【ライブレポート】2022年9月19日 人間椅子「闇に蠢く」東京EX THEATER ROPPONGI

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人間椅子の2022年2本目のツアー「2022年秋のワンマンツアー”闇に蠢く”」が開催された。4月に行われた「『踊る一寸法師』再発記念ワンマンツアー」から5か月ほどである。

前回は『踊る一寸法師』からの選曲が予想されるライブだったが、今回は先行してリリースされた作品はない。

つまり”なんでもあり”のセットリストが予想されたライブであった。今回、筆者は予習記事などは一切作らず、こんなツイートをしていた。

ふたを開けてみると、このツイートがしっかり当たり、あまり普段聴けない曲が詰まったセットリストであった。

9月19日、ツアーファイナルEX THEATER ROPPONGI公演の模様をレポートする。

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今回もライブ本編以前の前置きから書いておきたい。

ライブ本編は印象に残った場面、またライブ中に感じたことなども含めて、様子をレポートする。

ライブ前の出来事~当日のライブ直前まで

「2022年秋のワンマンツアー”闇に蠢く”」と題して行われた今回のツアー。9月4日からファイナルまで、約2週間で7か所を回るツアーである。

最初にも述べた通り、何の縛りもないツアーであり、選曲も全く読めない。そんな中で始まった青森公演、そして札幌公演と2か所が行われた頃である。

何やらTwitterのタイムラインはざわついており、「今回のセトリはすごい!」「札幌は全然曲が違うぞ」と気になる発言ばかりであった。

最近のツアーは、一切セトリのネタバレはしないように参加していた。やはり新鮮な気持ちでライブは見たいし、「◯◯は東京でやってくれるだろうか」と心配するのも疲れるからだ。

しかしどうやらレア曲が多いライブとなれば、何が演奏されるか知っていても十分楽しめるのではないか、と思って、チラッと青森・札幌の曲目を見ることにした。

実はその時点ではそれほど驚きはなかった。と言うのも、だいたいこれまでのライブで聴いたことのある曲だったからである。

そして好きな曲が並んでいたので、どの曲が来ても嬉しいし、来なかったとしてもショックを受けることもないな、と思って気楽に構えてツアーファイナルを迎えることとした。

また嬉しい知らせがあり、人間椅子としては初めて全会場がソールドアウトになったとのこと。唯一事前にソールドアウトになっていなかった博多公演も、当日には売り切れたようである。

なお、ここ最近は毎回行われている配信の告知がなく、どうやら配信はないらしい。ただライブ前日のナカジマ氏のツイートで、わざわざ「手順」と書いてあるのが引っかかった。

「手順」とは特効(紙吹雪など視覚効果のこと)なのか、あるいは配信はないものの映像収録の「手順」があるのか、少し期待しつつ会場に行くことにした。

9月19日、大型の台風が接近する中でのライブ。関東は時折土砂降りの雨が降り、お足元の悪さにおいては日本一、いや世界一のバンドと言ってもいいのが人間椅子である。

会場は六本木にあるEX THEATER ROPPONGIである。2013年開業の新しい会場で、ライブハウスを兼ねた劇場という形態である。

人間椅子としては、2016年4月17日「続・怪談 そして死とエロス」公演以来である。初の海外(ロシア)公演が決定という頃(実現しなかったが)で、少し懐かしい場所だ。

人間椅子、初の海外公演が決定「我々はロシアに行ってまいります」
人間椅子が昨日4月17日に東京・EX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブ「続・怪談 そして死とエロス」を...

この会場は入り口にモニターがあり、公演名が表示されている。写真を撮影する人たちも多く見られた。

座席表を見る限り、前は通路で良かったと思っていたが、入場してみるとぎっちりと席が詰まっていた。ただ段差を上がったところなので、眺めはばっちりである。

そして映像撮影用のカメラが何台も配置されているのを確認した。やはりナカジマ氏の「手順」とはこのことだったのか。

ライブ本編

ほぼ定刻通りに暗転し、今回のSEは「新青年まえがき」。そして1曲目は、和嶋氏が高校時代に作ったと言う「鉄格子黙示録」。

鈴木氏のヘビーなベースから入り、ライブの始まりとしてもお馴染みの楽曲だ。ギターがやや小さい気もするが、聴きとりやすい音作りに思えた。

そのまま2曲目に披露されたのは、2001年の10th『見知らぬ世界』より「侵略者(インベーダー)」である。思わず、こうした久しぶりの楽曲ではテンションが上がる。

当時の音源ではテルミン風のエフェクトを用いていたが、今はもちろん本物のテルミンソロが披露される。

最初のMCでは、鈴木氏が「日ごろの感謝を込めて、レアな楽曲をたくさん披露する。」とのこと。

そしてUFOにアブダクションされたことで生まれた「鉄格子黙示録」、そして「侵略者(インベーダー)」とUFOシリーズだったとの解説もあった。

和嶋氏からは「なぜレア曲になるかと言えば、難しいか盛り上がらないか」との発言。「ここから盛り上がらないですよ」と鈴木氏の発言から、難しくてやらなくなったと言う「表徴の帝国」へ。

この曲が難しくてやらなくなった、という話をどこかで聴いたので、最近書いた記事で、”訳アリでやらなくなった曲集”に入れてしまっていた。

しかし早速今回まさかの披露だった。七五調の歌詞に、プログレッシブロック風味が加わった和嶋氏らしい楽曲だ。

鈴木氏のベースにトレモロがかかり、続く楽曲は「狂気山脈」。時折披露されるこの曲の見どころは、ラストの長い和嶋氏のギターソロであろう。

今回もたっぷり披露されたが、個人的にはまだまだ長くても良いのでは?と思うほどである。そのままH.P.ラヴクラフト繋がりで、2013年の17th『萬燈籠』から「時間からの影」。

プログレッシブな展開からギターソロ、そして再びイントロのアルペジオに戻るところ。時々和嶋氏は、こういった一人になるところで緊張して間違えることがあるが、今回は何とかクリア。

続くMCでは、何やら和嶋氏が祭りの話を熱弁し始める。セトリを見ていたので、次の曲が何となく予想がつく中、思いのほか長話になってしまう和嶋氏。

「お客さん座り始めちゃったよ」と鈴木氏に突っ込まれながら、1998年の7th『頽廃芸術展』から「菊人形の呪い」へ。

個人的にはとても聴きたかった曲。今回は”秋の”ワンマンツアーと題しており、まさにぴったりの選曲である。

そしてちょうどライブの19日までは暑く、翌日から涼しくなる予報だった。そんなまさに夏から秋への変わり目、不気味で悲しいこの曲がとてもよく似合う。

なお今日の和嶋氏はかなり喉の調子が厳しそうだった。全体にどの曲も高いキーが出ていない様子だった。

続く「宇宙海賊」は印象的な場面だった。人間椅子のライブには、必ずと言って良いほど、どこかのタイミングでメンバーもお客さんも、弾ける瞬間と言うものがある。

今回はレア曲が続いていたため、ようやくここでその瞬間を迎える。2021年の『苦楽』の中でも、鈴木氏らしさが出たこの曲は、一気に会場をヒートアップさせた。

そして2人がピョンピョン跳びはね、そしてドラムセットの前で座って演奏するシーンがあった。

それはライブと言う枠を超えた、何か自由な瞬間で、異形の存在が見せる狂気のようでもあり、一方で「和嶋くん」「研ちゃん」の2人が部室で遊んでいるようでもあった。

今回のライブではH.P.ラヴクラフトのタイトルからとった楽曲が多いとのこと。そして鈴木氏は、H.P.ラヴクラフトのくどい文体が良いと語っていた。

そして、そのくどさはどこかで感じたことがあるな、と思ったら、「狂気山脈」のギターソロのようだ、としっかり話しにオチを付ける。

場が和んだところから、次の曲もH.P.ラヴクラフトから「ダンウィッチの怪」。一気に会場は極悪なムードと変わり、じっくりと聴き入る人が多いように見えた。

ちょうど自分のいた席から数列前を見ると、20代くらいの若い女性が何人もいるのが分かった。いったいどこで人間椅子を知り、どうやって好きになったのか、聞き取りしてみたい思いだった。

少なくとも筆者が人間椅子を聴き始めた2000年代前半、あんな若い人が人間椅子を聴くことはほぼなく、人間椅子の音楽が変わっていないことを想うと、時代が変わったんだな、としみじみ思う。

今回のセットリスト、筆者が人間椅子のライブに行き始めた2000年代始め頃を思わせる楽曲が並んでいる。何だか懐かしい思いがこみ上げてくるのだった。

続く楽曲は、これまた2000年代始めには定番だった1999年の8th『二十世紀葬送曲』から「黒い太陽」。低音の塊のようなリフ、心の闇を歌った歌詞が、懐かしいあの頃の人間椅子である。

そして和嶋氏のMCを挟んで、近年最大のヒット曲「無情のスキャット」である。2000年頃までタイムスリップしていた意識は、ここで現代へと戻ってきた。

さて、ライブは終盤に向かっていく。ナカジマ氏が話し始め、何とライブの翌日が56歳のお誕生日である。

ナカジマ氏のコーナーも、少し久しぶりの「蜘蛛の糸」。そのまま爽快なイントロから、「地獄の料理人」へとなだれ込む。

この曲は、かつて「泣いたって」の部分で手拍子をやるのが定番だった。しかし前の方を見る限り、手拍子をしている人の方が少数派に見えた。

この曲がリリースされた2014年にはどんどん新しいファンが増えていたが、またその頃ともファン層は変わってきているのだろうか。

ラストは1990年の1st『人間失格』から「天国に結ぶ恋」「針の山」で本編は締められた。

アンコールの呼び出しに応え、ナカジマ氏は今回のツアーTシャツ、和嶋氏は会場限定のねぷた絵Tシャツで登場。

何やら川端さんのスマホで確認をする鈴木氏。その後、歌詞を確認していたことが判明した。

アンコール1曲目は、残っているH.P.ラヴクラフトの曲「宇宙からの色」。そして鈴木氏による「皆様のご健康を~」とこれまた懐かしい発声から「地獄風景」。

「地獄風景」は最近も演奏されることはあったが、今回はなぜか懐かしさがこみ上げた。今回の2000年代始めに戻ったようなセトリがそうさせたのだろうか。

学ランを着て、三々七拍子をやっていた長髪の鈴木氏が目に浮かんだ。怒涛の演奏でアンコール1回目は終了。

ダブルアンコールでメンバーが登場すると、ナカジマ氏の誕生日のお祝いをすることに。ケーキのロウソクに火はついておらず、これは東京都の条例があるのでは?などというMCもあった。

そのためエアで火を消す動作だけ行い、めでたく会場が一体となってお祝いすることができた。56と形作られたバルーンも可愛かった。

なお、もうすぐ還暦も近いというMCが先にあり、常に赤いふんどしをしているというナカジマ氏。何とここで、中からチラッとふんどしを出して見せるナカジマ氏だった。

和嶋氏からは今後のライブ・リリースの予定とともに、来年はアルバムをリリースとの告知。またしても「戦慄するような~~」と自らハードルを上げまくるスタイルであった。

どうやら今年残っているライブは多くはないようで、曲作り期間に入るのだろうか。最後は「どっとはらい」にて、ライブが締められた。

全部で17曲。長めの楽曲が多かったからか、割と長いライブだったように感じた。

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全体の感想

さて今回のライブ、あまり演奏されない楽曲が多めのライブであり、やはりずっとライブに行き続けている筆者には嬉しい内容だった。

選曲された楽曲に関しては、また別途記事を作ろうと思っているので、ここでは感じたことを書き留めておきたい。

今回のライブ、きっといつの時点でファンになったのかによって、感じ方は大きく違ったのだろうと思っている。

近年ファンになった人にとっては、そもそも生で初めて聴く曲ばかりだったことだろう。音源を掘り下げ、好きになったあの曲が生演奏される喜びに溢れていたに違いない。

もっと初心者の人は、分からない曲があってちょっと悔しい思いの人もいたかもしれない。

いずれにしても「レア曲満載のライブだった」という感想になるのだろうと思う。

しかし筆者の感想は、「懐かしいライブだった」というものである。きっと長く通っている人は、同じ感想だったのではないだろうか。

そもそも選ばれた楽曲が、2000年始め頃を思い出させるものだったし、それ以外にも『萬燈籠』『無頼豊饒』と言った、人間椅子が盛り上がって来た2013~2014年頃の曲も、もはや少し懐かしい。

そして多くの楽曲を準備し、会場によって大きくセットリストが変化するのも、昔の人間椅子を思い出させる。

ただかつては無理をしてでもたくさんの曲をやり、少々荒っぽい演奏も若さで乗り切っていた。一方今回は、たくさんの曲だったが丁寧に練習し、万全の状態で披露していた様子である。

ナカジマ氏はレア曲が多いため、個人練習に入っていたと言うし、270曲以上ある人間椅子の楽曲から、何とかたくさんの曲を聴いてもらいたいという思いを感じたライブだった。

まだコロナ禍で収容人数の制限がある中ではあるが、レア曲尽くしの選曲で全会場ソールドアウトとなったのである。

やはり色んな曲を聴きたい、というファンが多いことの表れだろう。ぜひ今後も、10年、15年と披露されていない曲を発掘して、披露されることに期待したいところだ。

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