人間椅子は、TVアニメ「無限の住人-IMMORTAL-」の第2クール主題歌として、書きおろしの新曲「無限の住人 武闘編」が起用されることが2020年7月1日に告知された。
告知のタイミングは、その主題歌が初めて流れた深夜帯だった。
同時に、7/8には「無限の住人 武闘編」の配信、8/19には1996年に発売されたイメージアルバム「無限の住人」の再販が発表された。
そして7/8から「無限の住人 武闘編」の配信が開始され、フルサイズで聴くことができるようになった。
筆者は曲を聴いているうちに、この楽曲が人間椅子において特殊な位置づけにあることに気づいた。
つまり、過去に作った『無限の住人』というアルバムの世界観を受け継ぎ、アップデートするという面白い試みの曲なのである。
この記事は、そんな「無限の住人 武闘編」のユニークな位置づけについて考察するものである。
人間椅子「無限の住人 武闘編」のダウンロードはこちら
https://lnk.to/mugen-immortalOP
イメージアルバム『無限の住人』のユニークさ
まずは「無限の住人 武闘編」を作るきっかけとなった、1996年のアルバム『無限の住人』について、押さえておこう。
そもそも、この『無限の住人』と言うアルバムも、人間椅子の歴史においてはユニークな作品である。どのような点でユニークなのか。
人間椅子は文学作品からタイトルを借りる
最初に、人間椅子の多くの作品の特徴から述べよう。
人間椅子の楽曲には、小説からタイトルを拝借しているものが多い。「陰獣」「怪人二十面相」「痴人の愛」…挙げればキリがないほどある。
楽曲のタイトルは小説のタイトルであっても、小説の内容をなぞるものではない。小説の世界観を大切にしながらも、歌詞は独自の物語が歌われる。
内容をなぞらないことに関して、和嶋氏は「なぞると小説の解説になってしまう」と述べていた。小説のタイトルを借りて”歌詞”に仕上げるには、独自の内容を作り出す必要があるのだ。
アルバム『無限の住人』の位置づけ
1996年の6thアルバム『無限の住人』は、少し他の人間椅子の作品と異なる作り方がされている。
それは、アルバム全体が1つの漫画作品のイメージアルバムである、ということである。まず”イメージアルバム”という、オーダーの下で作られた作品はこの1作のみである。
そしてここまで明確に、1つの作品を題材にしたアルバムは他にない。9th『怪人二十面相』はそれに近いものの、『無限の住人』ほどの強い縛りはなかった。
ただし、作品のタイトルを拝借し、独自な内容を歌う点では他の作品と変わらない。収録されているいずれの楽曲も、漫画「無限の住人」のストーリーを追うものではないのだ。
もう1点重要な違いとして、完結していない作品からタイトルを借りている点もある。
人間椅子が扱ってきた作品の多くは、作者が既に亡くなっており、明治~昭和時代の小説作品からタイトルを借りている。
「無限の住人」は1993年から連載が始まっており、アルバム発売時の1996年は連載中であった。
(2012年に連載が終了している)
アルバムを制作する上で、現在進行形の作品をテーマとすることは、人間椅子のメンバーも新たな試みであったと想像される。
「無限の住人 武闘編」のさらにユニークな点とは?
アルバム『無限の住人』がユニークな作品であることを述べた。
そして「無限の住人 武闘編」は1996年から24年後の2020年に、続編として作られた楽曲である。それ自体が、まずユニークな点である。
ブルボン小林氏は以下のようにツイートしている。
人間椅子は『無限の住人』の原作者の希望で96年に公式イメージアルバムを作ったのに、後のアニメ化でも実写映画化でも「お呼びがかからず」、今回ついに主題歌を新曲で歌った。つまり、ファンの溜飲の下がりは24年分。万感。
— ブルボン小林 (@bonkoba) July 8, 2020
人間椅子にとっては、”返り咲き”的な感動がこの曲にはあった。ただし、これ以外にもユニークな点があると思っている。
拝借してくる世界観が2つある
1点には、拝借してくる世界観が2つあることである。
2つのうち、1つ目は「無限の住人」の漫画である。この曲も、もちろん「無限の住人」の世界観を描いた作品であることには変わりはない。
そして2つ目は、1996年のアルバム『無限の住人』である。
既に人間椅子が当時作り上げたアルバム『無限の住人』の世界観があるのだ。この世界観は、人間椅子が作り上げたものであり、漫画の世界観とは違うものである。
だから「無限の住人 武闘編」を聴くと、アルバム『無限の住人』を聴いた時の感覚が甦ってくる。
まるで昔の友人に久しぶりに会ったような不思議な感動がそこにはある。
漫画作品・人間椅子の歴史ともに進んでいる
そしてもう1点には、漫画作品・人間椅子の歴史ともに進んでいるということだ。
漫画『無限の住人』の世界観も進んでいるし、人間椅子もこの24年間活動を続けてきた。
既に完結した作品であれば、続編が作られること自体が考えにくい。(たとえば「陰獣 ◯◯編」などという曲が今後作られるとは思えない)
しかし「無限の住人」はこうして「無限の住人-IMMORTAL-」というアニメ作品として、現在も続いている。
物語自体が進行している中で、楽曲として作られる際にも、その進行した分のイメージが反映されているはずだ。
そして、人間椅子と言うバンドもまた進化している。アルバム『無限の住人』発売当時とは、作品の作り方や演奏には当然変化が見られる。
自分たちが作った世界観の中で、もう一度作品を作ると言うことも人間椅子としては新しい。
かつての自分たちの世界観で作るからこそ、人間椅子の進化をはっきりと感じ取ることができる作品でもあると言えるのだ。
例えて言うならば、懐かしい友人に会ったような感覚もありつつ、自分もすっかり大人になったことを自覚するといったところか。
以上のように、「無限の住人」の世界観を再構築した点でも面白いが、同じ「無限の住人」をテーマにするからこそ、人間椅子の進化が見えてくるところに、人間椅子ファンとして感動的なポイントがある。
まとめ
「無限の住人 武闘編」の位置づけについて述べてきた。過去の人間椅子を思い出し、今の人間椅子も楽しめる、”過去の人間椅子と新たに出会う”作品とでも言えるのではなかろうか。
人間椅子が再び「無限の住人」の作品に関わることができ、人間椅子の確かな道のりとして刻まれたことは嬉しいことだった。
この記事が、少しでもこの曲をより楽しめる内容になっていればと思う。
そして、次はライブで「無限の住人 武闘編」が演奏され、大いに盛り上がる日が来ることを切に願う。
※「無限の住人 武闘編」も披露された、2021年9月27日『苦楽 ~リリース記念ワンマンツアー~』東京 Zepp DiverCity(TOKYO)のライブレポート
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