本日紹介したいのはスウェーデンのハードロックバンド、GHOSTである。かなり個性的な見た目だが、音楽はハードロック。
いや、ハードロックに収まらない様々なジャンルをサタニックなハードロックとして昇華している珍しいバンドで、大変に気に入っている。
まずはGHOSTを知らない人向けの【入門編】、そして現在発売されている全アルバムのレビューの【中級編】の2部構成でお送りしたい。
【入門編】GHOSTとはどんなグループなのか?
GHOSTは少し変わった形態のバンドである。
ボーカルのトビアス・フォージ (Tobias Forge)が主催する音楽グループと言う形で、楽器の担当はネームレス・グールズ(Nameless Ghouls)と呼ばれ、名前等は明かされていない。
楽器編成はリードギター(火) ベース(水) キーボード(風) ドラム(土) リズムギター(エーテル)であり、Ghoulsはそれぞれ五つの元素のシンボルマークでもって区別される。
またボーカルのトビアス・フォージ扮するキャラクターの変遷があり、以下のようになっている。
- コピア枢機卿 (Cardinal Copia) (2018– )
- パパ・エメリトゥス3世 (Papa Emeritus III) (2015–2017)
- パパ・エメリトゥス2世 (Papa Emeritus II) (2012–2015)
- パパ・エメリトゥス1世 (Papa Emeritus I) (2008–2012)
そしてどうやら3月3日にメキシコシティ公演で、新キャラクター“パパ・エメリトゥス4世”をお披露目したらしい。
キャラクター設定としては悪魔崇拝の司祭ということだそうだ。
と、あれこれと設定があるのだが、シンプルに音楽はかっこいいし、ライブはとてもエンターテインメント性に溢れているところが重要だ。
ちなみに2014年にサマーソニックで初来日を果たし、2019年にDownload Festival Japan 2019で再来日している。
僕もDownload Festivalは見に行ったが、名だたるメタルバンドの中にあっても、異彩を放った存在感を示していたように思う。
そしてその当時まだちゃんと聴いていなかったのだが、ライブを見てから次々音源を集めてハマってしまった。
そんな中毒性のあるGHOSTだが、まずは2016年に第58回グラミー賞(2015年ベスト・メタル・パフォーマンス部門)を受賞した、この曲を聴いてみていただきたい。
Cirice
僕はこの曲がかなり気に入っていて、ヘビーなリフにシンプルな展開でありながら、美しいメロディというところも素晴らしい。
さらにいくつか代表的な曲を紹介しよう。
Square Hammer
この曲が最も有名な曲なのかもしれない。とてもキャッチ―なリフであり、頭に残るメロディである。
ちなみに2016年のミニアルバム『Popestar』に収録であるが、この曲のために買っても良いと思う。しかも他の収録曲のカバー曲もどれも素晴らしい。
Year Zero
2013年の『Infestissumam』に収録。おどろおどろしい雰囲気ながらも、リズムはディスコ調。
GHOSTらしさ全開の曲である。
現在、以下の4枚のアルバムが発売されている。
- Opus Eponymous(2010年)
- Infestissumam(2013年)
- Meliora(2015年)
- Prequelle (2018年)
- Imrera(2022年)
ちなみに2021年にニューアルバムのリリース予定だそうだ。
※2022年に5thアルバム『Impera』がリリースされた。
それでは次の【中級編】では5枚のアルバムについて、僕なりにそれぞれの作品で音楽性の違う部分を感じたところなどを書いてみたい。
初めて聴く人はどれから買おうか迷った時の参考に、すべて聴いた人には何か新しい発見があれば幸いである。
【中級編】全アルバムレビュー
※ちなみに僕は
Meliora(2015年)→Prequelle (2018年)→Opus Eponymous(2010年)→Infestissumam(2013年)
の順で入手した。
1st『Opus Eponymous』(2010年)
記念すべきファーストアルバム。
サウンド的にはB級感が漂うのであるが、曲はどれもおどろおどろしいリフが並んでいてかっこいい。
「Deus Culpa」~「Con Clavi Con Dio」の流れから、いかにも怪しげなメタルと言う趣で始まる。
ただゴリゴリに押し通すのではなく、「Ritual」や「Death Knell」ではサビにとても美しいメロディを持ってくる。この辺りはこれ以降の作品にも受け継がれているだろう。
後の作品と比較すると、サタニックな色合いが最も強く、ドゥーム色もあり、そして一番メタルっぽい気がする。
人間椅子のベース・ボーカルの鈴木研一さんが絶賛していたことからも、B級のサタニックメメタルが好きな人には最適のアルバムだ。
※人間椅子の鈴木研一がおすすめするハードロックに関する記事はこちら
もう少し洗練されたものを聴きたい方は、最初に買わない方がいいかもしれない。
ライナーノーツにBURRN!の奥野氏が、
「BEACH BOYSが地獄に堕ちてANGEL WITCHやMERCYFUL FATEと出会ったようなロック」
と書いていたのが、言い得て妙である。
2nd『Infestissumam』(2013年)
2枚目はファーストのサタニックなムードを踏襲しつつも、音楽的には広がりを見せている。
「Per Aspera ad Inferi」や「Depth of Satan’s Eyes」は前作のようなヘビーなロックを聴かせてくれる。
その一方で、「Jigolo Har Megiddo」や「Ghuleh / Zombie Queen」ではハードロックらしからぬリズムを使ったりしている。
音楽的に言うと、一番オルタナティブロックに寄った作風なのかと思っている。
ただ60年代のオールドロックの要素をハードなサウンドで演奏しているので、オルタナぽく聞こえるのかもしれない。
コテコテのメタルからは外した作品と言う印象なので、メタル臭さが苦手な人には最もおすすめのアルバムだ。
3rd『Meliora』(2015年)
前作よりもさらにサウンド的にパワーアップした3作目。僕はこの作品が一番好きだ。
先ほど紹介した「Cirice」もそうだが、「From the Pinnacle to the Pit」などもヘビーでカッコいいリフがある。
また「Mummy Dust」や「Absolution」などもアッパーに進んでいくハードロックが心地いい。
このアルバムは全作品の中では最もハードロックの要素を強く感じる。もちろん歌モノの作品もあるのだが、全体的にリフの良い楽曲が連なっている。
緩急のバランスも良く、アルバム通して聴くのにもおすすめである。個人的には最初に買うのに良いアルバムではないかと思っている。
4th『Prequelle』(2018年)
前作までのドゥームメタルの雰囲気は影を潜めて、ポップな仕上がりになっている。
「Rats」や「Dance Macabre」はアメリカ進出を意識したかなりポップな要素を持っている。特に「Dance Macabre」はこれまでなかったようなポップさを持っている。
トビアス・フォージのインタビューでも、悪魔崇拝しているが、サウンドはカンサスみたいなプレイもできるバンドを目指しているということを語っていた。
それを聴けば驚くべき変化ともいえないのではないかと思っている。
ただヘビーなリフを聴かせてくれるのは「Faith」くらいとなったので、ファーストが好きな人にはちょっと物足りないのかもしれない。
一方で「See the Light」や「Witch Image」、「Life Eternal」などは屈指の良いメロディを持っており、それだけでも評価は高いアルバムだと思う。
この作品は全作品の中では、最もポップスに寄ったアルバムと言えよう。気に入った楽曲があれば、これを最初に買ってもいいのかもしれない。
5th『Impera』(2022年)
前作からの80年代ハードロック路線をさらに深めた作品で、非常に聴きやすい仕上がりになっている。カンサスなどAORも好きだと語っていたトビアスだが、本作ではその路線を推し進めた。
一方でシングルリリースされた『Call Me Little Sunshine』などは、シンプルな展開と1つのリフを繰り返す従来のスタイルを守っている。
詳しくは筆者によるアルバムレビューをお読みいただきたい。
まとめ
この記事では、前半ではGHOSTのバンド紹介、そして後半では全オリジナルアルバムのレビューを行った。
リリースされたどの作品もクオリティが高いので、気に入ったものから手に取っていただければと思う。全てカラーが異なり、好みの作品から手に取るのも良いだろう。
そして2021年のニューアルバムの発売も楽しみに待ちたいところだ。現時点ではまだシングルリリースのみであるが、アルバムのアナウンスも楽しみにしたい。
※2022年に5thアルバム『Impera』がリリースされた。
<GHOST関連記事>
※GHOSTの訴訟問題、その後の作品への影響について考察した記事
※GHOSTのカバー曲まとめ – すべてGHOSTの曲にしてしまう個性的なカバーアレンジの魅力とは?
<据え置き型の音楽再生機器に迷っている人におすすめ!>
Bose Wave SoundTouch music system IV
これ1台でインターネットサービス、自身で保存した音楽、CD、AM/FMラジオを聴くことができる。コンパクトながら深みがあり、迫力あるサウンドが魅力。
自宅のWi-FiネットワークやBluetooth®デバイスにも対応。スマートフォンアプリをリモコンとして使用することも可能。
コメント