【ライブレポート】2024年4月24日(水)人間椅子 2024年春のワンマンツアー『バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~』東京 EX THEATER ROPPONGI

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ライブレポート

”バンド生活三十五周年”と銘打って2024年も活動を続けている人間椅子が、35周年を記念したワンマンツアー『バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~』を行った。

4月24日(水)には満員御礼の東京EX THEATER ROPPONGIにてツアーファイナルを行い、大盛況のうちにツアーが終了した。

最終日ならではの演出もありつつ、いつも通りの人間椅子と35年間の歴史を感じさせる内容のライブだった。

当日の曲目やMCなどを振り返り、最後に全体の感想として筆者の感じた、人間椅子3人それぞれの担ってきた役割について書いている。

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ライブレポート:人間椅子 2024年春のワンマンツアー『バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~』東京 EX THEATER ROPPONGI

全国7公演で行われた『バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~』であるが、情報としてあったのはタイトルくらいで、どんな内容になるのか事前情報は皆無と言って良い状況だった。

当ブログでは、そうしたSNSや動画での発信がほぼなき”静か過ぎる”三十五周年の幕開けと書いていたが、その一方でファンの熱量はかなり高かったようである。

各地のチケットの売れ行きは絶好調だったようで、東京と大阪はソールドアウト、それ以外の地域でも満員御礼に近い状態だったようだ。

また知り合いの方の情報では、東京のチケットは先行販売で落選し、一般販売も即完売で買えなかった状況だったそうである。

とにかく人間椅子のライブを体感したい、という熱烈なファンが終結したEX THEATER ROPPONGIだった。

さて4月24日(水)、予報の段階から1日を通じて雨マークがつく、人間椅子のライブらしい天候となった。ライブが近づく時間帯には霧雨が降り続く状況となっていた。

18時30分頃に会場に到着、入口付近にはお花が飾られており、昨年対バンしたSEX MACHINEGUNSから、そしてあの聖飢魔Ⅱ創始者であるダミアン浜田陛下からもお花が届いていた。

ダミアン浜田氏と言えば、1996年の1stソロアルバム『照魔境』(廃盤、高値で売られている)にて、鈴木研一氏がベースで参加していたという関係がある。

(2020年に結成されたDamian Hamada’s Creaturesには、かつての人間椅子メンバー後藤マスヒロ氏が参加していたという繋がりも)

開演前のBGMはハードロックの詰め合わせで、RushやBlue Öyster Cultなど鈴木氏好みの楽曲が選ばれ、今回もBlack Sabbathの「Killing Yourself To Live」が最後の曲だった。

場内が暗転すると、今回の入場曲は「新青年まえがき」であり、ドラムのナカジマノブ氏は赤色の新たな衣装、ギターの和嶋慎治氏は黒の紋付袴、鈴木氏はいつも通りの袈裟だった。

1曲目に披露されたのは「幸福のねじ」、何とも懐かしいライブの始まり方である。冒頭のギターリフに合わせ、鈴木氏が掛け声を上げる、というのも懐かしかった。

なお2006年にDVD化された映像作品『見知らぬ世界』収録の2000年のライブ映像にて、同じ「幸福のねじ」始まりのライブを見ることができる。

Bメロ部分の高過ぎるキーを無理に出すことは今はやめて、メロディーを変えて歌うようになっている。続く「爆弾行進曲」も、かつてライブの始まりに演奏されていた楽曲である。

2曲終わった最初のMCでは、鈴木氏が「昔のライブで1曲目にやっていた曲で始めてみました」と語られていた通り、今回は懐かしい曲が多くなりそうである。

開演前からかなりの台数のカメラがセットされているのを見かけたが、映像を撮って何かしら年内に作品として見られるかもとのことで和嶋氏が語っていた。

映像に残るので、知らない曲もあるかもしれないがノッて欲しい、とも語っていた。

定番曲「品川心中」が披露されると、いつもの落語の途中に、人間椅子35周年おめでとうございます、という語りが追加されていた。

なお鈴木氏には椅子が用意されており、演奏中はずっと立っていたが、落語中など演奏しないタイミングでは座って腰への負担を和らげている場面も見られた。

鈴木氏が「夢野久作のデビュー作」と紹介して「あやかしの鼓」、初期の楽曲が続き、中でもライブで聴きたいと思わせる絶妙に良い選曲が続く。言ってしまえば、かつての超定番曲でもある。

「品川心中」後に鈴木氏は「ツアーを通じて和嶋くんの話芸が磨かれている」とのこと。三遊亭みたいな名前を付けたいと、鈴木氏が命名した”和嶋亭慎治”は、「言うと思った」と和嶋氏。

また鈴木氏が新しいベースを使用しており、ギブソン社が作ってくれた「Gibson Grabber」モデルだそうで、ヘッド部分に人間椅子と入っているとのこと。

和嶋氏がこれを使っているのは、KISSのジーン・シモンズか鈴木研一かだと思うと話すと、KISSの楽曲のさわりを披露(「Rock And Roll All Nite」だったか?)する。

今回のツアーではノーマルチューニングの楽曲は新しいベースで演奏されており、音像がクリアな印象で、ノーマルチューニングの楽曲はタイトで良いかもしれないと思った。

「次の曲は『怪談 そして死とエロス』に入っている曲で」と和嶋氏が話すと、ノーマルチューニングでやる曲と言えば限られるぞ、と次の曲を期待をもって予想し始める。

「ジョルジュ・バタイユの…」でガッツポーズである。披露されたのは「マダム・エドワルダ」であった。

リリースツアー時、「第十四回 人間椅子倶楽部の集い 2018」、そして今回の3回ほどしか披露されていないレア曲である。

それ以上に近年の楽曲の中では、かつての人間椅子にあった叙情的な曲調がたまらない楽曲である。

個人的にはリアルタイムでは聴いていなかった初期の曲以上に、懐かしさを覚えてしまって、当時の人間椅子や私的な思い出も蘇って、一気にライブに没入した感覚があった。

ちなみに中間部の開放弦を用いたギターリフはイントロのみで、歌の部分はコードストロークになっていたのは、人間椅子倶楽部の集いで披露された時からの、歌いやすさ重視のアレンジである。

「マダム・エドワルダ」が終わると、F#mのキーでアドリブっぽいフレーズを弾き始め、もしやと思ったら鈴木氏が一言「蟲」。

なかなかの難曲であるが、中間部のギターソロも長めに披露し、改めて人間椅子の演奏力の高さを感じる楽曲であった。

ダウンチューニングコーナーに入る前のMCでは、和嶋氏が人間椅子はずっと文学作品のタイトルを借りてやってきて、当時は怒られるかと思ったが、1つのスタイルになったと語った。

ファーストアルバムの曲では「人間失格」や「桜の森の満開の下」、そして伊藤政則の名著「ヘヴィメタルの逆襲」も、と言うとイントロ部分だけ「ヘヴィメタルの逆襲」を演奏し始める。

鈴木氏は「せめてレギュラーチューニングの時にやろうよ」と言いつつ、なかなか聞けないレア曲披露コーナーとなった。

ドラマの曲をやりましょうと有難いお誘いによってできた曲「命売ります」を披露し、過去と現在を行き来するような不思議な感覚になった。

次の曲の紹介として鈴木氏が歌詞の一部を言おうとしてて間違え、「ここカットね」と言いつつ「太陽黒点」が披露される。

演奏がズレやすいアウトロ部分、ナカジマ氏がラストのところで叩きそうになったが、間一髪でブレイクになるところを見失わずに成功した。この日は演奏も良い流れでできていたように思えた。

そしてGibson Grabberも良い音ではあるが、やはりダウンチューニングでのズボッと沼にはまるようなベース音の重みは人間椅子の醍醐味であるとも思った。

続くMCでは和嶋氏から、人間椅子は23枚アルバムを出しており、これはずっと活動を続けていないとできない数字と語っていた。

同じく23枚出しているのはローリングストーンズだそうで、日本のローリングストーンズを目指して頑張るとのこと、23枚目のアルバム『色即是空』から「死出の旅路の物語」が披露される。

リリースツアー時と同様、アウトロ部分にはギターソロが追加されており、個人的にはこのアレンジが気に入っている。

どこで話したか忘れてしまったMCの覚書をいくつか。しきりに「武道館」という声が会場から聞こえて、和嶋氏が「あそこはまず抽選で、武道館に選ばれないと」と語っていた。

また和嶋氏の俺が俺がと言うギターは高校時代から変わらないという鈴木氏、一方高校時代に生徒会長だった鈴木氏は昔メンバー紹介を律儀に行うも、最後に「僕が鈴木研一です」と自己紹介していたと和嶋氏。

皆が主張が強いバンドという和嶋氏に、鈴木氏は主張が強いからミュージシャンをやれると語っていた。

さらに会場からメンバーの名前を呼ぶ声が、相撲の力士を呼ぶようだと鈴木氏、塩を振ろうかなと語る。舞台上で死ねたら本望と言うが塩で滑って死ぬのは、とも語った。

昔から”死”を連想することをMCで話してしまう人間椅子であり、鈴木氏が「死んだらベースを引き取ってください」と和嶋氏に今回も語っていたが、だんだん年齢的に笑えないMCになりつつある。

さて曲の振り返りに戻ると、ワウをかけたベースを弾き始め、Black Sabbathの「N.I.B.」のイントロを弾いた後、「悪魔の手毬唄」へと流れる。

スタジオ音源はノーマルチューニングだが、ライブではずっとダウンチューニングで披露されてきた楽曲である。

もう後半戦に入っているが、何だか終わるのが寂しくなってきたという和嶋氏。そして披露されたのは大曲「深淵」であった。

この「深淵」が流れてきた瞬間、今日のライブの曲目が自分の中で繋がり、大きな感動に包まれたのだった。この点については、全体の感想のところで述べたいと思う。

ライブも終盤に入り、ナカジマ氏の新しい衣装について、見ようと思った時にはすぐに脱いでしまっており、「裸が衣装だぜ!」というナカジマ氏。

人間椅子は35周年、そしてナカジマ氏は加入して20周年であることを語った。今回披露されたのは日野日出志氏の漫画からタイトルを借りた「地獄小僧」だった。

そして凱旋の歌と紹介して前回のツアーで大盛り上がりだった「宇宙電撃隊」、今日もタオルを振り回して陽気な空間に変わる。

本編ラストはおなじみ「針の山」で締めくくられ、あっという間にも思えたが、かなり充実度の高い内容のライブだったように思える。

アンコール呼び出しでは、「此岸御詠歌」の真ん中部分のコーラスを歌って呼び出すという、斬新な人たちがいた。ただ結局途中からいつも通りのアンコールに戻っていた。

アンコールでは和嶋氏・ナカジマ氏が35周年のTシャツで登場、鈴木氏はいつもの白い着物であった。

「かなり偏った選曲でしたが、それは秋にもツアーをやるからです」と珍しく鈴木氏から告知。そちらはベストオブベストな選曲を、と言うと、和嶋氏は今日もベストじゃないですか、と返した。

35周年Tシャツの説明では、鈴木氏の白塗りがいつも以上に目立つと和嶋氏。

会場に鈴木氏の顔Tシャツを見つけ、メンバーそれぞれの顔のシャツを作る、と言う話になるも、鈴木氏以外はただのオジサンになると和嶋氏。

ナカジマ氏のTシャツは、先ほどのMCで「裸が衣装だぜ!」と言っていたので、裸になれるシャツで、後ろに顔がプリントしているものを、と語られていた。

40年、45年、50年くらいまでは頑張りたいと言う和嶋氏に、えーという鈴木氏。アルフィーのように70代でもと、和嶋氏が言うとローリングストーンズ・アルフィーとビッグマウスですねと鈴木氏。

アンコールはダウンチューニングで「蛞蝓体操」からスタート。新作『色即是空』からは人気曲が今ツアーでも披露されている印象だった。

そして「無情のスキャット」へとさらにヘヴィな流れで、これで終わるのかと思ったら、もう1曲ということで、和嶋氏が始めようとすると川端氏から待ったがかかり、何やら鈴木氏が準備中。

すると、真っ白なさらしとふんどし姿の鈴木氏が登場、「ますます妖怪のようないで立ち」と和嶋氏が評するも、会場は黄色い悲鳴ともとれる声援が飛び交っていた。

ラストは”異世界からやって来た客人の歌”「なまはげ」で締めくくられる。(「異世界からやって来た」と和嶋氏が言う間、鈴木氏も口パクで同じセリフを言っていた)

いつも以上にアクションが冴え渡っていた鈴木氏であったが、リハの数日前に歩けなくなったが、復活できたというエピソードもあり、無事にライブを完走できて良かったと思う。

終演は21:30頃、MCも含めてゆったり時が進んだような、2時間半も経った気がしないような、不思議な時間感覚のまま会場を後にしたのだった。

<セットリスト・収録アルバム>

No.タイトル収録アルバム
SE新青年まえがき『新青年』(2019)
1幸福のねじ『黄金の夜明け』(1992)
2爆弾行進曲『桜の森の満開の下』(1991)
3品川心中『瘋痴狂』(2006)
4あやかしの鼓『人間失格』(1990)
5マダム・エドワルダ『怪談 そして死とエロス』(2016)
6『二十世紀葬送曲』(1999)
7命売ります『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト』(2019)
8太陽黒点『桜の森の満開の下』(1991)
9死出の旅路の物語『色即是空』(2023)
10悪魔の手毬唄『人間失格』(1990)
11深淵『未来浪漫派』(2009)
12地獄小僧『新青年』(2019)
13宇宙電撃隊『色即是空』(2023)
14針の山『人間失格』(1990)
アンコール
15蛞蝓体操『色即是空』(2023)
16無情のスキャット『新青年』(2019)
17なまはげ『無頼豊饒』(2014)
※オリジナルアルバムを記載、「命売ります」のみアルバム未収録
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全体の感想

今回のツアー『バンド生活三十五年~猟奇第三楽章~』は、全く事前情報がなかったのだが、選曲に関しては割と特徴のはっきり表れた内容だったと言えるだろう。

選曲は初期の中でも上館氏の在籍した1st~3rdと比較的最近数作+普段よくやる定番曲という構成であり、かなり初期に偏った選曲だったと言える。

東京で演奏されなかった楽曲も含めると、とりわけ2nd『桜の森の満開の下』からは4曲も今ツアーのために選ばれていた。

鈴木氏がMCで「古い曲は次の歌詞が何だったか考えなくても身体が覚えている」と語っていた。若い時に覚えた+ずっと演奏してきた楽曲だったので、当人たちにとって馴染んだ曲だったのだろう。

バンドの原点とも言える初期と、現在の人間椅子の楽曲が時を飛び越えながら披露されていく、という内容だったと言えるだろう。

なお最も演奏されなかったのが、90年代中盤〜00年代前半頃、土屋・後藤の2人のドラマーが在籍した時期の楽曲だった。

秋にもツアーが既に組まれているとのことで、おそらく次回は初期の楽曲は外した構成になるものと予想される。

今回のライブを見て感じたことは、長いバンド活動の中で変わらぬ人間椅子というバンドメンバーのバランスの妙である。

鈴木氏ボーカルは初期の楽曲を多く選び、和嶋氏はどちらかと言えば最近の曲を多く選ぶ形でライブは進行した。そして「深淵」が演奏されている時に、ふと思ったのである。

鈴木氏は「太陽黒点」「悪魔の手毬唄」など初期の曲を特に大切にし、初期の雰囲気を変わらずやっている、人間椅子を守ってきた存在だ。

一方で和嶋氏は「命売ります」「深淵」など人間椅子を飛躍に導き、また暗く不健康な雰囲気だった時代から、前向きな要素を込めた作風へと転換して動員を増やした。

常に人間椅子を変化させてきた存在は和嶋氏である。

そして加入20周年を迎えたナカジマ氏は、後から人間椅子を追いかけ、2人をリスペクトする気持ちがずっと変わらず、後ろ支えまで懸命にやりながら、人間椅子を支えてきた存在だ。

和嶋・鈴木両氏がどちらが父か母か分からないが、2人で作り上げてきた人間椅子という一種の家族に、ナカジマノブという新たな存在が加わり、“新生人間椅子”が2004年に誕生した。

そして新生人間椅子は今や立派な“成人”となり、この3人でしかあり得ない共同体となったのだ、と強く感じたライブだった。

レポートの中でも書いたが、還暦が近づいている話や、ベースを引き取って欲しいと言う遺言の話など、年齢的な話題はそろそろ笑えない話になってきた感はある。

ただ国内外の諸先輩方を見るに、健康でさえあれば、70代に入ってなお第一線で活躍しているミュージシャンも多数いる。

人間椅子もぜひ末長く活動を続けてくれることを願いつつ、今この瞬間が人生で1番若い時なので、ぜひ人間椅子のライブが気になる人は迷わず足を運んでほしいと思うところだ。

【人間椅子】バンド生活三十五周年を迎え、露出の機会がそれほど増えていないのに動員が増え続ける理由とは?

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