ハードロックとヘヴィメタルの違いは結局何なのか? – 歴史的変遷からざっくりと理解する

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ハードロックとヘヴィメタルの違いって何?

この質問を何度聞いたことか分からない。しかしそのたびに適切な答えは出せず、あらゆる場所でこの違いに関する議論が行われてきたように思う。

いわゆる初心者の人たちにとって、この2つの違いは分かりにくいものであるし、またずっと聴き続けてきたリスナーにとっても、結局違いはよく分からないところがある。

今回その違いについて書いてみよう、と言う記事である。もちろん結論が出る訳でもなく、筆者がたどり着いた1つの視点、と言うくらいに見ていただきたい。

できるだけジャンル初心者の人も、歴の長い人にも楽しんでもらえる記事を目指した。本記事で示した視点をもとに、各自の中でその違いをイメージしていただけたら幸いである。

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ハードロック~ヘヴィメタルへの歴史的変遷をざっくり理解する

本題に入る前に、ハードロックとヘヴィメタルの違いを理解する上では、どうしてもその歴史的変遷をざっくりと押さえておく必要がある。

結論から言ってしまえば、ハードロックからヘヴィメタルへと移行してきた歴史があるため、その時代的変化が違いの大きな要因ではないか、と筆者は考えている。

中でも1960年代後半のハードロック誕生から、1980年代のハードロック再興に向かう辺りの歴史をここでは簡単にまとめた。

ハードロック誕生~発展

1960年代後半にハードロックは誕生した。

ブルースやロック、サイケデリックロックなどが融合し公民権運動などと結びつきながら、アメリカ・イギリスを中心に、大音量で激しいサウンドを鳴らす音楽ジャンルとして知られる。

ルーツとしてはブルースやブギーなどから派生したもので、激しいバンドサウンドやギターの反復(リフ)、シャウトのあるボーカルなどが特徴である。

ジミ・ヘンドリックスCreamなどはその草分け的存在であった。

そして1970年代前半に入ると様々なハードロックバンドが現れ、ハードなサウンドにクラシックやサイケなど他の音楽ジャンルを取り込みながら、しのぎを削る時代が訪れた。

Led ZeppelinDeep PurpleBlack Sabbathなど、ハードロックを代表するバンドが活躍した時期である。

そして1970年代中頃に入ると、ハードロックバンドは百花繚乱となり、KISSAerosmithQueenなどが人気を博すようになる。

ハードロック下火の時代~再興へ

ハードロックバンドが多数登場するのに伴って、ハードロックというジャンルも次第に様式化していくこととなる。

簡単に言ってしまえば、「だんだん似たようなバンドが増えてくる」状況となってしまった。ハードロック初期の煌めきは次第に失われると、ロックの中から異なる勢力が生まれてきた。

それがパンクロックのムーブメントである。ロックの初期衝動を復活させるかのごとく、ハードロックの様式ともなりつつあった技巧的なギタープレイなどを排した簡素な音楽スタイルを取った。

パンクムーブメントも短命に終わったが、その後のニューウェイヴに音楽性は引き継がれた。ニューウェイヴに対し、ハードロックは”オールドウェイヴ”と言われるようになった。

1979年頃からのニューウェイブオブブリティッシュヘビーメタル(NWOBHM)におけるIron Maidenや、アメリカでのLAメタルブーム(Mötley CrüeRatt)など、再びハードロックが注目される。

非常に大雑把に言えば、この辺りの時代からハードロックからヘヴィメタルへと移行していると筆者は考える。

ヘヴィメタルという言葉自体は1970年代前半から既に使われていたようであるが、ヘヴィメタルの音楽性が確立されたのは、この時期と言っても良いだろう。

一般にはパンクロックの攻撃性やスピード感を、ハードロックの中にも持ち込み、独自の進化を遂げたのがヘヴィメタルとも言われている。

1970年代Black Sabbathはハードロックなのか、ヘヴィメタルなのか – 音楽的変遷の考察

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ハードロックとヘヴィメタルの違いとは?

1960年代後半に生まれたハードロックが70年代を通じて発展し、パンクブームの中で一旦下火になり、80年代にかけてヘヴィメタルとして復興する、というのが非常にざっくりした流れである。

この流れの説明自体にも異論はあるかもしれないが、ひとまずこう理解しておくと、ハードロックとヘヴィメタルの違いは、比較的明確に見えてくるように思える。

ここではまずハードロックとヘヴィメタルが大きな括りでは似たジャンルであること、その中での違いは何か、について書いた。

ハードロックとヘヴィメタルに共通すること

まずもって、ハードロックとヘヴィメタルの違いは何か、と言う前に、両ジャンルは似たジャンルである、と言う点は押さえておきたい。

ハードロックからヘヴィメタルへと移行したのであれば、共通する部分があるのは当然で、おおざっぱには同じジャンルとも言える。

共通点の1つは歪んだ激しいギターサウンドである。ハードロック・ヘヴィメタルも、サウンドの主役はギターである、という点が共通している。

そしてギターによる”リフ”と呼ばれる繰り返しフレーズが用いられる点もおよそ共通する。いかに印象的なリフがあるか、が曲の良さとも言われるジャンルである。

さらには長めのギターソロが挿入されることが多く、ギターソロのカッコよさもバンド・楽曲の魅力の大きな要因となっている。

その他には、ハイトーン・シャウトを用いたボーカルも前面に出ることが多いが、ベース・ドラムは脇役に回り、ラウドなサウンドを支える役割を担っている。

このような要素を明確に打ち出したバンドと言えば、Led Zeppelinを例に挙げることができる。

前面に出るのはジミー・ペイジのギターリフにソロ、そしてハイトーンのロバート・プラントのボーカルだ。

ただ轟音ドラムのジョン・ボーナムの存在感も十分、またジョン・ポール・ジョーンズの演奏力の高さもバンド演奏を支えている。

ハードロックもヘヴィメタルも、サウンドや楽器の目立つバランスなどにおいては、およそ似たようなジャンルと言って良いだろう。

ハードロックとヘヴィメタルの違い – アート性と攻撃性

ここまで見た通り、ハードロックをベースにしてヘヴィメタルができたので、サウンド面では比較的似た要素が多いことが分かった。

一方で違いとなるのは、どんな音楽性を持つのかであり、つまり曲の雰囲気が異なっていると筆者は考える。

非常にざっくりと言ってしまえば、ルーツミュージックに根差し、アート性を重視したのがハードロックであり、ハードロックの中の攻撃性を重視したのがヘヴィメタルではないか、と考える。

まずハードロックは、ロックやブルース、サイケデリックロックなど、ハードロック誕生以前からあったジャンルをベースに、より激しく大きな音で鳴らしたジャンルと言って良い。

それゆえ、各々のバンドが持つ音楽的背景によって、どんなジャンルを”ハード”化するかが異なっていた。

先ほど紹介したLed Zeppelinはブルースやブギ、フォークなどを土台にしていることが窺えるが、Deep Purpleなどはブルース色は薄く、クラシック音楽の影響を感じさせる部分がある。

そしてアルバムの中には、ハードな楽曲と共に、もともと持っているルーツ音楽に根差した楽曲が含まれることがあり、ハード・ヘヴィ一辺倒ではないところもハードロックの特徴だ。

一方でヘヴィメタルは、ハードロックの持つハード・ヘヴィな部分を純粋培養し、攻撃性を強めることを目的としたジャンルだと考える。

ハードロックが様々なルーツがある自由度があるのに比べると、ハードロックの様式を基本的に守っているヘヴィメタルの方が、アルバムの中での自由度は小さくなっている印象である。

たとえばLed Zeppelinの名盤『IV』では「Black Dog」「Rock and Roll」などハードな曲もあるが、アルバムにはフォーキーな曲やケルト音楽に影響を受けた楽曲も多くなっている。

一方でヘヴィメタルはLed Zeppelinで言えば「Black Dog」などのハードな部分を取り出し、アルバム全編でそうしたハードな楽曲が続くようなジャンル、と言っても良いかもしれない。

そしてハードロックが持っていたギターリフやソロなどの様式は受け継ぎつつ、それをいかにヘヴィにするか、という方向性の違いで様々なサブジャンルが生まれた。

テンポを速くしたスラッシュメタル、極端に遅くしたドゥームメタル、クラシカルなシンフォニックメタルに、サタニックでローファイなブラックメタル、など様々である。

たとえばBlack Sabbathのようなサタニックでヘヴィな要素と疾走感溢れるビートを融合させたのが、Slayer(スラッシュメタルのバンド)である。

このようにハードロックがルーツ音楽をいかにロック的な解釈をするか、という試みだったのが、へヴィメタルは、出来上がった様式の中でいかにオリジナルな要素を生み出すか、という試みである。

またいずれも歴史的には、パンクロックが持つより生々しい攻撃性と言う要素を、少なからず持つのがヘヴィメタルであり、それ以前のハードロックとは、やはり感触が異なる印象がある。

ややこしいのは、歴史的にヘヴィメタルが生まれた後にも、ハードロックと呼ばれるジャンルが消え去った訳ではない点であろう。

現代においては、厳密にハードロックとヘヴィメタルを切り分けるのは難しい。

筆者の中では基本的にヘヴィメタルと呼ばれるジャンルの中で、ルーツ音楽に根差すバンドをハードロック的なバンド、と捉えることにしている。

たとえばGhostと言うバンドは、ブルースなどの影響はないものの、多様なロックの要素を組み込んだバンドであり、単に攻撃性だけを前面に出していない点から、ハードロック要素が強いと考える。

しかしこれも筆者の主観によるところであり、ヘヴィメタルだと捉える人もいるだろうし、極論してしまえば、どちらでも音楽として楽しめれば良いとも言える。

【入門~中級編】異色のハードロックバンド「GHOST」紹介+全アルバムレビュー

まとめ

今回は永遠の疑問とも言える「ハードロックとヘヴィメタルの違いって何?」に対する筆者なりの答えを書いた。

簡単にまとめれば、ルーツミュージックに根差し、アート性を重視したのがハードロックであり、ハードロックの中の攻撃性を重視したのがヘヴィメタルである、というのが筆者の見解である。

しかしこの見解を、1つずつバンドに当てはめ、「これはハードロックか、ヘヴィメタルか」と語ること自体、ナンセンスなことのように思える。

そもそも歴史的にハードロックからヘヴィメタルに変遷してきたことを思えば、新しい時代になるほど、どちらの要素も持っているのが当然であり、切り分けることは難しい。

またジャンル論が意味を成すのは、時代的な流れの中で、そのバンドがどのジャンルの流れの中で生まれてきたのか、といった場合においてであろう。

たとえば、Iron MaidenがNWOBHMの流れで人気を博し、それはオールドスクールなハードロックとは異なる、ニューウェイヴなヘヴィメタルである、というようにである。

ジャンルを考えることは音楽の”変化”を読み解くのに便利なものであり、個別のバンドがどのジャンルか、という1時点でのレッテル貼りに使っても仕方がないように思う。

筆者としては、ルーツ音楽から生まれたハードロックが様式化し、ヘヴィメタルと言う独自ジャンルになっていく過程そのものが非常に興味深いと感じている。

ハードロック・ヘヴィメタルの違いを語る上でも、こうした変化の歴史として捉えると面白いのではないか、と思う次第である。

今回記事の中で登場したバンドのアルバム

・Black Sabbath – Paranoid(1970)

・Slayer – Reign in Blood(1986)

・Ghost – Impera(2022)

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