【ライブレポート】2024年12月7日(土)eastern youth 単独巡業 2024 渋谷Spotify O-EAST

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eastern youth

昨年バンド結成から35年を迎えたeastern youthのワンマンツアーである。

公式サイトに「2024年はうっかりライブの少ない一年になってしまいました。」とあるように、ワンマンツアーとしては昨年の冬以来となっていた。

筆者としては今年3月に行われたfOULによる企画ライブ「砂上の楼閣41」以来のeastern youthのライブである。

2024年のライブ納め、楽しさを求めていった訳でもなく、この日も一発勝負の演奏に居合わせるという貴重な体験ができたのだった。”単独巡業”初日、Spotify O-EAST公演の模様をレポートした。

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ライブレポート:eastern youth 単独巡業 2024 渋谷Spotify O-EAST

ようやく冬らしい寒さがやって来た12月7日(土)、東京のワンマンではおなじみのSpotify O-EASTに向かった。

今回はかなり直前にチケット購入したので、番号は1000番以降。「場内が大変混みあうことが予想されます」と事前アナウンスがあった通り、かなり人が多かった印象である。

開演直前にはライブハウスのスタッフさんより一歩ずつ前に進むようにアナウンスがあった。定刻の18時を少し過ぎた頃に、入場曲のBuilt to Spillの「Some」が流れる。

吉野氏のギターには4フレットにカポがついているので、1曲目は何となく予想できた。イントロのコードがつまびかれ、「夏の日の午後」が1曲目に披露された。

1曲目からかなりハードな楽曲で、吉野氏も最初からかなりエモーショナルに動き回る。2019年の日比谷野外音楽堂公演で見られた続け方で、「砂塵の彼方へ」へと流れる。

出だしから一気にギアを上げていくモードの今日のライブ、早くもここであまり披露されない「細やかな願い」が演奏されたのはとても嬉しかった。

1995年の『口笛、夜更けに響く』に収録され、緊張感のある曲が続く中で、歌のメロディが美しい曲だ。そしてサビなどでベースの村岡氏のコーラスが加わってハーモニーが美しかった。

最初のMCでは吉野氏から「うっかりライブの少ない1年になってしまい、来年はもっと働きます」と、来年はもう少しライブが増えるかもしれない予告があった。

何だかMCでは喉の調子が悪そうで、言葉も詰まりながら話をされていた様子が少し気になった。

一気に最近の楽曲「今日も続いてゆく」が披露され、2007年『地球の裏から風が吹く』収録の「サンセットマン」が披露されると場内から喜びの声が聞こえてきた。

今回のライブでは「細やかな願い」「サンセットマン」など、優しげな楽曲が印象に残ったような感じもある。

「サンセットマン」後のMCでは、年末になると1年でこんな災害や事件があったと言う番組があるが、昔はそれを見るのが吉野氏は好きだったそうである。

しかしいつの頃からか観るのが嫌いになったとのこと。吉野氏の心境の変化ともとれるが、一方でそれだけ悲惨な出来事が多く報道されるようになったことも言いたかったのかもしれない。

幸福と言うのは独善的なもの、自分の家族だけ良くて残りはみんな死んで良い、というようなものだ、といった趣旨のMCから、かなりのレア曲「炎上する幸福」が披露される。

2004年のシングル『矯正視力〇・六』のカップリング曲の1つである。先日このシングルも配信サービスに加わったことで選曲されたものと推測される。

なお9月に行われた『極東最前線104 ~水星からの物体X~』では「振り向くな」が披露されたとのことだ。

最近の曲になるほどに吉野氏が聴いてきた音楽の影響は感じられなくなるが、この曲のリズムにはかなりFugaziを感じるところである。

やや不気味なコードから定番の「踵鳴る」が披露される。今回はイントロ前の演奏に田森氏も加わっており、ややいつもと違うパターンだった。

また最近あまりない爆速のスピードで披露された「踵鳴る」であった。エモーショナルな演奏から一転、「夜がまた来る」もあまり披露されないレア曲だった。

今回のライブは、温かい雰囲気の楽曲と、一方でギラリと鋭い一面を持つ曲が混ざり合って披露されていく印象も持つようになった。

続くMCでは、人前で演奏することにもさすがに慣れた、という35年バンド活動を続けてきた人からはやや意外な発言があった。またかっこ良く演奏しようなどと思ったことは一度もないとのこと。

今日来ている皆さんの中にもバンドをやっている人はたくさんいると思いますが、と前置きしつつ、かっこ良く見られようと思っているうちはまだまだだからな、と釘を刺して笑いを誘った。

ここから「青すぎる空」「素晴らしい世界」と立て続けに人気曲を披露した。そしてこの日のハイライトと言っても良いのが「ズッコケ問答」「雨曝しなら濡れるがいいさ」の流れだった。

高頻度では演奏されない「ズッコケ問答」であるが、やるたびに必ず盛り上がる曲と言っても良いと思っている。

4曲を立て続けに披露した後のMCでは、最近は自由にMCも話しにくくなったとのこと。SNSで誹謗中傷を書かれる、集団リンチが趣味になってきている、と語られた。

ひと頃(2019年の野音の頃くらいまで)までは、割と長めの語りから曲に入ると言う流れが定番だったのが最近は減っている理由の1つがこれなのかも、とも思った。

果たしてこうしてライブレポートにMCを取り上げるのも、一役買ってしまっているなとも思ったのだった。

笑わない自由、喋らない自由もあると思っているよ、と決意めいたMCとにらむような目つきから「ソンゲントジユウ」が披露された。

最近はこの「ソンゲントジユウ」の前のMCで今の心境が語られることが多くなっているように思えた。続く「時計台の鐘」とともに、改めて現在のeastern youthの立ち位置を感じた一幕だった。

芳野氏から村岡氏が昨日誕生日だったことが告げられた。村岡氏が生まれてきたことで我々はここに立っている、との発言もあった。

加入して約10年、だんだん演奏も下手になってきている(うっかり村岡氏の話かと思って驚いたら吉野氏自身の話に変わっていた様子)が、我々が目指すのは光明ではなく、荒野だと語られた。

「荒野に針路を取れ」「沸点36℃」の流れも素晴らしかった。この2006・2007年の2作も、作品的には彼らの黄金期だったように思える。

そのまま終盤の流れで、定番の「夜明けの歌」へと進むのだが、ごく個人的な話として、この辺りで周りの人が大声で歌うのが気になり始めてしまった。

「ソンゲントジユウ」の前のMCで”自由”について語られたが、ライブ中の大声で客が歌うのを聴かない自由も主張したいものである。

ラストは「また街の底で会おう」のMCから「街の底」で本編が締めくくられた。「ソンゲントジユウ」から流れるようにラストまで駆け抜けたような感じだった。

あまりに歌声がうるさいのでアンコール呼び出し中に後ろの方に移動、あっという間にメンバーが登場したのでこの辺りのMCは聞き逃してしまった。

村岡氏が誕生日について言われると思っていなかったようで、彼女の持ち物で暗証番号が必要なものには全て誕生日が入った簡単なものだったので「暗証番号を変えます」と言って笑いを誘った。

アンコール1曲目は、少しこのタイミングでは珍しい気もする「街はふるさと」。この曲のオープンチューニングの開放的な響きがとても好きだ。

本編までは重い曲や切れ味のある曲も含まれたが、アンコールはカラッとした感じだったのが印象的である。

恒例となっているがBGMが流れ始めてからダブルアンコールが呼び出される。再び出てきたメンバー、そして吉野氏が轟音のギターをかき鳴らし、バンドもそれに乗っかっていく。

ラストは「Don Quijote」で爽快に締めくくられた。2004年『DON QUIJOTE』の中から2曲続けてアンコールで披露されたのであった。

終演後はアン・ルイスの「グッド・バイ・マイ・ラブ」が流れていた。

<セットリスト・収録アルバム>

No.タイトル収録アルバム
1夏の日の午後『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』(1998)
2砂塵の彼方へ『雲射抜ケ声』(1999)
3細やかな願い『口笛、夜更けに響く』(1995)
4今日も続いてゆく『2020』(2020)
5サンセットマン『地球の裏から風が吹く』(2007)
6炎上する幸福シングル『矯正視力〇・六』(2004)
7踵鳴る『感受性応答セヨ』(2001)
8夜がまた来る『地球の裏から風が吹く』(2007)
9青すぎる空『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』(1998)
10素晴らしい世界『感受性応答セヨ』(2001)
11ズッコケ問答『感受性応答セヨ』(2001)
12雨曝しなら濡れるがいいさ『雲射抜ケ声』(1999)
13ソンゲントジユウ『SONGentoJIYU』(2017)
14時計台の鐘シングル『時計台の鐘』(2018)
15荒野に針路を取れ『365歩のブルース』(2006)
16沸点36℃『地球の裏から風が吹く』(2007)
17夜明けの歌『感受性応答セヨ』(2001)
18街の底『ボトムオブザワールド』(2015)
アンコール1
19街はふるさと『DON QUIJOTE』(2004)
アンコール2
20Don Quijote『DON QUIJOTE』(2004)
※「炎上する幸福」「時計台の鐘」はアルバム未収録のためシングル表記
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当日に感じたこと – 村岡ゆか氏加入約10年を経て

今回のライブは特にコンセプト等もなく、楽曲も古い曲から最新の楽曲まで披露された。

アルバム的には『感受性応答セヨ』・『DON QUIJOTE』(と関連シングル)・『地球の裏から風が吹く』辺りが目立っていたが、それほど意識されていたものでもなかっただろう。

それにしても各時代の個性豊かな曲を聴いていてふと思ったことがある。もともとOiパンクバンドから始まったeastern youthはかつてはかなり荒々しいバンドだった。

『口笛、夜更けに響く』以降は文学的な表現のパンクロックを鳴らし、そこから音楽性も徐々に広げてパンクと言う枠にもとどまらないバンドになった。

各時代の音楽性の幅がありつつ、どんな気持ちで演奏しているのだろう、とふと感じたものだった。

おそらく楽曲を制作する・表現することと、バンドがいかにあるかということはまた別物なのだろう。バンドがしっかりある、ということがいかに重要かと思った。

その意味では二宮氏の脱退、そして村岡氏の加入は一大事だった。彼女が加わったeastern youthもすっかり見慣れたが、早くも約10年になるのだと言う。

奇しくも、今回は彼女の誕生日翌日であり、そして彼女のコーラスが映えるライブだったように感じた。

彼女が歌に加わることで、サウンド全体の奥行きというか広がりと言うか、eastern youthのゴツゴツした雰囲気に、柔らかな雰囲気も加わったような感じがしている。

※村岡氏が加入してからのeastern youthの変化についてはこちらで考察した。

それはバンド全体に年齢を重ねたことでもあるかもしれないが、野郎のパンクバンド(本人たちは全くそう思っていなかったかもしれない)から雰囲気が変わってきているようにも思う。

最近客層と言うか、ノリを見ていると、昔に比べると腕を振り上げるとか、もっと言えば暴れるような人は減り、じっくりと静かに見ている人が増えたように思える。

そしてどこか温かな雰囲気になってきたようにさえ思う。

もちろんどんなノリや構えで観るかどうかを決める必要もないだろう。そして、一発勝負でガッと演奏するeastern youthには何ら変わりはない。

ただバンドから醸し出される雰囲気は確実に変わってきているのか、より熟成され、そんなバンドの佇まいや生き様を観に来ている人が増えたような感じがしたのだった。

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