【新旧比較レビュー】ジャパハリネット – RE:BEST (2020)

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ジャパハリネット
画像出典:Amazon

2000年代前半を中心に活躍したパンクバンド、ジャパハリネット。2007年に解散するも、2015年には再結成を果たしており、結成20年を迎え活動を続けている

メンバーは各々仕事を持つなどして、メジャーで活動していたほどの頻度ではないもののリリース活動も行っている。2018年には7thアルバム『RE:JAPAHARINET』をリリースしている。

そして今年2020年3月25日にはベストアルバム『RE:BEST』をリリースした。ファン投票による選曲で、新たにレコーディングし直したスペシャルなベストアルバムとなっていた。

このアルバムのリリースツアーは残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響により、ほとんどの日程が延期・中止となってしまった。

この記事では改めて『RE:BEST』の内容を振り返り、新録されたバージョンの楽曲について掘り下げて紹介していきたい。今のジャパハリネットが詰まった作品になっているのでおすすめだ。

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新録ベストアルバム『RE:BEST』について

no. タイトル
1哀愁交差点
2ワスレナコウタ
3ジオラマの花
4PEOPLE×PEOPLE
5悲しみ色
6あるがために
7対角線上のアリア
8鼓動の矛先
9黎明時代
10星霜のさくら
11ステレオロンダリング
12約束の場所
13贈りもの (Acoustic ver)
14ハリハリRADIO

まずは本作の概要を振り返っておこう。

この『RE:BEST』はファン投票によって選ばれた楽曲が収録されている。解散前にリリースされたベスト盤『天国ベスト〜BEST FIRE OF HEAVEN〜』がライブの定番曲を集めたベストになっている。

一方で『RE:BEST』は必ずしも定番曲のみならず、ファンの間で人気に高い曲が選ばれている。よって人によっては意外な選曲と思われるかもしれないが、確かに隠れた名曲揃いとなっている

たとえばシングルのカップリング曲である「悲しみ色」「あるがために」が選ばれており、レアな楽曲も収録されていることが分かる。

そして解散前に発表された12曲については、全て新たにレコーディングされたものだ。そのため概ね当時のアレンジを再現しつつも、細かい部分ではブラッシュアップされたものになっている。

なお全体を通じた変更点として、解散前の楽曲はすべて半音下げチューニングで演奏されている。

既に言われている通り、ボーカル城戸けんじろ氏の喉が不調であり、レコーディング時も調子が良くなかったようである。

加えて再結成後の名曲「PEOPLE×PEOPLE」と、シングル『PEOPLE×PEOPLE』に収録されていた「ハリハリ79.7」の歌詞違いバージョンである「ハリハリRADIO」も収録されている。

ブックレットには各楽曲について、メンバーからのコメントも寄せられている。初めて聴くエピソードも多数あり、読みながら楽曲に触れるのも良いのではないだろうか。

以下のように作品紹介映像も公開されている。

『RE:BEST』発売を記念して行われた配信「無観客だよ!全員集合!」についての記事

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各楽曲の新旧比較レビュー

それでは収録されている楽曲について、1曲ずつ紹介していきたい。ここではオリジナルバージョンと異なる点を中心に、比較しながらおすすめポイントをまとめている。

その他にオリジナルバージョンの収録作品、ニューバージョンのおすすめ度をそれぞれにつけている。

哀愁交差点

  • オリジナル:3rdシングル『哀愁交差点』、2ndアルバム『現実逃走記』、6thアルバム『天国ベスト〜BEST FIRE OF HEAVEN〜』
  • おすすめ度:★★★★☆

ジャパハリネットのメジャーデビューシングルにして、オリコンチャート10位に輝いた代表曲が1曲目に配置されている。『天国ベスト』にも収録されたが、やはり不動の人気曲である。

代表曲だけにアレンジはほとんど変更はされていない。ただし当時の「青春パンク」はジャパハリも含めギターが大きく収録されているが、今回は全体的にちょうど良い音量になっている。

より全体の音のバランスが改善されており、「哀愁交差点」の描く世界観にアレンジがより近づいたように感じて感慨深く思った。

ワスレナコウタ

  • オリジナル:2ndアルバム『現実逃走記』
  • おすすめ度:★★★★☆

2曲目も『現実逃走記』から、筆者の印象としてはややマニアックな選曲であった。

3rdシングル『哀愁交差点』に弾き語りの「わすれな小唄」があり、その歌詞・メロディを使いつつバンドサウンドに仕立てた楽曲である。

「哀愁交差点」に続き、ほとんどアレンジに変更点はない。ただベースラインはオリジナルより動きが見られ、より音に動きがあるように聞こえるなど、細かい点で工夫がなされている。

アルバム全体に言えることだが、城戸氏のボーカルが明るさを帯びている。改めてオリジナルを聴くと思いのほか陰のある声であったことに驚いた。

ジオラマの花

  • オリジナル:2ndアルバム『現実逃走記』
  • おすすめ度:★★★★★

3曲目も『現実逃走記』から、ライブでも頻繁に演奏されていた人気の楽曲「ジオラマの花」である。とても良いメロディであり、新録されたことがまずは大変喜ばしい。

そして新録バージョンは格段にアレンジが良くなっている。ちょうど良いテンポに下げられており、ギターも緩急の付いた弾き方にブラッシュアップされている。

オリジナルは今聴くとやや全体に単調なアレンジとなっていたが、ライブを重ねて大きく楽曲が成長した曲でもある。筆者としては断然新しいバージョンが良いと感じている。

PEOPLE×PEOPLE

  • オリジナル:10thシングル『PEOPLE×PEOPLE』、7thアルバム『RE:JAPAHARINET』
  • おすすめ度:★★★★★(オリジナルと同じ)

再結成後に発表された楽曲として、筆者としても最も推している名曲「PEOPLE×PEOPLE」が収録された。この曲だけはアルバム『RE:JAPAHARINET』に収録されたバージョンと同じで、新録ではない

ジャパハリネットらしい疾走感を持ちつつ、優しいメロディラインが特徴的だ。『天国ベスト』に収録された新曲「Value Added Network」を思い起こさせる、スケールの大きさも感じさせる

現在のジャパハリネットの良さが詰まった楽曲であり、再結成後の活動を知らない人にもぜひ聴いてほしい名曲だ。

悲しみ色

  • オリジナル:6thシングル『金色の螺旋-コンジキノラセン-/美しき儚きかな』
  • おすすめ度:★★★★★

シングルにのみ収録されているレア曲ながら、隠れ人気曲としてライブでも演奏されていた曲である。コード進行が凝っており、実はアレンジの仕方がいろいろありそうな曲だ。

オリジナルバージョンは、3rdアルバム『東京ウォール』で従来と異なる音作りになった後に、最初にリリースされた作品だけに、これまでのギターが前面に出たサウンドとなっていた。

新録バージョンでは全体に広がりがあり、明るい音になっている。

そして筆者としては不自然に感じていた「果てはない~」のクリシェのコード進行の部分が、新録では修正されていた。楽曲全体の完成度が大きく上がったのがこの「悲しみ色」のように思う。

あるがために

  • オリジナル:4thシングル『遥かなる日々』
  • おすすめ度:★★★★★

「悲しみ色」とともにカップリング曲である「あるがために」が収録された。筆者は初めて手にしたシングルだっただけに、非常に思い入れの強い1曲である。

新録バージョンではよりアコースティックギターとバンドサウンドとのアレンジが良くなっている。コーラスも効果的に挿入されており、より肩の力が抜けた印象だ。

曲の内容は、若さを感じる歌詞ながら、音楽的には渋い背伸びをしたような曲であった。メンバーも年齢を重ね、より楽曲に説得力を感じさせる演奏となっており、今回のバージョンが非常に良い。

対角線上のアリア

  • オリジナル:3rdアルバム『東京ウォール』
  • おすすめ度:★★★☆☆

3rdアルバム『東京ウォール』はプロデュースに土屋昌巳氏を迎え、”青春パンク”的なサウンドから脱却した実験的なアルバムとなった。中でも最も先進的で、MVも制作された推し曲がこの曲だ。

当時はサウンドや音楽性の変化に賛否両論あったように思うが、筆者は非常に『東京ウォール』を気に入っており、「対角線上のアリア」も最も好きな楽曲の1つであった。

今回は4人のバンドサウンドがクリアに聞こえるアレンジとなっている。オリジナルに比べると、よりライブでのアレンジに近い形になっているだろう。

おすすめ度を星3つにしたのは、やはりオリジナルのアレンジのインパクトが強いからだ。ギターの音作りにしても、緻密に重ね録りされていたオリジナルバージョンの印象が勝つ。

鼓動の矛先

  • オリジナル:2ndアルバム『現実逃走記』
  • おすすめ度:★★★★☆

『現実逃走記』に収録されたマイナーキーのロック色の強い楽曲であり、ライブでも人気のある楽曲である。このベスト盤の中でも、雰囲気を変える意味でも重要な楽曲だ。

この曲の最も大きな変更点はギターソロである。ギターの中田氏もブックレットで書いている通り、オリジナルバージョンでは、オクターブ奏法によるフレーズを弾くに留まっていた。

新録バージョンではしっかりとしたギターソロが挿入されている。中田氏のギターソロも当時よりパワーアップしており、これもキャリアを積んだことによる良さではないかと思う。

黎明時代

  • オリジナル:3rdアルバム『東京ウォール』、オムニバスアルバム『LOVE for NANA ~ONLY1 TRIBUTE~』
  • おすすめ度:★★★☆☆

ジャパハリネットのアルバムに収録される以前に、漫画「NANA」のトリビュートアルバムに収録された楽曲である。ジャパハリの中では珍しいタイプのミドルテンポの楽曲だ。

これも「対角線上のアリア」同様、『東京ウォール』のアレンジに引っ張られてしまい、おすすめ度は低めにつけてしまった。オリジナルは独特な浮遊感のあるサウンドに仕上がっていた。

やはりライブで演奏するようなバンド感のあるアレンジに仕上がっており、ジャパハリネットらしい音になっている。しかし元々特異な立ち位置の曲だけに、逆に浮いてしまった感もある。

なおこの曲のみオリジナル時点で半音下げチューニングで演奏されていたため、キーの変更はない

星霜のさくら

  • オリジナル:7thシングル『星霜のさくら』、4thアルバム『回帰線』
  • おすすめ度:★★★★★

4thアルバム『回帰線』の先行シングルとしてリリースされたこの楽曲。ジャパハリネットの原点に戻ったようなストレートなパンクに仕上がっており、オリジナルでは簡素なアレンジとしてまとめられていた。

アレンジの大きな変更点はないものの、音全体の温かみや厚みを感じさせるようだ。オリジナルに比べベースラインの動きが多いこと、ギターの音の厚みを感じることなど、細かな変化によってブラッシュアップされているように感じる。

筆者はオリジナルのアレンジが今一つ好きではなかったが、今回の音作りが曲の世界観とばっちり合っていると感じた。

ステレオロンダリング

  • オリジナル:5thアルバム『夢色ロジック』
  • おすすめ度:★★★★☆

ジャパハリネットの解散が発表された後にリリースされた『夢色ロジック』からの楽曲である。やや変化球の楽曲が多い中で、最もジャパハリネットらしい楽曲であるだけに、実は人気の高い楽曲であった。

オリジナルではジャパハリの初期衝動的なストレートかつシンプルに疾走するアレンジだった。新録では少しテンポを落とし、ギターフレーズが豊かに取り入れられている印象である。Aメロもコードだけでなく、フレーズを入れることで音に広がりが出ている。

オリジナルに比べて優しい印象のアレンジとなっており、歌のメロディの良さが際立って聞こえてくるだろう。

約束の場所

  • オリジナル:4thアルバム『回帰線』、6thアルバム『天国ベスト〜BEST FIRE OF HEAVEN〜』
  • おすすめ度:★★★★★

前回のベスト盤『天国ベスト』にも収録されており、ライブでも定番の人気曲である。「贈りもの」に似た曲調であり、ジャパハリネットの初期を感じさせるような楽曲である。

オリジナルは一切のテクニカルなフレーズを排した極めてシンプルなアレンジだった。確か意識的にシンプルにしたらしいが、名曲だけに個人的にはもう少し音の広がりを感じさせるアレンジが良かったかなと思っていた。

今回の新録で見事なアレンジに仕上がったと感じた。やはりギターはコードのストロークや、サビの重ね録りによって音が豪華になっており、この曲の良さをより引き出しているように思う。

やはりジャパハリの曲は年齢を積み重ねたところに、さらに魅力が増すのだと感じさせてくれる。

贈りもの (Acoustic ver)

※動画はオリジナルバージョン
  • オリジナル:1stアルバム『満ちて来たる日々』、6thアルバム『天国ベスト〜BEST FIRE OF HEAVEN〜』
  • おすすめ度:★★★★☆

このベスト盤には『満ちて来たる日々』から唯一の収録楽曲である。『天国ベスト』に多数収録されたためと思われるが、中でも最も人気があると言っても良いボーカル城戸氏による名曲が収録された。

今回は全くアレンジを変えて、アコースティックバージョンでの収録である。もともとメロディが耳に残る楽曲であり、フォークが好きだと言うボーカル城戸氏の作曲であることなどからも、必然的なアレンジと言えよう。

もともとこの曲が持っている、ほっこりするような魅力がより引き立つアレンジになっていると感じた。とは言え「アップテンポなアレンジが好き」という人もいることと思われ、星は4つの評価とした。

ハリハリRADIO

  • オリジナル:本作が初収録(歌詞違いバージョンは10thシングル『PEOPLE×PEOPLE』)
  • おすすめ度:★★★☆☆

この曲はジャパハリネットが曲を作り、歌詞の一部をラジオ番組「ハリハリラジオ」内で募集してリスナーが歌詞を作った「ハリハリ79.7」がもとになっている。実際に作られた歌詞は以下のURLより確認することができる。

ジャパハリネットのハリハリラジオ | JOEU-FM愛媛
FM愛媛の公式ホームページです。番組、イベントなどFM愛媛の情報をお届けします。

本作に収録されているのはベース鹿島氏による歌詞で、愛媛や松山など地元色の強い言葉は使われていない。筆者は先に「ハリハリ79.7」を聴いたせいか、あまり「ハリハリRADIO」の歌詞の響きにしっくり来ていない。

「ハリハリ79.7」のテンションの高さが良い味付けになっている分、少し物足りなさを感じてしまったのかもしれない。

総評・まとめ

ここまでジャパハリネットの新録ベスト『RE:BEST』の全曲についてオリジナルと比較してレビューを行ってきた。筆者としては全体的に満足度の高いリメイクベストアルバムだと感じており、以下に総括を述べたい。

まずはアレンジの細かい修正が行われ、痒い所に手が届くアレンジとなっている点が最も大きい点である。メンバーもインタビュー等で語っている通り、やはり若い時期に制作した音源にはどうしても不自然な箇所が残っている楽曲もあるようだ。

今回選ばれた曲は人気曲であることは前提にあるが、リメイクの必然性がある曲も多く含まれているように感じた。

また個人的には、城戸氏のボーカルが光るアルバムになっていると感じた。喉の調子も良くない中で、ボーカルとしての技量や表現力が格段に上がっていると感じられた。

かつてのような伸びはないと言えばそうだが、より人間味が感じられる抑揚のあるボーカルになったとも言える。

そして全体を通じて、肩の力が抜けた心地よいアルバムとして聴くことができるだろう。かつては若さゆえのヒリヒリした感覚も魅力の1つではあったが、年を重ねた分の余裕と言おうか、バンドの空気感の良さを感じられるアルバムである。

再結成後は無理をしない形での活動ペースを続けているジャパハリネットである。もしかするとジャパハリネットの魅力が引き出されているのが今なのかもしれない。

そんなジャパハリネットの今を感じられる『RE:BEST』をぜひ手に取っていただきたいと思う。

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