いよいよ還暦ツアーを迎えるハードロックバンド人間椅子、その音楽性は70年代の様々なハードロックから影響を受けている。
超有名バンドはもちろんながら、人間椅子は「B級バンド」からも良い意味で影響を受けている。B級とは一般にはあまり良い評価ではないが、ハードロックに関しては褒め言葉だと思っている。
人間椅子の個性をひも解く上では、このB級ハードロック・ヘヴィメタルバンドを語らずにはいられない。
今回は筆者が人間椅子ファンにおすすめしたい、B級ハードロック・ヘヴィメタルのアルバムを5枚紹介することにした。
人間椅子ファンにおすすめのB級ハードロック・ヘヴィメタルのアルバム紹介
人間椅子とB級ハードロックの相性はとても良いと思っている。そして人間椅子のメンバーもB級ハードロックを愛していることが、インタビュー等から窺える。
B級ハードロック・ヘヴィメタルとは何ぞや?ということについて、それを書くだけで1つの記事が書けそうであるくらいだ。
B級ハードロック・ヘヴィメタルとは、ごく簡単に言えば、どこか洗練されていなさ、田舎くささのようなものを持つハードロック・ヘヴィメタルである。
逆にA級と言えるバンドは、歴史的に名盤と呼ばれるアルバムを世に出しているような、誰が聴いてもカッコいいと評価されるようなアルバムである。
たとえば、Deep Purpleの『Machine Head』であり、Iron Maidenの『Powerslave』であり、Metallicaの『Metallica(Black Album)』などがそうであろう。
一方のB級バンド・アルバムは、おそらくそうしたA級を目指そうとしていたはずが、独特な個性ゆえに、誰しもからカッコいいとは評価されにくい部分があるのだ。
筆者が思うに、クオリティ的に著しく劣るものとは思っていない。ただ一般大衆に刺さるゾーンではないところで勝負しているので、やや”外れた”感じになるのである。
しかしそれこそがマニアにとってはカッコいいと感じる部分であり、そうした独自性や屈折した要素を持つのが、B級ハードロック・ヘヴィメタルだと思っている。
人間椅子は日本の中では、最も正当にB級ハードロック・ヘヴィメタルを受け継いでいるバンドであろう。
前置きが長くなったが、今回は5枚のアルバムを厳選して紹介する。人間椅子ファン向けと言うことで、ややサタニックな雰囲気のアルバムが多めとなっている。
よりA級に近い、70年代の作品については以下の記事にまとめている。ハードロックに詳しくない方は、まずこちらをお読みいただくことをおすすめする。
※【入門編】人間椅子ファンがまずは聴くべき70年代ハードロックアルバム6枚
Nazareth – Hair of the Dog(1975)
- 発売日:1975年4月3日
まずはスコットランド出身のハードロックバンド、Nazarethの通算6枚目のアルバムである。邦題は『人食い犬』であり、200万枚を超える大ヒット作である。
1968年に結成し、1971年にデビューしている。Deep Purpleの前座を務めるなど、パープルとの繋がりも強いバンドだったようである。
初期はかなりロックンロール色の強い音楽性であったが、1974年にThe Everly Brothersのカバーである「Love Hurts」がヒットし、バラード曲も歌うようになっていく。
本作はそんな過渡期とも言える作品であるが、どっしりとしたハードロック曲が多く、名作と言われる作品である。
何と言ってもハードロックファンにとっては、表題曲のリフであろう。重厚なメインリフ、ハードロックのヘヴィさと、ブルースのヘヴィさが見事に融合した名曲である。
もう1曲を取り上げるのであれば、やはり代表曲「Love Hurts」ということになるのであろう。
それ以外にもヘヴィな前半からアップテンポに展開する「Changin’ Times」や、初期から続くブギ調の「Beggars Day」など、ハードな楽曲が粒ぞろいの印象である。
人間椅子との関連という意味では、かつてよく行われていたベース鈴木研一氏の「ハードロック喫茶ナザレス」の名前となったバンドである。
本作こそA級に近い迫力ながら、どことなく漂うB級感がたまらないバンドである。1973年の『Razamanaz』や1974年の『Rampant』辺りにその真骨頂があるかもしれない。
Quartz – Stand Up and Fight(1980)
- 発売日:1980年 リリース日不明
イギリス出身のNWOBHM期のバンドであり、通算2枚目のアルバムである。
1977年にデビュー、1stアルバムはBlack SabbathのTony Iommiがプロデュースしたことで知られている。Black Sabbathのサポートを務めていたこともある。
メイン活動期には3枚のアルバムしか残しておらず、音楽性もNWOBHMと言えばそうだが、いまひとつ定まりきらなかった辺りがB級バンドらしさを感じる。
ただ2ndアルバムの本作が、個人的には最も作風が固まっていて、良いアルバムだと感じている。それはBlack Sabbathのようなヘヴィなリフをメインに据えた楽曲である。
表題曲の「Stand Up and Fight」に象徴されるヘヴィなリフは、Black Sabbathの影響を感じさせつつ、よりメロディアスな路線で1つの様式となっている。
動画にある「Charlie Snow」などは、よりNWOBHMらしいタイプの楽曲である。
他にも「Rock’n’roll Child」「Wildfire」など、どっしりと重低音を響かせるハードロックが聴ける良作だと思っている。
また本作には収録されていないが、シングルとなった「Satan’s Serenade」(上記の動画内で演奏)も、Black Sabbathに影響を受けた、ややサタニックな作風のハードロックでとても良い。
Satan – Court in the Act(1983)
- 発売日:1983年8月2日
1979年に結成されたイギリスのバンドであり、こちらもNWOBHM期のバンドと言われている。バンド名がいかにも悪魔崇拝的だが、音楽性はそこまでおどろおどろしいものではない。
どちらかと言えば、スピード感のあるヘヴィメタルであるが、Satanとしてリリースしたのはデビューしてから2枚のみである。
メンバーチェンジとともに、Blind Fury、Pariahと言うバンド名で活動しており、スラッシュメタルに転向したりと、安定しないところもB級らしい。
一度解散しているが、2011年にSatanとして再結成し、現在に至っている。
本作は彼らの記念すべき1stアルバムで、ボーカルには後にBlitzkriegでボーカルとなるBrian Rossが参加していることでも知られている。
妙にクセになる、これぞB級メタルという素晴らしいアルバムである。まず音がこもってチープな音であるところがたまらない。
それで疾走するのでチープ感が増すのだが、「Trial by Fire」のポンコツメタル感が素晴らしい。普通に疾走しているはずなのに、どこか魔界の音楽と言う感じがするから不思議だ。
しかし楽曲のクオリティは結構高く、「No Turning Back」など良いリフが次々と登場する楽曲である。
楽曲は良いが、どこか突き抜けきれない要素がある、というのがB級メタルのお手本のような作品である。
なお延期になっているが、Satanは2027年の1月に来日して、本作の完全再現ライブを行うことが決定している。
【振替日程のお知らせ】
— CHROSH Bookings【公式】 (@chrosh_bookings) February 27, 2026
SATAN来日公演の振替日程が確定いたしました!
Brianの術後経過を確認後、7月頃からチケット再発売を予定しております。
◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2027年
1月22日(金)
東京 高円寺HIGH
OPEN 18:30 / START 19:30
1月23日(土)
東京 高円寺HIGH
OPEN 16:00… pic.twitter.com/btwlu88bVC
Mercyful Fate – Melissa(1983)
- 発売日:1983年10月30日
デンマーク出身のヘヴィメタルバンド、1983年のデビューアルバムである。ボーカルKing Diamondの悪魔メイクや、独特のハイトーンボーカルで知られるバンドだ。
NWOBHMの疾走感を受け継ぎつつも、Black Sabbathなどの影響も感じさせるおどろおどろしさ、プログレも思わせる唐突な展開など、B級の帝王のようなバンドであると思っている。
構築された2nd『Don’t Break The Oath』に比べると、NWOBHMの荒々しさが強調されたのが本作である。
やはり1曲目の「Evil」にはMercyful Fateらしさが詰まっている。冒頭から展開しまくり、歌の始まりでいきなり転調するなど、めまぐるしい。
中間部からアウトロまで、ひたすら展開しまくって、不思議な終わり方をするところが、B級そのものである。
どれもこれも取り上げたい曲ばかりだが、「Into the Coven」も一定のリズムを刻みつつも、転調を繰り返し、独特の不気味さを作り上げていくところが素晴らしい。
バンドとしてはあまりに売れない方向性だったからか、2枚のリリースで一度解散し、90年代に一度復活、また解散して2019年から活動を続けている。
なおKing Diamondのソロプロジェクトは、かなりこのバンドの音楽性を引き継いだものとなっている。
人間椅子との関連で言えば、ベースの鈴木研一氏の曲中の甲高い笑い声は、King Diamondそのものであり、影響を公言している。
Lucifer – Lucifer III(2020)
- 発売日:2020年3月13日
時代はかなり現代に近づき、2014年に結成されたドイツ出身のハードロックバンドである。The Oathにいたボーカル、ヨハナ・サドニスが中心的なメンバーである。
いかにもサタニックなバンド名であるが、音楽性も1970年代のBlack SabbathやBlue Öyster Cult、Heartなどに影響を受けた、おどろおどろしさを持つハードロックである。
2015年のデビュー盤『Lucifer I』はドゥームメタル風であったが、『Lucifer II』からはハードロック色が強まり、何とも言えないB級ハードロック臭がし始めている。
筆者がとりわけ好きなのが、通算3枚目の本作である。ポップな要素と、おどろおどろしさとが絶妙なバランスで配置されたアルバムとなっている。
2曲目の「Midnight Phantom」などはややBudgie臭のするメインリフに、哀愁あるメロディラインの融合がとても良い。
「Ghosts」などはよりポップなメロディが前面に出た、1960年代も感じさせるいなたいロックで良い。
メンバーが安定しないところや、楽曲のクオリティも若干不安定なところがいかにもB級バンドと言う感じはある。
ただ2020年代の現代において、70年代ハードロックの中でも、サタニックな雰囲気を漂わせるサウンドを継承しているバンドは貴重である。
まとめ
今回の記事では、人間椅子ファンにおすすめしたいB級ハードロック・ヘヴィメタルのアルバムを5枚紹介した。
B級のバンドは、決して著しくクオリティが低いという意味ではなく、どこか垢ぬけなさや強い個性があるために、A級バンドほど一般受けしないのである。
セールス的には伸び悩んだり、バンドが短命であったりと、あまり長続きするバンドがないのも特徴であったりする。
しかしNazarethのように息の長いバンドもあり、必ずしも短命バンドという訳ではない。
人間椅子も同様であり、デビュー前から日本文学とブリティッシュハードロックの融合という、およそ一般受けしないB級ハードロック路線を決めて活動していたバンドである。
しかし低迷してもバンドを解散することなく、むしろ20周年を過ぎてからブレイクした珍しいバンドである。
個人的には人間椅子をきっかけに、B級ハードロックの世界に足を踏み入れて欲しいと願うところだ。
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