人間椅子の22作目となるアルバム『苦楽』のジャケット、そして曲目が発表された。2年2か月ぶりのアルバム発売に、ファンも大いに期待を寄せているところである。
22th ALBUM『苦楽』(8/4発売)収録曲・ジャケ写公開!
— NINGEN ISU(人間椅子)Official (@ningenisu_staff) June 30, 2021
そして…この後24時から今作の1曲目を飾る楽曲「杜子春」の先行配信決定!https://t.co/bc3xKooYq3 pic.twitter.com/Cv3jFa7Wvj
今回はアルバム発売までの約1か月、解禁となった情報だけであれこれ楽しんでみようと言う記事だ。ジャケット、曲目の順に、勝手にアルバムを想像してみたいと思う。
最後に先行配信となった「杜子春」を聴いた感想も述べている。
『苦楽』のジャケットの意味するものを勝手に考える
今回のジャケットは、近年の作風とは一味異なるもので意外性があった。近年はメンバーが写っているものや、イラストの場合も日本風で洒落た印象があったぐらいだ。
しかし本作では、あからさまに不気味とも異なる、何とも言えない不気味さがあるジャケットだ。
ジャケットの原画を担当したのは、イラストレーターの鈴木旬氏である。そしてデザインはおなじみカッサイ氏であった。
人間椅子の新アルバム『苦楽』のジャケット原画、挿絵など描きました。
— 鈴木旬@イラストレーター (@tofuboyrecords) July 2, 2021
デザイン・ディレクションはカッサイマサトさん。
8/4発売です。#人間椅子 pic.twitter.com/CHCB2vCVhY
筆者としては近年の作品の中では、1番気に入っているジャケットかもしれない。
3rd『黄金の夜明け』や9th『怪人二十面相』など、怪しさをイメージさせるアルバムジャケットで、どこか惹かれるものがある。
今回のジャケットにはどこか不穏なムードが漂っているように感じる。そしてその不穏さは、描かれている内容について考えてみると、さらに面白そうだ。
ジャケットに描かれているのは、どうやら弥勒菩薩だ。その弥勒菩薩がりんごを手にしているが、どんな意味が考えられるのか。
弥勒菩薩とは、ブッダの入滅(死して涅槃に入ること)後、56億7000万年後に悟りを開いて、人々を救うとされる菩薩のことだ。菩薩とは仏になるため修行している者を指す。
弥勒菩薩は遠い未来において、救われていない人々を悟りへと導く”救世主”と言う考え方がある。修行の仕方もわからないとされる”末法”の世においては、極めて重要な存在だ。
一方、手にしているりんごは、キリスト教では禁断の果実と呼ばれている。アダムとイヴは、食べることが禁じられていた果実を、悪魔にそそのかされて口にし、楽園を追放される。
禁断の果実は、”罪”の象徴ともされ、神の約束を破った”原罪”として考えられている。
つまり心の平穏を目指し、人々を救うはずの弥勒菩薩が、罪を作る”悪”の道に進もうとしているのである。いったいどんな陰謀によって禁断の果実を手にしてしまったのか。
また弥勒菩薩の目は光っており、ロボットのように見える。別の見方をすれば、弥勒菩薩の姿をした別の何かが、人々を悪の道へ引きずり込もうとしているのかもしれない。
通算22枚目となるアルバム「苦楽」、8月4日発売!! pic.twitter.com/H69vgOfUfc
— NINGEN ISU(人間椅子)Official (@ningenisu_staff) July 2, 2021
上に示した和嶋氏のコメントと併せて考えても、仏教における悟りへの道、そしてそれを阻む悪の心、というテーマがありそうなアルバムであると想像できる。
なおジャケットの弥勒菩薩の目が光っていることで、Twitterの自身のアイコンの目を光らせる”覚醒”現象が流行っているとのこと。
人間椅子 苦楽ジャケ写を受け
— まゆさま (@IkMHnWGlG9M3Qv2) July 3, 2021
次々とミナサマのアイコンが
覚醒しております😂
あまりに楽しくてまとめてみましたが
意外と人数多くて記載の了承を
個々に得ておりませぬ。
勝手に載せたので
お詫び申し上げます🙇♀️💦
もし、私のアイコンは削除で‼️
という方はご連絡下さいませ🙇♀️#人間椅子 #苦楽 pic.twitter.com/jxzPdsLqSq
SNSが浸透した昨今では、様々な楽しみ方があることがうかがえる。
曲目からも勝手に内容を考える
※曲目の初出時、一部誤認がありました。訂正してお詫びいたします。
— NINGEN ISU(人間椅子)Official (@ningenisu_staff) June 30, 2021
【収録曲】
M1.杜子春
M2.神々の行進
M3.悪魔の処方箋
M4.暗黒王
M5.人間ロボット
M6.宇宙海賊
M7.疾れGT
M8.世紀末ジンタ
M9.悩みをつき抜けて歓喜に到れ
M10.恍惚の蟷螂
M11.至上の唇
M12.肉体の亡霊
M13.夜明け前 pic.twitter.com/Qk3XHP4aSn
曲名の第一印象というのは、思いのほか当たっていることが多い。そこで、最初にアルバムの曲目全体を見た時の印象を記しておきたい。
まずは一単語で言い切り型のタイトルが割と多い気がした。人間椅子は「◯◯の◯◯」が多くなりがち(今回も5曲あるが)だが、シンプルなものも多いように思う。
文字の並びを見ると、結構毒々しいタイトルも見られている。「悪魔の処方箋」「恍惚の蟷螂」「肉体の亡霊」などは、どんな曲だろうと期待が膨らむ。
タイトルの並びを見ていると、あまり1つの方向性に揃った印象はない。そうすると、曲調としてもばらける可能性はあるだろう。
筆者としてはハード一辺倒よりは、プログレ風味あり、ポップな曲あり、ドゥームな曲あり、とあちこちに向いているアルバムの方が好きなので、そんな期待も高まるところだ。
また人間椅子は全員ボーカルをとり、ボーカルをとる人が作曲を行うことが多い。そのため曲目が出た時点で、どれが誰の曲なのかの予想が必ず行われる。
筆者もやってみようかと思ったが、既に何人もやっている人をTwitterで見かけたので、勝手に3名分を貼らせてもらった。
(ツアー詳細情報解禁直前に空気を読まず投下)
— ピー吉@ブラジル音楽好き (@pikichi_brasil) July 4, 2021
アルバム「苦楽」作曲者(=ボーカル)予想です。
・和嶋さんと鈴木さんはほぼ同数で交互の並びが多くノブさんは1曲
・ラストは和嶋さんの長尺曲
という近作の傾向に当てはめて考えてみました。
当たる気は全くしません😆#人間椅子#苦楽#ningenisu pic.twitter.com/UyzkuaiLwm
やっぱりGTはワジーか?
— チンピラくん (@tinpira_kun) July 2, 2021
誰のボーカル曲か、こんな感じで予想してみました。#人間椅子#苦楽 pic.twitter.com/glrIgihHsj
人間椅子大先生の新作『苦楽』
— Sigma Brainkiller (@Sigma_B_killeR) June 30, 2021
曲目が出揃ったということで
メインボーカルを予想してみた。
和嶋大先生の味が濃い感じになりそう。
『新青年』の曲目のような
スリーボーカル曲への期待も高まる。 pic.twitter.com/4njDquBY8a
いくつか気になるポイントがある。1つは2曲目の「神々の行進」が和嶋氏・鈴木氏どちらであるか、だろう。
2014年の18th『無頼豊饒』では、1・2曲目が和嶋氏の曲であった前例もある。もしかすると和嶋氏が連続の可能性も捨てきれない。
そうなると、それ以降の予想もずれてくることになる。「悪魔の処方箋」「暗黒王」あたりは、どちらも鈴木氏のようにも思えてくるし、違うようにも思えるし…わからない。
そして「宇宙海賊」がナカジマ氏の曲ではないか、という予想もある。「世紀末ジンタ」も誰がどんな曲を作ったのか気になるタイトルである。
M.9は和嶋氏であろうと言う予測から、M.9以降の予想は概ね一致と言ったところ。
なかなか予想は難しいところだが、発売までの1か月間はそれぞれで予想してみるのも面白いのではないだろうか。
先行配信曲「杜子春」の感想
アルバムから先行して1曲目の「杜子春」が解禁となっている。配信サイトだけでなく、各種サブスクリプションサービスでも聴くことが可能である。
筆者はさっそく聴いてみたので、少しだけ雑感を書こうと思う。アルバム発売まで聴かないという人は読み飛ばしていただきたい。
アルバム1曲目がノーマルチューニングかダウンチューニングか、で印象も決まってくる。そしてイントロはそれが分かりにくいような、意表を突いたものだった。
オルタナティブロックかな、と思うようなコードから始まり、コーラスが入ってくる。驚いているうちに、怪しげなアルペジオが聞こえてきて、ヘビーなリフへとなだれ込んでいく。
ダウンチューニングのリフで押していくタイプの楽曲である。ここ最近はメタル風のリフもあったが、この曲はがっつりハードロックのリフだ。
決して派手なタイプの曲ではない。しかし、しっかりとリフやメロディが練り込まれた楽曲であり、地を這うようなヘビーさが人間椅子の良さを改めて思い起こさせる。
最後の展開は希望を感じさせるようなものであった。この辺りは、今の人間椅子だな、と思わせるものである。
展開も多く、8分近い楽曲ではあるが、あまり長さを感じさせない。楽曲の構成力は毎回さすがだな、と感心してしまう。
ここまで練られた楽曲が出てくると、やはりアルバムへの期待も高まる。そしてアルバムの流れでこの「杜子春」を聴くと、また違った印象になるであろうことも、楽しみだ。
まとめ
今回は、人間椅子の22枚目となるアルバム『苦楽』の発売を前に、あれこれ想像を膨らませてみる記事であった。アルバム発売を待つ時間も、実はとても楽しいものだったりする。
前作『新青年』発売からは、初の海外公演があり、その後はコロナ禍の影響でライブ活動のない時期が続いた。
それでも『映画 人間椅子 バンド生活三十年』の公開と、そのDVD/Blu-rayが発売などのトピックがあった。
コロナ禍という、異例の時期を経た人間椅子の作る音楽はどんなものなのだろう。楽しみにしながら発売を待ちたいと思う。
※『映画 人間椅子 バンド生活三十年』をさらに楽しむために書いた記事
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