【ライブレポート】2023年9月24日(日)南佳孝50th Anniversary Live 2023 南佳孝フェス 東京国際フォーラムホールC

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ライブレポート

デビュー50周年を迎えたシンガーソングライターの南佳孝、記念ライブ「50th Anniversary Live 2023 南佳孝フェス」が行われた。

本公演はゆかりのあるゲストを呼んで、ともにセッションしながら進行する、スペシャルなイベントである。

2019年には69歳をお祝いする「南佳孝フェス I WILL 69 YOU」が行われたが、その続編的な内容のライブとなった。

ただゲストは当時と異なり、また世相も当時とは大きく異なる中でのライブだった。とは言え、常にいつも通りのパフォーマンスを見せ、飾らぬ人柄を今回も見ることができた。

9月24日(日)、東京国際フォーラムホールCで行われた公演をレポートする。

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ライブレポート:2023年9月24日(日)南佳孝50th Anniversary Live 2023 南佳孝フェス

2019年に行われた「南佳孝フェス I WILL 69 YOU」に続く、2回目となる南佳孝フェス。今回は4年後の2023年、デビュー50周年をお祝いするコンサートとなった。

今回はティザー映像等が作られ、チケットもソールドアウトとなった。筆者は今回両親を連れて、3人での参加となったため、チケットは3階席だった。

東京国際フォーラムのホールCは1,500席ほどの、それほど大きくはないホールだ。3階席前方からはステージを見渡すことができ、座席が段差になっているため、前の人で見えないということもない。

入場時間が30分だけだったこともあり、少し時間が押してコンサートはスタートした。入場曲は1stアルバム『摩天楼のヒロイン』の「おいらぎゃんぐだぞ」のイントロ部分だった。

メンバーは南佳孝(Vo&Gtr)/岡沢章(B)/住友紀人(Key&Sax)/松本圭司(Pf)/ 島村英二(Dr)である。

ライブは「憧れのラジオ・ガール」でスタート。最近のゆったりめのアレンジながら、スタジオ音源のボコーダーを住友氏がしっかり再現することで、当時の雰囲気を感じられる。

「日付変更線」「涙のステラ」と初期の楽曲を中心に、ゆったりとした雰囲気でライブは始まる。冒頭はあまり奇をてらった選曲はなく、初期の王道の楽曲が3曲続いた印象だ。

やや南氏のボーカルは、最初不安定な一面も見せていたような気がする。

さっそく最初のゲストはが登場、近年ライブにレコーディングに関わりの深い杉山清貴氏である。アコースティックギターを持って登場した。

2人が出会った頃の話や、山よりは海の方が似合うと言う共通点があることなどを話しつつ、NHK〈ラジオ深夜便〉の『深夜便のうた』のために書き下ろされた「海へ行こうか」を披露。

掛け合いのある楽曲であり、これまでのしっとりした雰囲気から一気に会場は陽気なムードへ。

そして杉山氏と2人の名義でリリースされた『Nostalgia』からタイトル曲「Nostalgia」を弾き語りスタイルでじっくりと披露した。

杉山氏がいったん退場すると、今回は立て続けにゲストが登場するのではなく、合間に南氏オリジナル曲が挟まれて進行していくスタイルだった。

様々な憧れの国に行ったというMCがあり、ニューヨークでレコーディングした楽曲、ということで1982年の『SEVENTH AVENUE SOUTH』から「SCOTCH AND RAIN」。

昨年「南佳孝 松本隆を歌う Simple Song 夏の終わりに」が行われたためか、80年代前半~中盤の楽曲はあまり披露されなかった印象である。

続くMCでは、実はゲストに来生えつこ氏が登壇し、松本隆氏と並んで対談、という夢のような企画もあったようであることを告白。

残念ながら来生氏が体調不良で欠席すると、夫の来生たかお氏から聴いたなどと言うエピソードもあった。

「大げさだけど、来生えつこさんに捧げます」と披露されたのが「プールサイド」。確かに素晴らしいこの歌詞があって、より「プールサイド」が活きているといつも思う。

続いてのゲストは尾崎亜美小原礼であると告げられるも、セッティングに少々時間がかかっている様子。

この時のMCだったか、夏の暑さがようやく落ち着いてきたものの、暑い時期にリビングのエアコンが壊れてパニックになり、何が起きるか分からない、という生活感のあるエピソードもあった。

尾崎亜美氏はかつては南氏と会うと緊張していたそうだが、今はしなくなったとのこと。前回の南佳孝フェスでも披露されたThe Beatlesの「This Boy」をカバーした。

尾崎氏はキーボードを弾き、小原氏はベースを弾きながら、南氏と3人並んで弾き語りスタイルだった。

続く「オリビアを聴きながら」は、転調の多い曲ながら、さらに南氏が冒頭を歌ったために、さらに転調の多いスペシャルなバージョンとなった。そのため尾崎氏は「結局緊張していた」とのこと。

最後は「Midnight Love Call」を前半は尾崎氏が、後半の展開から南氏が歌う。この曲の弾き語りバージョンは格別であり、正直なところ南氏のフルバージョンで聴きたかった気もする。

再びバンドメンバーと南氏によるオリジナル曲のコーナー、やや意外な選曲「コンポジション・1」が披露される。

続く「夜の翼」の流れ、今日は1980年の『MONTAGE』からの選曲が多いことに気付く。

さらにやや珍しい選曲「ブルーズでも歌って」は、1976年の2ndアルバム『忘れられた夏』からの楽曲。今回は70年代~80年代始めまでの、いわゆる初期の楽曲が多い。

続くゲストは太田裕美氏、真っ白の衣装はいつも場が明るくなる。

ゲスト入場の段取りを間違えそうになる南氏をフォローする太田氏は、段取りをするのが得意な様子で、終始ステージ上のフォロー役をしていた。

披露されたのはやはり「木綿のハンカチーフ」、南氏が冒頭を弾き語りで歌い、バンドが入って太田氏が歌うと言う展開。

そして「木綿のハンカチーフ」を終えて、やはり作詞をした人物である松本隆氏を呼び込んでトークをする。当時のレコーディングのかなり内輪話が披露される場面もあった。

もう1人、南氏に関わる重要人物である鈴木茂氏を呼び込み、はっぴいえんど解散頃には仲が凄く悪かった、と言ったエピソードも飛び出したが、松本氏いわく「鈴木茂は良い人」とのこと。

懐かしいエピソードから、懐かしい曲かと思いきや、まさかの本邦初公開の新曲「夕方ブランコ」が披露される。今回のために南氏が作曲し、松本氏が作詞を行ったとのこと。

コーラスと言うかデュエットくらい存在感のあった太田氏のボーカルと、鈴木氏の個性的で卓越したギタープレイが光った。

鈴木氏のギターは唯一無二のサウンドであることを改めて感じた。フェンダー製のアンプを4つ積み上げたスタイルで、歪んでいないのに伸びがあり、厚みのあるサウンドに仕上がっていた。

お約束ともなっている「ソバカスのある少女」は、南氏の歌う曲の中では珍しく自身の作曲ではなく、鈴木氏によるもの。2人のボーカルかと思いきや、鈴木氏の”隠れファン”である杉山清貴氏も参加。

杉山氏は「隠れていません!」とファンを公言しつつ、3人による「ソバカスのある少女」を披露、杉山氏はきっと大興奮のコラボだったことだろう。

アレンジは南氏ソロのバージョンと言うより、ティン・パン・アレーのバージョンに近かったようにも思えた。

本編終盤には鈴木氏が”残業”で残り、代表曲「スタンダード・ナンバー」を披露。そして最後に披露されたのは何とカバー曲。

南氏が2004年の『ROMANTICO』でもカバーしているRandy Newmanによる「Sail Away」である。

サビでオリジナルにないコーラスを即興で観客に求めるも、もちろん分からず、曲の途中に練習コーナーが設けられる。

バンドメンバーによる”お手本コーナー”まで行われて準備万端で、ラストは会場一体でコーラスを歌って本編が終了した。

アンコールに応えて登場、ゲストも松本氏を除いて全員がステージに登場。「お決まりの曲だけど」と話して「スローなブギにしてくれ」を披露し、ゲストと南氏でボーカルを回しながら歌った。

そして鈴木氏のギターソロも迫力のあるものだった。

あの曲をまだやっていないな、と思っていたら「モンローウォーク」も全員で披露。1階席では前方は立って盛り上がる人たちがたくさんいたのが見えた。

席を立ってみる見る人がいたのはこの曲だけだったように記憶している。

最後にもう一度松本氏を呼び込み、トークを行った。南氏は「また新作を作ろう」と意気込むと、松本氏は「佳孝はせっかちだから、もう年だしのんびりとやろう」と返した。

でも松本氏は「飾らずに曲を作れる唯一の人」と称えて退場した。二人の固い友情を感じる一幕だった。

最後は松本氏との作品の中でも出色の出来である「冒険王」を披露した。南氏はギターを置き、ハンドマイクでじっくりと歌い上げた。

全曲演奏し終えた後も、特別なMCや演出は特になく、いつも通りに南氏は帰っていった。ゲストをもてなす以外は、いつも通りのライブを行ったという感じである。

なおこの日のライブは、2023年12月にCS衛星劇場で放送されるとのことである。

<出演者のSNS投稿>

<セットリスト・収録アルバム>

No.タイトル収録アルバム
SEおいらぎゃんぐだぞ(イントロ)『摩天楼のヒロイン』(1973)
1憧れのラジオ・ガール『MONTAGE』(1980)
2日付変更線『SOUTH OF THE BORDER』(1978)
3涙のステラ『SILKSCREEN』(1981)
4海へ行こうか(w/杉山清貴)DVD & CD『愛を歌おう LIVE』(2021)
5Nostalgia(w/杉山清貴)『Nostalgia』(2017)
6Scotch and Rain『SEVENTH AVENUE SOUTH』(1982)
7プールサイド『SOUTH OF THE BORDER』(1978)
8This Boy(The Beatles)(w/尾崎亜美・小原礼)
9オリビアを聴きながら(w/尾崎亜美・小原礼)
10Midnight Love Call(w/尾崎亜美・小原礼)『MONTAGE』(1980)
11コンポジション・1『MONTAGE』(1980)
12夜の翼『MONTAGE』(1980)
13ブルーズでも歌って『忘れられた夏』(1976)
14木綿のハンカチーフ(w/太田裕美)
15夕方ブランコ(新曲)(w/太田裕美・鈴木茂)
16ソバカスのある少女(w/鈴木茂・杉山清貴)ベスト『30th STREET SOUTH』(2003)
17スタンダード・ナンバー(w/鈴木茂)『冒険王』(1984)
18Sail Away(Randy Newman)(w/鈴木茂)『ROMANTICO』(2004)
アンコール
19スローなブギにしてくれ(I want you)(w/太田裕美・尾崎亜美・小原礼・杉山清貴・鈴木茂)『SILKSCREEN』(1981)
20モンローウォーク(w/太田裕美・尾崎亜美・小原礼・杉山清貴・鈴木茂)『SPEAK LOW』(1979)
21冒険王『冒険王』(1984)
※南佳孝氏が名義に入っている作品のみ収録アルバムを示す

※セットリストはこちらの投稿を参考にさせていただいた。

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全体の感想・まとめ

全体の感想をいくつかの視点から述べてみたい。まずはセットリストに関してである。

今回の南佳孝フェスは、改めて50周年というキャリアの凄さを感じつつ、気負わないセットリストで組まれていたように思える。

本編ラストがカバーだったり、『MONTAGE』からの選曲が多めだったりと、今回の気分に合った楽曲が選ばれている、と言う感じだろうか。

ゲストコーナーがあることも重なって、なかなかオールタイムベスト的な選曲にならなかったのは少し残念である。

21曲の中で7~8曲はゲストとの関連の曲であれば、純粋な南氏オリジナル曲の披露は10数曲というごく限られたものになってしまう。

80年代中盤以降の楽曲はほぼ披露されず、デビューから80年前後の楽曲がほとんどとなっていた。

やはり選曲としては2012年にリリースされたライブベスト『All My Best』がかなり練られた選曲であり、ぜひ今回のフェスとは別に、オリジナル曲をたくさん披露するバンドライブも見たいところだ。

一方で本公演の魅力は、むしろ豪華なゲスト陣だったようにも思えた。前回の2019年の南佳孝フェスは、アルバム『Dear My Generation』に参加したミュージシャンも多かった。

今回は50周年に相応しく、昔からゆかりのある人物が選ばれてステージをともにした印象だ。

杉山清貴氏の類まれなる歌唱力や、鈴木茂氏の唯一無二のギターサウンドにとりわけ圧倒されたような感覚が強く残っている。

ご自身の50周年と言いつつ、ゲストを立てるような感謝のフェスだったとも言えるだろう。

ゲストの段取りが多いためか、南氏がややテンパっている場面もあり、演奏や歌唱にじっくり集中できなかったのでは?と思ってしまう部分もあった。

やはり今回は今回として、南佳孝オールタイムベスト的なライブを楽しみにしたいところである。それもできればバンドスタイルで、50年の各節目の楽曲を披露していくような曲目が嬉しい。

そんな妄想もしつつ、これからの南氏のライブもまた楽しみにしたいところである。

南佳孝フェスで披露された曲が聴けるアルバム

・SOUTH OF THE BORDER(1978)

ラテン音楽を取り入れた初期の傑作、「プールサイド」「日付変更線」などを収録。

・SILKSCREEN(1981)

「スローなブギにしてくれ(I want you)」「涙のステラ」などを収録、多様な音楽性を感じさせるアルバム。

・冒険王(1984)

松本隆氏と組んで作られたコンセプトアルバム、「スタンダード・ナンバー」「冒険王」などを収録。

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