンルにあまり詳しくないのだが、デスボイスと言うと、まずはDeathが挙げられるようである。

音楽的にはスラッシュメタルをよりエクストリーム(過激な)にしたもの、と言った様子であり、先ほどの”うるさい”と言う要素も、こうしたエクストリームなメタルにも感じるところだ。

さらには”速い”の要素も加わっており、世間的なヘヴィメタルのイメージを結集すると、実はこのタイプのメタルになるとも言える。

言ってしまえば、ハードロックが持っていたロックンロールな部分や叙情的なものを排していくと、エクストリームなメタルが出来上がる。

ただしArch Enemyなどのように、デスボイスを用いつつ、ギターフレーズでは叙情的な要素を組み込んだバンドもいる。

そしてこうしたエクストリームなヘヴィメタルの持つ特徴である、デスボイス・うるさい・速いなど、全てを兼ね備えていたのがVenomと言うバンドであった。

後続のバンドに絶大な影響を与えながら、後続バンドほど評価が得られなかったのが残念なバンドである。しかし個人的にはVenomを超えるバンドはないのではないか、と思うほどに好きなバンドである。

不気味な衣装

ここから趣を変えて、音楽性から見た目の話に移る。ヘヴィメタルバンドと言うと、不気味な衣装、もっと言えば悪魔的な恰好をしている、と言うイメージも強いかもしれない。

そのイメージを強烈に世界に知らしめたのは、ハードロックバンドKISSであろう。

彼らは白塗りで顔面にペイントを行い、悪魔や宇宙人などの設定でバンド演奏を行っている。自らのキャラクター・世界観も音楽とともに売り出した点も特徴的である。

こうしたフェイスペイントは、その後もキング・ダイアモンドも行っており、それがデスメタルなどに影響を与えていくことになる。

日本においては聖飢魔IIが悪魔教を布教する目的でバンド活動を行ったことが知られているためか、KISSのイメージと併せて、ヘヴィメタルと言うと悪魔的な衣装と言うイメージが強いかもしれない。

さらにはSlipknotなど被り物を被って演奏するバンドも登場し、バンドの世界観を作り上げるために、あらゆる衣装のバンドが登場していくこととなる。

長髪で野性的

ファッション的なところ言うと、ヘヴィメタルはとにかく「長髪」で、「野性的」あるいは「いかつい」服装の屈強な男たちがやっている、というイメージもある。

ぼんやりとそのイメージを作った有名バンドと言えば、やはりBon Joviではなかろうかと思う。

レザーのジャケットやボロボロのジーンズなど、どこか野性的な服装が当時の流行でもあったようである。

Bon Joviは該当しないが、近いジャンルとしてLAメタルと呼ばれるジャンルのイメージも強いかもしれない。Mötley CrüeRattDokkenなどのバンドも長髪で野性的ないで立ちが特徴であった。

なおレザーの服装を着ることについては、Judas Priestのロブ・ハルフォードの影響が強いとも言われる。

長髪に関しては、ハードロックの時代から継承されたものであり、1960年代後半のLed Zeppelinなどを見てもその通りである。ヒッピー文化の名残であると言う見解も存在している。

野性的ないで立ちはどこかアメリカンな印象を持つもので、国や文化によってそのいで立ちは独特なものとなっている。

ちなみに日本では、和装でハードロック・ヘヴィメタルをやっているバンドもあり、人間椅子陰陽座などが挙げられる。

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まとめ

今回は世間的に見られるヘヴィメタルのイメージが、メタルファンとの間でなぜズレるのか、そして一般的なイメージを作り出したバンドたちを紹介した。

こうして特徴的なバンドを並べてみると、ヘヴィメタルの歴史を概観するかのような並びになっていることが分かる。

筆者が選び出しているバンドがある程度ヘヴィメタルを代表するバンドであるならば、世間的にもヘヴィメタルと言えばイメージするものと、それほど乖離はないはずである。

しかしそのイメージがややマイナスに受け取られがちなのは、やはりデフォルメ化され、”面白がられる”ものとして切り取られているからなのだろう。

”過激さ”も突き詰めると、笑えてくるところがあるのは確かである。しかしその”おかしさ”の部分だけを取り上げるのではなく、ぜひ”カッコいい”部分にも光を当てて欲しいと思う。

ヘヴィメタルのその過激さ、攻撃性とともに叙情的な部分も含め、魅力にあふれたジャンルであり、今回取り上げたバンドから、ぜひ音楽として楽しんでもらえたらと思っている。

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