日本のハードロックバンド人間椅子は、メンバーが今年全員還暦を迎え、秋には還暦記念ツアーの第2弾が企画されている。
これまで数々のライブツアーを行ってきた人間椅子、今回はそんなツアータイトルに注目する。近年はオリジナルのツアータイトルが多いが、特定の楽曲名が用いられたこともあった。
アルバムタイトル曲が存在すれば、それがツアータイトルになるのは当然のこと。一方で全く意外な楽曲がツアータイトルになったこともあった。
今回はそんなツアータイトルになった楽曲を集めてみよう、と言う記事である。
人間椅子のツアータイトルになった曲集
今回注目するのは、歴代のツアータイトルになった楽曲である。最初に思いつくのは、アルバムタイトル曲であり、アルバムリリースツアーのタイトルになるのはごく自然なことだ。
しかしかつての人間椅子は特定の楽曲名をツアータイトルに冠することがあった。昔はシングルリリースがあったこともあり、1曲単位で取り上げることもあったようである。
またツアータイトルになったものが、後で楽曲のタイトルになった、という珍しいパターンもある。
ツアータイトルになった楽曲について、分かるものはその経緯、そしてその楽曲の現在のライブでの演奏頻度やどれくらい定番として生き残っているか、などを付記することにした。
※過去のツアー情報については、こちら(青森ロック大臣 練馬調査室)を参考にした。
遺言状放送
- 収録アルバム:『桜の森の満開の下』(1991)
- ツアータイトル:ライヴハウスツアー【遺言状放送】
- ツアー時期:1991年8~9月
2ndアルバム『桜の森の満開の下』に収録、人間椅子の楽曲の中では”宇宙シリーズ”の先駆けのような内容の楽曲である。
『桜の森の満開の下』の先行シングルとしては『夜叉ヶ池』がリリースされていたが、シングルには長尺の攻めた選曲だった。実質的なアルバムの推し曲の1つが「遺言状放送」だったのだろう。
1991年4月21日に行われた渋谷公会堂公演の一部とMVが収録されたビデオ『遺言状放送』が同年8月21日にリリースされていた。
このビデオ発売を記念したリリースツアーのタイトルに「遺言状放送」が用いられた。また1992年にはラジオ番組のタイトルにも「遺言状放送」が使われている。
さらには現在の人間椅子倶楽部(公式ファンクラブ)のWeb音声コンテンツにもこの曲のタイトルが用いられている。
肝心の楽曲はライブでの演奏頻度は高くはないが、現在も時折セットリストに組み込まれる。準定番までは行かない、レア曲との間くらいの立ち位置である。
幸福のねじ
- 収録アルバム:『黄金の夜明け』(1992)
- ツアータイトル:「幸福のねじツアー」
- ツアー時期:1991年12月~1992年1月
3rdアルバム『黄金の夜明け』の先行シングルとして1991年10月23日に発売されたのが「幸福のねじ」である。
本作リリースを記念したツアーのタイトルに用いられている。なおこの時期には徐々に動員数が減ってきたと思われ、ホールからライブハウスツアーが主体になっていたようだ。
長きにわたってライブの定番であり続けた曲である。1曲目に配置されることもあれば、多くはライブ終盤・アンコールなどで怒涛の盛り上がりを見せる曲だった。
近年はサビのキーが高過ぎることもあって演奏頻度は落ちた。が、時折ライブでは今も披露されている。
黄金の夜明け
- 収録アルバム:『黄金の夜明け』(1992)
- ツアータイトル:ツアー【黄金の夜明け】
- ツアー時期:1992年6月~8月
名盤と言われる3rdアルバム『黄金の夜明け』のタイトルトラック、1曲目にアルバムタイトル曲が配置されるのは本作が初となった。
1曲目にして壮大でプログレ風味の楽曲、長尺の楽曲が多い大作主義と言われる3rdアルバムを象徴する楽曲の1つである。
アルバムタイトルゆえに、当然リリースツアーのタイトルになっている。近年も高頻度とまでは言えないが、比較的演奏頻度は高い方の楽曲である。
羅生門
- 収録アルバム:『羅生門』(1993)
- ツアータイトル:ツアー【羅生門】
- ツアー時期:1993年11月~12月
3rdに続いて4thアルバムも、タイトル曲が存在するアルバムに。こちらはアルバムラストに配置されているのが「羅生門」である。
海外文学作品の雰囲気が漂う前作に対して、原点回帰とも言える日本の純文学からタイトルを借りた作品となっている。
ただアルバム全体にはそこまで日本文学の香りはせず、前作のように海外文学の雰囲気も漂っている。「羅生門」もオリエンタルな印象を持った楽曲となっている。
『黄金の夜明け』に続いてツアータイトルに、ベストアルバムへの収録頻度も高く、ライブでも演奏頻度はそれなりに高い地位を守っている。
踊る一寸法師
- 収録アルバム:『踊る一寸法師』(1995)
- ツアータイトル:ツアー【踊る一寸法師】、2022年春「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」
- ツアー時期:1995年11月~96年1月、2022年4月
インディーズからリリースとなった5thアルバム『踊る一寸法師』のタイトル曲「踊る一寸法師」は、アルバムの最後に配置されている。
江戸川乱歩の小説タイトルを借り、こちらも原点回帰ながら、音楽性はメジャー時代よりバラエティ豊かになっている。
ツアータイトルとしてはリリース時の1995年に加え、2022年に徳間からUHQCDリマスター盤として再発された記念のツアータイトルにもなっている。
現時点では再発を記念してリリースツアーが行われたのは本作が唯一である。
タイトル曲はベース鈴木研一氏の迫真のパフォーマンスとともにライブでは人気、近年は準定番クラスの演奏頻度にまでなっている。
無限の住人
- 収録アルバム:『無限の住人』(1996)
- ツアータイトル:ツアー【無限の住人】
- ツアー時期:1996年9月~12月
沙村広明氏の漫画『無限の住人』のイメージアルバムとして制作された異色作、そのタイトルトラックが「無限の住人」である。
後半にハードな展開を置きつつも、哀愁のあるメロディで歌が前面に出た楽曲である。そのためライブでの演奏頻度はあまり高くない、レア曲の立ち位置である。
アルバムタイトル曲がツアータイトルとなる流れは、『黄金の夜明け』以降続いていたが、本作でいったんストップとなっている。
菊人形の呪い(怨念大納言)
- 収録アルバム:『頽廃芸術展』(1998)
- ツアータイトル:ツアー【怨念大納言】
- ツアー時期:1998年10月
本来は楽曲名ではないのだが、印象的なツアータイトルなので取り上げることにした。それが7th『頽廃芸術展』に収録の「菊人形の呪い」に登場する歌詞「怨念大納言」である。
この印象的なフレーズをツアータイトルにして、1998年10月に東名阪3か所のミニツアーを行っている。
なお1998年は3月~5月にアルバムリリースツアー、7月に奇数月ライブ七月 サマーツアー’98で東名阪、そしてツアー怨念大納言の3本ツアーをやっており、かなり精力的だった。
『頽廃芸術展』はベスト盤に選曲されることが少ないが、その中でも「菊人形の呪い」はライブでの頻度は比較的高めである。
怪人二十面相
- 収録アルバム:『怪人二十面相』(2000)
- ツアータイトル:ツアー【人間椅子ツアー2000『怪人二十面相』】
- ツアー時期:2000年7月
『頽廃芸術展』『二十世紀葬送曲』の2枚を挟んで、再びアルバムタイトル曲が存在するアルバム『怪人二十面相』が2000年にリリースされている。
江戸川乱歩の小説をタイトルにしたところからも、原点回帰の楽曲と言える。MVも制作され、コンセプト作となった本作を象徴する楽曲となっている。
これまでの楽曲を見ても、アルバムタイトル曲は意外と後々まで定番として定着することは多くはない。「怪人二十面相」もレア曲とまでは言わないが、準定番くらいの立ち位置である。
見知らぬ世界
- 収録アルバム:『見知らぬ世界』(2001)
- ツアータイトル:ツアー【人間椅子ツアー2001 『見知らぬ世界』】、ツアー【ビデオ『見知らぬ世界』発売記念ツアー】
- ツアー時期:2001年9月~10月+11月、2002年1月
前作『怪人二十面相』に続いて、10th『見知らぬ世界』もアルバムタイトル曲が存在するアルバムとなった。本作を最後に、何と2025年の『まほろば』までタイトル曲は存在しない。
「見知らぬ世界」はアルバムリリース時のツアーと、スパン短くリリースされたMV+ライブ映像のVHS『見知らぬ世界』発売記念ツアーのタイトルに起用された。
富士の樹海で撮影された渾身のMVとともに重厚で前向きな楽曲は当時かなり印象的だった。アルバム・VHSとタイトルに使われたのも頷けるものである。
なおライブでは準定番くらいの立ち位置で、時折セットリストに盛り込まれている。
終わらない演奏会
- 収録アルバム:『修羅囃子』(2003)
- ツアータイトル:ツアー【終わらない演奏会】
- ツアー時期:2003年5月
オリジナルタイトルがついた11th『修羅囃子』のリリースツアーが2003年2月に行われ、間髪入れずに5月に行われたのがツアー『終わらない演奏会』であった。
『修羅囃子』に収録された楽曲「終わらない演奏会」から取ったもの。楽曲の内容は鈴木氏が見た夢の内容で、なぜか終わってくれない演奏会というホラーであった。
しかしツアータイトルにすると、俺たちのツアーはいつまでも終わらない、と言う前向きな内容に見えてくる。
楽曲名をツアータイトルにして、少しメッセージ性を込めたのはこれが初めてだったのではないか。
狂ひ咲き
- 収録アルバム:『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
- ツアータイトル:「狂ひ咲き~二十周年記念ベスト盤発売ツアー~」
- ツアー時期:2009年3月
しばらくアルバムタイトル曲の存在するアルバムはなかったが、2009年のベストアルバムリリース記念ツアーで久しぶりに登場する。
アルバムタイトルには含まれていないが、ベストアルバムに収録された新曲「狂ひ咲き」をツアータイトルに冠したのだった。
ギターの和嶋慎治氏いわく「人間椅子らしいものを目指した」と、これまでの人間椅子のエッセンスをセルフオマージュした楽曲になっている。
これも人間椅子が20周年を迎えてなお狂い咲きする、というメッセージ性を感じさせるものになった。
春の匂いは涅槃の薫り
- 収録アルバム:『此岸礼讃』(2011)
- ツアータイトル:ワンマンツアー『春のにほひは涅槃のかをり』
- ツアー時期:2010年4月
2011年の16thアルバム『此岸礼讃』に収録された大作である。ややイレギュラーで、楽曲として世に出る前に、ツアータイトルとして先行して登場したものである。
なおツアータイトルとしては『春のにほひは涅槃のかをり』で、「にほひ」「かをり」と旧字のひらがなであり、曲名は漢字になった。
ツアータイトルが楽曲名になった事例としてはこの曲が初めてである。なお楽曲の演奏頻度としては、渋めの大作であるためかレア曲入りしている。
此岸御詠歌
- 収録アルバム:『萬燈籠』(2013)
- ツアータイトル:「此岸御詠歌」ツアー
- ツアー時期:2012年7月・9月
今や人間椅子のライブの入場曲として定着した「此岸御詠歌」、17th『萬燈籠』収録曲される以前からオープニング曲だったことは、もう知らない人もいるかもしれない。
「此岸御詠歌」が入場曲として突如登場したのは前作『此岸礼讃』のリリースツアー時だったと記憶している。いきなり未発表曲がSEで流れて衝撃的だった。
この入場SEがあまりにも好評だったからか、新録して『萬燈籠』に収録されることとなった。実は『此岸礼讃』のリリースツアー時には、デモ版の別音源だったのはさらにマニア情報である。
そして2012年の「此岸御詠歌」ツアーではツアータイトルにもなっている。それだけインパクトが強かったことが窺える。
屋根裏の散歩者
- 収録アルバム:『新青年』(2019)
- ツアータイトル:屋根裏の散歩者 ~「現世は夢」ライブDVD発売記念ツアー~
- ツアー時期:2015年7月〜8月
江戸川乱歩の小説からタイトルを借りた楽曲、21stアルバムに収録された。実はその4年も前に、ツアータイトルとして登場している。
2015年にライブ映像作品『苦しみも喜びも夢なればこそ「現世は夢~バンド生活二十五年~」渋谷公会堂公演』のリリースを記念したツアータイトルになっていた。
楽曲としてタイトルになる4年も前に先に登場したケースはこれだけである。文学作品のタイトルなので、構想として温めていた楽曲だったのかもしれない。
近年の前向きな楽曲が多くなった人間椅子の中では、ダークな雰囲気が漂う楽曲。演奏が難しいためか、リリースツアーで演奏されて以来、レア曲入りしている。
まほろば
- 収録アルバム:『まほろば』(2025)
- ツアータイトル:2025年冬のワンマンツアー 『まほろば』ツアー
- ツアー時期:2025年11月〜12月
楽曲のタイトルがアルバムタイトルになるのは、2001年の『見知らぬ世界』以来、そして1曲目にタイトル曲が配置されるのは2000年『怪人二十面相』以来のことである。
「まほろば」はアルバムタイトル曲であるために、久しぶりにリリースツアータイトルに付けられることとなった。
演奏機会はまだ少ないが、リリースツアーとその次の『猟奇新生』でも連続してライブの1曲目に配置された。かなり重要度の高い楽曲であることが窺える。
まとめ
今回はツアータイトル名になった人間椅子の楽曲を取り上げた。アルバムタイトル曲から、意外な楽曲、そしてツアータイトルとして先に登場したものも存在する。
人間椅子のツアータイトルは、割と一貫してそのまま楽曲のタイトルやアルバムタイトルにも使えそうなものが多く採用されてきた。
そのため楽曲名をツアータイトルにしても何ら違和感はないものである。
個人的には特定の楽曲がツアータイトルになると、その楽曲の世界観から、どんなセットリストになるのか、妄想が広がって楽しかったりする。
アルバムタイトル曲以外に特定の楽曲がツアータイトルになることはめったにない。だが時に、特定の楽曲名をタイトルにしても面白いのではないか。
今後開催されるツアータイトルも楽しみである。
※【人間椅子】ライブのセットリスト傾向の変遷について – 定番曲やレア曲のバランスはどう変わったか?



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