毎月よく聴いたアルバムの中から、おすすめの5枚を選んで記事にしている。
今月は気になるアルバムが何枚か、そして最近聴いていなかったアルバムを引っ張り出して聴いたものが何枚かである。新しい作品から、過去の名盤まで紹介していきたい。
きのこ帝国 – タイム・ラプス(2018)
きのこ帝国は2007年結成された4人組のロックバンドである。2019年にベーシストの脱退に伴い、無期限の活動休止に入っている。
2015年にメジャーデビューしており、メジャーではアルバム3枚リリースしている。音楽的にはオルタナティブロックを軸に、作品によってシューゲイザー寄り、ドリームポップ寄り、といった印象だ。
筆者がよく聴いていたのは2016年の『愛のゆくえ』だった。この作品は激しいサウンドを極力抑え、チルアウト的な心地よいサウンドを追求したようなアルバムだった。
とても心地よいサウンドとメロディが印象的なアルバムであった。この次にリリースされる作品はどんなものか、気になっていた。
今回紹介するのは、実質最後のアルバムとなった『タイム・ラプス』である。結論から言ってしまえば、とても良い内容のアルバムである。
これまでの音楽性の総決算的な内容とも言える。激しいバンドサウンドから、チルアウト的な静かな楽曲まで幅広く、それでいてアルバムとしてよくまとまっている。
MVが公開されている楽曲としては、「金木犀の夜」がある。シンプルながら浮遊感のあるサウンド、そしてサビのメロディが耳に残りやすい。
「夢みる頃を過ぎても」では、より壮大なアレンジに作られている。MVが醸し出すイメージとも相まって、深夜から夜明け前のやりきれないような感覚に襲われる。
筆者としてはこれらのミドルテンポな曲だけでなく、アップテンポな「Thanatos」や「中央線」なども気に入っている。
きのこ帝国は、憂鬱な気分の中にあるからこその快感があるように思われる。行き場のないような息苦しさや悲しみのようなものを、見事に表現していると思う。
本作は実質の最終作となったが、そんなきのこ帝国の魅力をあらゆる面から発揮した作品となった。
Balmorhea – Clear Language(2017)
本作はBalmorheaの2017年のアルバムである。Balmorheaはポストロックやポストクラシカル、アンビエントのジャンルに属する音楽グループだ。
2006年にRob LoweとMichael Mullerで結成された。これまで様々なアプローチでアルバムを制作してきたが、ギターとピアノを中心としたミニマルなサウンドが特徴的である。
こういった歴史は全く知らず、たまたま手に取ってみて聴いたものである。ミニマルなサウンドのアンビエント、という時点で筆者の好きなアルバムであることはすぐに予想できた。
1曲目はタイトル曲「Clear Language」である。爽やかな朝を告げるような、穏やかなピアノが印象的だ。
4曲目に収録された「Slow Stone」はアンビエントの色合いが強い楽曲。静寂なサウンドの中で、優しげなギターがとても心地よい。
一通り聴くと、予想通り非常に心地よい良盤である。アンビエントのアルバムだと、爆音になることがあるが、この作品ではそう言った轟音は一切ない。
最初から最後まで、一貫して静かで穏やかなサウンドが続いていく。筆者としては音が大きくなる部分がない方が、BGM的に聴くのに良いと思っている。
そう言った意味では、ゆったりと聴くことができる良盤である。
ブレッド&バター – レイト・レイト・サマー(1979)
ブレッド&バターは1969年に結成された、兄弟のフォークデュオである。
こちらもたまたま手に取ってみたのだが、後日「LIVE Light Mellow Vol.3」というイベントで、大橋純子氏、南佳孝氏とのライブを見ることができた。
それ以来、頻度高く聴いているアルバムである。1975年のアルバム発売の後に、作品発表のない時期があったようだ。
その後に復帰した作品が、1979年の『Late Late Summer』である。”フォークデュオ”と最初に書いたが、この作品では”シティポップ”的なアプローチも行われている。
たとえば「Summer Blue」は、いかにもシティポップ的な楽曲である。必ずしもこういったタイプの楽曲ばかりではないが、ブレッド&バターの1つの持ち味と言えよう。
その先駆けとなったのは1975年『Barbecue』に収録の「ピンクシャドウ」である。山下達郎氏がカバーしたことで有名であるが、爽やかなサウンドと踊りだすようなリズムが魅力だ。
本作では代表曲となった「あの頃のまま」が1曲目に収録されている。この曲はシティポップのアプローチとは異なるが、松任谷由実氏が作詞・作曲を行ったことで有名である。
いかにもユーミン節の哀愁を感じさせるメロディラインだ。この曲が入ることで、一気に日本的な情緒が入ってくるような感覚がある。
「湘南サウンド」と言われたブレッド&バターであるが、アルバムの中では様々なタイプの楽曲が収録されていることが分かる。フォークあり、シティポップあり、歌謡曲あり、といった印象だ。
その中で兄弟であるがゆえの、絶妙なコーラスがやはり魅力であろう。このコーラスワークが、洗練された楽曲の中で、効果的に用いられていると感じている。
レキシ – レシキ(2014)
この作品は、最近久しぶりに引っ張り出して聴いていた作品である。レキシは池田貴史によるソロユニットである。
レキシは結成は思いのほか古く、1997年に池田氏が在籍していたバンドのSUPER BUTTER DOGメンバーと結成されている。
アルバムとしては6枚リリースされているが、2011年の2nd『レキツ』が印象的だった。中でも「きらきら武士」は歴史とディスコが見事に融合した衝撃的な楽曲だった。
レキシの魅力は、この”キャッチー”を極めた楽曲であろう。キャッチー過ぎて、耳に残って仕方ない、ともいえるが、それこそが彼のメロディセンスである。
そんなメロディセンスとともに、アルバムとしての完成度が高いのが、2014年の4th『レシキ』である。毎回「レキシ」をもじったタイトルだが、ついに文字を入れ替えたタイトルとなった。
レキシは客演が多いのが特徴であるが、「年貢 for you feat. 旗本ひろし、足軽先生」では、秦基博・いとうせいこうが参加している。
年貢がタイトルに入っているが、祝言に関する楽曲だそうだ。そしてラップを取り入れた明るい曲調であり、やはりサビのメロディが耳に残る。
これ以外にもポップな「キャッチミー岡っ引きさん feat. もち政宗」「ドゥ・ザ・キャッスル feat. 北のパイセン問屋」などは、耳に残りやすい。
アルバムとしてバリエーション豊かで、マイナーキーの「僕の印籠知りませんか?」や、ソウルのバラード「アケチノキモチ feat. 阿部sorry大臣ちゃん」などもクオリティが高い。
とにかく『レシキ』はアルバム内の楽曲のバランスが良く、良いメロディがたくさん詰まっている。楽しくなるような陽気な曲が多く、時々聴き返したくなるアルバムだ。
Slint – Spiderland(1991)
最後に紹介するのは、キャッチーとは程遠いポストロック的なアルバムだ。Slintは1986年にアメリカで結成されたバンドで、アルバム2枚だけを残して1992年に解散後、たびたび再結成している。
音源として聴いたのは今回紹介する1991年の2nd『Spiderland』のみだが、とんでもない名盤である。
どこで知ったのか覚えがないが、Mogwaiなどポストロックの作品をいくつか聴いている中でたどり着いたような気がする。
後のポストロックのバンドに大きな影響を与えたというだけあり、淡々と刻まれるリズムと簡素なリフの繰り返しから、唐突に轟音になるような楽曲が多い。
再結成時のライブ映像では、アルバム最後に収録されている「Good Morning, Captain」が披露されている。曲全体に漂う不穏な空気感がたまらない。
筆者が好きな曲は3曲目の「Don, Aman」である。ドラムがなく、ギターの和音だけが不気味に響くアレンジがかっこいい。
荒々しい演奏に聞こえても、緻密に構成された楽曲が魅力であろう。パンクの中でもポストパンクから派生していったジャンルは、簡素なアレンジながら緻密な構成になっているものが多い。
Slintの作品は、ハードコアの轟音とポストパンク的なアレンジンのシンプルさが融合している。そこにアンビエント的な要素も加わり、オリジナリティが生まれている。
決して聴きやすいサウンドではないはずなのだが、不思議と聴きたくなる心地よさがある。緻密に作られたサウンドだからこそ、クセになる名盤なのだと感じている。
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