【ライブレポート】2023年9月17日 DIZZY MIZZ LIZZY THE ALTER ECHO – JAPAN TOUR 2023 川崎CLUB CITTA’

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デンマーク出身のバンド、Dizzy Mizz Lizzyが実に7年ぶりに来日ツアーを行うこととなった。

2020年3月にリリースされた4thアルバム『Alter Echo』を引っ提げ、2020年4月に来日予定だったものの、中止となっていた。3年越しにようやく来日公演が実現したのである。

筆者としては前回の2016年に行きそびれたこと、そして4thアルバム『Alter Echo』の内容があまりに良かったことで、今回こそは行こうと決めていた。

9月17日(日)に川崎CLUB CITTA’の2日目として行われた公演の模様を、セットリストを含めてレポートする。

今回のライブから見えたDizzy Lizz Mizzyと言うバンドの魅力についても、最後に少しまとめてみた。

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ライブレポート:2023年9月17日 DIZZY MIZZ LIZZY THE ALTER ECHO – JAPAN TOUR 2023 川崎CLUB CITTA’

今回のDizzy Lizz Mizzy来日は実に7年ぶりだと言う。最初にも書いた通り、筆者は7年前の来日公演に行こうか迷い、結局行かなかった。

当時は3rdアルバム『Forward In Reverse』がリリースされて、それなりに気に入ってはいたが、まだ関心が薄かったように記憶している。その後、さらに聴き進めて、行けば良かったと思ったのだ。

Dizzy Lizz Mizzyは改めて紹介するまでもなく、デンマーク出身のバンドである。

ティム・クリステンセン(ギター・ボーカル)と小学校からの友人マーティン・ニールセン(ベース)、そして1つ学年が上のソレン・フリス(ドラム)で結成され、メンバーは変わっていない。

1994年にメンバーはまだ20歳と言う若さでデビューし、デンマークで人気を博す。わずか2枚のアルバムを残し、活動の多忙さゆえに1998年に解散。

2010年に再結成、2014年に2度目の再結成を経て、現在まで活動を続けている。オルタナティブロックを軸にしつつ、ハードロックの影響を感じさせるヘヴィなサウンドが特徴だ。

2020年リリースの4thアルバム『Alter Echo』では、プログレッシブロックの要素やアンビエント・シューゲイザーなどの影響も感じさせ、音の広がりを感じさせる内容となっていた。

今回の日本ツアーは<-THE ALTER ECHO- JAPAN TOUR 2023>と銘打たれ、4thアルバム『Alter Echo』を軸に、オールタイムベスト的な選曲になると謳われていた。

ちなみにDizzy Lizz Mizzyは、基本的にアルバムに全ての楽曲が入っている。オルタナティブロックにありがちな「シングルだけの曲」がないので、4枚のアルバムを聴き込めばライブは楽しめる。

前置きが長くなったが、当日のレポートを行っていこう。9月17日(日)、連休の中日の日曜日、まだ夏の暑さが残る川崎は人でごった返していた。

川崎CLUB CITTA’に到着したのは、16:20頃で既に整理番号は全て呼び出しが終わっていた。物販は会場外のみで行われ、CDやレコードの販売は会場内で行われていた。

実は白状すると『Alter Echo』の盤を持っていなかったので、これを機に買おうと思い、”ジャパン・ツアー・エディション”なる完全限定生産盤を購入することにした。

Blu-spec CD2で、「Amelia」のライブ音源と本作で作られたMVがDVDとして収録されている。「Amelia」のMVはなかなか秀逸なので、ぜひ改めて見たいと思った。

会場内は結構人が埋まっており、後方もそれなりに場所を選ばないと、人で見えないと言う状況だった。

開演前BGMは日本のバンドMONOの曲らしい。非常にアンビエントな響きであり、本作『Alter Echo』のサウンドとリンクする部分を感じるものである。

定刻17時を少し過ぎたところで、暗転してメンバーが入場。特に入場曲もなく、ラフな雰囲気でメンバーは楽器を構えている。

注目された1曲目は、何と「Amelia – Part 1: Nothing They Do They Do For You」のあのアルペジオが聞こえてくるではないか。

今回のツアーは、9月21日(木)に『Alter Echo』完全再現を行う渋谷クラブクアトロの追加公演が決まっており、「Amelia」はそこだけで披露されるのか?などと予想していた。

しかし予想は良い意味で見事に裏切られた。メンバーは3人に加えて、キーボードのサポートメンバーアンダスが加わっていた。

ティムの美しいギターの音色と歌声、そしてキーボードが絡み合って音が果てしなく広がっていく感覚である。

まさかPart 1だけやるのではあるまい、続く「Part 2: The Path Of Least Existence」で一気にヘヴィなサウンドへと変化する。ソレンのドラムのヘヴィさがたまらない。

そのまま「Part 3: Lights Out」「Part 4: All Saints Are Sinners」まで一気に披露した。ティムの叫びのようなボーカル、そして轟音のバンドサウンドが美しい「Amelia」である。

「Amelia – Part 5: Alter Echo」は披露されなかったが、歌のあるいわゆる”有難いところだけ”やってもらえた感じであり、まさか最初から「Amelia」が聴けると思わず感無量である。

「Amelia」の余韻も冷めやらぬまま、スタジオ音源よりさらにアンビエントな雰囲気を増した「The Ricochet」からティムのギターが入り、「In The Blood」へ。

ここまでじっくりと『Alter Echo』の世界を味わい、続くのは3rdアルバムから「I Would If I Could But I Can’t」「Brainless」の2曲である。

再結成後のDizzy Lizz Mizzyは、よりヘヴィなサウンドが前面に出つつ、3rdの楽曲はよりハードロック的なリフが印象的な作品である。ライブのうねりが感じられる並びであった。

MCは少なめだったが、冒頭にはティムからとても分かりやすい英語で、来日できた喜びを語る場面もあった。簡素にして実直な印象であり、あくまで音楽が本体という感じで好印象である。

1stの「Glory」ではやはり拳の上がる数が若干増える印象、ただ近年の曲と並んでもノリに大きな違いはないようにも感じられる。デビューから一貫した音楽性を持つことはよく分かる。

ライブ前半は再結成以降の楽曲を中心に据え、ティムとキーボードのアンダスのみで披露された「Love Is A Loser’s Game」も味わい深いものがあった。

ティムの弾くギターアルペジオの良さは格別なものがある。終盤にバンドメンバーが入場し、名バラード「11:07 PM」へ。

筆者個人としては、実はこの曲が1番好きである。物悲しい雰囲気がたまらないこの曲がライブで聴けたことが、また感無量の体験だった。

同じく2ndからタイトル曲「Rotator」、サビでは「Rotator」を一緒に叫ぶ人が多く見られていた。ここからライブは一気にロックな雰囲気へと加速する。

1stから「67 Seas In Your Eyes」はスタジオ音源よりかなり長いバージョンで、中間部には長いギターソロが挿入された。

あまりスタジオ音源では長いギターソロが繰り広げられることのないバンドだが、ハードロック魂を感じさせるとともに、バンドの底力を垣間見た貴重な瞬間だった。

ライブも終盤、やっぱり定番「Waterline」が披露され、最後は3rdからずっしりとした「Say It To Me Anyway」で締めくくられた。

新旧の楽曲を飛び交いつつ、音楽的にもバラエティに富んだ選曲で魅了したDizzy Lizz Mizzy。アンコールに応えて、再びステージに登場する。

アンコール1曲目は疾走感のある「Thorn In My Pride」、そして1stのパワーバラード「Silverflame」でアンコールが締めくくられた。

ライブの後半はほとんど解散前の初期の楽曲たちで固められた。しかし不思議なほど、最近の楽曲と並べても全く違和感なくライブの曲目にはまっていた。

基本的にやりたい音楽の根幹が全くブレていないバンドなのだ、と改めて感じた。

たっぷりと楽しんだように感じたが、ライブが終わって時計を見ると19時前であり、2時間弱のステージだった。決して長いとは言えないものの、体感としてはしっかり堪能した感覚である。

ステージ後方から見ていたが、暴れたりするような人も全くおらず、全員が思い思いに、じっくりとライブを楽しんでいる様子が印象的だった。

音楽を楽しみに来ている人たちの空間、文字通りそんな心地好い場所になっていたのが嬉しかった。

<セットリストと収録アルバム>

No.タイトル収録アルバム
1Amelia – Part 1: Nothing They Do They Do For You4thアルバム『Alter Echo』(2020)
2Amelia – Part 2: The Path Of Least Existence4thアルバム『Alter Echo』(2020)
3Amelia – Part 3: Lights Out4thアルバム『Alter Echo』(2020)
4Amelia – Part 4: All Saints Are Sinners4thアルバム『Alter Echo』(2020)
5The Ricochet4thアルバム『Alter Echo』(2020)
6In The Blood4thアルバム『Alter Echo』(2020)
7I Would If I Could But I Can’t3rdアルバム『Forward In Reverse』(2016)
8Brainless3rdアルバム『Forward In Reverse』(2016)
9Glory1stアルバム『Dizzy Mizz Lizzy』(1994)
10Made To Believe3rdアルバム『Forward In Reverse』(2016)
11The Middle4thアルバム『Alter Echo』(2020)
12Love Is A Loser’s Game1stアルバム『Dizzy Mizz Lizzy』(1994)
1311:07 PM2ndアルバム『Rotator』(1996)
14Rotator2ndアルバム『Rotator』(1996)
1567 Seas In Your Eyes1stアルバム『Dizzy Mizz Lizzy』(1994)
16Waterline1stアルバム『Dizzy Mizz Lizzy』(1994)
17Say It To Me Anyway3rdアルバム『Forward In Reverse』(2016)
アンコール
18Thorn In My Pride2ndアルバム『Rotator』(1996)
19Silverflame1stアルバム『Dizzy Mizz Lizzy』(1994)

※セットリストはこちらを参考にさせていただいた

※ソニーミュージック

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全体を振り返って – Dizzy Mizz Lizzyと言うバンドの魅力

改めてライブを振り返ってみると、Dizzy Mizz Lizzyと言うバンドの魅力がよく分かる内容だったと感じるものだ。

最後に少しだけ、筆者がライブを見つつ感じたDizzy Mizz Lizzyの魅力を書き記しておきたい。

どの時代にもファンがいるユニークな音楽性

Dizzy Mizz Lizzyは1990年代のごく短い期間に活動し、再結成後の活動期間の方が長くなっている、というやや変わったキャリアのバンドである。

そして本格的な再結成は2014年で、解散から16年ほど、長いと言えば長いが、それを売りにする=伝説になるほど長くもなかった、と言うのが個人的には面白く感じるところである。

何が言いたいか、と言えば、よくありがちな”活動本体”とも言える初期の曲ばかりが注目され、再結成後は新譜は出すが、それほど注目されない、という感じでは全くない、ということである。

ライブに来ていた客層を見ても、現役当時を懐かしんで…という感じの人ばかりではなさそうであり、筆者のように後から聴き始めて、1st~現在まで同じ感覚で聴いている人も多そうであった。

どの時代のバンドの音楽性にもそれぞれファンがいるような印象があり、それがとても素晴らしいことだな、と感じた。

そしてDizzy Mizz Lizzyが、2ndアルバムで解散後から、長いインターバルを経た3rdアルバムの流れが、まるでそのまま活動していたかのように、自然に進化・発展したところにもあるだろう。

もちろん年齢を重ねた深み・円熟味は十分に増しつつも、長く止まっていたDizzy Mizz Lizzyの時が、そのまま再開したような感覚なのだ。

その後の4thアルバム『Alter Echo』も自然な流れで発展しているように感じられる。

解散・再結成を経ながらも、全くそのブランクを感じさせず、バンドの歴史が流れていたかのような自然さが、どの時代の作品も同じように聴ける魅力となっているように思われる。

音楽性の広がりを感じさせるバンドの歩み

その一方で1stから4thまで満遍なく並べられた今回のセットリストを見てみると、改めてバンドの音楽性が広がってきた歴史を感じさせられもした。

1st『Dizzy Mizz Lizzy』はグランジとハードロックの融合、みたいな文句でよく紹介される通り、疾走感がありつつタイトなグルーブのバンドだった。

そして2ndにおいて、後のバンドの方向性を感じさせる萌芽がたくさん見られている。プログレっぽい方向性や、より豊潤なサウンドの肌触りも、2nd『Rotator』では見られるような印象がある。

当時聴いていた人たちは、次に来る3rdアルバムはどんな発展を見せるのか、さぞや楽しみだったのではなかろうか、と想像するところである。

そして長いブランクを経た3rd『Forward in Reverse』は、我々の期待通りの、そしてそれ以上に素晴らしい作品だった。これまで以上にヘヴィなリフとグルーブを感じさせるアルバムとなっている。

3rdはハードロック的なヘヴィさを持つ作品だったのが、4th『Alter Echo』ではまた新たな扉を開いている印象がある。

3rdが持っていたヘヴィさと美しいメロデイを、プログレをキーワードにつなぎ合わせていくような作品が4thアルバムだったように思う。

さらに、そこにアンビエントやシューゲイザーなど、奥行きのあるサウンドの音楽ジャンルさえも取り込んでいるように感じられた。

プログレとアンビエントなどに通じるところは、音楽を通じた恒常性の表現と、微妙な変化と揺れ、といったところだろう。

広大な音の流れの中で、同じリフを繰り返しながら、変化をつけていくというのがプログレや環境音楽などの試みであり、それをハードロックやオルタナの感覚と融合させているように思える。

以前筆者が「繰り返しの音楽」について書いたが、視野を広く見れば、ハードロックもアンビエントも根幹では繋がるところがある。

繰り返し”リフ”のある音楽の魅力 – ブルース、ハードロックからダンス、アンビエントまで

Dizzy Mizz Lizzyはオルタナティブロックやハードロックと言ったサウンドの軸は持ちつつも、それをいかに広げて行けるのか、と言う挑戦をしているバンドにも思える。

でも芯があって、ごく自然な形で発展しているからこそ、唐突な路線変更が行われた印象は全くない。

まだまだDizzy Mizz Lizzyの音楽の旅はこの先がありそうなので、非常に楽しみに見守っていきたいと思っている。

筆者が気になる最近のハードロックアルバム

人間椅子 – 色即是空(2023)

3ピースハードロックバンド人間椅子の最新作、ヘヴィさの中にもキャッチーさが光るアルバム

About Us – Right Now(2022)

インド発、メロディアスハードからブルース、AORまで多彩な楽曲収録のアルバム

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