【アルバムレビュー】碧海祐人 – 表象の庭で (2021) “浮遊する”サウンドとジャンル

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アルバムレビュー
画像出典:Amazon

当ブログ「自部屋の音楽」では幅広いジャンルの音楽、そして名盤を紹介している。今回は筆者が気になっているシンガーソングライター碧海祐人のアルバムを紹介したい。

何かで耳にした訳ではなく、たまたま見かけて聴いてみようと思った作品である。キーワードとしては”浮遊感”であり、サウンド、そしてジャンルも浮遊するような不思議な魅力のある1枚だ。

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碧海祐人について

まずは碧海祐人(読み:オオミマサト)について簡単に紹介しよう。

愛知県出身のシンガーソングライターであり、2019年末より作品リリースを行っている。

高校時代から弾き語りで楽曲を制作を始め、大学在学時から本格的に音楽制作を開始。当時影響を受けた作品に、米津玄師の『BOOTLEG』(2017)を挙げている。

2019年にファースト・シングル『秋霖』をリリース。2020年9月にはファーストEPである『逃避行の窓』をリリースしている。

2021年8月にはFUJI ROCK FESTIVAL ’21に出演している。2019年のリリースから2年足らずでの出演は、その注目度の高さを窺えるものと言えるだろう。

2022年2月11日にワンマンライブ『窓下に氷雨、箱庭の熱』が予定されていたが、4月18日(月)に延期になっていると言う。

後のアルバムレビューでも述べるが、彼の音楽性には独特なものがある。近年のアンビエントなどミニマルなサウンドが特徴だが、R&Bや日本のシティポップなども感じさせる。

またオルタナティブロックの乾いた攻撃的な側面と、ソウルのメロウで甘い雰囲気が両立しているところに筆者は興味を持っている。

※以下のサイトを参照した。Mikki:碧海祐人『表象の庭で』モーゼズ・サムニーらを参照した王道にしてオルタナティヴな初アルバムを語る

碧海祐人『表象の庭で』モーゼズ・サムニーらを参照した王道にしてオルタナティヴな初アルバムを語る | Mikiki by TOWER RECORDS
2019年末に作品をリリースしはじめてからわずか2年足らずで〈FUJI ROCK FESTIVAL '21〉に出演するな...
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アルバムレビュー:『表象の庭で』(2021)

今回は2021年にリリースされた碧海祐人の1stフルアルバム『表象の庭で』を紹介・レビューしたい。

前半では作品の紹介、後半では彼の作るサウンド、そして行き交うジャンルに注目しながらレビューを行った。

アルバム情報

  • 発売日:2021年12月22日
  • レーベル:ULTRA-VYBE, INC.

初となるフルアルバムで全11曲入りである。先行シングルとして「夜風」「天象」「沈む春」の3曲が先行リリースされていた。

本作について、碧海氏自身は以下のように語っている。キーワードとしては”記憶”や”忘れる”などが挙げられるようである。

なおミックス・共同プロデュースには、葛西敏彦氏(蓮沼執太フィルやスカートなどを手掛ける)、マスタリングには木村健太郎氏(電気グルーヴ、七尾旅人などを手掛ける)が参加している。

YouTubeには「夜風」「午睡」のミュージックビデオが公開されている。

アルバムレビュー – ”浮遊する”サウンド・ジャンル

ここからはアルバムの楽曲を紹介しながら、レビューを行っていきたい。

まず収録楽曲に関しては、ソウルを感じさせるポップなナンバーから、アンビエントなどを思わせるような楽曲まで幅広い。

たとえばMVが公開されている「夜風」は、本作の中でも最もポップなナンバーと言える。シティポップ的な洗練された雰囲気も漂っている

一方でシングルリリースされた「沈む春」は、ピアノを軸にしながらドラムのないアンビエント色の濃い楽曲となっている。

こうしたジャンルが行き交うアルバムになったのも、今回の作品では各曲が持っている意思を意識したとインタビューで述べられているところがあるかもしれない。

Spincoaster:INTERVIEW / 碧海祐人

INTERVIEW / 碧海祐人 - Spincoaster (スピンコースター)
「対面していない、吟味された対話」――碧海祐人が語る、“表象”のかたち。コロナ禍で起きた変化や1st AL制作背景につい...

碧海氏が作り出す楽曲には、よりタイトなビート感のあるメロディもあれば、浮遊感のあるものもあるのだろう。それに逆らうことなく、アウトプットされた作品と言う印象である。

しかしサウンド全体から感じるのは、やっぱり浮遊感と言うか、トリップ感のようなものである。それも夢か現か微睡の中にいるような感覚に陥る。

それはMVが制作された「午睡」に明確に表現されているようにも思われる。

やはりこの浮遊感の肝としては、隙間のあるゆったりしたサウンドにあるのだろう。この作品には様々なジャンルの”心地よさ”をミックスさせたような感触がある。

このジャンルをまたがる”浮遊感”もまた興味深いところである。

全体を流れているのは、ソウルやヒップホップの心地よさだと、まずは感じた。

どちらかと言うと、筆者が好んで聴く”ローファイヒップホップ”などのような、ソウルの中でもよりミニマルなサウンドと融合したジャンルの心地よさである。

ただアルバムの前半に流れているのは、シティポップ的な洗練された心地よさである。2~4曲目にかけては、思いのほかビート感のある曲が並んでいる。

さらには「熱」や「沈む春」「氷雨」などには、アンビエントの心地よさもある。ビートや構成のはっきりした2~4曲目の流れとはまた異なる心地よさなのだ。

もっと言えば、単に”イージーリスニング”のような分かりやすい心地よさだけでなく、オルタナティブロックの持つ乾いた、やや攻撃的な側面も後ろの方に潜んでいる感覚もある。

「音楽を聴くのにジャンルはどうでもいい」と言う意見もあるが、筆者としてはやはり背後にどんなジャンルが見えてくるか、というのは重要なのだ。

そしてそれが豊かであるほど、楽曲も魅力的に思える。そうした意味でも、非常に味わい深い1枚になっていると思った。

碧海氏がどんな音楽を聴くのか、と言うことは、以下の記事から読み取れる。

HMV & BOOKS online:無人島 ~俺の10枚~ 【碧海祐人 編】

無人島 〜俺の10枚〜 【碧海祐人 編】|ジャパニーズポップス
ブラックフィーリングなサウンドと文学的な歌詞でメランコリックな叙情を音像化するア...

ここからも現代的なサウンドの音楽だけでなく、ポップスからシティポップやAOR、ソウルなど様々な音楽を聴く人なのだな、と言うことが分かる。

さらには本作を通じて、音楽により興味を持ってもらえることを望んでいることもインタビューで語っている。特に「インディとJ-POPの窓口であれたら」と述べていた。

こうした語りからも、筆者はさらに好感を持った。自分が表現したいものだけがあるのではなく、音楽と言う表現方法への最大限のリスペクトを感じるのだ。

つまり音楽は伝えるための”ツール”ではなく、音楽それ自体に価値を置き音楽そのものを伝えようと言う意思を感じるアルバムになっている。

そしてその気持ちが、しっかり楽曲や音に宿っているように感じたのだった。

まとめ

今回は2021年にリリースされた碧海祐人の1stフルアルバム『表象の庭で』について紹介した。

まだ若くして1stアルバムから、非常にクオリティの高いアルバムになっていると感じた。

それはやはり音楽的バックグラウンドがしっかりしていること、そしてそのサウンド作りが的確なこと、などに表れているように思う。

今後どのように作品が展開していくのか楽しみだ。音楽に対する純粋な気持ちを感じさせる作品が、今後もリリースされていくことを期待したいと思う。

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