【人間椅子】ライブのセットリスト傾向の変遷について – 定番曲やレア曲のバランスはどう変わったか?

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2026年は人間椅子にとって、メンバー全員が還暦を迎える年である。5月には1回目の還暦ツアー、秋頃に2回目が計画されている。

人間椅子の長い歴史の中で、ライブにおけるセットリスト(ライブの選曲・曲順)もまた変遷をたどっている。

セットリストにどんな楽曲が組み込まれるかによって、ライブの印象も大きく変わるし、集客にも影響を与えるものだ。

今回は人間椅子のセットリストの変遷を追いかけながら、その変化と再ブレイクから現在までの歴史を重ねつつ、考察してみたいと思う。

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人間椅子のライブセットリストの傾向の変遷を考察する

今回の記事は人間椅子のセットリストの特徴にどのような変化がみられるか、を考えてみようという内容である。

人間椅子はこれまで音源として発表してきただけでも、300曲近い楽曲が存在する。どの曲をライブで披露するか、かなり難しくなってきている。

当然ながら現在に近づくほど、曲数は多くなり、選ぶ楽曲の母数が大きくなる。さらに後述するが、年々ライブの曲数も体力的な問題からか、減少傾向にある。

限られた曲数の中で、人気曲からレアな楽曲まで、どんなバランスで配置するかが重要になって来る。

今回はその変遷を見る上で、主に現在のドラマーであるナカジマノブ氏が加入してからの人間椅子のセットリストを中心に、4つの時期に分けて述べることにした。

その4つとは以下の通りである。

  1. 定番曲なし期(~2009年頃)
  2. 超定番曲期(~2014年頃)
  3. 新曲+準定番曲期(~2019年頃)
  4. レア曲多め期(~現在)

4つの時期について、筆者が実際にライブで見たセットリストをもとに、選曲の特徴などを述べていく形とする。

なお「超定番曲」「レア曲」などの分類は、筆者によるものである。人間椅子の全曲について、ライブでの演奏頻度判定記事に用いたものである。

  • 超定番:毎回に近いほどの確率で聴ける。ワンマンライブだけでなくフェスなどで選曲されやすい。
  • 定番:何本かのツアーに1回くらいの頻度で聴ける。昔のライブで定番だった楽曲なども含む。
  • 準定番:何年かごとのツアーに1回くらいの頻度で聴ける。
  • レア:ワンマンツアーのセットリストの中に含まれる「レア曲」枠の楽曲。
  • 超レア:ほとんど披露されない。ファンクラブ限定ライブで選ばれるような楽曲。

用語として登場するので、その記事も参考にお読みいただければと思う。

【人間椅子・2026年】全楽曲のライブにおける演奏頻度を判定して一覧表にしてみた
2026年は人間椅子にとって還暦ツアーが行われる年である。2026年は複数ツアーが企画されているようで、ライブが多めに見…

定番曲なし期(~2009年頃)

人間椅子のライブにおけるセットリストは、過去を遡るとデビュー前後から長らく「定番曲なし期」だったのではないか、と考えられる。

ライブにおいては、人気のある曲は繰り返し披露される・ライブ終盤では必ずこの曲をやる、など定番化した楽曲というのが存在することが多い。

しかし人間椅子の場合、あまりそうした楽曲をバンドの側で意識せず、常に多彩な楽曲を色んな曲順で演奏する、という形がとられていた。

ナカジマ氏加入前もずっとその傾向であり、要するに、「売る」ための戦略的なことはあまり行われていなかった、と言うこともできるだろう。

新規ファンにはなかなかハードルが高く、一方で繰り返し参加しているファンにとっては、常に珍しい曲が飛び出すのが楽しいセットリストだった。

筆者が参加した数少ない後藤マスヒロ氏在籍時代のセットリストを1つ紹介しよう。2002年1月28日に行われた、ビデオ『見知らぬ世界』発売記念ツアーの名古屋 ell. FITS ALL公演だ。

No.タイトル収録アルバム
SE木曜スペシャル
1黄金の夜明け『黄金の夜明け』(1992)
2恋は三角木馬の上で『二十世紀葬送曲』(1999)
3人喰い戦車『見知らぬ世界』(2001)
4盗人讃歌『桜の森の満開の下』(1991)
5自然児『見知らぬ世界』(2001)
6都会の童話『二十世紀葬送曲』(1999)
7甘い言葉 悪い仲間『見知らぬ世界』(2001)
8君忘れじの田舎館村和嶋氏のオリジナル歌詞によるIron Butterfly「In-A-Gadda-Da-Vida」カバー
9どだればち『踊る一寸法師』(1995)
10見知らぬ世界『見知らぬ世界』(2001)
11陰獣『人間椅子』(1989)
12死神の饗宴『見知らぬ世界』(2001)
13暗い日曜日『踊る一寸法師』(1995)
14天体嗜好症『頽廃芸術展』(1998)
15わたしのややこ未収録
16青森ロック大臣『羅生門』(1993)
17幸福のねじ『黄金の夜明け』(1992)
アンコール1
18ARMED AND READYMichael Schenker Groupのカバー
19人面瘡『ペテン師と空気男-人間椅子傑作選-』(1994)
アンコール2
20地獄風景『怪人二十面相』(2000)
21ダイナマイト『踊る一寸法師』(1995)
※オリジナルアルバムを記載

まずもって当時30代半ばの人間椅子、曲数が今よりもかなり多いことが分かるだろう。7分超えの曲を交えながら、21曲と言うのはかなり長いライブだったことを思い出す。

そして曲数も今ほど多くなかった中、売れた曲と言うのもある訳ではないので、定番らしい定番がなかった印象がある。

いきなり1曲目から「黄金の夜明け」という渋いライブである。当時の新作『見知らぬ世界』からが多いのは当然ながら、中でもマニアックな曲を中心に選ばれている印象である。

そこに「君忘れじの田舎館村」というオリジナル詞カバー、未収録曲「わたしのややこ」など、これでもかというマニアックさだった。

アンコール終盤に「地獄風景」「ダイナマイト」と、スラッシュ地獄だったのは若さゆえの懐かしい並びである。

この中で定番らしかったのは「暗い日曜日」「幸福のねじ」「人面瘡」辺りだろうか。「天体嗜好症」「青森ロック大臣」辺りも、当時の準レギュラークラスだった気もする。

なお「陰獣」はレア曲と言う感じで、あまり演奏されない曲だった印象である。新作『見知らぬ世界』を外して考えると、やはりかなりマニアックな並びになっている。

ナカジマ氏が加入してからも、しばらくはこの「定番曲なし期」が続いていたように思える。時代は少し飛んで、2008年のセットリストがこちらである。

2008年7月20日に高円寺ShowBoatで行われた単発ライブ「七月の猟奇歌 ~ ShowBoat 15周年記念」である。

No.タイトル収録アルバム
SESasperia(Goblin)
1爆弾行進曲『桜の森の満開の下』(1991)
2九相図のスキャット『頽廃芸術展』(1998)
3羅生門『羅生門』(1993)
4青年は荒野を目指す『真夏の夜の夢』(2007)
5のれそれ『三悪道中膝栗毛』(2004)
6盗人讃歌『桜の森の満開の下』(1991)
7白日夢『真夏の夜の夢』(2007)
8マンドラゴラの花『黄金の夜明け』(1992)
9痴人の愛『三悪道中膝栗毛』(2004)
10死神の饗宴『見知らぬ世界』(2001)
11黒い太陽『二十世紀葬送曲』(1999)
12悪霊『三悪道中膝栗毛』(2004)
13どっとはらい『真夏の夜の夢』(2007)
14猿の船団『真夏の夜の夢』(2007)
15賽の河原『人間失格』(1990)
16恐怖!!ふじつぼ人間『瘋痴狂』(2006)
17天国に結ぶ恋『人間失格』(1990)
アンコール1
18幻色の孤島『瘋痴狂』(2006)
19針の山『人間失格』(1990)
アンコール2
20地獄風景『怪人二十面相』(2000)
※オリジナルアルバムを記載

この当時はまだ再ブレイクの兆しがほとんどなかった頃、ただShowBoat単発だったのでチケットは早い段階で売り切れたのは、良いニュースだったと記憶している。

この当時の新作は『真夏の夜の夢』であり、それを除いたとしても、あまり定番らしい定番が見当たらないセットリストになっている。

あえて挙げれば「死神の饗宴」「天国に結ぶ恋」「地獄風景」辺りが定番、また当時の定番として「恐怖!!ふじつぼ人間」がかなりの頻度で披露されていた記憶がある。

「盗人讃歌」「マンドラゴラの花」など初期のマニアックな曲、「悪霊」「幻色の孤島」などの渋めの選曲も目立っている。

こうした選曲になっていたのも、この当時のベストアルバムがリリースされていなかったこともあるのだろう。

またベストアルバムが出たとしても、あえてそれ以外から演奏しまくるという、ひねくれた(屈折した)ところがこの当時の人間椅子にはあったように感じていた。

超定番曲期(~2014年頃)

長きにわたり「定番曲なし期」のセトリだった人間椅子だが、その傾向が変わるきっかけは2009年の『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』リリースだった。

人で言えば成人となるこのタイミング、人間椅子にとっても仕切り直しの機会となった。そして初の2枚組オールタイムベストとなり、人間椅子の歴史を客観的に眺められる作品となった。

この時に、人間椅子にとって定番曲とは何か、ということがバンド側でも考えられたようだ。その結果、重要な曲ながらインディーズ盤にしか収録されていなかった「陰獣」が新録された。

ライブにおいても、ベストアルバムに収録された楽曲がセットリストの軸となっていった。その傾向が続く時代を「超定番曲期」と名付けた。

「超定番曲期」を決定づけたのは、2010年に行われたライブアルバムを収録するためのツアー『疾風怒濤』だったように思う。

2010年7月16日のツアー『疾風怒濤』東京・Shibuya O-WEST公演のセットリストを見てみよう。

No.タイトル収録アルバム
SE鉄格子黙示録オープニング
1鉄格子黙示録『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
2羅生門『羅生門』(1993)
3りんごの泪『人間失格』(1990)
4塔の中の男『未来浪漫派』(2009)
5賽の河原『人間失格』(1990)
6品川心中『瘋痴狂』(2006)
7水没都市『黄金の夜明け』(1992)
8陰獣『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
9深淵『未来浪漫派』(2009)
10死神の饗宴『見知らぬ世界』(2001)
11冥土喫茶『未来浪漫派』(2009)
12相剋の家『修羅囃子』(2003)
13赤と黒『未来浪漫派』(2009)
14地獄『無限の住人』(1996)
15天国に結ぶ恋『人間失格』(1990)
16針の山『人間失格』(1990)
アンコール1
17人面瘡『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
18道程『三悪道中膝栗毛』(2004)
19地獄風景『怪人二十面相』(2000)
アンコール2
20どっとはらい『真夏の夜の夢』(2007)
※オリジナルアルバムを記載

選曲を見てみると、実に15曲がベスト『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』から選ばれているのだ。

なおそれ以外の楽曲は、当時の新作『未来浪漫派』から4曲、ベスト以外は「水没都市」の1曲だけだったのである。

この時はライブアルバム収録があり、ベストなテイクを収録するためにも、万全に演奏できる慣れた曲、そしてベストな選曲を目指した、という事情もあったように思う。

そしてやはり定番曲の盛り上がりの大きさが、人間椅子のライブの評価をさらに高め、口コミで新規ファンの獲得に繋がっていったようだ。

そのため、これ以降もベスト盤からの選曲(要は定番曲)が多め、あとは当時の新作とレア曲を1曲程度、という選曲が何年かみられることになる。

その時代を象徴するもう1つのセットリストを見てみよう。2012年に行われたアルバム『此岸礼讃』リリースツアーの続編的な内容のツアーである。

2012年7月20日に行われた『此岸御詠歌(しがんごえいか) ~人間椅子ワンマンツアー 2012年夏~』のShibuya O-WEST公演のセットリストだ。

No. タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌
1阿呆陀羅経『此岸礼讃』(2011)
2りんごの泪『人間失格』(1990)
3狂ひ咲き『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
4ギラギラした世界『此岸礼讃』(2011)
5夜叉ヶ池『桜の森の満開の下』(1991)
6芋虫『怪人二十面相』(2000)
7今昔聖『此岸礼讃』(2011)
8死神の饗宴『見知らぬ世界』(2001)
9深淵『未来浪漫派』(2009)
10洗礼『三悪道中膝栗毛』(2004)
11相剋の家『修羅囃子』(2003)
12道程『三悪道中膝栗毛』(2004)
13地獄『無限の住人』(1996)
14天国に結ぶ恋『人間失格』(1990)
15針の山『人間失格』(1990)
En.1
16人面瘡『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
17地獄風景『怪人二十面相』(2000)
En.2
18どっとはらい『真夏の夜の夢』(2007)

リリースツアーの続編とは言え、これまでであればレア曲の割合がそこそこ入って来るのが定例であった。

しかしこのセットリストでも、ベスト盤から13曲、『此岸礼讃』から3曲、『未来浪漫派』から1曲、それ以外は「芋虫」の1曲のみだった。

この頃のライブについては、いつ行っても割と同じ曲ばかりという印象で、新規ファンにとっては一見さんも楽しめるのでかなり良かったと思う。

一方でレア曲三昧のかつてのライブを観てきた古参ファンにとっては、やや物足りなさもあったのではないか、と思われる時期であった。

レア曲を聴こうと思ったら、東京のみで開催されていたファンクラブ限定ライブ『人間椅子倶楽部の集い』に参加するほかなかった時代である。

そしてこの時期にライブの曲数は20曲→18曲へと減っている。(2010年の『春のにほひは涅槃のかをり』ツアーでは19曲だったようだ)人間椅子メンバーは40代半ばを過ぎた頃だった。

この後、2013年に人間椅子のターニングポイントとなるOzzfest Japan 2013への出演を経て、ますます新規ファンが多く流入する時期となる。

アルバム『萬燈籠』発売リリースツアーでは、東京2Daysの初日は発売初日にチケットが完売、全国各地でも完売する”人間椅子ブーム”が起きていたのだった。

ただライブのセットリストは、超定番曲ばかりを並べる選曲から、準定番曲やレア曲をもう少し多めに入れる傾向へと変化していく。

移行期にあったセットリストとしては、2014年1月18日の「バンド生活二十五年 ~猟奇の果~」東京・TSUTAYA O-EAST公演のものを紹介しよう。

no.タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌
1新調きゅらきゅきゅ節『萬燈籠』(2013)
2爆弾行進曲『桜の森の満開の下』(1991)
3りんごの泪『人間失格』(1990)
4時間からの影『萬燈籠』(2013)
5怪人二十面相『怪人二十面相』(2000)
6九相図のスキャット『頽廃芸術展』(1998)
7ねぷたのもんどりこ『萬燈籠』(2013)
8品川心中『瘋痴狂』(2006)
9黒百合日記『萬燈籠』(2013)
10冥土喫茶『未来浪漫派』(2009)
11踊る一寸法師『踊る一寸法師』(1995)
12相剋の家『修羅囃子』(2003)
13蜘蛛の糸『萬燈籠』(2013)
14天国に結ぶ恋『人間失格』(1990)
15針の山『人間失格』(1990)
En.1
16猟奇が街にやって来る『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
17地獄風景『怪人二十面相』(2000)
En.2
18どっとはらい『真夏の夜の夢』(2007)

このライブの様子は、2014年の『無頼豊饒』の初回限定盤のDVDに一部収録された。

選曲は当時の新作『萬燈籠』の推し曲5曲、2009年のベスト盤からは8曲入った。一方で「爆弾行進曲」「怪人二十面相」「九相図のスキャット」など、ベスト盤以外の曲も増えている。

レア曲とまでは行かない、準定番曲たちという印象である。ただ『萬燈籠』とベスト盤辺りのみ聴いて訪れた新規ファンには初となる曲たちだったかもしれない。

また「踊る一寸法師」~「相剋の家」という、ベース鈴木研一氏のパフォーマンスが光る流れもライブの見せ所として上手く機能していた。

新曲+準定番曲期(~2019年頃)

Ozzfest Japan 2013への出演の熱狂を経て、2015年には再度Ozzfest Japanに出演し、再ブレイクの時代へと入って行く。

人間椅子としての活動ペースも最も勢いづいていた時代だったと思われる。とにかく年中ライブを行っているか、行っていない間に制作を行う売れっ子スケジュールだった。

ライブの動員も多い状態をキープしており、新規ファンで入ってきた人たちも、徐々に人間椅子の過去の作品を聴き進めている時期だったのかもしれない。

そうした状況をくみ取ったのか、この時代の選曲の特徴は、リリースされた新曲を織り交ぜつつ、ややレアな楽曲・準定番を上手に配置していくものだった。

そのため「新曲+準定番曲期」とした。その当時リリースされた旬の楽曲、そして掘り起こしたレアな楽曲とが同居する、人間椅子らしいライブが完成されていく時期だった。

その中でも筆者が最も素晴らしいと感じたセットリストは、2017年のライブアルバム『威風堂々〜人間椅子ライブ!!』に付属のDVDに収録されたライブである。

これは2016年7月10日、夏のワンマンツアー<地獄の道化師>の東京・新宿ReNYでの公演であった。セットリストは以下の通りである。

no.タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌
1雪女『怪談 そして死とエロス』(2016)
2怪人二十面相『怪人二十面相』(2000)
3宇宙からの色『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』(2014)
4天体嗜好症『頽廃芸術展』(1998)
5狂気山脈『黄金の夜明け』(1992)
6夜叉ヶ池『桜の森の満開の下』(1991)
7恐怖の大王『怪談 そして死とエロス』(2016)
8芳一受難『怪談 そして死とエロス』(2016)
9暗い日曜日『踊る一寸法師』(1995)
10踊る一寸法師『踊る一寸法師』(1995)
11東京ボンデージ『桜の森の満開の下』(1991)
12超能力があったなら『怪談 そして死とエロス』(2016)
13膿物語『真夏の夜の夢』(2007)
14愛の言葉を数えよう『修羅囃子』(2003)
15針の山『人間失格』(1990)
En.1
16迷信『無頼豊饒』(2014)
17地獄の球宴『怪談 そして死とエロス』(2016)
En.2
18なまはげ『無頼豊饒』(2014)

当時の新作『怪談 そして死とエロス』の中から自信作と思われる5曲がライブの大事なポイントに配置されている。

序盤には”宇宙シリーズ”として定番の「宇宙からの色」に対し、かなりレア曲となっていた「天体嗜好症」が置かれているのがとても良い。

この当時は、FC限定ライブ『人間椅子倶楽部の集い』で手応えを感じた楽曲を、メジャー昇格のような形でワンマンライブで起用しており、「天体嗜好症」もその1つだったと記憶している。

また序盤には「狂気山脈」「夜叉ヶ池」と準定番かつじっくり聴けるような楽曲を配置して、ライブに厚みを増すことに成功している。

ダウンチューニングコーナーでは新曲2曲を景気良く披露した後は、やや定番から外れていた「暗い日曜日」から「踊る一寸法師」、さらにはレアな「東京ボンデージ」とこれも良い流れだ。

終盤にもかつて一時期定番だった「愛の言葉を数えよう」を入れ込むなど、定番と準定番・レア曲のバランスにおいて、見事な組み立てだった。

もう1つ、この時代の印象的なセットリストを紹介しよう。2018年9月7日に行われた「恩讐の彼方~人間椅子2018年晩夏のワンマンツアー」東京・TSUTAYA O-EAST 公演である。

no.タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌
1鉄格子黙示録『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
2晒し首『無限の住人』(1996)
3時間からの影『萬燈籠』(2013)
4夜間飛行『三悪道中膝栗毛』(2004)
5品川心中『瘋痴狂』(2006)
6どだればち『踊る一寸法師』(1995)
7野垂れ死に『三悪道中膝栗毛』(2004)
8ダンウィッチの怪『頽廃芸術展』(1998)
9命売ります『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト』(2019)
10心の火事『桜の森の満開の下』(1991)
11黒猫『無限の住人』(1996)
12悪夢の添乗員『異次元からの咆哮』(2017)
13地獄の球宴『怪談 そして死とエロス』(2016)
14雪女『怪談 そして死とエロス』(2016)
15針の山『人間失格』(1990)
En.1
16辻斬り小唄無宿編『無限の住人』(1996)
17地獄のヘビーライダー『異次元からの咆哮』(2017)
En.2
18なまはげ『無頼豊饒』(2014)

リリースが関係しないツアーでは、かなりマニアックな楽曲も盛り込まれるようになってきた。筆者の感覚では、「定番曲なし期」の頃の自由さが戻ってきた感覚もあった。

この時も『人間椅子俱楽部の集い』で披露された曲の中かから「晒し首」「野垂れ死に」「辻斬り小唄無宿編」など、レアな楽曲が多く盛り込まれている。

それだけでなく「ダンウィッチの怪」が集いでも披露されていなかったが、突如ワンマンライブで復活することとなり、大いにファンを沸かせた。

それ以外は「品川心中」「黒猫」「なまはげ」など定番は必要最小限に、「心の火事」「時間からの影」など準定番も配置して、バラエティ豊かなセットリストとなっていた。

そして盛り上がりどころに新作『怪談 そして死とエロス』『異次元からの咆哮』の楽曲を計4曲配置していた。

この時代は再ブレイクの熱気を感じさせつつ、ファンの定着も始まっていた時代だった。新旧、定番・レアを織り交ぜて、人間椅子の”沼”へと引きずり込むセットリストだったように思えた。

コロナで活動がストップする前の、バンド生活三十周年となった2019年頃までこの傾向は続いた。

レア曲多め期(~現在)

三十周年の節目にはベスト盤『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト』がリリースされ、海外のファンも意識した選曲のベストアルバムとなった。

また「無情のスキャット」のMVが海外も含めて大バズり、2020年初めに初の海外(ヨーロッパ)ツアーが実現したのだった。

しかしその直後にコロナのため、世界的にライブ活動がストップとなった。人間椅子も配信などを行うも、やはり生演奏ができない状態での活動は控えることに落ち着いたようだった。

これを機に、まるで若手売れっ子のようなスケジュール組は見直されたようで、2022年頃”コロナ明け”と言われた時期以降も、2019年までの怒涛のライブスケジュールは組まれなかった。

減ったのはイベント出演や対バンなどの対外的な行事であり、従来から続いているワンマンツアーのペースは年間1~2本で、大きく変化はしていない。

この時期の傾向として、2019年頃までに多く演奏された超定番曲は減少傾向、あまりやっていないレア曲を織り交ぜる傾向が強くなった。そのため「レア曲多め期」と名付けた。

リリースの関係しないツアーを見ると、2022年9月19日に行われたツアー「闇に蠢く」の東京EX THEATER ROPPONGI公演が典型的かもしれない。

no.タイトル収録アルバム
SE新青年まえがき
1鉄格子黙示録『人間椅子傑作選 二十周年記念ベスト盤』(2009)
2侵略者『見知らぬ世界』(2001)
3表徴の帝国『無頼豊饒』(2014)
4狂気山脈『黄金の夜明け』(1992)
5時間からの影『萬燈籠』(2013)
6菊人形の呪い『頽廃芸術展』(1998)
7宇宙海賊『苦楽』(2021)
8ダンウィッチの怪『頽廃芸術展』(1998)
9黒い太陽『二十世紀葬送曲』(1999)
10無情のスキャット『新青年』(2019)
11蜘蛛の糸『萬燈籠』(2013)
12地獄の料理人『無頼豊饒』(2014)
13天国に結ぶ恋『人間失格』(1990)
14針の山『人間失格』(1990)
En.1
16宇宙からの色『現世は夢 〜25周年記念ベストアルバム〜』(2014)
17地獄風景『怪人二十面相』(2000)
En.2
18どっとはらい『真夏の夜の夢』(2007)

このセットリストを見ると、ニ十周年~三十周年までの3枚のベストアルバムに収録されている楽曲は18曲中9曲だった。

そして2019年までの「新曲+準定番曲期」とも異なるのは、新曲の少なさである。この当時の新作『苦楽』からは「宇宙海賊」1曲のみ、1作前を含めても「無情のスキャット」だけだ。

それ以外はかなり古いマニアックな曲も多く、「侵略者」「菊人形の呪い」など後藤マスヒロ氏時代のレア曲、またナカジマ氏の時代でも「表徴の帝国」はかなりレアである。

新曲や定番曲でライブを大きく盛り上げるより、ずっと来てくれるファンにレア曲をお届けするモードに変わってきたように思えた。

その傾向をより強く感じたのは、アルバムリリースツアーにおいてである。2025年12月10日の2025年冬ワンマンツアー『まほろば』ツアー、名古屋 Electric Lady Land公演である。

No.タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌『萬燈籠』(2013)
1まほろば『まほろば』(2025)
2心の火事『桜の森の満開の下』(1991)
3感動の坩堝『まほろば』(2025)
4遺言状放送『桜の森の満開の下』(1991)
5樹液酒場で乾杯『まほろば』(2025)
6みなしごのシャッフル『怪人二十面相』(2000)
7阿修羅大王『まほろば』(2025)
8冥土喫茶『未来浪漫派』(2009)
9光の子供『まほろば』(2025)
10宇宙誘拐『まほろば』(2025)
11大団円『怪人二十面相』(2000)
12恋愛一代男『まほろば』(2025)
13迷信『無頼豊饒』(2014)
14針の山『人間失格』(1990)
アンコール
15永遠の鐘『まほろば』(2025)
16棺桶ロック『見知らぬ世界』(2001)
17無情のスキャット『新青年』(2019)
※オリジナルアルバムを記載

通常のリリースツアーの場合、新譜を買って来てくれる新規ファンも多いことから、新曲+定番曲を軸に組み立てるのが定石だと思われる。

しかしこの『まほろば』ツアーでは、レア曲をかなり盛り込んだセットリストになっていた。新曲は17曲中8曲、先ほどの3作のベストに含まれる楽曲は3曲のみである。

残り6曲は準定番かレア曲であった。とりわけ「棺桶ロック」や「大団円」はめったに披露されないレア曲、「みなしごのシャッフル」「遺言状放送」なども近年は頻度の少ない楽曲だ。

新曲とレア曲を軸にしたリストと言っても良いくらいの内容になっている。この背景には、鈴木氏が”終活モード”であると発言したことから理解できた。

すなわち、健康にライブができるうちに、あまり披露していないレア曲は惜しみなく披露していくモードに入った、ということのようである。

こうした傾向を念頭に、2026年最初にツアーのセットリストを見てみよう。2026年5月20日に行われた、還暦記念ツアー『猟奇新生』の名古屋 Electric Lady Land公演である。

No.タイトル収録アルバム
SE此岸御詠歌『萬燈籠』(2013)
1まほろば『まほろば』(2025)
2死神の饗宴『見知らぬ世界』(2001)
3人間ロボット『苦楽』(2021)
4もっと光を!『羅生門』(1993)
5品川心中『瘋痴狂』(2006)
6黄金の夜明け『黄金の夜明け』(1992)
7杜子春『苦楽』(2021)
8巌窟王『新青年』(2019)
9無限の住人 武闘編『無限の住人(リマスター盤)』(2020)
10ダンウィッチの怪『頽廃芸術展』(1998)
11相剋の家『修羅囃子』(2003)
12蜘蛛の糸『萬燈籠』(2013)
13疾れGT『苦楽』(2021)
14針の山『人間失格』(1990)
アンコール
15ばかっちょ渡世『まほろば』(2025)
16無情のスキャット『新青年』(2019)
※オリジナルアルバムを記載

新作の『まほろば』からは要となる楽曲を最小限に2曲のみ披露している。それ以外は全て前々作以前の過去作品からのセットリストとなっている。

レア曲と言えるのは「もっと光を!」であり、「黄金の夜明け」「ダンウィッチの怪」辺りがややレア、また「人間ロボット」「巌窟王」「無限の住人 武闘編」も近年の頻度が低めの曲たちだ。

一方で「死神の饗宴」「相剋の家」「品川心中」など、「超定番曲期」に演奏されていたベスト盤の常連が今回は復活していた。

かつての超定番は逆にレア曲化してしまう現象は、曲数が多いからこそ起きるものだ。定番・レア曲も揺れ動くものであることが分かる。

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まとめ

今回は人間椅子のライブのセットリストについて、歴代の傾向を追いかけて考察してみた。

こうして見てみると、人間椅子の低迷期~再ブレイク、そして安定した動員の時代への変化がセットリストとともによく分かるのではないか。

チャンスの波が来ていたからこそセトリも変化しただろうし、セトリを変化させたことで、ますますファンを呼び込むことができた側面もあるだろう。

新規ファン獲得においては、「超定番曲期」においてしっかり定番曲を定着させた時代があったことは大きな意味があったのだと考える。

筆者個人としては、既に何年もファンをやっていたため、同じ曲ばかりになってややライブの楽しみが減った時期でもあった。しかし今思えば、大事な時期だったということだろう。

2015年以降くらいから、徐々にファンの定着も見られたので、超定番曲の割合を少し減らして、レア曲や準定番曲を増やしていた。

その結果、その数年前からファンになった人たちを、人間椅子の”沼”にハマらせることに成功できたように思う。

こうして2019年でいったん戦略的にファンを取り込む時代は区切りを迎えた。コロナ明け以降、「最近やっていない曲」をやる傾向が強くなっているようである。

もちろん長らく演奏されていないレア曲も、そして「超定番曲期」に披露されていた、かつての定番もその候補に入って来るようになった。

これからますますライブで楽曲を披露できる機会は貴重なものとなっていく。1回のツアーを逃せば、もう一生聴けない曲も出てくる段階に入っているのだろう。

ぜひ参加できる時にはライブに参加して、多くの楽曲を耳にしていただきたいと思う。

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