”初期人間椅子”(上館徳芳期)の魅力を語る – 伸びしろしかない若さ迸る人間椅子

スポンサーリンク

デビューから25年、30年と年を重ねるごとにブレイクを果たしているバンド人間椅子。そのブレイクは”再ブレイク”と言われるように、人間椅子最初のブレイクはデビューの時代であった。

今回はそんなデビューから数年間の”初期人間椅子”に焦点を当ててみよう。中でも初代ドラマー上館徳芳が在籍した3枚のアルバムの時期について、その魅力を掘り下げていきたい。

変わらない部分と、初期ならではのユニークさなど、現在の人間椅子の礎となる時代の魅力に迫る。

スポンサーリンク

初期人間椅子(上館徳芳期)について

最初に今回取り上げる初期人間椅子(上館徳芳期)について、その概要をまとめておこう。リリースや歴史、そしてドラマー上館徳芳の魅力について書いている。

リリースや歴史

今回扱う時期は、人間椅子の初代ドラマー上館徳芳が在籍した時代である。具体的には1988年頃~1992年である。

作品としては1st『人間失格』~3rd『黄金の夜明け』までだ。ここではその歴史を振り返ろう。

(参考にしたページは、人間椅子のWikipedia青森ロック大臣 練馬調査室である。)

人間椅子の始まりは、ギターの和嶋慎治、ベースの鈴木研一の2人が中学時代に出会うところからであり、その後同じ高校に入学すると、ともにバンド活動を行うようになった。

そして大学進学後、1987年にバンド名を「死ね死ね団」から「人間椅子」に改名し、都内でのライブ活動を開始。1988年にドラマー上館徳芳が加入している

上館氏は鈴木氏の大学の先輩の友人とのことで、和嶋・鈴木両氏より年上のメンバーだった。

そして1989年5月20日にTBS系列のテレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国」(通称:イカ天)に出演し「陰獣」を完奏する。

ねずみ男の奇抜な衣装と独特な世界観、高い演奏力のギャップから大いに注目を浴びることとなる。

イカ天出演後は、同じイカ天出身のバンドとともに学園祭などライブ活動が盛んになる。同年11月10日にインディーズからミニアルバム『人間椅子』(通称0th)がリリースされた。

そして12月19日には初の単独公演「百鬼夜行のおどろ唄」が、サウンドコロシアムMZA有明で行われた。

1990年1月1日、日本レコード大賞の翌日に行われた「輝く!日本イカ天大賞」では日本武道館で演奏。「陰獣」はベストコンセプト賞にノミネートされた。

同年7月21日に1stアルバム『人間失格』がメルダックからリリースされ、メジャーデビューを果たす。イカ天ブームが後押しし、3万枚を超えるセールスを記録する。

夏には全国10か所を回るライブハウスツアーが行われた。(ツアーチラシ

1991年2月21日、1stシングル『夜叉ヶ池』をリリース。シングルながら7分もある楽曲であり、カップリング曲には「人面瘡」が収録された。

3月13日に2ndアルバム『桜の森の満開の下』リリース。1stより売り上げは落ちたものの、バンドブームの影響で、まずまずの売り上げを記録していた。

アルバム発売を記念し、初のホールを回る「桜前線ツアー」を行う。(ツアーパンフレット)4月21日には渋谷公会堂公演が行われ、後にVHS作品「遺言状放送」として8月21日にリリースされる。

8~9月にはライブハウスを回る「遺言状放送ツアー」を敢行。(ツアーチラシ

10月23日に2ndシングルとなる『幸福のねじ』をリリース。12月から翌1992年1月頃にかけて、「幸福のねじツアー」を東京・関西にて行う。(ツアーチラシ

また3月よりFM青森でラジオ番組「人間椅子の遺言状放送」がスタート。

6月21日に3rdアルバム『黄金の夜明け』リリース。大越孝太郎氏によるジャケット、ブックレットの挿絵が印象的であり、大作の多いアルバムとなっている。

アルバムリリースを記念した全国ツアー「黄金の夜明け」を6~8月頃にかけて行った。(ツアーパンフレット

バンドブームも衰退の兆しを見せており、売り上げは右肩下がりに落ちて行ったようだ。レコード会社からはボーカルを入れる、楽曲の方向性を変えるのはどうかと言う提案もあったそうである。

和嶋・鈴木両氏と上館氏の関係は悪化し、理由を付けて、上館氏にメンバーチェンジを言い渡したそうだ。上館氏には家族もでき、バンドはますます売れなくなる苦しい状況にあったようである。

これが上館氏在籍中の人間椅子の主なリリース、活動である。

※上館氏在籍時のエピソードは和嶋氏の著書「屈折くん」にも書かれている

ドラマー上館徳芳の魅力

初期の人間椅子を支えた、上館徳芳氏のドラムの魅力について述べておきたい。

上館氏のドラムを一言で表せば、”実直な”プレイであり、非常に安定感のある演奏である。”実直さ”の所以は、タムなどの手数がきわめて少なく、シンプルにビートを刻むプレイだ。

その抑えたプレイは、人間椅子に長く在籍する(していた)、現ドラマーのナカジマノブ氏、そして先代のドラマー後藤マスヒロ氏と比べると一目瞭然である。

ナカジマ氏はロックンロールのドラムを基調としているため、前に転がっていくようなタム回しが特徴的だ。人間椅子に加入してからよりヘヴィな音になったが、やはりその華やかさは健在である。

また後藤氏は、プログレやフュージョンなどを感じさせる、テクニカルで手数の多いプレイが特徴だった。”怒涛のドラム”と評される、縦横無尽のドラミングが魅力であった。

方向性は違えど、派手さが特徴であったナカジマ氏・後藤氏に比べると、真逆とも言える堅実なドラムである。影響を受けたドラマーはコージー・パウエルだそうだ。

手数が少ないが故の、落ち着きと1音ずつのヘヴィさが際立つドラムとも言える。実は最も王道のハードロック的なドラミングであった、とも言えるかもしれない。

そして手数の少なさから、和嶋・鈴木両氏のプレイを目立たせる役割も担ってきた。文字通り、縁の下の力持ち、と言ったところである。

そして派手で激しいドラムではなかったことで、どんよりと湿り気のあるハードロック、という初期人間椅子の世界観に、非常にマッチしていたドラマーでもあった。

上館氏のドラムだったからこそ、初期の人間椅子の世界観は、よりミステリアスなものになった、とも言えるかもしれない。

※上館氏の機材解説はこちら

スポンサーリンク

初期人間椅子(上館徳芳期)の魅力とは?

ここからは3rdアルバム『黄金の夜明け』までの人間椅子、ドラマー上館徳芳が在籍していた頃の人間椅子の魅力について書いていこうと思う。

下積み時代がなく、いきなりテレビ番組「イカ天」に出演したことでブレイクした人間椅子。しかしその個性はデビュー当時から既に花開いていた。

とは言え、まだ若手時代の人間椅子、初期ならではの魅力もたくさんあるように思う。

個性的な世界観の裏に外部プロデュースの力

まずは初期人間椅子と言えば、その独特な世界観が大きな魅力の1つと言えるだろう。

人間椅子は日本文学のタイトルを借り、またその陰鬱とした世界観を独自に表現した音楽性を持つバンドだ。”イカ天”出演時の「陰獣」は、それを象徴するような楽曲だった。

そのため審査員の中からも、”オタクのバンド”と評する声もあり、ビートロックの勢いが強かった時代に、こうしたコンセプトのしっかりしたバンドは、異質な存在だったようである。

そのためか、現在に比べるとよりオタクやアングラなバンドが好きな人たちに支持されるような向きがあったようである。

現代に至って、多様性の中に人間椅子の存在がようやく認められるようになったが、当時はいわゆる”サブカルチャー”の中に人間椅子は位置づけられることで、ブレイクできた節はあったのだろう。

人間椅子メンバーがただやりたかったこととは別に、レコード会社や事務所の思惑なども加わり、「こんな売り出し方が良いのではないか?」というプロデュースの力が働いているのが初期ではないか。

もちろんまだ音楽業界のことも分からない若手であり、セルフプロデュースする力もなかったのだろう。そのため”人間椅子らしさ”を周りの大人とともに作り上げていたように見える。

それが窺えるのは、やはり現在の人間椅子に比べると、シリアス・ミステリアスな世界観を大切にしていたように思える。顕著なのが1stアルバム『人間失格』である。

本作では徹底して日常的な世界を感じさせない楽曲の世界観となっており、小説や空想の世界、あるいはあの世・地獄と言った内容がアルバムを通じて描かれている。

0th『人間椅子』ではもう少しコミカルなテイストの楽曲なども含まれているが、『人間失格』では限りなく排されており、プロデュースの力が働いているようにも思われる。

基本的にメルダックに在籍した初期の時代、4th『羅生門』まで含め、こうしたシリアスな世界観は踏襲されていったように思える。

ただ鈴木氏の作るナンセンスソングと呼ばれる楽曲には、突如現代的な日本の日常的なテーマが描かれるなどして、そうしたお遊びも散りばめられてはいた。

一方でシリアスな人間椅子のファンも根強くいたようで、鈴木氏のナンセンスソングは賛否両論だったようだ。

その後の人間椅子は、その反動か1995年の5th『踊る一寸法師』がインディーズからのリリースだったこともあり、きわめてテーマの自由なアルバムを作ることとなる。

現在の人間椅子は、また初期のような日常的なテーマの楽曲はなくなっているが、それは自らが選んで作っているものである。(現在はセルフプロデュース)

しかし当時の人間椅子は、メンバー以外の”大人の力”も加わり、独特でシリアスな世界観が作られていたように思える。これは初期ならではの魅力でないだろうか。

和嶋・鈴木の共作、2倍以上のパワーで放たれる名曲たち

1st~3rdアルバム頃までの人間椅子の特徴と言えば、和嶋・鈴木両氏による共作の楽曲の多さだろう。

現在の人間椅子の楽曲は、主にボーカルを担当しているメンバーが作曲を単独で行っているが、初期は2人の名前が作曲者に並ぶことが多かった。

この理由はいくつかあるが、大学時代にお互いの家を行き来しながら作曲をしていた頃の楽曲ストックが使われていたことや、その名残として2人で作られていたものと思われる。

和嶋・鈴木という2人の全く異なる個性が融合して作られた楽曲は、威力2倍以上のパワーを持つ傑作が多数存在している。

和嶋氏は構築された展開や文学的な世界観を、そして鈴木氏はストレートなリフと不気味な曲調を得意としており、二者の要素が混ざり合って初期の人間椅子の世界が作られる。

たとえば和嶋氏の構築された曲に、鈴木氏の不気味なリフが組み合わさることで、ダークかつ品のあるハードロックに仕上がる(たとえば「賽の河原」など)

また「遺言状放送」のようなストレートなロックにも、中間部でややプログレッシブな展開が入ることで楽曲に深みを増すことに成功している。

このようにお互いにないものを補い合う形で、1曲の中に2人の強みを融合させているのだ。だからこそ初期の楽曲は非常に奥行きを感じさせるものがある。

またボーカルは鈴木氏、和嶋氏は楽曲制作やプレイで見せる、というような役割分担も、後の人間椅子よりは明確に打ち出されている。

これはボーカルが特徴的で、かつピッチなど正確さを買われて鈴木氏が選ばれていた、というレコード会社などの意向もあったのかもしれない。

なお和嶋・鈴木両氏による共作の魅力は下記の記事で詳しく書いている。

【人間椅子】和嶋慎治・鈴木研一の共作曲一覧 – その魅力となぜ共作をしなくなったのか?

アルバム毎に成長が窺える、伸びしろ”しかない”若き人間椅子

人間椅子の独特な世界観はデビュー時から変わらないが、やはり成長の過程は窺える。最初に述べた通り、レコード会社など大人たちによって鍛えられた面はあるようだ。

そんな成長過程がアルバム毎にはっきり感じられるのが、この1st~3rdの期間であると言えるだろう。

まずはレコーディングという作業に慣れていく様子が作品からも感じられる。インディーズ時代の0th『人間椅子』は、まだ好きなように録音させてもらったが、1stからは当然プロの厳しさが伴う。

1st『人間失格』はアナログのような音にして失敗したという特殊な事情もあるが、まだ録音するということに精一杯な状況だったことが窺える。

遊び心を取り入れる余裕もまだなく、全力投球で録音した若い人間椅子の音を聴くことができるだろう。人間椅子サウンドが固まりつつあるのが、2nd『桜の森の満開の下』である。

1stよりの反動か、明るいサウンドになっているが、生き生きとしたグルーブが感じ取られる演奏になっている。レコーディングで演奏する、と言うこと自体の慣れが少しずつだができている。

そして3rd『黄金の夜明け』では、安定した演奏に加えて、楽曲の構築度がさらに増している。それは作曲面での成長もありつつ、バンドで曲を作り上げる構築力の上昇がうかがえる。

それゆえ大作が多い傾向になっているが、3rd『黄金の夜明け』を初期の最高傑作に挙げる人が多いのも頷ける出来である。

このようにアルバムの全体的なクオリティ・構築度などの伸びが著しい様子は、初期ならではの特徴と言えるだろう。しかしまだまだ伸びしろを感じさせるのも、この頃である。

また鈴木氏は初期から安定・一貫しているのが特徴であるが、和嶋氏は変化の大きい人物である。とりわけ和嶋氏の成長ぶりは初期にも窺える。

中でもギターソロの作り込みは作品を追うごとに成長している。1stから果敢に様々なフレーズを取り入れてはいるが、やはりまだ断片的な組み込み方であり、ソロの表現力も幅が狭い部分がある。

それが2ndになると、ビブラートなど1音ずつの表現力が一気に成長している。またブルーステイストなフレーズワークが光り、若くして渋さも見え始める。

そして3rdになると長尺のソロが増え始め、緩急付けたフレーズワークも冴え渡ってくる。ソロに関しても4th以降さらに成長していくが、そんな伸びしろ”しかない”初期の爆発力も魅力の1つだろう。

※人間椅子各アルバムのレコーディング時のエピソードは『椅子の中から 人間椅子30周年記念完全読本』に詳しい

初期人間椅子(上館徳芳期)のアルバムレビュー

本記事の締めくくりとして、初期人間椅子(上館徳芳期)でリリースされた3枚のアルバム+インディーズ盤1枚のレビューを行う。

ここまで述べてきたような初期ならではの魅力を中心に書いたものだ。既にこちらの記事で全アルバムレビューも行っているが、今回は初期に限定した内容で書き下ろした。

0th『人間椅子』(1989)

  • 発売日:1989年11月10日
  • おすすめ度:★☆☆

メジャーデビュー前にインディーズでリリースされた通称0thアルバム。後にアルバムに収録される楽曲もあるが、それとは別テイクの演奏を聴くことができる。

人間椅子の核となるような「人面瘡」「陰獣」「りんごの泪」などが収録されており、既に世界観が明確に打ち出されていることに驚かされる。

一方で和嶋氏の作る曲には、歌謡曲などポップな要素も今よりは強く、まだ方向性が定まっていない様子も窺える。

まだ演奏は荒削りの状態ではあり、レコーディングに関してもそれほど厳しいディレクションを受けて作られたものではないらしい。

アマチュアからプロに踏み出そうとする、若々しい人間椅子の当時が詰まった思い出のアルバムのような作品である。

廃盤のためあえて頑張って入手する必要もないが、若い人間椅子の音を感じたい人にはおすすめだ。

1st『人間失格』(1990)

  • 発売日:1990年7月21日、1998年7月23日(廉価盤再発)、2016年11月2日(UHQCD再発)
  • おすすめ度:★★★

人間椅子の記念すべきデビューアルバム。あえて『人間失格』という思い切りネガティブな方向に振り切ったタイトルは、一種のコンセプトアルバムであると宣言しているかのようだ。

実際にそれぞれの曲を見ていくと、0thで見られた弾けた雰囲気の楽曲は極力排され、暗いトーンで統一された楽曲でまとめられた、コンセプト性の高いアルバムと言っても良いだろう。

「鉄格子黙示録」「針の山」「賽の河原」「天国に結ぶ恋」など、現在もライブの中核を担う曲ばかりで、デビュー前から演奏していたストックもあるため、デビュー前の人間椅子の総決算とも言える。

ただ単なる総決算にならず、暗いトーンでまとめるコンセプト性は、レコード会社などの意向もあって形作られたもののようにも思える。

当時は鈴木氏がまだ大作を1人で作る自信がなかったため、作曲の中心は和嶋氏である。そのため本作の楽曲は和嶋カラーが強めで、繊細で文学的な色合いが強くなっている。

鈴木氏はボーカルで存在感を示し、和嶋氏の楽曲に不気味さを添えることに成功している。

なおアナログのようなサウンドを目指したが、音が極端にこもって不評だった。UHQCD化に伴うリマスタリングにより音質は大幅に改善されており、ぜひそちらを入手していただきたい。

2nd『桜の森の満開の下』(1991)

  • 発売日:1991年3月13日、1998年7月23日(廉価盤再発)、2016年11月2日(UHQCD再発)
  • おすすめ度:★★☆

前作のラスト曲のタイトルをアルバムタイトルにする、というユニークな試みがみられる作品。前作ほどコンセプト性は高くなく、自由度が増した印象のある作品になっている。

前作は和嶋氏の作る世界観を押し出していたが、本作は鈴木氏の作るストレートなハードロックが前半で固められ、勢いのある流れを作り出している。

全10曲のうち鈴木氏がメインボーカルを取る曲が7曲あり、そういった面でも鈴木色の強い作品と言えるだろう。

とは言え、和嶋氏単独作である「夜叉ヶ池」「東京ボンデージ」など個性的な楽曲でキャラが立ち、「心の火事」「憂鬱時代」など鈴木ワールドもでき始め、個々の作風が確立され始めている。

また本作ではダウンチューニングが導入され、人間椅子サウンドが本格始動した作品としてみることもできるだろう。

サウンドは前作の反省からか、よりクリアで溌剌としたものになっている。全体のクオリティを高めて、人間椅子の世界観を改めて提示した勝負作という印象もある。

3rd『黄金の夜明け』(1992)

  • 発売日:1992年6月21日、1998年7月23日(廉価盤再発)、2016年11月2日(UHQCD再発)
  • おすすめ度:★★★

バンドのアルバムとしては3枚目が非常に重要になるが、3枚目にして傑作を作り出すことに成功したと言っても良い、超充実作である。

前作までもヘヴィさは感じられたものの、割とコンパクトにまとまった楽曲が多かった。本作は長尺でどっしりとした楽曲を中心に据えたアルバムで、じっくりと聴くことができる作品だ。

前作同様、メインの作曲者は鈴木氏が多くなり、ボーカルも大半は鈴木氏である。しかし前作ほど鈴木色が強くないのは、和嶋氏による緻密に構築された楽曲によるものに思える。

たとえば「審判の日」は鈴木氏考案の名ベースリフが主体ながら、中間部のプログレッシブな展開は和嶋氏のギタープレイも見どころで、両者の個性がぶつかり合う素晴らしい出来である。

また「黄金の夜明け」「狂気山脈」など、これまでにはなかったじっくりと展開していく楽曲も、よく練られたフレーズと展開で全く飽きさせることなく進んでいく。

サウンド面においても、前作で見せたハードな音像をさらに深化させたような極悪なものとなり、ここに至って人間椅子サウンドが確立されたと言って良いだろう。

既にバンドブームは下火になり始め、売れなくなっていくことは目に見えていただろうが、自分たちの好きな音楽をさらに掘り下げていくという宣言にも見える内容となっている。

この作品を最後に上館氏は脱退することになり、既にバンドの空気感はあまり良くなかったかもしれない。しかしそんな雰囲気を感じさせない、気迫のこもった名盤となっている。

【初心者向け】”はじめてのアルバム” – 第7回:人間椅子 絶対おすすめの名盤と全アルバムレビューも

コメント

タイトルとURLをコピーしました